裁判所・部 千葉地方裁判所・刑事第一部
事件番号 平成17年(わ)第2099号等 (公判前整理手続適用事件)
事件名 住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、電磁的公正証書原本不実記載・同供用、有印私文書偽造・同行使、旅券法違反
被告名 小田島鐵男
担当判事 根本渉(裁判長)
日付 2006.9.26 内容 証人尋問

 今回は、11枚の傍聴券に対し、16人の希望者が並んだので、抽選となった。前回に比べ傍聴券が少ないのは、今回の公判は302号法廷で行なわれるかららしい。
 小田島鉄男被告の第3回公判は、1時30分から予定されていた。しかし、前回の公判が少し遅れ、また、弁護人が第2回公判に引き続き、またもや公判に遅れたために、開廷は2時ごろからとなった。その事は、1時40分ぐらいに職員から伝えられた。
 弁護人は、2時近くに入廷した。眉の太い、やや皺の目立つ、痩せた老人であり、帽子を被っていた。廷内では当然帽子はとっていた。髪はぼさぼさだった。
 特別傍聴券を持っている、遺族と思われる人々から、先に入廷が許される。一般傍聴人は、2時4分ぐらいに入廷が許された。
 記者席は10席用意されており、7人が座っていた。
 関係者席は、十数席指定されていたが、3人ほどしか座っていなかった。
 検察官は、若い男性だった。
 裁判長は、眼鏡をかけた、痩せた初老の男性。裁判官は、二人とも若い女性だった。
 被告人は、入廷が許されたときには既に、弁護人の席の前に設置してあるベンチに、刑務官に挟まれて座らされていた。前頭部から頭頂部にかけて禿げ上がっており、残った髪も短い。肌は白かった。痩せて、頬がこけており、鼻は高く尖っている。眼鏡をかけていた。つまりは、写真どおりの風貌だった。半袖のグレーの服、グレーの長ズボンを着用していた。開廷前は、深く俯き、瞬きをしていた。

裁判長「あのー、開廷いたします前に、弁護人、色々事情がおありなんだと思いますが、説明される事があったら仰っていただけますか?」
弁護人「あのー、依然として、千葉地方裁判所は私にとって、遠い裁判所なのか、近い裁判所なのか、あの、判然としないものですので(笑)。あの、定刻に間に合うように出てるんです、が!指定の時間に間に合わない、という事です」
裁判長「あの、裁判所としても、同じ事を何度も申し上げたくはないんですけども、こうやって時間が遅れることによりまして、裁判所被告人遺族も含めまして、時間が無駄になることにもなりますし、審理の時間も減ってしまうことになりますので、ぜひともですね、お解かりになっていると思いますけど、遅れないように来ていただきたい。切にお願いしますけれどね。それでは開廷いたします。被告人、前へ出てください」
 小田島被告は、証言台の所に立つ。
裁判長「小田島鉄男ですね」
被告人「そうです」
 小さな声だった。
裁判長「では、前回に引き続いて審理を行いますから、被告人は座っていてください」
 被告人は、被告席に座る。
裁判長「えー、それと、弁護人から冒頭陳述要旨という書面を頂きましたが、これは、第一回の冒頭で述べられたものと、尋ねられたものと伺って宜しいですね。一応、本日付けの、書面として」
弁護人「あの、12日付けで、あの」
裁判長「いえ、12日付になっていますけど、裁判所で受け付けたのは、9月の25日に受け付けたので」
弁護人「はい」
裁判長「一応、只今口頭で述べた日付を裁判所で審理します」
弁護人「はい」
裁判長「では、証人を入廷させてください」
 衝立が、小田島の前に立てられ、証言台と被告席は遮られる。守田克実は、刑務官に付き添われ、やや俯いて入廷した。
 守田は、頬のこけた、浅黒い肌の、白髪交じりの髪を丸坊主にした初老の男。ごく普通の、実直な工員のような風貌。背が高く、痩せているが、筋肉質な体の持ち主である。小田島と同じ、半袖のグレーの服、長袖のグレーのズボンを着用している。相変わらず、感情を表に出さない淡々とした声、ぼそぼそとした喋り方で証言を行なっていた。語尾が消え入るようになる事もあった。
裁判長「守田克実証人ですね。前回に引き続いて審理を行います」

−検察官による守田克実への証人尋問−
検察官「では、検察官から質問します。前回話した内容と重なるところがあるかもしれませんが、事実の確認ですから。まず、貴方は、前回の法廷で、被告人小田島の出所後に、被告人に対して、Y1という名前の個人情報を教えてあげたり、身分証明書を被告人に渡したことがあると証言しましたね」
守田「はい」
検察官「その際に、被告人小田島が、刑務所の中に居る時でも、偽造の名義のパスポートを欲しがっていたという事を証言しましたね」
守田「はい」
検察官「そこで、貴方は、Y1という名義の、人間の個人情報や保険証について、最初から小田島に渡すつもりで用意していたのですか?それとも、違う目的で、元々は持っていたのですか?」
守田「ええ、最初は、違う目的で持っていました」
検察官「どういう目的でもっていたんですか?」
守田「えー、先ず、最初に、その名義によって、携帯電話、えー、サラ金等を、えー、利用するために」
検察官「では、そのような目的で持っていたY1名義を、何故、被告人に渡してあげたのですか?」
守田「えー、五月に、えー、電話連絡して、えー、その後、被告人と、出所後、再会し、えー、以前必要としていた、あー、偽造名義、そういうのがあったので、そのまあ、ボーナスだと」
検察官「出所後に・・・えー、撤回します。被告人小田島の出所後に、被告人から改めて何か名義がないかという事を頼まれたことはありましたか?」
守田「ええ、あのー、再開して、えー、そういう話が出ました」
検察官「被告人からはその時どのような言われ方、頼まれ方をしたんですか」
守田「えー、・・・・・言葉としてはうろ覚えなんですけど、えー、・・・偽造・・・パスポート等を作るような名義はないか、という事を聞かれたと思います」
検察官「そう言われたので、貴方は、Y1名義があるという風に答えたのですか?」
守田「はい」
検察官「でも、貴方としては、その時、あらかじめ、小田島に渡すつもりでY1名義を持っていたわけではないんですよね?」
守田「はい」
検察官「では、被告人に対して、被告人に渡すために用意してたんだよ、という事を言った事はありますか?」
守田「えー、話の流れでは、そういう事を、言った可能性も」
検察官「被告人とすれば、貴方に対して、自ら名義がないかと貴方に頼んだことはあったのには間違いないですか?」
守田「はい」
検察官「次の質問に移ります。貴方は、マブチ事件、目黒事件、我孫子事件、3回が終わった後に、計画通りの大金を手に入れる事が出来ませんでしたね」
守田「はい」
検察官「計画通りの大金を手に入れる事が出来なかったことで、被告人を責めた事はありますか?」
守田「いえ、ありません」
検察官「何で責めなかったんですか?」
守田「えー、・・・前回も言いましたように、被告人の計画、及び実行によって、その後、成功、失敗等あっても、甘んじて受け入れるつもりで。えー、その計画において、えー、大幅な変更、失敗等あっても、文句を言わない」
検察官「貴方は、小田島と一緒に生活している間には、実際に犯行を行っている間、小田島のことは何と呼んでいましたか?」
守田「えー、・・・Y1さんと言ってみたり、小田島さんと言ってみたり、えー、殆どが、えー、Y1さんだったと思います」
検察官「貴方と被告人二人でいる時はどういう呼び方をしていましたか?」
守田「えー、被告人は、多分に、Y1さんと言っていました」
検察官「小田島さん、という呼び方もしましたか」
守田「はい」
検察官「被告人は、貴方と二人で居るとき、貴方の事を何と呼んでいましたか?」
守田「えー、モリさんです」
検察官「貴方と被告人とは、年齢はどちらが上ですか?」
守田「えー、被告人のほうが、7つか8つ上です」
検察官「貴方の被告人に対する言葉の遣い方として、同じ世代と変わらないのか、少し目上の人に対して喋るように喋っていたのか教えてくれますか?」
守田「えー、どちらかと言うと、目上の人に喋るような感じです」
検察官「あのー、強盗殺人3件の犯行計画を立てた」
弁護人「どっちが、目上ですか?」
裁判長「弁護人の質問に答えて」
検察官「はい、もう一度聞きますが、貴方と被告人とでは、どちらが目上の関係ですか?」
守田「えー、被告人の方が目上、という感じです」
検察官「今回の3件の強盗殺人の犯行計画を立てている間、犯行を通じて、貴方が被告人に対して、計画内容について変更を求めたり、または犯行中に被告人に指示をすることはありましたか?」
守田「いえ、全くありません」
検察官「何故、その様な指示を、計画の変更を言ったり、指示をすることをしなかったんですか?」
守田「えー、当然、えー、被告人は、あのー、前刑においても、同じような、計画をして、実行した経緯から、えー、また、あー、ある意味では非常に尊敬していたという。えー、私自身、被告人に全てを任せたら間違いないという気持ちから、そういう、意見等をした事はありません」
検察官「えー、次の質問に移ります。まず、被告人が出所した直後の事について質問しますが、被告人と再会した直後に、貴方の方から、被告人に対し、刑務所の中で練っていたマブチさんを襲う計画を早くやるように促した、せっついた事はありますか?」
守田「それはありません」
検察官「出所直後、被告人が出所した直後の段階で、被告人は、刑務所にいる間に書いていたノートを、その時はまだ持っていましたか?それとも、もう持っていませんでしたか?」
守田「えー、再会してからは見ていません」
検察官「持っていたかどうかは解らないですか」
守田「はい」
検察官「次の質問をします。貴方は、マブチ事件、目黒事件、大島・・・・ええ、失礼、我孫子事件の何れの事件についても、被害者の首を絞めた時に、被告人の指示を受けてから、首を絞めてますよね」
守田「はい」
検察官「被告人の指示が無くても、貴方は首を絞めていたんですか?それとも、被告人の指示があったから首を絞めたんですか?」
守田「いえ、当然、えー、指示が無くても、自分自身で、えー、あのー、首を絞めていたと思います」
検察官「それでは、被告人の指示は貴方にとってどういう意味があったんですか?」
守田「(長い沈黙)えー、そのー、事件当時、一応絞殺という事は、もう、殺そうという段階という意味合いのことです」
検察官「要するに、何故、被告人の指示を待たずに絞殺するという事をしなかったんですか?」
守田「えー、最初の計画では、その、泊まるとか、えー、そういう、大金を、得る目的で入っていますんで、えー、私が先に、そういう、絞殺、という事をやれば、最初の、計画が・・・、えー、失敗に終わるのでは、と思い、何事においても被告人の指示を待ったわけです」
検察官「以上です」

 続いて、弁護人による守田に対する尋問が始まる。弁護人は、甲高くか細く小さい声で、妙なところで言葉を区切りながら話した。そのため、喋るのに時間がかかり、また、非常に聞き取りにくかった。

−弁護人による守田克実への証人尋問−
弁護人「私は、小田島被告人の弁護人のカミ(?)と申します。それではですね、守田さんの事を、貴方、と呼びます。そして、小田島鉄男さんの事を、被告人、と呼ぶ事にいたします。・・・・前回までの貴方の供述には、『私が被告人の出所を待っていて電話をせずにいたら、被告人は今回の事件を起こさなかったかもしれない』、という、記録の一部があるんですけども、えー、これは、あのー、どういう意味ですか?」
守田「えー、当然、その、縁というか、えー、私が、電話、しなかったら、えー、えー、若しかしたら、えー、被告人と、私が再会できなかった可能性は多分にあります。そういう面において、私が電話しなければ、今回の事件、ま、えー、最初の事件は別としても、最後の二件なんかは、全く無かったものと思います」
弁護人「後の二件については、前回、確か、貴方の方からお願いをした、と言いましたね」
守田「はい」
弁護人「間違いないですか?」
守田「間違いありません」
 守田は、はっきりとした調子で答えた。
弁護人「そこで、あな、た、は、今回の裁判でどのような刑になるか、一応、ある程度見込みを持っていらっしゃるのですか」
守田「はい」
弁護人「被告人ーが、被告人の方もね」
守田「はい」
弁護人「やはり、貴方と全く同じ気持ちなんです。そういう観点からすると、おー、あな、たの、事件は、別の、あー、弁護人がついて、えー、弁護されておりますが」
守田「はい」
弁護人「目指すと思われる、目的がおな、じ、かもしれないという事で、私が弁護する事と貴方の弁護は共通点がある」
守田「はい」
弁護人「本当に、被告、の(聞き取れず)」
守田「はい」
弁護人「あな、たに、私のほうから、本当に、あらためて、其処に至るまでの経過というものを尋ねたいと思います。宜しいですか」
守田「はい」
弁護人「あな、たの、ご両親。ご両親は、裕福な方でしたか?」
守田「いえ、普通です」
弁護人「ご両親は、えっとー、離婚はされてますか?」
守田「えー、小さい時に、えー、離婚一回と、再婚と、です」
弁護人「貴方は、教育ーは何処まで受けられていますか?」
守田「えー、最終学歴、高校ですけども、定時制を、えー、時間をかけて卒業しました」
弁護人「高等学校は定時制だったという事ですか?」
守田「はい、そうです」
弁護人「何故時間がかかったのですか?」
守田「えー、社会に出ると、おー、忙しい時、えー、学校へなかなか行けなくて、えー、始業式の日に、休学願いを出して、仕事の方に、えー、精を出した、という事です。なかなか、その、一般社会では、学校に行くという事が、えー、定時制、えー、残業がみんながやっている中で、学校行くことで、なかなか、思うようにいかなくて、時間がかかった」
弁護人「えー、定時制は」
守田「四年です」
弁護人「貴方の場合は何年で卒業した?」
守田「えー、24ぐらいの卒業ですから、えー・・・・・・普通よりも、5,6年多くかかっています」
弁護人「うん・・・・、卒業後の事は、仕事は?」
守田「えー・・・・仕事は転々、としました」
弁護人「落ち着かなかったという事ですか?」
守田「そうですね、えー、一番長いので、えー、その、学校、定時制に行ってる頃の会社、それが9年か10年。その後は、えー、7年ぐらい」
弁護人「それは、何でですか?貴方は、怠け癖があるんですか?」
守田「えー、・・・・まあ、違いはありますけど、給料の面とか、そういう、そのような、多分多かったのではないかと」
弁護人「貴方は、ご結婚なさったのですか?」
守田「はい」
弁護人「それは何時ですか?」
守田「・・・・昭和52年ぐらいです」
弁護人「その女性とー、は、・・・・・今も一緒に住んでいるんですか?」
守田「いえ、えー、その結婚は4年で、えー、離婚をして」
弁護人「貴方の前刑は、何のため?」
守田「えー、殺人です」
弁護人「貴方のいくつの時のことですか?」
守田「はい?」
弁護人「いくつの時の行いで?」
守田「30・・・8歳です」
弁護人「その時は、何をしていましたか?」
守田「えー、その会社の、営業を」
弁護人「営業マン」
守田「はい」
弁護人「営業マンは、貴方にとって向いてましたか?」
守田「・・・・・まあ、あのー、人並みに、きちんとしていましたから、あー、何とも言えませんが、えー、向いてなかったような気もします」
弁護人「貴方が前刑で殺人を起こしたことについて、ああいう風なことが無かったら、そういう風なことが無かったら、というのはありますか?」
守田「・・・・・・えー、私の場合は、えー、その・・・きっかけとなった会社に入った、そして、接待という、えー、仕事、えー、接待を含めた仕事って言うのは、えー、あのまま、会社に行く前に、トラックの運転手をやってたんですけども、そのまま運転手をやっていたら、前刑の事件は無かったかな、と思った事はあります」
弁護人「トラックの運転手は貴方にあっていましたか?」
守田「はい?」
弁護人「貴方にあっていたんですか?」
守田「えー、あっていたと思います」
弁護人「その会社には何で入ったんですか?」
守田「えー、その、事件当時の会社の社長に誘われて、えー、電気関係が詳しいという事で誘われまして、そのまま、えー、入りました」
弁護人「・・・・・貴方の今度の事件」
守田「はい」
弁護人「先ほど聞きましたが、えー、貴方は、被告のことを、尊敬している、と言いましたね」
守田「はい」
 弁護人は、何か問う。
守田「はい、もう一度お願いします」
弁護人「被告は、尊敬に値する人物ですか?」
守田「はい!思ってました!」
弁護人「ということは、被告、も、尊敬するに値するものがある、という事ですね」
守田「そうです」
弁護人「貴方の尊敬することがある、とされる事を、仰っていただけますか?」
守田「えー、私に無いものをたくさん持っている。えー、知識が豊富で、えー、勤勉で、えー、何事に、取り組むにも器用でございました。そういう色んな面をくみまして、えー、えー、刑務所内では、よき相談相手となっていただきました」
弁護人「刑務所内での、貴方から見て、被告はよく本を読んでいた」
守田「はい、そうです」
弁護人「どのくらい本を読んでいたという記憶ですか?」
守田「えーっと、どのくらいって言われても困りますけど、えー、刑務所内で、えー、買える、範囲で、えー、一ヶ月で買える範囲の本を買って、えー、常に読み、ノートに、記録してたのを記憶しています」
弁護人「・・・・・貴方は、あの、前回の公判で、検察官の方で、貴方の事を」
守田「はい」
弁護人「敵対証人と、言葉はわかりますか」
守田「はい」
弁護人「そうは思っていません。そのつもりでお聞きくださいえーっと、貴方はこの裁判で、下されるであろう判決というものがありますね」
守田「はい」
弁護人「それを予想している」
守田「はい」
弁護人「・・・・弁護人は、事件を選べって言われるんですけど」
守田「はい」
弁護人「あのー、事件がおきても、選べない。私が弁護人をやりましたが、この事件の中では、特殊な主張をしている。貴方は解らないが、もしかすると、貴方の予想しているのと違う判決が出てもいいと思っている。そういう風なことになったら、貴方の余生が変わりますね」
守田「はい」
弁護人「貴方の余生って解るでしょ?」
守田「解りません」
弁護人「解らない。えーと、要するに、生きながらえることが出来る場合」
守田「はい」
書記が交代する。
弁護人「生きながらえることが出来る事があるかもしれないということを前提とした場合、あなたは、被害者のご冥福を祈る事は間違いないな?」
守田「はい」
弁護人「貴方は、前回の貴方の公判で、貴方は、なんか出来る事がある。貴方としては、万が一だな、生きながらえることが出来た場合に、貴方は、その間の人生で何をいたしますか?」
守田「えー、そういうことは、まるで、えー、一切、考えたことがありません」
弁護人「万が一の事ですよ?」
守田「今・・・・言われても・・・・とりあえず・・・・えー、余生を、冥福を祈るだけです」
弁護人「うん、貴方の得意な物は?」
守田「はい?」
弁護人「得意な物は何ですか!?」
守田「・・・・特別何も無いです。えー、強いていえば、えー、電気関係の、無線等ですか」
弁護人「何かモノを書くなんて事は、貴方は出来ませんか?」
守田「あー、・・・・意外と、筆不精なので、えー、一日一ページ、ノート一枚、えー、今、日記らしきものを書いているんですけど、ま、強いて言えばそれくらいです、から・・・・私自身、あんまり、文字を書くという事はできませんので」
弁護人「日記を書いてる。内容はどのようなものなんですか?」
守田「一日の出来事等と、いま、どういう本が読みたいとか、そういう記録です」
弁護人「貴方の、尊敬する人は?」
守田「・・・・それは、個人ですか(弁護人の方を向く)?」
弁護人「はい。具体的に言うと」
守田「・・・・よく、えーと、、名前がでる、良寛さんです」
弁護人「良寛さんを尊敬している」
守田「はい」
弁護人「良寛さんのことをもっと詳しく勉強してみたいと思いませんか?」
守田「えー、最近は、あんまり思っていません」
弁護人「だから!万が一生きながらえることが出来た場合、そのときは、貴方は、良寛さんの事を勉強してみたいと思いませんか!?撤回します。良寛さんの事をもっと勉強したいとは思いませんか?」
守田「はい」
弁護人「そういう風に勉強したものを、残しとく!ということをしたいとは思いませんか?」
守田「えーと、機会があれば、残したいと思います(やや小声)」
弁護人「ん!・・・・・・良寛さんを尊敬しているということは、貴方は仏教に関心があるということですか?」
守田「いえ、特別ー、仏教っていう、のではないと思います。えー、前刑で、禅宗ですか、えー、その時は、曹洞宗だったんですけど」
弁護人「うん」
守田「本を借りてますから」
弁護人「うん」
守田「先生から色々話を聞いて、そういった中から、ちょっと興味を持ちました」
弁護人「また、万が一の話ですが、そういった、良寛さんですか」
守田「はい」
弁護人「曹洞宗の勉強をしてみたいとは思いませんか?」
守田「まあ、あの・・・・チャンスがあればですけど」
弁護人「うん」
守田「えー、勉強したいと思います」
弁護人「うん」
検察官「本件との関連性がはっきりしないので、将来の質問はやめて下さい」
弁護人「いえ、あの、私としては全て関連性があるんですよ」
裁判長「今言った様にですね、関連性がわかりませんが。少し、あの、趣旨の解る質問をして下さい」
弁護人「私には、全部関連性があります!一つお聞きしたいのですが」
守田「はい」
弁護人「貴方の裁判の弁護人は」
守田「はい」
弁護人「どういう方針で弁護をされておられるんですか?」
守田「それは・・・・弁護人の先生方にお任せしているんで、えー、私では、ちょっと、えー、そういう、詳細について、えー、事細かに話した事も無いないので、ちょっと解りません」
弁護人「終わります」
裁判長「これで全部終わりですか?」
弁護人「はい」
裁判長「検察官、再尋問ございますか?」
検察官「えーと、一点だけ」

−検察官による守田克実への証人尋問−
検察官「検察官から確認します。先ほど弁護人からの質問にも出ていましたがー、貴方としてはー、被告人の出所の有無を確かめるためにオンダさんに電話して電話が無ければ、被告人が強盗殺人の事件をやることにはならなかったのではないかと言っていましたよね」
守田「はい」
検察官「貴方が出所後に被告人と再会した後、マブチモーターの事件に関して被告人が実行を躊躇する事、ためらうことっていうのはありましたか?」
守田「それは、被告人がですか?」
検察官「はい」
守田「えー、それは無かったと思います」
検察官「貴方のそのときの気持ちとすれば、貴方が電話をしなければ被告人がやらなかったのではないか、という気持ちだけなのか、それとも、貴方がいなくても、場合によっては、他の誰かを捕まえることがあって、結局はマブチモーターの事件はやっていたのではないか、という気持ちの両方があるのか、どちらですか?」
守田「えー、私と再会しなければ、ノートに書いてあったマブチ事件、それは、うー、パートナーとなる人が居たかもしれないです。しかし、その後の二件については、私が何回も何回も催促して、えー、無理やり、探し出した、事件ですので、えー、マブチ事件については、私と再会しないでも、出来た、かもしれません」
検察官「終わります」

−若い女性の裁判官による守田克実への証人尋問−
裁判官「えっと、貴方は、3件の、えーと、事件、所謂マブチ事件、我孫子事件、目黒事件を起こすのですが、えっと、その、えっと、起こす、事件を起こすに当たって、あのー、小田島の方は、被告人の方が、金品を探して、貴方の方が、結果的に家人を、ま、絞殺する事をしていますが、貴方が、家人を絞殺する、という殺害方法は決まっていたんですか?」
守田「えー、具体的に何でやるっていう事は、えー、決まってませんけど、当然、私達は、覆面してるわけじゃないし、最初から、証拠隠滅の為に、絞殺しなくちゃいけないっていうのはありました」
裁判官「貴方は、マブチ事件、その後の・・・・・えーと、我孫子事件で、ナイフを持って侵入していますけど」
守田「はい」
裁判官「このナイフは、何のために使う目的だったんですか?」
守田「えー、脅かすというか、あー、制圧のためです」
裁判官「ナイフを示して、脅す、という事ですか」
守田「はい」
裁判官「ナイフで、その、家人を殺害するという事は考えてないですか」
守田「それは考えてませんでした」
裁判官「は、考えて」
守田「いなかったです」
裁判官「いなかった」
守田「はい」
裁判官「例えば、家人が抵抗したりとかで、ナイフを使う、家人に傷つけたりとか、殺害する可能性があるという事は」
守田「あ、それは、あると思いました」

−丸顔の女性裁判官による守田克実への証人尋問−
裁判官「あのー、貴方が、結果的に3名の被害者の、殺害を、実行していますけれども、一件については、あのー、被告人、指を怪我しているという理由がありましたが」
守田「はい」
裁判官「他の二人については、どうして貴方が殺害を担当したことになったと思っていますか?」
守田「えー、被告人は、えー、えー、マブチ事件においては、えー、娘さんを二階に、えー、連れて行って、えー、確か、居間の方、ま、当然といえば当然ですけど、一階に居るのは私ですから。それと、被告人は、きっと、金品等を探してた、そういう段階でもありますし、えー、私がやるべきかと思いました。えー、我孫子事件に関しては、その時も、被告人は、えー、金品等、えー、一生懸命、えー、さがして、えー、私は、あー、被害者、を、えー、四六時中監視しているという状況で御座いましたから、当然、私がやらなくちゃいけない、と思っていました」
裁判官「目黒事件は、どうして貴方が被害者を殺害したのですか?」
守田「えー、それは、多分に、もうはっきり記憶は無いんですけど、えー、被告人が怪我をした、という事で、力が出せないっていう関係から、私がやってくれ、という事だったと思います」
裁判官「大島さんの事件も貴方が担当していますが、それはどうしてですか?」
守田「大島も、大島コイン事件も、目黒事件も、私が、えー、目黒事件については、最終的に私が、えー、タオルで、首を絞めてます」
裁判官「我孫子事件のときは、小田島被告人はまだ怪我をしていたんですか?」
守田「被告人がですか?」
裁判官「あ、はい被告人」
守田「えー、その時は、まだ怪我をしていました。もう、完治してるまではいかないですけど、指が曲がらない状態でした。他に、支障ないぐらいの完治だったと思います」
裁判官「そうすると、あのー、えー、最終的に、殺害するのが貴方の方だ、という事は、暗黙の了解が、後の二件についてはあったのではないですか?」
守田「・・・・ま、強いて言えば、暗黙の了解って言えると思うんですけども、えー、私自身、部屋の中に入ったら、えー、部屋の中で覆面してるわけじゃありませんので、証拠隠滅のために、えー、絞殺するというのは、常に頭にありました」
裁判官「覆面をしていない事は貴方も被告人も同じなので、同じように考える可能性はあるんですが、小田島被告人は、自分では、首を絞めたくないというような様子を貴方には見せていたんですか?」
守田「いえ、全く御座いません、それは。なぜなら、被告人は、そのー、中の金品等、を、えー、持ち出すので、えー、私が、その、現金にたいしては私もわかるんですが、他の品物については、全く無知なので、そういう面の、おー、作業というのですか、その方が忙しかったのではないでしょうか。たまたま、最終的に絞殺するのが私になったと思います」
裁判官「貴方としては、二人で犯行を短時間で終わらせるためには、そういう風な役割分担をしたほうが良かったと考えているんですか」
守田「はい、そうです(裁判官の発言の途中から答える)。だから、マブチ事件に関しても、一人で一人を絞殺したのではなく、二人で二人を絞殺したと思っています」
裁判官「貴方の、前科に、殺人がありますよね」
守田「はい」
裁判官「それも、絞殺でしたよね」
守田「はい」
裁判官「そういう前科を踏まえて、小田島被告人が、貴方に、殺害については任せていたという事は考えられますか?」
守田「全くありません!」
 きっぱりとした声で言った。
裁判官「マブチ事件で、二階の被害者を殺害したことについて、小田島が、後日、何か、その時の心境や状況について、話した事はありますか?」
守田「えー、私は、あー、えー、一時期、(聞き取れず)なくなった、というのは何回か聞いたと思います」
裁判官「小田島被告人のほうが怯んでいた、という事は、貴方には考えられますか?」
守田「いや、そういう面では、私もやはり、緊張と、やってしまったなあ、という、そういう、気持ちから、落ち着きが無かったので」
裁判官「良寛について述べる時、よく出てくるという風に言いましたけれども、今、身柄拘束中にも、何か良寛に関るものを読んだりしているんですか?」
守田「いえ、そういうしようがないんで、読む機会がないので、えー、あのー、読んだり見たりする事は出来ません」

−裁判長による守田克実への証人尋問−
裁判長「あの、一点確認しますけれどね」
守田「はい」
裁判長「貴方と、小田島被告人との関係なんですけどね」
守田「はい」
裁判長「それは、上とか下とか在ったんですか」
守田「ええ、普通、通常通り、えー、被告人の方が年上なんで、えー、目上に対する普通の付き合いです」
裁判長「あのー、目上に対する普通の、というのは?」
守田「普通、一般社会で行なわれているような」
裁判長「被告人との関係において、何か命令を聞かなければいけないとか、そういう関係はありましたか?」
守田「・・・・それは特別なかったですけど、私自身は、えー、刑務所の中で話した事、あー、等において、えー、被告人の計画に乗れば間違いないんだ、という雰囲気から」
裁判長「貴方は、そう判断したと」
守田「そうです、はい」
裁判長「はい、それではこれで終わります。あ、弁護人、どうぞ」

−弁護人による守田克実への証人尋問−
弁護人「前の、えー、事件がありますけど、これは既遂だったんですよね?」
守田「はい?」
弁護人「未遂か既遂という、という区別はありますよね」
守田「はい」
弁護人「貴方の前の殺人ですが、あの、聞きますけど」
守田「はい」
弁護人「被害者の方は本当に亡くなったのですか?」
守田「はい」
弁護人「経験がないので聞きますが、人を殺してしまった場合ですね、人を、殺す事が、特別な事じゃなくなっちゃうんですか?」
守田「・・・・・それは、あのー、一件一件、あのー、・・・・被害者各々の、全くそういうことはないと思います」
弁護人「わが国の刑法には死刑がありますが」
守田「はい」
弁護人「死刑については、抑止力がある、犯罪抑止力になるという考えがありますが、貴方の場合、死刑があるから犯罪をやらないようにしようとか考えたことはありますか?」
守田「えー、それは、なかったと思います」
弁護人「終わります」
裁判長「それでは、退廷を」

 守田は、検察官と弁護人の方を交互に見ながら立ち上がる。そして、手錠をかけられる。少し下を見ながら退廷した。
 被告人と守田を隔てていた衝立は、守田が退廷した後、取り外される。

裁判長「じゃあ、本日の予定はこれで終了します。次回につきましては、前回指定しておきましたけれども、10月17日午後2時から、検察官の請求どおり、X1証人の尋問を行ないます。えー、それから、被告人は10月17日、この法廷に出頭してください。では終わります」
 被告人は、頭を裁判長の方に下げる。そして、俯いて退廷した。公判の間は、手を膝の間で組み、下を向き、瞬きをしながら、証言を聞いていた。
裁判長「あのー、この後の時間ですね、弁護人とちょっと打ち合わせをしたいんですよ。甲号証。場所は、今お伝えしたとおり」
弁護人「接見禁止のことを・・・・」
裁判長「それも。じゃあ、場所は、今お伝えしたところで」
 5時まで予定されていたが、3時10分で終わった。

事件概要  小田島被告は守田克実被告と共に強盗目的で以下の犯罪を犯したとされる。
1:2002年8月5日、千葉県松戸市で会社社長宅に侵入し、社長の妻と娘を殺害して家に放火した。
2:2002年9月24日、東京都目黒区で歯科医師を殺害した。
3:2002年11月21日、千葉県我孫子市で金券ショップ社長の妻を殺害した。
 また、主な前科として1990年に社長一家7人を監禁し、現金3億円と貴金属を奪った事件がある。
報告者 相馬さん


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