裁判所・部 千葉地方裁判所・刑事第二部二係B
事件番号 平成19年(わ)第1773号等
事件名 詐欺
被告名 A、B、C、D
担当判事 鈴木順子(裁判長)
その他 書記官:鈴木
日付 2007.11.1 内容 初公判

 平成19年11月1日午前10時30分から、消費者金融の従業員を装って個人情報の抹消を名目にした振り込め詐欺事件で逮捕・起訴され、詐欺罪に問われた4被告の初公判が千葉地裁で開かれた。
 同じ法廷で行われていた公判前整理手続きが長引いたため検察官や弁護人、傍聴人や被告人の家族(被告人の両親や兄弟らしき人や被告人の母親や妻らしい女性)も法廷になかなか入れずにしばらく待っていた。
 検察官の話ではもう1人いた犯時少年の共犯者はすでに家裁送致されているらしく、また被告側弁護人は被告人の家族と追起訴がどうだとか話していた。
 検察官は人の良さそうなサラリーマン風の男性、弁護人は垂れ目の若い男やアトピーの女性などがいた。ようやく法廷に入ると、被告人4名も6名の刑務官とともに入っていた。被告人4名は身長175〜180cmぐらいの体格で、傍聴席から見て右から
C被告・・・赤いパーカーを着た、髪を短くした色白の目の細い痩せ型の男性
D被告・・・ジーパンを履いた丸刈りでかなり大柄な体格で、眉に剃り込みみたいなのがあり目が大きい
A被告・・・茶髪がかったやや長い髪に、頬にニキビ状のものがあり、ダブダブの服を着用
B被告・・・目が細くて鋭い、黒髪のやや痩せ型の男性
 被告人席に座る順を刑務官が書記官に聞いたが、どこでもいいというので、入廷してきた順に座らされた。(つまり開廷表の表記の順ではなかった)
 被告人4名と傍聴人は、裁判官が入ってくるとお辞儀をした。開廷されると裁判官は人定質問を始めた。

−人定質問−
C被告「昭和56年2月22日生まれ。現住所千葉県習志野市 無職」
D被告「昭和57年11月15日生まれ。現住所東京都港区 無職」
A被告「昭和58年3月18日生まれ。現住所千葉市中央区 無職」
B被告「昭和58年3月8日生まれ。無職」
裁判官「それでは今から検察官に起訴状を読み上げてもらいます」

−起訴状朗読−
○平成19年8月27日付け公訴事実
 被告人4名は共謀のうえ、消費者金融の従業員を装って、個人情報を抹消する名目で金員を詐取しようと企て、平成19年3月6日から9日までの間、前後6回にわたり、東京都江戸川区のカーサベルソル603号室から、真実は融資のリストに登録された事実もその抹消に費用がかかることもないのに、これがあるように装い、aに電話で「名前を消すのには手数料として4万円が必要である」などと嘘を言って、その旨誤信させ、平成19年3月6日から11日までの間、前後4回にわたり、三菱東京UFJ銀行八千代支店から、被告人らが管理する千葉銀行の普通預金口座に合計14万5000円を振り込み入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。
罪名および罰条:詐欺、刑法60条。

 ここで検察官がおそらく事件に関するもので読み上げなかった別紙を被告人らに示した。

○ 平成19年10月16日付け公訴事実
 被告人4名は共謀のうえ、消費者金融の従業員を装って、個人情報を抹消する名目で金員を詐取しようと企て、ハイパイン東京605号室から、bに真実は融資のリストに登録された事実もその抹消に費用がかかることもないのに、これがあるように装い、「以前融資の申し込みをされました。それがここにあるんです。データが流れています。データを削除しなければなりません」などと嘘を言って、世界貿易センタービルにある浜松町支店から、被告人らか管理するシバタジュン名義のジャパンネット銀行の口座に4万円を振り込み入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。
罪名および罰条:詐欺、刑法246条。

検察官「以上の事実につきご審理願います」

裁判長「これから審理を始めますが、被告人には黙秘権があります。言いたくないことは言わなくていいです。それでは今検察官が読み上げた事実についてどうですか」
 裁判長が被告人4名に順次尋ね、被告人4名は「間違いないです」と起訴事実を認め、弁護人も「被告人と同様です」と述べて、元の席に座らされた。
裁判長「それでは証拠調べ手続きに入ります」

−検察官の冒頭陳述−
 本件により検察官が証明しようとする事実は以下の通りです。
 被告人4名の身上・経歴ですが、Cは千葉県内で出生し、高校を1年で中退したあと、建設作業員・会社員など職を転々としていました。平成15年の3月に妻との間に一子を儲けています。前科は不見当ですが、前歴は強盗致傷等3件があります。
 Dは千葉県内で出生し、高校を3年のとき中退し、鳶職などをして、平成14年と平成15年に妻との間に2子を儲けています。前科は不見当ですが、前歴は強盗致傷等3件があります。
 Aは長野県内で出生し、高校を卒業したあとガソリンスタンドの従業員や配管工などをして、事件当時は無職でした。婚姻歴はなく、父母と同居していました。前科・前歴はいずれも不見当です。
 Bは千葉県内で出生し、専門学校を卒業後はガソリンスタンドの従業員など職を転々としていました。婚姻歴はありません。前科は不見当ですが、前歴は強盗致傷等3件があります。
 本件犯行に至る経緯ですが、Cは平成16年の8月頃からY1の詐欺集団に所属していましたが、暴走族の繋がりでこれに興味を持った稲川会のY2も同様の詐欺集団を作って、Cは2つのグループで活動していました。ところが報酬の点で不満を持って、Y1とY2のグループを脱退して独立したグループを立ち上げました。
 DはY2のもとで活動していましたが、Cの羽振りが良いことに興味を持って、Dの遊び仲間のAやBも加わってCグループを結成しました。
 Cは他人名義の携帯電話や通帳やリストを用意して、3名に具体的な指示を与えていました。1日2件のノルマで、DとBには月40〜50万の報酬を、Aには月25万の報酬を、出し子のEには月25万の報酬を支払っていました。
 犯行手口ですが、携帯電話で債務者リストの電話番号に電話して、相手側が融資の申し込みを希望してきたときは、電話の相手に他社の借り入れ状況や電話番号などを聞いて、審査する旨を伝えて電話を切ります。相手側が融資の申し込みを拒否してきたとき、これが各公訴事実になりますが、抹消料として4万円の振り込みを要求し、融資の形を取るためにこちらから5千円振り込むので、合わせて4万5千円を振り込むように要求し、相手側が4万円の振り込みをさせて、残りの5千円を振り込むときに電話をかけさせて、指定させた電話番号に電話すると着信を拒否し、後日「完済とはならなかった」としてさらに利息として4万円を要求しました。5千円を振り込んで融資を偽装したのは、詐欺ではなく出資法違反であるという方便でした。
◇被告人らは平成19年2月20日、さきほど述べた手口で、「30万円まで融資できます。あなたの名前で登録されています。大変なことになります」などと言い、また融資の形を取る必要があると言って先に5千円を振り込む必要があると言いました。被害者は登録を抹消してほしいという思いからやむなく5千円をまず振り込ませ、指定されたツジツバサ名義の口座に最初の4万円振り込んだ旨の電話をして、次の5千円の振り込み先を教えて欲しいとしたところ、指定した時間(10時45分)に電話が繋がらず、被告人らは再手続きとしてさらに4万円を請求しました。被害者は早く登録を抹消してほしいとの思いから3つの口座に、4回にわたり計14万円を振り込み入金しました。金銭は出し子役のE晋之介が出し、Cの口座に振り込みました。
◇被告人らは平成19年6月29日、「以前融資の申し込みをされました。300万円までなら融資できます」などと言って、登録手数料を詐取するために「あなたのデータが流れています。連絡がいかないようにするには4万円かかります。先に5千円を振り込むので、合計4万5千円を振り込んでください」と言って指定された口座に4万円を振り込み入金させた。(おそらくそれ以上の詐取行為が本件では続かなかったと考えられる)金銭は出し子役のEが引き出して、Cの口座に入金した。
 以上の事実を立証するため、関係各証拠を記載した関係カード等を請求いたします。
 C被告とB被告は一部不同意したが、それ以外の証拠には被告人らは全て同意した。

−要旨の告知−
○甲号証
・Cを緊急逮捕した際の手続き、被告人ら4名を特定した経緯、被害額・被害状況をまとめたもの、被害金の振込み事実、被害金の振込口座の照会、口座開設の際の身分証明書が偽造されたもの、Aが金融機関のカメラに動画として残っているもの、金融機関副支店長の話、詐取金の入出、ATM装置のEの人相等、被告人らのアジトの電話機、アジトに対する現場引き当たり報告書、C名義のクレジットカードの利用状況、Eの調書で出し子役になった経緯(今年の1月中旬から出し子役になり、1日1万円の日給だった)、Eに4万円で口座を売ったツジツバサの調書、指定口座にお金を振り込んだ事実、本件犯行に使用された携帯電話の解析報告書など

○乙号証
・Cが詐欺グループを結成した経緯、共犯者の面割り、犯行のアジトは4箇所あり足がつかないように周期的に変えていたこと、D・A・Bにそれぞれかかるもの(身上経歴、詐欺グループに乗った経緯、役割分担等)、公訴事実にかかる件で犯行に使う通帳、犯行に使うブラックリスト(1件25円で買取)、1日2件のノルマ、被告人3名は前歴があることなど

 採用された(同意のあった)証拠の山は、いつも透明なファイルに入っており、書記官を介して、裁判官にドサッと手渡された。この事件記録は、判決が確定すると検察庁に戻されるという。

 今後の進行について問われた検察官は10/24付けの追起訴状は手元にあるが、今後の追起訴の予定は年内に終わるかどうかも含めて現在のところ確認できていないと述べた。
 裁判官は次回を12月26日15時から302号法廷と定めて閉廷した。

 検察官は書記官と何か話していた。
 普通は被告人はすぐ刑務官とともに退廷するが、今回は押送の問題上被告人らは法廷に残されていた。被告人ににこやかに話しかける年配の刑務官もいた。
 最後まで残されたC被告の頭を母親らしき年配の女性が軽く小突いて全員退廷していった。
 被告人の関係者と弁護人はどの公判でも、裁判が終わると別室で今後の進行を協議することが多い。

事件概要  被告人らは共犯と架空の融資申し込みを元に、千葉県印西市等で登録解除料名目に銀行に振り込ませた金を騙し取ったとされる。
報告者 insectさん


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