裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第五部(合議係)
事件番号 平成19年刑(わ)第1877号等
事件名 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
被告名 A3、A1、A2、A4
担当判事 河本雅也(裁判長)深野英一(右陪席)國井香里(左陪席)
その他 書記官:塚原
日付 2007.9.21 内容 追起訴

 9月21日午後15時10分から、東京地裁で融資保証金名目に保証金を騙し取る振り込め詐欺などで逮捕・起訴された4被告(A3・A1・A2・A4各被告)の公判があった。
 詐欺グループ内で4被告の配下であった4被告(A11・A9・A10・A8各被告)や合同で詐欺行為に及んでいたA5被告率いる詐欺グループも同じ刑事部で審理されていることが女性事務官の話で分かった。少し意外だったのは重大事件にも拘わらず、被告人に付いているのは中年の弁護人1人だったことである。
A3被告・・・長身の痩せ型で角ばった顔つき。顔は赤らんでいる。普通の髪型。
A1被告・・・小太りの丸坊主でやや鋭い目つき。
A2被告・・・長身の痩せ型で厚い眼鏡を掛けている。知的な印象。普通の髪型。
A4被告・・・長身の痩せ型でホスト風の茶髪。髪が肩までかかっていた。
 全体的に陰湿な雰囲気を漂わせていたが、スエットのA1被告以外はカッターシャツなどを着用していた。

○平成19年8月27日付け公訴事実
 被告人A1は、東京都内で金融会社を装った店舗を設けて、融資に必要な保証金名目に金品を詐取する、いわゆる振り込め詐欺集団を統括していたが、A2はA1を補佐するもの、A4とA3は同集団に所属する店舗の店長として店舗構成員を管理・監督するなどするものだった。A1やA5を補佐するものである、A7(店長)、A8、A17、A18、A19らは店舗構成員として店長らの指示を受けながら振り込め詐欺を実行していた。
 本件は融資申込者から融資に必要な融資保証金を詐取することを恒常の目的とした継続的結合体であり、A5、A6、A20、A8、A9、A17、A18、A19、A14らは、A1の指示・命令に基づきあらかじめ定められた手引書に基づいて金品を詐取することを反復して行っていたものである。詐取した金品は同集団に付属するものとした。
・別紙の添付状1
 被告人らは平成19年3月20日〜平成19年4月4日までの間、電話で100万円の融資を申し込んできたa(当時28歳)に、真実は融資を実行する意思がないのにこれがあるように装い、東京都北区のマンションの701号室から「返済確認のテストをします。振り込んだお金は融資金にプラスしてお返ししますので、振り込んでください」などと申し向け、前後13回にわたり、愛知県の三菱東京UFJ銀行にかかる被害者の口座から、みずほ銀行の被告人らの口座に計64万7000円を振り込み入金させた。
・別紙の添付状2
 被告人らは電話で50万円の融資を申し込んできたb(当時68歳)に、真実は融資を実行する意思がないのにこれがあるように装い、「電話代や水道代を払えない人に融資はできません。返済能力を確かめるために融資保証金を5万円振り込んでください。融資に上乗せしてお返しします」などと申し向け、前後2回にわたり、長野県の飯田信用金庫カミイダ支店にかかる被害者の口座から、みずほ銀行の被告人らの口座に計7万5000円を振り込み入金させた。
罪名および罰条:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、刑法246条第1項。

裁判長「それでは4名は並んで立ってください。何度も聞くようだけど、今検察官が読み上げた事実に間違いはありませんか」
 被告人4名は並んで証言台のほうに立って、4名とも「間違いありません」と起訴事実を認めた。
 意見を求められた弁護人も「被告人らと同様です」と述べた。
 被告人4名は着席して、証拠調べ手続きに入る。

○検察官の冒頭陳述
 検察官が証拠により証明しようとする事実は次の通りであります。犯行に至る経緯等は従前の冒頭陳述の通りですが、本件は振り込め詐欺集団による一連の犯行の一環であります。A1はグループの最高責任者であり、西日暮里事務所では、A4班にA8やA10が、A3班にA11やA9が、A6班にA14やA15、A11が、A20班にA23がいました。騙し取ったお金は事務所の家賃や電話代、報酬等に充てられました。
 検察官は甲、乙号証ともに拡張請求を申請し、弁護人はいずれも同意したため、証拠として採用された。

○要旨の告知
 甲号証では被害者のaやbの被害届、供述調書、間取り報告書、場所を特定したもの、共犯者の状況などが挙げられた。検察官は被害者両名の被害感情を読み上げた。
・甲40号証(aの被害感情)「私はアステックを名乗る犯人たちに、全部で64万7000円を騙し取られました。最初から嘘の話だと分かっていたら、振り込むことはありませんでした。刑事さんから電話があるまで自分が詐欺に遭ったことに気づきませんでした。私にとって64万円は大金で、このことを正直に話すことができず、母親に迷惑をかけて、父親には隠しています。母親からは勉強になったと諭されるのですが、納得しきれないです。犯人にお金を返して欲しいという気もいまさらありませんが、その分法の厳しい処罰を求めます」
・甲44号証(bの被害感情)「私の場合は「お母さん」と久しぶりに言われたことが嘘を見抜けなかったのだと思います。2年前に主人が亡くなって私だけ話し相手がなく、家族の中で邪魔者になっているのではと最近思っていました。最近あまり話さなくなった孫たちも本当は可愛く思える気持ちは変わっていないのですが、それを知った孫から「おばあちゃん、本当に馬鹿だ」と言われたことは辛くて、何とも悲しくなって泣いてしまいました。このような辛い気持ちは犯人に分かろうはずもありません。私だけでなく、この犯人たちに多くの人が騙されて苦しんでいます。今でも舌をペロって出しているに違いありません。私は犯人たちに反省など求めていません。一刻も早く逮捕して厳しく罰してください」
 乙号証では本件犯行状況についての4名の供述調書や本件被害金を引き出す共犯者の姿が防犯カメラに映し出され、自分たちの犯行であることを認めたことなどが挙げられた。

 21日の審理はここまでの予定だったが、検察官は追起訴があり10月中旬を予定していることを裁判長に伝えた。
 裁判長は追起訴と前回の追起訴分の審理を同時に進めることを3者に伝えて閉廷となった。
 一部の被告人は傍聴席の両親や兄弟に目線を送ったりしていた。
 法廷の側にあるのだろう被告人専用のエレベータがチンとなるまで刑務官とともに並んだあと、法廷を去っていった。

事件概要  被告らは共犯と架空の金融会社の社員を装い、融資の手続き費用などの名目で、愛知県知多市や千葉県船橋市等で銀行口座に振り込ませた金を騙し取ったとされる。
報告者 insectさん


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