裁判所・部 千葉地方裁判所
事件番号 平成18年(わ)第1599号等
事件名 強盗致傷
被告名
担当判事 山口雅高(裁判長)
日付 2006.10.5 内容 冒頭陳述

 Dの第二回公判は、10時より、302号法廷で行なわれた。
 検察官は、中村卓也の公判も担当していた、色白で小太りの、温和そうな中年男性。開廷前、書記官に書類を渡し、「冒頭陳述で立証する事実について、恐らく裁判長から釈明が・・・」と話をしていた。また、開廷前に、書類に目を通してもいた。
 弁護人は、髪をリーゼント状にした、中年男性。開廷前、書記官に書類を渡し、別の書類に目を通していた。
 傍聴人は、私を除き、マスコミ関係者らしき男性一名だけだった。
 被告人は、無表情で入廷した。検察官に座る場所を指で示され、傍聴席に背を向ける形で座る。リーゼントに似た髪形で、髪がやや後退しており、ところどころに禿がある。痩せ気味の体格で、浅黒く、ヤクザじみた顔立ちで、人相が悪い中年男。チェック柄の長袖のシャツを着ており、黒眼鏡をかけていた。
 裁判長は、丸顔の中年男性。裁判官の一人は、眼鏡をかけた中年女性だった。

裁判長「えっと、まずですね、甲の32につきまして、甲の32番は、取調べ済み、既に請求済みの甲の32番は、Fの供述調書となっていますが、Gの供述調書の、これ、誤記ですので、直しておいてください。あと、甲64ないし66は、C、G、Fの調書ですが、これは、追起訴分、8月9日付の、ジェイソン船橋薬円台店関係の証拠ですので、立証趣旨をそっち変えていただきます。それからですね、よろしいですか」
検察官「はい」
裁判長「それから、甲の31と64。これはですね、犯行後の状況じゃないんですよ。犯行状況等と、共謀時の犯行状況等としていただけますか」
検察官「はい」
裁判長「31と64。えー、それでは、被告人、前に立ってください」
 被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長「ちょっと事務的な手続きを行ないました。貴方に対して、8月9日、あ、失礼。8月31日、更に起訴がされています。検察官に起訴状を朗読してもらうので、よく聞いていてください」
 検察官は立ち上がり、起訴状を朗読する。

○8月31日付公訴事実
 被告人は、CおよびGと共謀の上、金品を強取しようと企て、平成17年5月23日午前0時20分ごろ、千葉県白井市466番地所在の株式会社ジェイソン白井店裏駐車場において、同店従業員a当時56年および当店従業員b当時33年両名に対し、それぞれの顔面、胸部等に所携の包丁様のものを突き付け、撲りながら、「静かにしろ、金を出せ」等と語気鋭く申し向けて脅迫し、両名を、同所に駐車中の普通乗用自動車内に押し込み、それぞれの両腕および両足を所携のビニール紐で緊迫するなどの暴行を加え、両名の反抗を抑圧した上、前記aから、同人管理にかかる、現金227万1322円在中の集金バック一個、時価、約3000円相当を強取し、その際、前記aが、前記包丁様の物を払いのけるなどしたため、同人に加療約2週間を要する左第一指切創等の傷害を負わせたものである。
罪名:強盗致傷。刑法第240条第260条。

裁判長「えー、黙秘権があるのは、当初述べたとおりです。そういう前提で聞きますが、今、検察官が読んだ、ジェイソン白井店の強盗致傷の公訴事実、いかがでしょうか」
被告人「はい」
 被告人は、頷いた。
裁判長「認めてよろしいですか。弁護人ご意見如何でしょうか?」
弁護人「被告人と同様です」
裁判長「それでは後ろに座っといてください。それでは立証趣旨をお願いします」
 検察官は、早口で、冒頭陳述を読み上げた。

−冒頭陳述−
 それでは、本件強盗致傷事件について、検察官が証拠によって証明しようとする事実は以下の通りです。
 犯行状況等でありますが、被告人と共犯者CおよびGとの関係及び犯行に至る経緯は、前回冒頭陳述で述べたとおりです。
 被告人は平成17年5月中旬ごろ、Cから電話で、株式会社ジェイソン白井店について、「良い場所が見つかった、周りに家が無く、売り上げも相当ある」旨の連絡を受け、下見の上、同店に強盗に入ることにし、同月22日に、C及びGと待ち合わせをした。
 被告人は、同日夕方ごろ、千葉県船橋市内でC及びGと待ち合わせをし、Gが運転しCが同乗していた普通乗用車、ニッサン自動車に同乗し、ジェイソン白井店を下見に行き、同所の周囲は木で囲まれており、民家も無く、駐車場も広かったことから、従業員を襲撃した際に従業員から騒がれても、周囲に気付かれることは無いと考え、同店に強盗に入ろうと考え、Cらに対し、「ここで良いんじゃないか」と言い、Cも、「じゃあここに決めよう」などと言い、Gもこれに応じたことから、遅くともこの頃、被告人、C、及びGとの間では、本件の共謀が成立した。
 その後、被告人らは、近くのレストランに入り、ジェイソン白井店裏駐車場に、従業員のものと思われる自動車二台があったことから、閉店時間後に従業員の最後の一人が出てきたら、その従業員を襲撃し、もし二人の従業員が一緒に出てきたら、両名を襲う、同店裏側にある従業員出入り口付近で待ち伏せをし、従業員が出たところで刃物を突きつけて脅し、従業員を車の中に押し込んだ上、車内でも刃物を突きつけて脅し、店に戻って従業員に店のセキュリティを解除させ、金庫を開けさせて現金等を奪う、その後従業員を再度従業員の車に押し込み、手足をガムテープやビニール紐で緊縛する、実行犯は被告人とCであり、Gは被告人およびCを上記セドリックで送迎する運転手役をする、などの強盗計画を立てた。その際、被告人は、現金を奪うためには従業員を負傷させても構わないと考え、Cらに対し、「相手が向かって来たら刺しちゃって良いかな」などと言い、CもGもそれを了承した。以上の謀議を遂げた上、被告人およびCは、Gの運転する上記セドリックでジェイソン白井店に行き、下車し、それぞれ手袋と目だし帽を着用し、包丁様の物を持った状態で、従業員を待ち伏せた。なお、ガムテープとビニール紐はCが所持した。
 翌23日0時20分ごろ、ジェイソン白井店の従業員である、aおよびbが、従業員出入り口から同店裏駐車場に出てきたことから、被告人は、aの背後に近付き、Cはbの背後に近付き、そして、被告人は、aの背後から、左手を同人の首にまわして押さえつけ、右手に持っていた包丁様の物の刃先を体に突き付け、「静かにしろ、金を出せ」と言って脅し、aは、それを左手で払いのけるなどしたものの、まもなくaは抵抗する事ができなくなった。
 一方、Cは、bの背後から同人の左腕を左手で掴み、右手に持った包丁様の物を同人の喉元に突き付けながら、「静かにしろ、金を出せ、出せば殺したりしない、金は何処だ」等と言って脅し、bは携帯電話を取り出して助けを呼ぼうとした事から、Cはそれを取り上げ、携帯電話を踏みつけて壊し、bは抵抗する事ができなくなった。
 Cは、bを、駐車場に泊まっていた、同人の普通乗用自動車、ホンダインテグラの席に押し込み、自らも乗車した。
 他方、aは、当日の売り上げ金である、現金227万1322円が入った集金バックを所持していたことから、「金はここにあるから」と被告人にそれを渡した。被告人は、包丁様の物をaの胸部等に突き付けながら、aを上記インテグラの後部座席に連行して押し込んだ。その際、弾みで同人の胸部を刺すなどした上、自らも後部座席に入り、ビニール紐でaの両手足を緊縛した。
 被告人は、同車内において集金バックを確認し、当日の売り上げ金は同バックに入っているものと判断したが、前日の売り上げ金はまだ同店の金庫に入っているのではないかと考え、aに対し、「昨日のは?」と尋ねたが、aは「もう無い」と答え、また、集金バック内の金額について、aから、「220万ぐらい入っている」といわれた事から、同店に侵入して金庫の金を盗るのを断念し、Cにその旨を伝えた。
 被告人とCは、aとbの手足をビニール紐で縛り、目や口にガムテープをはり、「警察に言うなよ」などと言ったうえ、上記集金バッグを持って上記インテグラから逃走した。
 aは、被告人に突き付けられた包丁様の物を左手で払いのけるなどしたため、加療約2週間を要する左第一指切創等の傷害を負った。
 被告人は、携帯電話でGを呼び、Gが運転してきた上記セドリックにCと共に乗り込み、逃走した。
 強取した現金については、被告人が約110万円、C夫婦が約111万円を分け合った。
 以上の事実を立証するため、カードに記載された関係各証拠を請求します。

裁判長「えーご意見如何でしょうか」
弁護人「全て同意します」
裁判長「じゃ、全て採用します。要旨の告知をどうぞ」

−証拠の開示−
・甲67、68号証:被害者aからの被害届及び追加被害届。
・甲69号証:aについての診断書
・甲70,71号証:被害者の負傷状況、緊縛状況に関する写真撮影
・甲72,73:被害者aの供述調書であり、被害状況は冒頭陳述で述べたとおりです。
・甲74、75号証:同じくbの供述調書。内容は冒頭陳述の通りです。
・甲76号証:犯行現場の実況見分調書
・甲78号証:緊迫に使用したビニール紐の写真撮影。
・甲79号証:共犯者Gの待機した場所について
・甲80,81号証:共犯者Cの警察官、検察官への供述調書。犯行状況については、冒頭陳述に詳細に述べたとおりです。
・甲82号証:共犯者Gの供述調書。内容については同様です。
 乙号証について。
・乙13、14号証:被告人の供述調書です。
 内容は冒頭陳述の通りですが、一点、胸を刺したとされる部分ですが、「私は、aさんに対して、車に乗り込むときに、刃物をaさんに突き付けていたいましたので、確か一回弾みでaさんの胸に刃物の先を刺してしまい、その時、aさんは「痛い」と小さく叫びました」という内容です
 以上です。

裁判長「本日はこの程度にいたしますが、弁護人の方で立証はどうしますか?」
弁護人「えーっと、被害者にあてた謝罪文、後は、被告人質問を」
裁判長「それでは、被告人、前に立ってください」
 被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長「次回は、10月17日10時30分。貴方から事情を聞いて、検察官の論告、弁護人からの弁論を行ない、審理を終えるところまでやることにいたします。10月17日10時30分。隣の301号法廷に来て下さい。今日は終わりました」
 被告人は、軽く裁判長に頭を下げた。

 10時30分まで予定されていたが、10時10分で終わった。
 被告人は、被告人席に座り、無表情に検察官の陳述を聞いていた。
 閉廷後、弁護人は、縄をかけられている被告人に少し話しかけて、退廷した。

事件概要  D被告は他の被告と共に以下の犯罪を犯したとされる。
1:2005年5月23日、千葉県白井市で強盗目的でディスカウント店駐車場で従業員に傷を負わせ、約815万円を奪った。
2:2005年10月10日、千葉県船橋市で強盗目的でディスカウント店駐車場で従業員に傷を負わせ、約230万円を奪った。
3:2006年1月15日、千葉県市川市で強盗目的で家具店で従業員に傷を負わせ、従業員所有の外車を奪った。
 また、主な前科として1991年11月に起きた富士銀行員誘拐事件がある。
報告者 相馬さん


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