裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十一部(単独)
事件番号 平成18年(わ)第5000号等
事件名 詐欺、詐欺未遂
被告名 A、B、C、D
担当判事 平木正洋(裁判長)
その他 書記官:古屋
日付 2007.6.271 内容 判決

 6月27日の午後1時15分の定刻になると、被告人4名が刑務官とともに入廷。裁判官が席につくとともに手錠や腰紐がカチャカチャと外された。被告人4名は髪を短くした軽装の若い男性たち、ヤクザ風の出で立ちであった。
 紳士風の平木裁判官は同様に振り込め詐欺を行ったうえ仲間割れをして死に至らしめた3被告(徳永・角田・宮田各被告)を担当した判事でもある。

−主文−
 被告人Dと被告人Bを懲役4年6月に、被告人Cと被告人Aを懲役5年にそれぞれ処する。未決拘留日数のうち被告人DとCとAには120日を、被告人Bには80日をそれぞれ算入する。

 裁判長は2回主文の説明をした。被告人4名は立ったまま判決を聞いていた。

−認定事実−
 各起訴状記載の通りで取り調べた関係各証拠により認められる。

−量刑の理由−
 本件は被告人4名が他1名と共謀のうえ、警察官や弁護士を装って被害者に電話をかけ、被害者の息子が盗撮事件を起こしたなどと言って示談金名目で金銭を騙し取り、もしくは騙し取ろうとした詐欺、詐欺未遂の事案である。
 4名の犯情だが、振り込め詐欺の動機は金欲しさで酌量の余地はない。
 犯行は振り込め詐欺の手引書に基づいて、携帯電話の調達役、預金通帳の調達役などを決めて行われた。警察官を装い、我が子の窮地を何とかして救いたいという親心につけこんだ卑劣かつ巧妙な犯行である。本件は職業的、組織的に行われており厳しい非難に値する。
 被害額は合計550万円にのぼり、被害者4名は厳重な処罰を望んでいる。本件のような振り込め詐欺は模倣性が強い。
 4名は山本某という氏名不詳者のもとで詐欺の実行者として多くの報酬を得ていた。被告人のAは預金通帳を調達する役割を果たし、山本某に次ぐ金額をもらっている。
 被告人のCは平成17年9月に詐欺などの罪で懲役2年の判決を受け、自戒しなければならないはずなのに執行終了後まもなく実行行為に及んでいる。Cの規範意識は鈍磨していて、刑責は他の実行者に比べて大きい。そうすると判示(4)の犯行が未遂に留まっていることや首謀者の山本某が未だに検挙されていないこと、(1)〜(3)の被害者に合計81万1165円の弁償をして(2)の被害者とは示談が成立して4名を宥恕するに至っていること、Dは母親と叔父が、Cは父親が、Bは母親と叔父が、Aは母親がそれぞれ情状証人として出廷して更生に助力していく旨を述べていることなど酌むべき事情を考慮して、主文の通りの実刑に処するのが相当である。

裁判長「この裁判に不服があるときは、控訴することができます。控訴するときは、今日から14日以内に、東京高等裁判所宛の控訴申立書をこの裁判所に提出すること」

 説諭はなく、刑務官が被告人を拘束して退廷する。その間際に被告人の1人が傍聴席の知り合いに「こんなもんでしょ!」と叫び、刑務官が「やかましい!」と小声で一喝する場面があった。

報告者 insectさん


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