裁判所・部 東京地方裁判所・刑事第二部
事件番号 平成16年合(わ)第354号
事件名 銃刀法違反等
被告名 熊谷徳久
担当判事 毛利晴光(裁判長)
日付 2005.10.17 内容 証人尋問

 この日は、午前十時から公判が行われた。
 検察官は、眼鏡にスーツ姿の三十代ぐらいの男性二名。
 弁護人は、眼鏡をかけた黒いスーツを着た三十代ぐらいの男性と、髪を後ろに撫で付けた、灰色のスーツを着た六十代ぐらいの男性。
 傍聴人は十数名いた。
 被告は、スキンヘッドで、ノーネクタイの黒いスーツ姿。サンダル履き。やや小柄だが、六十代の男性では標準かもしれない。少し目尻が下がっている。

 本日、裁判所の構成が変わり、更新された。そして、鑑定書の取調べを行うことになった。検察、弁護人双方とも同意する。

裁判長「被告人、内容についてここで紹介しないでもいいね」
被告「はい」

 弁護人は鑑定について証人尋問を請求。検事は請求せず。弁護人の請求趣旨を問う。弁護人は、内容は争わないらしい。3〜40分、証人尋問の時間を与えられる。そして、採用された。
 証人は、F。
 先ずは、六十代ぐらいのアラキ弁護人が尋問を行う。

−アラキ弁護人の尋問−
弁護人「ご経歴は聞いたが、本件のような情状鑑定を最初に手掛けられたのは、どれくらい前?」
証人「十年ぐらい」
弁護人「それから数十件」
証人「はい」
弁護人「先生の体験の中で、過去の生育歴と犯行が余り結びついていないケースは?」
証人「かなり生育歴に影響されたパーソナリティが犯行に結びついていることが多い」
弁護人「本件の被告人の態度は?」
証人「かなり話をしていただけたと」
 被告は、この時目を閉じていた。
弁護人「被告は自分史を書いているというが」
証人「面接を意図したかは解らない」
証人「被告は、言葉で自分を表すのが難しいと思った」
弁護人「何故?」
証人「学校教育を受けておらず、知識が弱い」
弁護人「(被告は)文章力がやや落ちるが、言葉の表現が性急とは?」
証人「(被告は)余り物を考えないで性急に話す。思考整理が苦手」
弁護人「昭和四十二年、被告は生年月日がはっきりしていないが、福岡刑務所を出て一念発起し、煙草、酒を断ち、薬物撲滅のために横浜中華街に出たが、それは影響は?」
証人「私は良く知らないが、当時、中華街はやや逸脱を許す傾向があった、金を持っていれば評価され、入手先は問わないと被告は言っていた。ハンデを負っていた被告には過ごしやすいと」
弁護人「被告はボスと呼ばれ、Cさんという女性と結婚しているが、この時は自己顕示欲が満たされていた」
証人「はい。それと、子供と、方法は知らないが金を手に入れてそれなりに満たされていたと」
弁護人「その後、昭和五十三年、秋葉原で強盗傷人をやっているが、何故?」
証人「少し判然としない。以前の判決文では店の改装資金を使い込んだというが、被告によれば、金には困っていない、家庭の問題で不安定になっていた、何故か解らないと言っています。様々な状況から、単なる金目的の強盗とは断定できない。Cさんが金を使い込んで、混乱していて、それらの中で衝動的に犯したのでは、と」
弁護人「金が手に入ったら、被告の満足になる?」
証人「事件そのものは、自己顕示より、混乱ではないかと」
弁護人「Cさんを伴い、鹿児島に帰って故郷を訪ねている。これは自己顕示?」
証人「はい。それなりに表面的には安定した生活が出来ていたので、故郷に錦を飾る、自分のルーツを探るというのがあったと」
弁護人「結果として満足は?」
証人「彼は、逆に失望しかなかったと」
弁護人「父の自殺の話を聞いてますしね」
証人「親戚に対しては自分が出世したと言えたが、ルーツに対しては失望しかないと」
弁護人「秋葉原事件で五年服役し、出所したらCさんは死んでいて、後に子供を持つ。屋台で取材を受け、違法ゲーム喫茶も被告の絶頂期だったとあるが」
証人「被告にも、その頃はすごく良かったとありますので」
弁護人「被告にもゲーム喫茶に関しては後ろめたさがあったと思いますし、賭博行為と屋台は被告にとって同じと?」
証人「はい」
弁護人「賭博は違法、屋台は合法。普通に見れば屋台の方が胸が張れる時期だったと思うが、その点一線を画していたと思うが」
証人「被告は、賭博も屋台も商売と認識していたと思う。ただ、屋台は(社会の)表に出られるので、かなり周囲の承認が得られたと満足していたと思う」
弁護人「屋台は事業拡大していたが、借金が残り、連帯保証人に迷惑をかけているが、被告に認識は?」
証人「金を儲けるのが夢中で、使い方に認識は無い。金の管理が苦手と思う」
弁護人「結局、屋台がポシャったのというは、やはり、(中華街の人間に)見放されたのもあるが、金銭的な問題?」
証人「矢張り、収入が減るのは目に見えているので、その結果として回復しようとより借金をして焦ったと」
弁護人「被告は、売り上げは全て奥さんのYさんに渡していた。そして、(同人が)お金があるのにくれないと思っていたが、お金には無関心?」
証人「計画性については全て妻に任せていたと思う」
弁護人「本件犯行まで、一度中断するが、獄中で計画が膨らんでいったのはキオスクの件?」
証人「はい」
弁護人「地下鉄の件については?」
証人「獄中かは知らないが、二番目か三番目に地下鉄や渋谷のパチンコ屋が入っていたと」
弁護人「本件の分析は解り易かったが、途中でキオスクは、金は二の次になって、自分が行動した証を残したいとなったらしいが、その場で変わった?」
証人「被告は、キオスクに入って数億盗れると確信していたと」
弁護人「普通はもう一度やると思うが、半端な証拠を残して諦めるのは何故?」
証人「金で事業を起こすのもあるが、人に認められたいというのも大きい。何人かに犯行を打ち明けたので、実行できないと回りから思われるのが悔しかったと」
弁護人「熊谷がやったと周りから思われるのが?」
証人「そうしなければ、自分では、いけない、と」
弁護人「キオスクはニュースにならなかったが、自己アピールにももっと大きな方法があるが、何故?」
証人「劇場犯では爆弾を仕掛けるとかあるが、そこまで社会から阻害されていないと思っていたと思う」
弁護人「キオスク事件はこれで完結したと」
証人「どういう意味です?」
弁護人「キオスク側でも大きな騒動になっていないが、自分なりにアピールしたからこれで終わりと」
証人「キオスクに対してはこれで中止と」
弁護人「やることはやったと」
証人「いえ、もう一度準備してやりたいと本人からは聞いている。ただ、直ぐにせず、何件か事件をやってからやりたい、と」
弁護人「他にも山陽警備とか。しかし、事件を起こして行動範囲が狭くなっていると思うが、被告の承認欲求?」
証人「山陽警備などは、キオスクを襲う資金作りと思う。被告にとってキオスクを襲って数億手に入れるのは人生の目的で夢だったと。しかし、もう一度入る余裕は無かった」
弁護人「これからはどんな点に、処遇につき、処遇を問題にする余地があるか別にして、如何注意すれば?」
証人「被告は三十で生活を変えられた。気持ちを変えることが出来るかもしれないが、転機が無ければパターンを崩すのは難しい」
弁護人「一人が死に、一人に後遺症が残っているが、転機にならないか」
証人「きっかけが無ければ難しい」
弁護人「きっかけになる事が有るとは?」
証人「本人は宿命観を持っている。それは運命と諦めてしまうと難しい」

 続いて、三十代ぐらいのトヨタ弁護士による尋問。

−トヨタ弁護士による尋問−
弁護人「処遇については、人の死がきっかけになるかもしれないが、周りが関与せねばならないと」
証人「はい」
弁護人「無期になったとして、改善の余地はあると」
証人「まあ、あります。ただ、心境の、かなり強烈な転機がなければ。被告は自分の生き方のモデル、尊敬の対象を求めているので、それが無ければ難しいと」
 鑑定書を審議する。
弁護人「58ページですが、鑑定人が鑑定書を作成した?」
証人「はい」
弁護人「57ページの一番下、微妙な育成環境に根ざしており、それが人格に強く影響を与えているとあるが」
証人「何パーセントとは言えないが、産まれた時から不遇ですし、出生の秘密、親の問題を三〜四歳の時に聞かされている。それだとかなり後まで心に傷が残る。信頼できる養育者と会っているが、殆ど上手くいっていない。ちょっと不遇な人に比べれば、パーソナリティに影響を与えている」
弁護人「54ページの真ん中、すなわち、被告の不遇な生育歴の劣等感があり、不良文化の中で(欠)強く影響を与えているとあるが」
証人「人から認められ承認されたいというのが(被告の)人生のテーマと思うので」
 この時、被告は宙を仰いでいた。

−ミナミ検察官からの尋問−
検事「今の不遇な生育について、そう評価できる人は多くいるが、特に被告のものとして考えられる事が?」
証人「いくつか。ポイントで不遇な人はいるが、被告は生まれたときから親に育てられず、引き取られた家で親の悪いイメージを入れられ、戦災孤児になった。悪い事が続いたと」
検事「昭和53年の秋葉原事件だが、この事件だけが動機として解らないと」
証人「はい。判決が事実であれば経済問題だが、様態を考えても、改札口で包丁を持って白昼強盗するのは行動として納得できない」
検事「判決に齟齬があるとかではない」
証人「はい」
検事「秋葉原事件と今回の事件に共通点は?」
証人「被告は、思いつめると、綿密に計画を立てる割に、現場で衝動的(若しかしたら違う表現だったかもしれないが。)にやってしまうと」
検事「平成八年に刑務所に入った強盗致傷や今回は、秋葉原事件のような不明瞭さは無い?」
証人「はい。事業資金など、かなり理解できると」
検事「本人が多用する言葉として、金が大事、と鑑定書にはあるが、金への執着が違う?」
証人「人は信用出来ないが、金は出来ると」
検事「人は金は欲しいと思うが、被告は一層そうだと?」
証人「はい。人に金を使って、周囲から評価すると」
検事「(被告の言葉として)自分はもうだめだ、運命だ、という言葉もあるが。無力感と書いてあるが」
証人「それは表面的には見えてこないが、やはり、出生で否認され、自分を確信して生きていくという、懐疑的になるのは当たり前で、カバーする気持ちがあるから見えてこないが、それを無力感と」
検事「本人はそう言わないが、自分の中でそう処理していると」
検事「自分の解決できないことに対して、そう処理するのは?」
検事「もうだめ、というのは法廷でも言うが、如何だめかと問うと、社会で、と言うから、どういう意味で使うのかと思っていたが」
証人「劣等感があり、ぎりぎりの所で、もうだめだ、と言う言葉で出てきていると」
検事「被告との一問一答という物の主旨は?」
証人「被告のパーソナリティへの影響等を打診するために、幼少時のことを訊ねた、という事です」
検事「キオスクへの執着、それを強迫的な執着性と書いているが、この審理の時点でもこの気持ちはあると?」
証人「この?」
検事「キオスクへのです」
証人「一つの夢みたいなものなんですね。執着もあるが、夢みたいな物だと」
検事「本件犯行の後もその夢はあると?」
証人「明確に有るかは解らないが、もう一度やれればと言うのがあるので。それが実現可能と思っているかは兎も角」
検事「最後に何か言いたいことは、と聞いているが、それで面接は終わり?」
検事「本件について、とあるが、供述内容を記載するとあるが」
証人「事実関係ではなく、パーソナリティを鑑定して欲しいと依頼を受けたので、その結果を」
検事「横浜事件でサングラスをフロントにかけていたのは、とあるが、それは特徴的な?」
証人「普通そういうことはしないので聞いたわけです」
検事「考察、と言うことですが、被告の性格として、不良文化への親和性の強さ、逸脱行為への躊躇の希薄さ、とあるが、それで犯罪に走ったのに説明が?」
証人「承認欲求が犯罪に結びつくわけではない。しかし犯罪に親和した文化生きてきたので、犯罪に走りやすい、と。他に遣り方が有ったのか、というと、本人の自覚があればやらないという考え方も有るが、それ以外のやり方を選びにくいというのも確かだと」
検事「愛国心や右翼思想と言うのが出てくるが、犯行に影響があると?」
証人「十八歳は存在証明の時期だが、彼の場合それが余り無い。その場合、象徴的な男らしさに飛びつくことがある。被告にとって愛国心と言うのがフィットしたのでは、と」
検事「中華街に行ったことは?」
証人「被告には空想的な面があり、英雄志向というのがある。右翼になってやる、と。被告は一匹狼で中華街に、麻薬撲滅の為に乗り込んだ、と。本人は映画チックな物を許容できるのでフィットした、と」
検事「鑑定書の最後の方になるが、キオスク、山陽警備とやって、その後、人の注目を集めたいというのが前面に出た、というのが理由だと?」
証人「基本はそうで、彼の行動は説明できると」
検事「社会の耳目を集めるためには、拳銃を使った事件は起こさないと思うが、金が欲しいのもあった?」
証人「はい」
証人「最初は金を手に入れたいが、それは不可能になってきた。金は前面に出てきたが、本人は衝動的な行為に走っており、金を取れる確信は無かったのでは、と。大事件を起こして周囲から認められるというのが強いのでは、と」
検事「キオスク事件も念頭に会ったと」
証人「本人にとって夢で、それが無くなると生き甲斐が無くなるのでは、と」
検事「横浜事件で数十万奪って使い切っているが」
証人「彼にとって数十万は意味は無い。数千万数億を手に入れるのが目的だった。それで風俗に行って散財してしまったと」
検事「被告の心理状態を考える大きなポイントにならない?」

−ナカヤマ検事の尋問−
検事「エゴグラムと言う検査を行っているが、被告が望ましい形で回答した可能性があるというが」
証人「問題のあるパーソナリティが出てこない。劣等感を表す質問にノーという。何を訊かれているかは予想できるから否認したと思う」
検事「先程の弁護人の質問の中で、キオスクに入る余裕は無かったと言っていたが、どういう余裕ですか?」
証人「心理的には、準備したが失敗したので追い詰められた。お金も困っていた。実際に、山陽警備事件の後で、ご飯が食べれず水ばかり飲んでいた、という供述もあるので」
検事「それは喪失感?」
証人「はい」
検事「青年期について、窃盗を繰り返していた時期ですが、生きるための盗みが自己存在の証明とあるが」
証人「被告の供述に、自分は大泥棒になりたい、とあるので。それに、人の居ない家に入って盗むのを満足げに話していたので、本人にとって、自分は、すばらしいと言うと変ですが、すごい泥棒だというのが生きる支えになっていたと」
検事「弁護人からの質問で、宗教的な転機が無ければ、変わらないかもしれないと言ったが、それは強烈な物が必要と」
証人「きっかけになる出会いが在って始めて変化すると」
検事「内省を深めるだけではだめと」
証人「かなりむずかしいと。ただ、三十歳で今までの生き方を変えるエネルギーはあったので、それに期待できるかもしれない」

−女性裁判官からの尋問−
裁判官「三十五ページのロールシャッハテストの結果について、ない、でよろしいんですか?」
証人「すみません。ある、です」
裁判官「次ですが、逸脱への抵抗感が希薄、不良文化への親和性とあるが、山陽警備事件以後、文化への許容性以上のものがあるのでしょうか」
証人「積極的な意思が有ったと」
裁判官「不良で構わない、では無く、ある、というのがあるか」
証人「それだったらやくざになっている。許容というのはあったと思うが、自分がやくざになるというのは無いと」
裁判官「一匹狼で組織が苦手だったのがやくざにならなかった理由として記載されているが、そこまで悪くなりたくないというのもあったと」
証人「青年期以降には、積極的に犯罪を起こそうとしたわけではないと思う。破れかぶれの時に不良文化への親和性が出たと」
裁判官「自首したのが自己顕示とあるが、実包を持っていたのだから、もう一度事件を起こすのも可能だったと思うが、何故自首を?」
証人「仲間に相談し、自首を勧められた。彼は、言ったらやらねばと思うので、それで。後、彼は自分に見切りをつけたというのがあると思うので、自殺も考え、その二つが合わさって自首したと」
裁判官「被告は、思い込みの強さについて、極端だと思うが、知能や生育歴に関係がある?」
証人「生育歴は無いが、知能の持ち方について、意欲と、微妙なところだが、深く考えず、思い込むと簡単に行動してしまうのが随所に現れている。(笑う)器質的なものがある。クレペリン検査をやると、波が無い。思い込むとやってしまう」

−裁判長からの尋問−
裁判長「四つの事件があるが、一人を殺し、一人は重態なのだが、鑑定書を読むと、それに、訊いているが、人を殺したのは、被告の性格はどう影響している?」
証人「基本的に、人を信頼する、愛された経験が無い。人を思いやると言うのが弱い。容易に拳銃を発射する傾向は強いと思う」
裁判長「平気だというのは無い?」
証人「そこまでは無いですね」
裁判長「今言われたように、人に対して色々、多少違うが、危害を加える危険な考え方は持っていないと」
証人「積極的に人を殺そうというのは無い。ただ、最終的な歯止めは少し弱いと思う」
裁判長「最初から殺そうと思ったのか、発作的だったか、どちらでもその説明でおかしくない?」
証人「それを如何判断するかは裁判所で、私は指摘するだけです」
裁判長「裁判所は再犯可能性について訊かなかったが、それについて付け加えることは?」
証人「変わるエネルギーはあるがきっかけが必要だと。私としては変わる努力をしてほしい」
裁判長「再犯の心配はないと?」
証人「そうは言っていませんが(笑う)。年齢の変わりで心境の変化はあるのでは、と」
裁判長「転機になる人のイメージとして、Mさんとか、そういった人物が居るが、そうした人でもいいのか」
証人「質問の意図が」(困ったような笑い)
裁判長「仮に人生を歩むとすれば、そうした人物が転機となって変わっていくと?」
証人「新たに新しい人を見つけるのは難しいことなので、(付き合いを)続けて欲しいと思う」
裁判長「本人は今回の事件について運命的なものと纏めているが、判決文でもそうした言葉を使うことがあるが、それはどうなんですか?」
証人「そうと言ってしまうと、人は過去に捕らわれたものになってしまうが、被告の中ではそうとしか説明できていない。そうでなければ結末が付けられないのではないかと」
裁判長「強く影響しているとあるが」
証人「全てを過去の宿命論とするわけではない。他の人より選択可能性が少なかったという言い方しか出来ません。

 これで、尋問は終了した。
 検察官は、今後、石岡(渋谷事件被害者のYさんを聞き間違えた可能性もある)の現状について立証。
 弁護人は、被告人質問を求める。

裁判長「次回で双方の立証は終わり?」
 双方とも同意する。
裁判長は、次回期日と論告期日を指定する。その後は追って指定。
裁判長「被告人、よろしいですか?」
被告「はい」

 これで閉廷。

 被告は、証言の間、膝に手を置いて口を閉じ、背筋を伸ばして聞いていた。
 被告は、退廷する時、被告用の出入り口近くの傍聴席に、軽く頭を下げていた。
 裁判長は柔らかい感じの人で、証人を緊張させないためか、笑うことがあった。
 裁判が終わった時、立って頭を下げていた傍聴人がいた。この傍聴人は被告に険しい視線を向けていたので、被害者の関係者かも知れない。頭を下げたのも、少なくとも被告に対してでは無かったと思う。また、この傍聴人は最前列の真ん中辺りに座っていたので、被告はこの傍聴人に頭を下げたわけではない。
 十二時までの予定だったが、十一時四十五分ぐらいに終わった。

報告者 相馬さん


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