裁判所・部 | 東京地方裁判所・刑事第一部 | ||
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事件番号 | 平成18年合(わ)第681号等 | ||
事件名 | 殺人、詐欺未遂、有印私文書偽造、同行使、詐欺 | ||
被告名 | A | ||
担当判事 | 小坂敏幸(裁判長)松田道別(右陪席)大野貴之(左陪席) | ||
日付 | 2007.6.7 | 内容 | |
傍聴人は、十数人来ていた。被告人が毎回自ら証人尋問を行なっている所為か、この公判は何時もそこそこ人が入る。 検察官は、眼鏡の中年男と、若い男性だった。 被告人は、珍しく(私が見る限り初めて)傍聴席の方に頭を下げ、入廷する。いつものように、白いラインの入った黒いジャージを着ている。黒い髪は短く、くすんだ肌であり、丸顔で頬はこけている。痩せ型の体躯である。眼鏡の奥の目は細く、顔立ちは(私から見れば)全体的に狡猾な印象を与えた。 裁判長たちも入廷する。裁判長は、眼鏡の初老の男性。裁判官は、眼鏡の青年と、眼鏡の髪が後退した中年男性。 A被告の公判は、410号法廷で、10時から開始される筈だった。 しかし、ただ弁護人の姿だけがなかった。大きな眼鏡をかけた初老の男性の弁護人。何処か頼りなく、A被告に引きずられている感さえ抱かせた。前回は、異議を申し立てるよう被告人から強く言われ、困惑しているようにも見えた。その異議は、結局被告人本人の口から述べられたのだったが。弁護人不在に訝っていると、すぐに回答は与えられた。 裁判長「じゃあ、開廷します。それでは、アー、開廷いたしますが、えー、昨日、弁護人の方から、あー、辞任届けの提出がされております。したがって、現在弁護人のない状態になりますので、審理はすることは出来ません。えー、被告人、その場で立ってください」 被告人「はい」 被告人は、被告席の所で立ち上がる。 裁判長「ま、弁護人についてですが、被告人のほうも解任するということで書面を提出したと伺ってますが、それで宜しいんですね」 被告人「はい」 裁判長「はい。そうすると、弁護人の無い状態ということになりますが、国選弁護人の選任を希望するという事ですか?」 被告人「お願いいたします」 被告人は、裁判長に頭を下げる。 裁判長「えー、被告人の視力の関係ですが、視力等は現在ないという事ですか?」 被告人「はい。両方ともございません(頷く)」 裁判長「はい。それでは、えーと、えー、そういう事で、既に期日の指定をしております6月の期日については、これを何れも取り消しをいたします。えー、証人X1、B、X2、それぞれ予定しておりましたけれども、この呼び出しの関係についても検討をいたします。あと、尋問において、既に罷免決定をしていますが、その決定についても取り消しをいたします。期日については、追って決定といたします。弁護人が決まり次第、新興について合議いたします。それでは、被告人は、その場で立って下さい(被告人、座っていたが、立ち上がる)。期日については。追って指定されます」 被告人「はい」 裁判長「それでは、被告人を退廷させてください」 被告人は、手錠と縄をかけられた後、刑務官に促され、頷いて退廷する。 裁判長「それでは、本日の審理を終わります」 5時まで予定されていたのだが、この間、たったの2分だった。 他の傍聴人も、困惑しているようだった。ぶつぶつ言っている傍聴人も居た。 聞いた限りでは、弁護人と被告人、どちらが辞任に積極的だったのかは解らなかった。弁護人が被告人の積極性についていけなくなったのか、それとも被告人の戦略なのだろうか。これまで多少なりとも傍聴した限りでは、どちらもありえるように思えた。 | |||
事件概要 | A被告は共犯と共に、2005年7月29日、保険金目的でフィリピン・バタンガス州の路上で男性社員の首を拳銃で撃ち殺害したとされる。 | ||
報告者 | 相馬さん |