裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第五部合議係
事件番号 平成19年刑(わ)第1877号等
事件名 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告名 A10、A8、A11、A9
担当判事 河本雅也(裁判長)深野英一(右陪席)國井香里(左陪席)
日付 2007.10.31 内容 追起訴

 10月31日午後1時30分から、融資保証金名目に現金をだまし取る振り込め詐欺をしたとして起訴された詐欺グループに所属する4被告の公判(追起訴)が東京地裁で行われた。
A10被告・・・丸刈りにした目つきの悪い男性で、眼鏡をかけている
A8被告・・・丸刈りにした色白で丸顔の男性
A11被告・・・妙な顔立ちの丸刈りにした眼鏡をかけた男性で、黒い服を着ていた
A9被告・・・ジーンズに白い服の小太りの男性

 検察官が追起訴分の公訴事実を読み上げる。

−起訴状朗読−
○平成19年9月20日付け公訴事実
 被告人4名は都内で金融会社を装った店舗を設けて、融資に必要な融資保証金名目に保証金を詐取する、いわゆる振り込め詐欺集団に所属する店舗の構成員として、店長らの指示を受けながら、融資申込者に対し、融資に必要な費用等名目に振り込め詐欺を実行するなどしていた。A1は同集団を統括処理するもの、A2はA1を補佐するもの、A5はA1を補佐し、同集団に所属する5つの店舗を統括処理するもの、A4、A3、A6、A7は同集団に所属する店舗の店長として店舗構成員を管理監督するなどするもの、A21、A22、A23、A14、A13、A15およびA12は同集団に所属する店舗の構成員として、店舗で振り込め詐欺を実行するなどするものである。(注:共犯者はいずれも東京地裁刑事第5部で一審公判中)
 同集団は融資申込者から融資に必要な費用等名目に、金員を詐取して利益を得ることを共同の目的とする、多数の構成員からなる継続的結合体であって、A1の指示・命令に基づき、あらかじめ被告人らの間で定められた手引書に従って振り込め詐欺を実行するなどしており、融資に必要な費用等名目に金員を詐取することを反復して行っていた団体であるが、
第1:被告人4名は融資申込者から融資に必要な費用等名目に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A7、A21、A22、A23、A14およびA13と共謀のうえ、同集団の意志決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指示・命令のもと、被告人らの間で定められた手引書に従い、平成18年11月10日〜11月27日までの間、電話で融資申し込みをしてきたa(当時28年)他2名に対し、東京都荒川区西日暮里5丁目の石川第1ビルから、同人らに対し、真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「20万〜30万円を融資するには、セキュリティをかけなければならないので、1万6800円が必要です。1万円でもいいです」などと嘘を言って、同人らをその旨誤信させ、平成18年11月10日〜11月27日までの間、前後8回にわたり、同人らをして、りそな銀行世田谷支店他4ヶ所から、いずれも被告人らが管理する三井住友銀行中村橋支店に開設されたコウモトタダハル名義の普通預金口座他1口座に合計13万7000円を振り込み入金させた。
第2:被告人4名は融資申込者から融資に必要な費用等名目に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A5、A4、A7、A21、A22、A23、A14、A13およびA15と共謀のうえ、同集団の意志決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指示・命令のもと、被告人らの間で定められた手引書に従い、平成19年1月10日から1月15日までの間、電話で融資申し込みをしてきたb(当時30年)他1名に対し、石川ビル4階事務所からその都度電話で真実は融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「30万円融資の件ですが、手数料として3万1500円を振り込んでもらえれば融資します」とその旨誤信させ、平成19年1月10日〜1月15日までの間、前後10回にわたり、三菱東京UFJ銀行高田馬場支店他2ヶ所から、被告人らが管理するスズキヒデフミ名義の普通預金口座他1口座に合計50万2500円を振り込み入金させた。
第3:被告人A8およびA9は融資申込者から融資に必要な費用等名目に金員を詐取しようと企て、A1、A2、A5、A4、A3、A6、A7、A21、A22、A23、A14、A15、A13およびA12と共謀のうえ、同集団の意志決定に基づく行為であって、詐取した金員を同集団に付属させるものとして、A1の指示・命令のもと、被告人らの間で定められた手引書に従い、平成19年3月17日〜4月6日までの間、電話で融資申し込みをしてきたc(当時29年)他4名に対し、衣川ピラーサ701号室からその都度電話で真実はその融資を実行する意思がないのに、これがあるように装い、「60万円まで融資ができます。ただし公正書作成のための印紙代が必要ですので先に5万円を振り込んでください。融資に上乗せして返金します」と嘘を言い、平成19年3月12日〜4月13日までの間、前後21回にわたり、沖縄県所在の金融機関ほか2ヶ所から被告人が管理する三井住友銀行中村橋支店に開設されたトヨダリュウタ名義の普通預金口座他4口座に合計52万3300円を振り込み入金させ、
もって団体の活動として、詐欺の罪に当たる行為を実行するための組織により人を欺き財物を交付させるなどしたものである。
罪名および罰条:組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律違反。刑法第246条第1項。

裁判長「では被告人4名は前に並んで立ってください。今検察官が読み上げた事実について言いたいことはありますか。黙秘権がありますので、言いたくないことは言わなくていいですが、話したことはすべて事件の証拠になります」
 証言台の前に立たされた被告人4名は「間違いありません」と起訴事実を認め、弁護人も「被告人と同様です」と述べ、元の席に着席させられた。

−検察官の冒頭陳述−
 検察官が証拠により証明しようとする事実は以下の通りであります。
 犯行に至る経緯や犯行状況等ですが本件は振り込め詐欺集団による一連の犯行の一環であります。被告人らは西日暮里とコウジにそれぞれ事務所を置き、同種犯行を繰り返しておりました。
 共犯者のA1は最高責任者、A2がその次の立場、A5はコウジ事務所の統括責任者でした。
 被告人らは先程述べたように西日暮里事務所とコウジ事務所にそれぞれ事務所を置いていました。西日暮里事務所にはA4班、久保田班、コウジ事務所にはA6班、A7班がありました。被告人らはそれぞれの班に所属して犯行を繰り返しておりました。
 騙し取ったお金で事務所の家賃や電話代、報酬等に充てられました。
 公訴事実の1と2は西日暮里事務所における犯行で被告人4名にかかるもの、公訴事実の3はコウジ事務所における犯行でA9とA8にかかります。
 以上の事実を証明するために甲号証は88〜122号、乙号証は51〜83号をそれぞれ請求いたします。
 意見を求められた弁護人は全ての証拠を同意した。
裁判長「それでは全ての被告人の関係で、請求された証拠を採用することにします」

−要旨の告知−
甲号証・・・各被害者が語る犯行状況や被害感情、被害金の引き出し状況等本件犯行によって被害金が騙されたことを明らかにしています。
乙号証・・・被告人4名の供述調書で本件犯行に及んだことが示されている。

 今後の進行について問われた検察官は12月の上旬に追起訴がまだあると述べた。
 次回の予定は弁護人の都合がなかなかつかず、12月5日の午前11時30分と指定された。

 振り込め詐欺事犯(警視庁の定義でおれおれ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺の4つとされる)では追起訴が繰り返されるのが一般的だが、その後はスムーズに判決まで行くことが多い。また振り込め詐欺に限らず「詐欺」は犯罪収益の割りには言い渡される量刑も大して重くはない。

事件概要  被告人らは共犯と都内で金融会社を装った店舗を設けて、融資に必要な融資保証金名目に保証金を騙し取ったとされる。
報告者 insectさん


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