裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第十一部
事件番号 平成18年(わ)第423号等
事件名 二名:身代金目的拐取、拐取者身代金要求、監禁致傷、銃刀砲剣類所持等取締法違反、銃刀砲剣類所持等取締法違反
A:出入国及び難民認定法違反
被告名 AことA’、村上ことB
担当判事 小池勝雅(裁判長)品川しのぶ(右陪席)高原大輔(左陪席)
日付 2007.2.14 内容 追起訴

 B及びA両名に対する第二回公判は、406号法廷で1時30分より開始された。
 共犯者のHは、昨年の初公判で公判が分離され、同年に懲役15年が求刑され10年の判決が下されている。
 開廷前、Aの知人らしき男女が廊下で話をしていた。女性の話によれば、Aは頼れる人だったらしい。面会にはあまり来て欲しそうではなく、行った時には、証人尋問をどうしようか悩んでいたらしい。男性の方は、今日は余罪の認否をするのでは、と相手の女性に答えていた。
 記者席は11席が指定され、6人が座る。
 弁護人は、眼鏡をかけた中年男性と、青年。開廷前、書類に目を通していた。
 傍聴人は、十数名いた。
 Bは、目を細め、体を軽く揺らしながら入廷した。白髪交じりの髪を短く刈っており、浅黒く、口が少しとび出ている。相変わらず、何処か眠たげな表情を浮べていた。外見は実年齢より老けて見える。特に凶悪そうでも無い、ごく普通の容貌の初老に見える男だ。体格は、ややがっしりしている。長袖の黒い服と、白いラインの入ったズボンを着用していた。
 Aは、少し下を向いて入廷した。前回に比べ、やや痩せた様に思える。黒髪を短く刈っており、ややがっしりとした体格。鼻が高く、割と整った顔立ち。眉がやや太く、顎から首筋にかけ、痘痕か吹き出物がある。長袖の黒い上下の服を着用しており、服には、赤いラインと英語のロゴが入っている。イヤホンをつけてもらい、被告席に座る。

裁判長「それでは開廷いたします。追起訴審理を行いますが、先ずは、あのー、A被告の関係で、通訳の事に関して何か裁判所にご希望があると聞いておるんですけど」
弁護人「ええ、あのー、第一回の公判の際に、全部の法廷内の供述を、通訳していただいたんですけど、Aの希望で、Aは殆ど日本語、話せますので、Aが希望した時のみ通訳していただければと思っております。解りましたね?」
A「はい」
弁護人「よろしいですよね、これでね」
A「はい」
裁判長「弁護人の希望として、あのー、検討したんですが、あのー、起訴状の朗読とかですね、あのー、そういう重要な行為についてはですね、通訳を入れたい」
弁護人「ああ、そうですか」
裁判長「その上で、あるいはその、例えば、そのー、ワイヤレスマイクを使って被りますので」
弁護人「そうですね」
裁判長「そこの所はですね、あのー、もし被告人が解るということであれば、あのー、通訳はしない。あのー、解らない所だけ通訳をしていただくという形にしたら良いかと」
弁護人「そうしますと、ご主旨は、起訴状の朗読」
裁判長「起訴状の朗読は被りますので」
弁護人「ああ、起訴状の朗読をしてから通訳していただきたいと。なるほど。それでも結構です」
裁判長「起訴状の朗読は重要なものですので」
弁護人「そうしますと、起訴状の朗読だけその手続きをなさると」
裁判長「はい」
弁護人「冒頭陳述は」
裁判長「冒頭陳述は被りますので、あのー、検察官にゆっくり読んでいただいてですね、もし解らなければ、そこの箇所をですね、通訳していただくと」
弁護人「それでけっこうです」
裁判長「被告人も、ここまでの内容は」
A「わかります」
裁判長「理解できますか?」
A「はい(頷く)」
裁判長「じゃ、両名とも、前に立って下さい」
 被告人両名は、証言台の前に立つ。
裁判長「えーと、前回はね、かなり前に審理しましたけれども、前回の審理の状況は覚えていますか?」
A「はい」
 通訳入る。
裁判長「解ります?」
A「はい」
裁判長「で、前回までに審理をしなかった部分、起訴されたね、9月の12日、10月の13日、11月の20日、12月の20日、二人とも四回に渡って起訴をされていますけれども、それぞれの起訴状は受け取っていますか?」
A「はい」
裁判長「えーと、今日はね、この残った事件について審理いたします。A被告も、解りましたね」
A「解ります」
裁判長「それで、ちょっと聞きます。A被告の関係でちょっと確認させていただきますが、あの、千葉の事件については本日審理できるけれども、あの、静岡の事件と埼玉の事件については、まだ打ち合わせ未了と」
Aの弁護人「あのー、第一回公判の際に、えー、まあ12月に一回期日を入れて、到底間に合わないという事で2月に延ばしていただいてるんですけども、予定では、12月中に本人は戻ってきて、1月いっぱい十分打ち合わせの上、二月の今日に臨む、という予定でしたけれども、実際に被告人が拘置所に戻ったのが2月1日でございまして、私どもも、その後その、接見があんまり出来ない状態でして、今日は千葉の事件につき、かつ、その検察官立証という事でお願いします」
裁判長「それで、えーと、B被告の関係は、四件の起訴事実のすべて認否も出来る状態と承っていますが」
Bの弁護人「可能は可能です」
裁判長「ま、合被告の関係の審理もありますので、裁判所としては共通に審理をしていった方がよろしいんではという風に思っていまして」
弁護人「あの、それは構わないんですけども」
裁判長「はい」
弁護人「あの、未決勾留日数の事も考えていただきたいと」
裁判長「それは当然。では、今日は、二通の千葉に関する審理という事でよろしいですね」
弁護人「はい」
裁判長「B被告、解りましたね」
B「はい」
裁判長「あのー、四回起訴されていますけれども、今日はね、その内の千葉の事件についてのみ審理します」
B「はい」
裁判長「A被告も解りますか?」
A「解ります」
裁判長「はい。じゃあね、検察官に起訴状を朗読してもらいます」
検察官「すみません、起訴状ですが、起訴状の朗読の方は二通のみでよろしいですか」
裁判長「はい」

○平成18年9月12日付起訴状
 公訴事実
 被告人両名は、C及びGと共謀の上、金品を強取しようと企て、平成18年2月3日午後0時15分頃、千葉県船橋市高勢町二番地三所在の千葉サッポロビール園南側駐車場において、同所に駐車中の現金輸送車に現金を搬入中の、株式会社朝日セキュリティ警備員c当時57年及び、同会社警備員d当時33年に対し、所携の自動装填式拳銃の銃口を向け、それぞれの腹部、背部等に所携の刃物を突きつけながら、「静かにしろ、動くな、鍵を開けろ、早くしろ」等と語気鋭く申し向け、同人の背部を前記刃物で一回突き刺すなどの暴行脅迫を加え、同人及び前記cの反抗を抑圧した上、前記現金輸送車内から、前記会社代表取締役e管理にかかる、現金1913万7123円在中のバッグ26個他九点、時価合計約17万6200円相当を強取し、その際、前期暴行により、前期dに全治約2週間を要する背部刺創の傷害を負わせたものである。
罪名及び罰条:強盗致傷、刑法第240条前段、第60条

裁判長「通訳やりましょう」
通訳が入る。
裁判長「黙秘権があるという事は覚えていますね」
Aは、頷いた。
B「はい(頷く)」
裁判長「改めて説明しないでよろしいですか」
B「はい」
裁判長「まず、A被告に確認しますが、今検察官が読み上げた起訴事実とどこか違う点はありますか?」
A「間違いないです」
裁判長「間違いないと聞いてよろしいですか。B被告はどうですか?」
B「間違いないです」
裁判長「A被告の関係で聞きますけど」
Aの弁護人「被告人と同意見です」
裁判長「B被告の関係は」
Bの弁護人「被告人と同様です」
裁判長「では、朗読をお願いします」
検察官「はい」

○平成18年10月13日付け起訴状
 公訴事実
 被告人両名は、Cと共謀の上、金品を強取しようと企て、平成18年2月20日午前2時17分頃、千葉県船橋市本町7丁目27番27号所在の株式会社国際ARGビーナス船橋店従業員専用入り口付近において、同店従業員f当時31年及び同店従業員g当時23年に対し、両名の両手等を所携の刃物で切りつけ、前記fの頭部を所携の自動装填指揮拳銃で数回殴打し、さらに前記f及び前記gの頭部等に前記拳銃及び前記刃物を突きつけながら、「鍵を開けろ、鍵を開けないと殺すぞ」等と語気鋭く申し向ける等の暴行脅迫を加え、両名の反抗を抑圧した上、前記f所有または管理にかかる現金約1万5千500円及びキャッシュカード三枚他5点在中の財布一個、時価約3000円相当を強取し、その際第一・前記暴行により、前記fに加療約10日間を要する頭部、左手、右手切創等の傷害を負わせ第二・前記暴行により、前記gに、全治約7日間を要する左手、頭部切創の傷害を負わせたものである。
罪名及び罰条:強盗致傷、刑法第240条前段、第60条
 以上の事実について審理願います。

 通訳が入る
裁判長「A被告に聞きますが、今の起訴状について、何か違っている所はありますか?」
A「間違いありません」
裁判長「B被告は?」
B「間違いないです」
裁判長「Aの弁護人は」
Aの弁護人「被告人と同意見です」
裁判長「Bの弁護人は」
Bの弁護人「被告人と同様です」
裁判長「それじゃあ、それぞれもとの席に戻ってください」
被告人両名は、被告席に座る。
裁判長「それでは、A被告ね、あのー、貴方が通訳がいらないっていうので、こっからはね、原則として通訳入れませんけど、もし解らない所があったら、遠慮なく手を上げて指摘してください。そこだけ通訳を入れますので」
A「はい」
裁判長「それでは、検察官に冒頭陳述をしていただきますけども、そういうわけで、あのー、少しゆっくり目に話してください」
検察官「はい」

−冒頭陳述−
 それでは、検察官が証拠のより証明しようとする事実について述べさせていただきます。
 先ず、第一に、犯行に至る経緯等であります。

○犯行に至る経緯等
 被告人AことA’及び被告人村上ことBは、前回の冒頭陳述にもありましたように、平成18年1月頃、当時Bが居住しておりました岩手県内のアパートで共同生活をしていたところ、Bと親交のあった暴力団構成員の小林こと青木学から、拳銃取引に絡む揉め事を起こしたという事で、C及びその妻のGらを預かって見張ってほしいと依頼され、以後C及びGと行動を共にするようになりました。
 被告人両名は、先ほど言ったアパートにおきまして、Cや青木から、C夫妻がこれまでに何度も強盗を繰り返してお金を得ており、Gの元勤務先の千葉県内のパチンコ店を襲って現金を奪う計画を立てている事等を聞きました。Aはかねてより、中国で借金をして日本に来ていた事から、日本で大金を得て中国に帰りたいとの思いを抱いていたという事情があるうえ、自らが不法残留の状態でいつ捕まるか解らないので、短期間で大金を得るために強盗をしたいと思っており、また、Bも、生活保護を受けており金に困っていた事から、被告人両名は、先ほど言いましたようなC夫妻の強盗の話を聞いて、同夫妻と共に強盗をする事を決意しました。
 そこで、被告人両名及びC夫妻は、同年1月21日頃、先ほど言いましたアパートを出発し、強盗をするために千葉方面に向かいました。その際、Aは、強盗で使用するために、前回の冒頭陳述で述べたとおりの、青木から譲り受けたサイレンサー付マカロフ形自動装填式拳銃一丁、本件拳銃と言いますが、これ及び適合実包を持っていく事にしました。

裁判長「A被告、ここまでは大丈夫ですか?」
A「大丈夫です」

○第二・平成18年9月12日付起訴状記載の公訴事実に関する犯行状況等
1・共謀の状況等
 被告人両名及びC夫妻は、平成18年1月22日頃、千葉県流山市内のC夫妻方において、Gの元勤務先である千葉県船橋市所在のパチンコ店である株式会社国際ARBビーナス船橋店から最後に退店する従業員を襲って、この店の出入り口や金庫の鍵を開けさせ、店の売上金を奪うという計画を立て、1月23日頃、この計画を実行するため、当地に赴いたものでありますが、多数の従業員が店から一斉に出てきたため、強盗の実行を中止しました。
 その頃、Cは、以前からJR船橋駅付近でしばしば現金輸送車を見かけていた事から、被告人両名に対して、現金輸送車を襲えばパチンコより金になる、という風に言い、これを受けて、被告人両名及びC夫妻は、現金輸送車を襲って現金を奪う方法を採用する事とし、その頃から現金輸送車の様子の下見や尾行等を重ね、その車の走行経路や警備状況等を確認する等して、犯行の具体的方法についても謀議を重ねました。
 その結果、被告人両名及びC夫妻は、強盗の手口及び役割分担等について、他社と比べて比較的警備が手薄に見えた株式会社アサヒセキュリティの現金輸送車を襲う事とし、その場所は海に面し、車の交通量も殆どなく、人に見られにくい船橋市所在の千葉サッポロビール園の駐車場とする事、被告人両名及び恭一が実行犯となって駐車場付近で現金輸送車を待ち伏せし、Aは本件拳銃を、B及びCは包丁二丁をそれぞれ用いて、現金輸送車の警備員を襲って現金を奪う、Gは現金輸送車の進路の事前確認や犯行後の逃走用車両の運転手役する事、こういった事を決めました。
 そして、被告人両名及びC夫妻は、2月2日、計画通り強盗を実行するため、被告人両名及びCにおいて、千葉サッポロビール園付近で現金輸送車を待ち伏せしましたが、現金輸送車が表れなかった事から強盗を実行する事ができず、翌日の2月3日に強盗を再度実行することにしました。

2・犯行状況等
 平成18年2月3日、被告人両名及びCは、ワンボックス車に乗車して、千葉サッポロビール園付近で現金輸送車を待ち伏せしました。一方Gは、本件現金輸送車が千葉サッポロビール園方面に向かうのを確認して、それを被告人両名及びCに伝え、自らは同所付近のショッピングセンターの立体駐車場において、逃走用車両に乗車して待っていました。
 その後、本件の現金輸送車が千葉サッポロビール園南側駐車場に到着したため、被告人両名及びCは、ワンボックス車を本件現金輸送車付近まで移動させ、警備員らが千葉サッポロビール園から本件現金輸送車に現金を積み込む作業を始めるのを待ちました。
 すると、この日の午後0時15分ごろに、株式会社アサヒセキュリティの警備員のc及びdの両名が現金の積み込み作業のために本件現金輸送車に戻ってきた事から、被告人両名及びCは、あらかじめ用意してあった目だし帽を被り、Aが本件拳銃を、B及びCが包丁をそれぞれ持ってワンボックス車から降車し、Aはc及びdに本件拳銃の銃口を向け、Cがcに包丁を突きつけ、Bがdに包丁を突きつけ、それぞれが「静かにしろ、動くな、鍵を開けろ、早くしろ」などといって、更にBがdの背中を包丁で突き刺すなどし、c及びdの反抗を出来ないようにした上、この両名に本件現金輸送車の金庫室の鍵を開けさせ、車内から、現金1913万7123円が入ったバッグ等を取り出し、ワンボックス車に積み込んでこれを強取し、公訴事実記載の犯行に及んだものであります。dにつきましては、先ほど述べたような暴行によりまして、全治約二週間を要する背部刺創の傷害を負いました。
 その後でありますが、被告人両名及びCは、現金等をワンボックス車に詰み込んだ後、同車に乗車してその場から逃走し、走行中の車内で用意したスポーツバッグに強取した現金を詰め込みながら、Gが待機する立体駐車場に向かい、その駐車場において、スポーツバッグに詰め込んだ現金を逃走用の車両に積み替えて、この逃走用車両に乗車して逃走し、ワンボックス車はその場所に放置しました。その際、被告人両名及びC夫妻は、強取した現金のうち、スポーツバッグに入りきらなかった約756万円をワンボックス車内に放置しておりました。
 被告人両名及びC夫妻は、C夫妻方において強取した現金を分配いたしまして、被告人両名がそれぞれ360万ないし365万円程度、C夫妻が二人で、420万円ないし440万円程度を得たものであります。

裁判長「ここまでは解りますか?」
A「はい(頷く)」
裁判長「では、どうぞ」

○第三・平成18年10月13日付起訴状記載の公訴事実
1・共謀状況等
 被告人両名及びCは、先ほど言った千葉サッポロビール園の駐車場での強盗の際、現金輸送車を襲えば少なくとも1億円程度の現金を奪えると考えていた所、実際にこの強盗の実行によって得る事が出来た現金が思いのほか少なかった事から、引き続き一攫千金を狙い、先ほどの強盗の実行の直後から、以前計画して実行を中止していたビーナス船橋店での強盗の計画を再び実行することにしました。その方法として、三名とも目だし帽で覆面をして、この店から最後に退店をする従業員を挟み撃ちにして襲い、本件拳銃や包丁で脅して、店の出入り口の鍵や金庫の鍵を開けさせ、店の売上金を奪うことを決めました。
 強盗の際に使用するために、千葉サッポロビール園駐車場での強盗の際にも使用した本件拳銃や包丁二本の他、目だし帽や従業員を縛るためのプラスティック製の結束バンド等の道具を準備しました。
 その頃、被告人両名は、ビーナス船橋店での強盗の計画とは別に、前回の冒頭陳述でも述べましたように、Cから、著名な美容整形医bさんの娘を誘拐して身代金を手に入れるという計画を聞かされ、Cとともに、bさん方付近を下見する等したものでありますが、その池田さんの娘の顔すら知らないという状況で、身代金誘拐計画を実行に移せる段階ではないという話になりまして、この計画はいったん立ち消えとなりました。
 そこで、被告人両名及びCは、再びビーナス船橋店での強盗事件を進める事とし、平成18年2月13日頃、強盗の実行のためにビーナス船橋店付近に赴いたのでありますが、店から出てきた従業員が、待ち伏せた場所とは別の方向に進んだりした為、強盗の実行には至らず、2月20日に再びこの店に赴いて強盗を実行する事にしました。なお、Gにつきましては、千葉サッポロビール園駐車場での強盗の後、新たな強盗の計画や準備に加わるのを嫌がったことから、ビーナス船橋店での強盗には参加しないことになっています。

2・犯行状況等
 平成18年2月20日、被告人両名及びCは、目だし帽を被り、Aが本件拳銃を、B及びCが包丁をそれぞれ持って、ビーナス船橋店付近の駐車場において、この店の様子を伺いつつ、店から退店する従業員を待ち伏せました。
 そして、この日の午前2時17分ごろ、その夜店を最後に退店する従業員になりましたfさん及びgさんが同店従業員用出口から出てくると、目だし帽を被り包丁を持ったBがfさん及びgさんに近づいて、それに気付いた同人らが反対方向に逃げ出すや、その進路をC及びAが塞ぎ、Cがfさん及びgさんの両手等を包丁で切りつけ、Aがfさんの頭部を本件拳銃で数回殴打する等しました。更に、被告人両名及びCは、fさん及びgさんの頭部等に本件拳銃及び包丁を突きつけながら、それぞれ「鍵を開けろ、鍵を開けないと殺すぞ」等と強い口調で申し向けて、その反抗を出来ないようにし、fさん及びgさんに、同店従業員用出入り口の鍵を開けさせようとしました。
 それに対し、fさんから、「勝手に開けると警備会社に連絡が行って警備員が来る」等と言われた事から、fさんに命じて警備会社に電話をかけさせ、警備システムを解除させようとしましたが、相手の警備会社からは、この会社の立会いなしに警備システムを解除する事はできない、と言われました。そして、被告人両名及びCは、警備員が到着する前に店の中に進入して売上金を強取しようとして、fさんに店の従業員用出入り口の鍵をあけるように命じたところ、fさんが、鍵をなくしたと申し立てたため、付近の場所を調べるなどして鍵を探しましたが、鍵を発見する事はできず、その際Cは、gさんの両手を先ほど言いました、プラスティック製結束用バンドで縛り付ける等しました。
 また、Cは、fさんの衣服のポケットの中に手を入れたりして鍵を探す中で、fさんのズボンのポケットの中に入っていた現金一万5200円及びキャッシュカード等が入っていた財布を発見し、これを取り出して自分のズボンのポケットに入れて強取し、公訴事実記載の犯行に及んだものであります。
 先ほど述べましたような暴行によりまして、fさんは加療約10日間を要する頭部左手右手切創等の傷害を、gさんは全治約7日間を要する大腿部頭部切創等の傷害をそれぞれ負ったものであります。
 被告人両名及びCは、店の従業員用出入り口の鍵が見つからない上、サイレンの音が聞こえ、誰かが警察に通報したのではないかと考えて、この犯行現場から逃走しました。
そして、先ほど言いました、奪った金品のうち、現金約1万5500円は全額をCが取得し、財布等は廃棄したものであります。
 その他情状等であります。

裁判長「A被告、ここまで解りますか?」
A「はい」

 以上の事実を立証するため、証拠等関係カード記載の各書証を請求いたします。

裁判長「えーと、甲号証が75から147、乙号証が48から62までですが、弁護人のご意見を伺いますが、まずA被告の関係ではいかがなさいますか?」
Aの弁護人「A被告の関係で、検察官提出証拠については全て同意いたします。ただ、一言申し上げます。昨年の冒頭陳述によりますと、Aが主犯であるという認識を検察官はお持ちではないと思われますけれども、今回提出された検察官証拠の中には、Aが主犯であるかのような供述が随所に見られます。それらの供述に付きましては、この証拠意見に書きましたとおり、信用性がないと考えておりますので、その点ご了解ください。以上です」
裁判長「具体的に採用されている部分について信用性を争うという事ではない?」
Aの弁護人「ええ、あのー、証拠意見書は簡単な部分でですね、あのー、主な所を拾いましたので、主旨は、Aが中心、主犯であるという供述の内の一部という趣旨でございます。それで、主な細かいものを挙げたつもりです。それが信用できないという理由はそれに書かれたとおりです」
裁判長「具体的に挙がっているものについては、信用性を争うか書けるんですけども、その他の部分についてはですね、必ずしも裁判所で中身を吟味してというわけにはまいりませんので」
Aの弁護人「結局は中心の部分がありますので、その信用性が無いとなれば、その余の付随部分で信用性が認められる事は無いと思いますので」
裁判長「とりあえず、ここにあるものだけでよろしいですか?」
Aの弁護人「はい、結構です。信用性を争うという主旨で」
裁判長「B被告の関係では、いかがでしょうか?」
Bの弁護人「全て同意します」
裁判長「じゃ、全て採用して取り調べをいたします。あの、A被告は、証拠の内容について、これから検察官が説明をしますけれども、この部分についてはね、あのー、一応通訳は入れないようにします。で、あのー、ま、先ほどのようにね、少しゆっくり目にね、あのー、要旨を告げてもらいますから、解らない箇所があったら早めに言ってください」
A「解りました」
裁判長「じゃ、要旨を読んでください」

○要旨の告知
・甲75号証は、捜索差し押さえ調書についての訂正の報告書でございます。以前に甲58号証として提出しました捜索差し押さえ報告書に誤記がありましたのでその訂正でございます。
・甲76号証は、前回審理いたしました渋谷の身代金拐取等の事件について、それについての新聞記事報道の写しを添付し、報告した捜査報告書でございます。
・甲77号証は、被害者でありますc作成の被害届謄本でございます。
・甲78号証は、その被害金品の内容等に付きまして詳しく記載しました捜査報告書でございます。
・甲79号証は、被害金品の管理者について、株式会社アサヒセキュリティ代表取締役eであると明らかにした捜査報告書であります。
・甲80号証は、被害者cの検察官に対する供述調書謄本でございます。内容につきましては冒頭陳述記載の通りでございます。逃走しようとした時、背後から拳銃の発砲音を聞いた、とも供述しております。
・甲81号証は、同じく被害者でありますdの検察官に対する供述調書謄本であります。被害状況につきまして、冒頭陳述記載と同じ内容を述べております。
・甲82号証は、被害者cが被害にあった状況を再現し、それを調書に添付した実況見分調書であります。
・甲83号証は、被害者dの方の診断書を添付し報告した捜査報告書でございます。dの傷害の状況が明らかになっております。
・甲84号証は、被害者の怪我の状況を写真で撮影して報告した写真撮影報告書であります。被害者dにかかる報告であります。
・甲85号証は、被害者が本件当時着用していました衣服の破損状況につきまして、写真で撮影して報告した実況見分調書でございます。
・甲86号証は、被害者が本件犯行当時着用しておりました防弾ベルトの状況を写真で撮影して報告した実況見分調書であります。
・甲87号証は、本件犯行当時被害者が持っておりましたタオルに血痕が付着しておりまして、その状況について写真等で報告した実況見分調書でございます。
・甲88号証は、cの全身、被害当時の服装等を写真撮影して報告した写真撮影報告書であります。
・甲89号証は、被告人らの着用していた衣服、それから手袋等について、写真撮影して報告した写真撮影報告書であります。
・甲90号証は、本件犯行で使用しました包丁、それから本件拳銃を写真で撮影しそれを報告した写真撮影報告書であります。
・甲91号証は、本件犯行現場について明らかにしました実況見分調書であります。
・甲92号証は、本件で襲われました現金輸送車につきましてその状況を明らかにした実況見分調書でございます。
・甲93号証は、被告人らが犯行後犯行車両をショッピングセンターに放置して逃走しましたので、その放置した車両についてその状況を明らかにした実況見分調書でございます。
・甲94号証は、そのショッピングセンターの駐車場に被告人らが放置した本件犯行使用車両の中に、色々積載物がございました。その中には現金等もございました。その積載物などの状況について写真で撮影する等して明らかにした実況見分調書でございます。
・甲95号証は、被告人らがショッピングセンターの駐車場に放置しました犯行使用車両に、そのまま積載されておりました現金の総額が、755万9073円、それから車両のすぐ下で発見された現金が1050円という事を明らかにした捜査報告書であります。
・甲96号証は、本件犯行使用車両に装着されておりましたナンバープレートの状況を明らかにした実況見分調書であります。
・甲97号証は、本件犯行を目撃したナカタ・コウジの供述調書でございます。犯行目撃状況について明らかにしております。
・甲98号証は、被告人らが逃走する際にその逃走する車両の状況を目撃したヒガシ・ショウイチロウの供述調書でございます。
・甲99号証は、共犯者Cの関係者でありますヒグチ・ミチオの供述調書でありまして、本件犯行使用車両について、本件犯行前から所有していたことについて供述しています。
・甲100号証は、これまで別件においてCらとともに強盗を起こしておりました滝沢利治の供述調書でございます。Cから本件犯行について聞いたことがある、その状況について供述しております。
・甲101号証は、被告人Aの関係者でありますコウ・ベクシなる女性の供述調書であります。被告人Aから、犯行後、正確に言うと、沼津の事件では犯行後になりますが、お金を貰った。そして、中国に金を送りたいという事で、金を更に貰った。先ず50万円自分に金を貰った。それから、200万円中国に送金してくれと頼まれて、Aからお金を貰った、というような供述しています。
・甲102号証は、本件拳銃をAが入手する前に、青木、それからCらが関わっておりまして、その拳銃入手にCらと共に関わった、ヨコタ・メグミの検察官に対する供述調書であります。拳銃入手状況について供述しております。
・甲103号証ないし107号証は、共犯者であるCの供述調書であります。今申し上げたように、本件拳銃を入手する際、青木との間で色々Cも関わっておりまして、その際のトラブルが起きました。その際の状況、それから、Aの下に本件拳銃が渡った状況。それから、被告人A、それからBと共に千葉で強盗をしようというように決意するに至った状況。それから本件犯行を下見する等してA、Bらとともに計画した状況、共謀状況、それから本件犯行の状況等について、まとめて供述しております。
・甲107号証は、逃走後の状況、強取金をそれぞれ分配した状況についても、冒頭陳述記載の通りに供述しております。
・甲108号証ないし111号証は、共犯者Gの供述調書でございます。同じく、本件拳銃をAが入手するまでに至るまでの状況。それから、A、Bと知り合った状況。千葉で強盗しようとA、B、Cらと決意するに至った状況。それから犯行に至るまでの共謀状況。更には犯行時現金輸送車の行動状況を自分がCらに伝えて、そして、逃走のために車両をショッピングセンターの駐車場で待っていた状況について供述しています。
・甲112号証は、被告人Bが本件関係場所につきまして引き当たり捜査を行いましたので、その状況に関する引き当たり捜査報告書であります。
・甲113号証は、被告人Aが引き当たり捜査を行いましたので、その引き当り捜査報告書でございます。
・甲114号証は、被告人Aが、本件犯行の状況に付きまして、再現して、それを写真で撮影して報告した実況見分調書でございます。犯行時に拳銃を構えた状況、それから発射した等という状況に関しても再現をしております。

裁判長「ここまで」
検察官「はい」
裁判長「A被告人、よろしいですか」
A「はい」
 Aは、頷いた。下を向いている。
裁判長「じゃ、次に行ってください」

・甲115号証は、被害者f作成の被害届でございます。
・甲116号証は、その訂正部分につきまして、印鑑ではなく指印で訂正したという報告書であります。
・甲117号証は、被害者fの警察官に対する供述調書でありまして、本件被害状況について冒頭陳述記載の通りの供述をしております。
・甲118号証は、以前に実況見分での説明に訂正がありまして、その訂正について補充で追加した検察官に対するfの供述調書であります。
・甲119号証は、被害者gの供述調書でございます。gについても、冒頭陳述記載の通り供述しております。
・甲120号証は、同じく以前にしました現場での指示説明につきまして訂正しました検察官に対するgの供述調書であります。
・甲121号証は、被害者fにかかる診断書を添付いたしました、診断書入手報告書でございまして、怪我の状況が明らかになっております。
・甲122号証は、被害者gについての診断書を添付いたしました、診断書入手報告書でございます。gの怪我の状況が明らかになっております
・甲123号証は、本件被害者の被害直後の写真をカラーで撮影したものでございます。おびただしい流血の状況が明らかになっております。
・甲124号証でありますが、本件被害当時に被害者が着用していた服装などについて、写真で撮影しました。そして、被害者が負傷した部位を、これも写真で撮影し、添付した報告書であります(f)。
・甲125号証は、gについて、全身、被害当時の服装、被害者の負傷部位について写真撮影し報告した写真撮影報告書であります。
・甲126号証は、fに関して被害当時の所持品を写真撮影し報告した写真撮影報告書であります。
・甲127号証は、gに関して被害当時の所持品を写真撮影し報告した写真撮影報告書であります。
・甲128号証は、本件犯行後、防犯対策費用としてどれだけ要したかについて捜査した結果の報告書であります。合計で69万9000円程度要した事が明らかになっております。
・甲129号証でありますが、被告人らは、本件犯行時サイレンの音が鳴った、そのサイレンの音で誰かが警察に通報したかもしれないと思って逃走した、等と供述しておりまして、その裏付けに関する聴取結果捜査報告書であります。本件の発生時間帯におきまして、サイレンを鳴らして出動した消防車等の情報について明らかにした報告書でございます。
・甲130号証は、本件犯行現場の状況を明らかにした実況見分調書でございます。

・甲131号証は、被害者らが被害状況について動作で再現して、その状況を写真で撮影して報告した実況見分調書でございます。
・甲132号証でありますが、被告人らの遺留品を本件犯行現場で発見しましたので、その領知経過報告書であります。
・甲133号証でありますが、被告人らが犯行現場で遺留した物の中に、プラスティック製の結束バンド、被害者の手首等を本件犯行において緊縛した際に遣った物が発見された、という事についての報告書であります。
・甲134号証は、被害現場で発見されたプラスティック製の結束バンドなどに付きまして、Cに提示しておりますので、その状況を写真撮影して報告した証拠品提示状況報告書でございます。
・甲135号証は、本件犯行時に被告人らは目だし帽を使用しておりまして、その目だし帽を購入したと被告人らが供述している店に赴きまして、その販売状況について裏付けが取れましたのでその捜査報告書であります。
・甲136号証でありますが、本件犯行に使用されたレンタカーにつきまして、レンタカーを借りた状況について裏付けが取れましたので、その裏付け捜査報告書であります。
・甲137号証は、先ほどもありました滝沢利治が、CからAやBと共に強盗をやってるんだというような話を聞いたと供述しております。その供述調書であります。
・甲138号証は、Gの供述調書であります。Gにつきましては、このビーナス船橋店の強盗については、共犯者となるのを拒否して共犯者となっておりませんが、冒頭陳述記載のとおり、1月の時点で以前に勤めていたパチンコビーナス船橋店の図面を書いて被告人らに教えたという事がありまして、その際の状況について供述しております。
・甲139〜145号証は、共犯者Cの調書であります。本件に付きましても、被告人らと一攫千金を狙った。そして、本件犯行を共謀し、その途中でいったん渋谷のbさんの娘の誘拐計画を実行しようと下見をした時期もありましたが、その後、やはりパチンコビーナス船橋店での強盗を実行しようという事になって、本件に至った、と供述しております。冒頭陳述記載の通り犯行について認めております。
・甲146号証は、被告人Bの本件関係場所の引き当たり捜査報告書でございます。
・甲147号証は、被告人Aの関係場所の引き当たり捜査報告書でございます。

裁判長「じゃ、先ず提出してください。A被告は、ここまでは解りますか」
A「はい」
 Aは、体を前に倒すような感じで頷いた。
裁判長「では」

・乙49〜50号証は、被告人Bの検察官に対する供述調書でありまして、全体にかかるものでありますが、被告人Aらと知り合った状況、本件拳銃について被告人Aが入手した状況について供述しております。
・乙51〜54号証は、被告人Aの、9月12日付起訴にかかる犯行状況等につきましての検察官に対する供述調書でございます。犯行に至る経緯、犯行状況、それからその後の強取金の分配状況等につきまして、冒頭陳述記載の通りの供述をしております。
・乙55〜56号証は、被告人Aの検察官に対する供述調書でありまして、被告人Bらと知り合った経緯、それから、本件拳銃を青木から入手した状況等につきまして供述しております。
・乙57号証〜60号証は、本件9月12日付起訴にかかるAの犯行状況、犯行に至る経緯、犯行後の状況につきましての供述調書でございます。冒頭陳述記載の通りの本件犯行を認めております。なお、Aとしては、警備員の一人が逃走しようとしたので、その際、威嚇のために拳銃一発を発射した、等と供述しております。
・乙61〜63号証は、被告人Bの供述調書でございます。犯行に至る経緯、犯行状況、それから犯行後の状況につきまして、冒頭陳述記載の通り、本件犯行を認めております。結局、本件ビーナスで、鍵がないという事で被害者が申し立てて、中に入れなかったのでありますが、その鍵につきましては、犯行後、アパートに戻った後にCのポケットの中に入っていた事が判明したと供述されております。
・乙64〜66号証が、被告人Aの10月13日付け起訴にかかる犯行に至る経緯、犯行状況、犯行後の状況についての調書でございます。冒頭陳述記載の通り本件犯行を認めております。

検察官「立証主旨の拡張を一部お願いします」
裁判長「提出してください。・・・・・どういう事でしょうか」
検察官「前回証拠請求済みの甲58号証ないし63号証までを、実包と拳銃関係でございますが、本件9月12日付さらに10月13日付前の供述にも立証趣旨を拡張したいので請求いたします」
裁判長「58から63までですか」
検察官「はい、その中で、あの、59ないし62は、現在の所、8月9日付第一起訴事実のみになっておりますが、これに付きましても、7月27日付前の事実まで拡張したいと考えています」
裁判長「そうすると、簡単に言われるとね、61から63は」
検察官「はい」
裁判長「7月27日付前と8月9日付の第一」
検察官「はい」
裁判長「それから、えーと、9月11日付の前ですかね、10月13日付の全ての事実と」
検察官「はい」
裁判長「これに立証趣旨を拡張したいと」
検察官「はい」
裁判長「そういう事でしょうか?」
検察官「はい、はい」
裁判長「弁護人、よろしいでしょうか?」
弁護人「今のは、あの、59は7月27日にも拡張するとおっしゃいましたか?」
検察官「まあ、拳銃の関係でございますので、はい」
弁護人「とすると、全部四件とも58から63の四件になる、そういう趣旨」
検察官「そうですね、はい」
裁判長「よろしいですか?」
弁護人「はい」
裁判長「じゃ、許可いたします。それで、検察官のほうに、まあ、お願いをしておきますけども、今日の証拠の内容を見てもですね、かなりいらない証拠があるのではと思われますので、できるだけ絞って証拠請求をする形にしていただけますか?」
検察官「わかりました」
裁判長「とすると、今日はまあ、この程度の事になるかな、と思えますけれども、次回ですけども、残りました11月20日と11月22日付の追起訴状の審理を行って、その後、何事もなければ、まあ併合したまんまで進めるという事になりますけれども、その際、今日は1時間ぐらいで終わってるんですけども、次回、予定では二時間時間を取っておりまして、その後、弁護人の立証には移れますでしょうか?」
弁護人「大体1時間程度見てもらいたい。同意した場合ですね(笑)」
裁判長「そうですか」
弁護人「相違するかどうか解らない(笑)」
検察官「次回ですけれども、少ないんで、今日ほどはかからないんではないかと。静岡は二冊、埼玉は1冊の合計三冊です」
弁護人「起訴状の朗読もないんで、今日ほどはかからないんではないかと」
検察官「朗読はある」
弁護人「ああ」
裁判長「まあ1時間ぐらいあまる事になりますけれども、B被告の立証は考えていただけますか?」
Bの弁護人「田舎に居るお母さんが出てこれるか解らない事もあって、情状証人お願いするかも知れないけれど、無理かも知れないという事はあるんですけれども、情状証拠としては・・・・」
裁判長「まあ、あの、場合によっては証人を呼ぶ必要はあると思うんですけど、被告人質問にもし入れるんであれば、入っていただきたい」
Bの弁護人「解りました。ところで、被告人質問はやっぱり今日と同じように通訳なしで行うという事になるのですか?」
裁判長「A被告が解らないところでは通訳をしていただきますけれども、解る範囲では通訳をなしにしてもらいたい」
Bの弁護人「解りました」
裁判長「じゃ、次回の期日にですね、最終的にどういう形での審理をするのか、次回は何れにせよ終わらないと思いますので、決めたいと思います。次回の日は既に予定をとらせていただきましたけれども、3月の15日木曜日の午前10時という事でよろしいですね」
弁護人「はい」
裁判長「最後までの審理状況は、次回期日を見て決めると。じゃ、両名とも前に立ってください」
 被告人両名は、証言台の前に立つ。
裁判長「えっと、A被告、今日は通訳なしでね、行いましたけども、大体理解は出来ていますね」
A「はい」
裁判長「はい、それではね、次回には今日積み残したね、二件の起訴状について審理をします。その上で時間があまればね、B被告に関する、ま、反証と言いますかね、被告人質問あるいは情状証人に入ります。そういう段取りです。解りましたね」
B「はい」
裁判長「次回はですね、3月15日木曜日の午前10時です。解りましたね?」
 被告人両名は頷いた。
裁判長「では、この時に出廷してください」

 2時33分に、公判は終わった。五時まで予定されていた。
 Aは、公判の間、ずっと下を向いていた。Bは、おおむね前を向いていた。二人とも、傍聴席の方に目をやることなく退廷した。
 記者は、公判の途中で殆どが退廷していた。

 閉廷後、Aの関係者らしき女性はAについて「痩せましたね」と、同じく関係者らしき男性に話していた。男性は「痩せていたね」と答えていた。その後、二人は、Aの弁護人と休憩室で何か打ち合わせをしているようだった。

事件概要  被告達は、他の被告と共に以下の犯罪を犯したとされる。
1:2006年2月3日、千葉県船橋市のビール園で従業員に傷を負わせ、約1900万円を奪った。
2:2006年2月20日、千葉県船橋市のパチンコ店で従業員に傷を負わせ、1万5500円等を奪った。
3:2006年6月26日、身代金目的で東京都渋谷区の路上で女子大生を誘拐し、女子大生の実母に身代金を要求した。
報告者 相馬さん


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