裁判所・部 千葉地方裁判所・刑事第一部
事件番号 平成17年(わ)第2100号等
事件名 住居侵入、強盗殺人、現住建造物等放火、電磁的公正証書原本不実記録、同供用、電磁的公正証書原本不実記録幇助、同供用幇助、有印私文書偽造幇助、同行使幇助、旅券法違反幇助
被告名 守田克実
担当判事 根本渉(裁判長)
日付 2006.5.25 内容 更新手続

 傍聴券の締め切り時間は1時だった。29枚の傍聴券を求めて、30人が並んだ。その多くはマスコミ関係者らしかった。
 入廷前、廊下で、職員の男性が、関係者らしき人々に、撮影の事を説明していた。開廷前に、報道による2分間のビデオ撮影が行なわれた。
 遺族席は、14席用意されていたが、11人が座った。記者席は、14席用意されており、ほぼ満席になる。
 弁護人は、若い男性と、眼鏡をかけた色白で細身の青年。
 検察官は、眼鏡をかけた中年男性。
 裁判長は、眼鏡をかけた中年男性。裁判官は、2〜30代の女性二名。
 被告人は、頬のこけた、眉が太く浅黒い、白髪を丸坊主にした初老の男性。痩せているが、筋肉質な体の持ち主。背はやや高い。実直な工員、とでもいった風貌。上下とも青い服を着ていた。傍聴席に眼を向ける事無く、無表情で、上半身を少し揺らしながら入廷する。傍聴席に背を向けた形で座る。
 公判は、1時30分から、301号法廷で開始された。

裁判長「それでは開廷いたします。えー、被告人は、前へ出て下さい」
 被告人は、証言台に座る。
裁判長「えー、名前は何といいますか?」
被告人「守田克実です」
 小さめの、語尾が消え入りそうな声だった。
裁判長「生年月日は?」
被告人「昭和25年10月17日です」
裁判長「本籍は何処ですか?」
被告人「えー、群馬県伊勢崎市」
裁判長「えー、今現在は千葉刑務所に居ると言う事でよろしいですか?」
被告人「その通りです」
裁判長「えー、職業としては、現在は、特に無いですね」
被告人「はい」
裁判長「えー、それでは、貴方についての、強盗殺人等の事件について、えー、審理を行いますが、はじめに、裁判官の構成が変わりましたので、公判手続きの更新手続きを行ないます」
被告人「はい」
裁判長「えー、検察官、弁護人とも、以前の審理の従前どおりという事でよろしいですか」
検察官、弁護人「はい」
裁判長「えー、前回、黙秘権について説明を受けていると思いますけど、この法廷では、貴方は自分の不利になる事は喋らなくても構いません。ただし、ここで述べた事は、貴方の有利、不利を問わず証拠になります。解ってますね。えー、手続きの更新に当たって、前回に貴方が各事実について述べた事について、えー、特に何か違った事とね、言う事があれば、或いは変えたい事があればその点確認しますが。如何ですか?」
被告人「ないです」
裁判長「宜しいですか?」
 被告人は、頷く。
裁判長「では、更新手続きについては、これで終わります。えー、さらに本日は、えー、平成17年12月28日付けの起訴事実、それから、平成18年2月3日付けの起訴事実について、これらについての審理を行います。えー、始めに検察官から各起訴状の朗読がありますから、その場で聞いていてください」

−公訴事実−
〇平成17年12月28日付公訴事実
 被告人は、小田島鉄男と共謀の上、民家に押し入り家人を殺害して金品を強取しようと企て、平成14年11月21日午後6時10分ごろ、千葉県我孫子市茅ヶ崎台4丁目五番22所在のサンハイツA号館203号e方を、警察官を装って訪問し、応対に出たeの妻、d当時65年をして、開けさせた玄関ドアから同居宅内に押し入った上、その頃、同所において、前記dに対し、その顔面を手拳で殴打し、後ろ手錠をかけるなどの暴行を加え、その反抗を抑圧して、前記e他一名所有にかかる、現金109万円及び財布一個、時価約5000円相当等を強取した上、更に、殺意を持って、前記dの頚部に、アース用コードを巻き付けて締め付けるなどし、よって、その頃、同所において、同人を頚部圧迫により、窒息させて殺害したものである。
罪名及び罰状、住居侵入、強盗殺人
刑法第130条前段、第240条後段、第208条、第60条

〇平成18年2月3日付公訴事実
 被告人は、小田島鉄男(守田克実と言い間違えた)と共謀の上、民家に押し入り家人を殺害して金品を強取しようと企て、平成14年9月24日午後6時30分ころ、東京都目黒区目黒本町5丁目23番16号c方勝手口ドアから同居宅内に押し入り、同所において、c当71年に対し、殺意を持って、所携の刃物で、同人の左側胸部を突き刺すなどしてその反抗を抑圧し、同人所有の現金約35万円及びカレッジリング一個時価3万円相当を強取した上、殺意を持って同人の頚部をタオルで締め付け、よってその頃、同所において、同人を左側胸部刺創による左肺損傷に起因した、左側胸部胸孔内出血または絞頚による窒息により死亡させて殺害したものである。
罪名及び罰状、住居侵入及び強盗殺人
刑法第130条前段、140条後段、60条
 以上です。

裁判長「えー、起訴状の内容は解りましたね」
被告人「はい」
裁判長「えー、黙秘権については先ほど注意したとおりですけれど、これも問題ないですな。その上で、今、検察官が読み上げた起訴状の事実について貴方の言い分を聞きますけれども、えー、これらの事実は起訴状に間違いないと聞いていいのか、訂正点があるのか」
被告人「はい、間違いありません」
裁判長「起訴状の事実について、間違いないということでよろしいですか」
被告人「はい」
裁判長「えー、弁護人はいかがですか?」
弁護人「えー、平成17年12月28日付公訴事実については、被告人と同意見です。それから、平成18年2月3日付の公訴事実におきましては、事実関係については被告人と同意見ですが、一点だけ、情状についてですが、殺意を持って諸携の刃物で、えー、同人の左側胸部を突き刺し、というのは証拠上認定できないと思料しますので、その、証拠上の認定という趣旨で争うという事で」
裁判長「では、被告人は元に戻ってください」
 被告人、被告席に戻る。
裁判長「では、検察官の冒頭陳述を」

−冒頭陳述−
 検察官が、証拠により証明しようとする事実は以下の通りです。

・第一、被告人の身上経歴等については、従前の通りです。

・第二、平成18年2月3日付公訴事実、目黒事件の被害者の身上経歴等
1、本件強盗殺人事件等の被害者であるcは、昭和9年に新潟県内で出生し、新潟県内の旧制中学卒業後上京し、その後、現在の東京大学に進学し卒業した。cは、東京都内に歯科医を開業した。以下、c歯科医院という。新しい技術の習得にも励み、東京歯科大学で勉強し、博士号を取得したり、アメリカ合衆国の大学に講習を受けに行くなどし、また、患者の待ち時間の短縮等の為に、昭和30年代から予約制を取り入れるなど、熱心に仕事を行い、また、従業員とも円滑な人間関係を築いており、患者の評判も良く、本件殺害時まで歯科医を経営し、当時の被害者方において、妻と長男の三人で生活していた。
2、cは、昭和31年に、Y2と婚姻し、4人の子供を設けた。Y2は、cの歯科衛生士の学校に通い、その後、c歯科医院の歯科衛生士兼事務員として勤務し、夫であるcを支えていた。また、cは優しい性格で、子供を可愛がっていたうえ、娘さんをライオンズクラブに所属させ、アメリカ合衆国へもホームステイを許していた上、逆に、アメリカからのホームステイも受け入れていた。3人の娘はそれぞれ婚姻していたが、cは、三女の夫である、Y3も歯科医をしていたことから、同人を跡継ぎにしたいと考えていた。cの長男であるY4さんは、昭和47年に出生し、その後、内科医となったが、平成14年2月に婚姻した。

・第三、平成17年12月28日付公訴事実、我孫子事件の被害者の身上経歴等
1、本件強盗殺人等の被害者であるdは、eの妻である。eは、本件当時、株式会社eコインの代表取締役である。株式会社eコインは、昭和47年に、eが設立した会社を前身とし、昭和61年に、現在の社名になった会社であるが、同社は商品券等の販売の事業を行い、金券ショップのeコインを経営し、金券ショップの草分け的存在として、優良企業であったが、業績が悪化するなどして、平成13年には、手形不渡りにより、事実上倒産したが、その後も、資金繰りに困りながらも、営業を続けていた。
 dは、昭和14年に茨城県内で出生し、高校卒業後会社員を経て昭和38年にeと婚姻した。以後、本件被害にいたるまでの間、株式会社eコインの関連会社の取締役に就任し、eの仕事を手伝うと共に、主婦としても、eを支えていた。dとeの夫婦は、昭和39年に長男を、昭和42年に長女を、昭和44年に次女を設けたが、次女は亡くなり、長男及び長女は何れも結婚して独立し、e、dは、本件当時は、本件被害者方でeと二人で生活していた。

・第四、平成17年11月11日付公訴事実マブチ事件後の状況等について
 被告人は、平成14年8月4日、マブチ事件を敢行した後、群馬県伊勢崎市日の出町459番地4レオパレス1号第二の207に共犯者小田島鉄男と共に戻り、小田島から強取した金の分け前約58万円を授与した。被告人は、期待していた億単位の金は手に入らなかったものの、60万円近くの現金が手に入った事から、ゆとりある生活ができると考えた。
 その後、小田島は、自動車運転免許を取得するために、所謂合宿教習を申し込んだ上、レオパレスを出て、池袋のホテルで生活するなどし、被告人と小田島は離れて生活するようになった。
 被告人は、パチンコにふけったり、フィリピンパブに行くなどした上、同月20日から30日の間、フィリピン人ホステスと共にフィリピン旅行に行った。フィリピン旅行の為に25万から30万円くらいを費消するなどしたため、同年9月2日頃には手持ちの金が大分少なくなっていたが、、レオパレスの家賃約8万円を支払い、パチンコ等の遊興費に費消したため、同年9月上旬ごろには、金に窮するようになった。
 被告人及び小田島は、同年9月初旬頃から、再びレオパレスで一緒に生活するようになった。被告人は、金に窮した事から、小田島に「金が無い」と頼みこみ、小田島から時々金を貰って生活費に当てるなどしていたが、ガソリン代や、パチンコなどの遊興費に当てる金が無く、レオパレスに閉じこもって、パソコンゲームをして暇を潰すなどしていた。
 被告人は、このような、パチンコも出来ず、フィリピンパブ等にも行けず、部屋に引きこもった生活に嫌気がさしたが、地道に真面目に稼動しようとは考えず、一攫千金を狙って、再度、マブチ事件のように、資産家の家に押し入って、多額の多額の現金などを強取して、家人を殺害する事件を実行しようと考え、小田島に対し、「前みたいに資産家を狙いましょうよ」等といって、再度資産家を狙った強盗殺人計画等事件の計画を立案してくれるよう提案した。しかし、小田島は、その時点では犯行対象についての十分な情報が無かった事等から、被告人に対し、「今は情報が無いからマンションにでも入って泥棒でもするか」等と言って、とりあえず一緒に空き巣をやる事を提案し、被告人も、その提案に応じた。そこで、被告人及び小田島は、マンション等を狙って空き巣を繰り返すようになった。被告人が自動車を運転して現場付近に行き、車内で待機した上見張りをするなどし、小田島が侵入して現金を盗み出す役割を担当した。

・第五、目黒事件における強盗殺人の共謀が成立した状況及び犯行準備の状況等
1、被告人は、空き巣が強盗殺人等事件と比べて、逮捕される危険は同じなのに入手できる現金が少なかったので、やはり一攫千金を狙って、小田島と共に資産家を狙った強盗殺人等事件を実行しようと考え、平成14年9月中旬頃、小田島に対し、「前みたいに金のあるところを狙おうよ。どっちにしろ捕まったら同じなんだから」等と言って、再度、一緒に資産家を狙った強盗殺人等事件を実行する事を誘った。小田島は、当初は曖昧な返事をしていたものの、被告人が何度か誘ううちに、被告人と一緒に一攫千金を狙うため、その誘いに応じ、被告人に対し、宮城刑務所服役中に犯行対象の候補として情報を集めていたゲームソフト会社の社長を選定した。そこで、被告人及び小田島は、平成14年9月中旬頃、横浜市内の上記社長宅を下見したが、近隣の家屋に防犯ビデオが設置されていた事等から、被告人等の犯行と発覚するのを恐れ、上記社長を犯行対象として強盗殺人等計画を実行することを中止した。下見からタクシーでレオパレスに戻る途中、小田島は、「医者を狙おう」と言い出したうえ、立ち寄ったコンビニエンスストアの前に設置されている公衆電話から電話帳を盗んだ。小田島は、レオパレスの部屋内において、電話帳に掲載されたc歯科医院の広告を被告人に示し、「ここをやる」等と言って、c歯科医院を強盗殺人等事件の犯行対象に選定し、被告人はこれを承諾して、共謀を遂げた。
 そして、同月19日、被告人及び小田島は下見に行くことにし、レオパレスを出てタクシーで東京に向かい、池袋駅付近のパチンコ屋で、小田島が交際中のフィリピン女性と会い、その後、被告人及び小田島はパチンコをした後、cの病院や自宅の下見に行った。被告人は、c歯科医院が、cビルに入っていたことから、cは自社ビルを持つ金持ちであり大金を奪い取れると思った。被告人が家屋で待機中に、小田島が、cの自宅を探しにいき、小田島がcの居宅を発見して戻ってきたことから、被告人及び小田島は、歩いてcの居宅を下見に行った。被告人は、cの居宅が、白っぽい家に囲まれたコンクリート作りの二階立ての大きな建物であったことから、金持ちに間違いなく、cから大金を奪えると考えた上、人通りが少なく防犯カメラのあるような場所ではない事が解った。小田島は、cの居宅を下見した結果、強盗殺人等事件を実行できると考え、下見の翌日、ないし翌々日、被告人に「モリさん、暫くしてからやろう」と言って、マブチ事件と同様に、cの居宅に押し入り、金を強取し、殺害してから強盗をする事を提案し、被告人はそれを「解った」と返答して、承諾した。小田島は、被告人に、cから金を強取する方法について、医院の前で院長が出てくるのを見張り、院長らしき男が出てきたら二人で後をつける、院長が医院を出る時間を見計らってナイフで脅し二人で一緒に押し込んで金を奪う、等と説明した。

・第六、目黒事件にかかる強盗殺人等の犯行状況等
 被告人は、平成14年9月23日、小田島から翌日に、本件を実行することを伝えられた。同月24日午前10時ごろ、被告人及び小田島は、被告人運転のパジェロで、レオパレスを出発してc宅に向かった。被告人は、手袋をジーパンのポケットに入れて準備し、小田島は、被害者を脅す等のために使用するナイフ、手袋及び電話帳から切り取ったc歯科医院の広告等を準備して、c宅に向かった。被告人及び小田島は、同日午後2時ごろ、c歯科医院付近に到着したが、医院が終了する時間が午後5時から5時半くらいだと思われたことから、先ず小田島が一人でc方の様子を見に行き、戻ってきた後、再度、被告人と小田島の二人でc方を下見に行った。被告人らは、パジェロに戻って車内で暫く休憩し、その後、二人でc歯科医院の様子を見に行ったが、二人一緒では怪しまれると考え、無関係な通行人を装い、ある程度の距離を置いて医院の様子を伺っていた。小田島は、その後何度かc方の様子を見に行き、被告人はパジェロを駐車する場所を移動させた。小田島は、c宅の人の出入りが全く無かったことから、c以外の家人は留守であり、好機であると考え、同日午後4時半ごろ、被告人に、「モリさんやるぞ」等と言って、医院から出てきたcを尾行し、c方に入るところを襲って、ナイフなどで脅しながらc宅に押し入り、金のありかを聞き出して金品を強取した後、殺害して逃亡するという計画を実行することを伝えた。
 被告人及び小田島は、同日午後5時ごろになってもcが出てこないことから、見逃したかもしれないと考えた小田島は、被告人に「家の様子を見てくる。モリさんは医院を見張っていてくれ」といって、c宅に向かった。cは、Y3が所有するY3歯科医院において、Y3にあう予定であったところ、自宅に立ち寄って自宅にある書類を持ってY3歯科医院に向かうために、自転車で自宅に書類を取りに行く途中だった。同日午後6時30分頃、小田島は帰宅したcを発見したことから、c方の勝手口からc宅に押し入った。
 強盗殺人等の犯行状況は、平成18年2月3日付けの起訴状の公訴事実記載の通りです。
 小田島は、所携のナイフをcに突きつけたものの、cから抵抗された事などから、殺意を持ってナイフをcの左側胸部あたりを突き刺すなどしたが、その際、小田島も右手親指を負傷した。小田島は、cの両手を電気コードで縛るなどした上、自己の携帯電話から被告人の携帯電話に電話をかけて、被告人にすぐ来るように伝えた。小田島は、cを刺した後、cから50万円があるなどと聴きだすことが出来たが、cが、親戚と会う約束がある、親戚の者が来る旨言っていた事から急ぐ事にし、落ち着いて金を探すことが出来なかった。
 被告人は、小田島の様子から、cが帰宅したため、小田島一人でc方に押し入ったと考え、c方に向かった。被告人は、c方に到着し、玄関から入ろうと考え玄関のチャイムを鳴らすなどしたが、小田島が出てこなかった事から訝しく思ったものの、小田島が勝手口から出てきて自転車を敷地内に移動させたのを見たことから、小田島に続き勝手口からc方に侵入し、勝手口の内鍵を閉めた。被告人がc方居間へ入ると、cが、階段がある廊下の出入り口付近で、足を廊下の出入り口に向け、頭部を勝手口側の出入り口方向に向けて、体の右側を下向きにして横向きに倒れていた。被告人が近付いて確認すると、手を電気コードのようなもので縛られていた。左胸辺りから多く出血していたが、弱い呼吸をしており、上半身が少し動いていた事から、まだ死亡していない事が解った。被告人は、cをナイフで刺し殺したら、大金のありかを聞きだせなくなることから、小田島はcから強い抵抗を受け、その抵抗を封じて金品を奪うためには刺し殺すしかないと考えて、刺したのではないかと考えた。被告人が、cの近くに立っていると、小田島から「怪我したから力が入らない、モリさんやってくれ」と言われて、殺害を指示された。被告人は、当初から金品を強取した後に家人を殺害する予定であった事から、小田島に対して頷いて承諾した。被告人は、現金等を奪う事は小田島に任せる事にし、cを確実に殺害しなければならないと考え、被告人は、首を絞めて殺すなら確実だと考え、ひも状の物を探したところ、白っぽいタオルが目に付き、時間がなく急いでいた事から、他の物を探す事無く、これを使用してcを絞殺する事にした。そこで、被告人は、タオルをきつく絞り、中腰になってタオルをcの頚部に巻きつけ、後ろで交差させて結んだ。この時、被告人はcが苦しそうな弱い呼吸をしていた事に気付いたが、右手を左手に持ち替えてタオルの両端を2,3分渾身の力をこめて強く引っ張ったところ、ぱくっという感じでcの首に力が抜け、両手に重みを感じた事から、cが死亡したと思った。被告人は、cが死亡したと思ったが、万一気を失っただけでは大変だと考え、確実に殺害するために、更にもう一度力をこめて締め付けた。被告人はこのようにしてcを殺害したが、更に念のためタオルを更にもう一度交差させて、締めつけた。しかし、被告人はcが息を吹き返すかもしれないとの不安にかられ、更に別のタオルを使用してcの首を締め付けたが、cが全く身動きしなかった事から、間違いなく死んでいると確信した。
 その頃、小田島が二階から戻ってきて「行くぞ」と言って、すぐに逃げると伝えてきた事から、被告人が先ず勝手口から逃走し、奪った現金等を所持した小田島が、被告人に続いて、勝手口から逃走した。

・第七、目黒事件の犯行直後の状況等
 被告人及び小田島は、徒歩でパジェロを路上駐車していた場所まで戻り、被告人運転のパジェロでレオパレスに向かった。小田島は、ナイフにcの血液が付着していたことから、ナイフを投棄することにした事から、被告人運転のパジェロで利根川に向かい、マンキョウ(?)大橋付近においてナイフを川に向かって投棄した。
 レオパレスに到着し、被告人が小田島から渡された封筒の中の札を数えたところ、1万円札で約35万円あった。家賃の支払い等があるため、被告人は小田島から分け前として20万円を受領し、翌25日に、三井住友銀行板橋支店の口座に入金した。
 小田島は、リュック等に自己ないしcの血液が付着していたことから、衣類を捨てておくように被告人に伝え、被告人は、被告人及び小田島の靴、衣類をゴミ袋に入れ、翌日に、レオパレスから少し離れたゴミ置き場に捨てた。

・第八、目黒事件後の状況
 被告人及び小田島は、期待したほどではないが、ある程度のまとまった現金が手に入ったため、一週間から二週間くらいは空き巣をする事なく生活していたが、強取金を生活費等に費消し、金品に窮するようになった。
 そこで、被告人及び小田島は、再び空き巣をするようになった。被告人は、空き巣を繰り返していたものの、やはり空き巣は入手できる現金が少ないにもかかわらず、逮捕される危険は同様である上、これまでに三人も殺害していることから、捕まれば死刑は間違いない、あと一人くらい殺害しても変わらない、等という思いになり、大金を得るため小田島と共に資産家を狙った強盗殺人事件等を実行しようと考え、同年10月上旬ごろには、小田島に対し、「金持ちのところを狙おうよ」等と言って、一緒に資産家を狙った強盗殺人等事件を実行する事を誘うようになり、小田島もその誘いに応じた。そして、被告人及び小田島は、以前に一度下見に行ったゲーム会社社長宅を犯行対象として選定し、再度同居宅を下見するなどしたが、前記の通り防犯ビデオが設置されていた事等から、同年11月中旬ごろ、同居宅を犯行対象として強盗殺人等事件を実行する事は断念した。
 その後、被告人は一攫千金を夢想し、小田島に対し「金持ちの所を狙おうよ」と等と言って、一緒に資産家を狙った強盗殺人等事件を実行することを誘い、小田島はその誘いに応じて、被告人に対し、犯行対象を探す旨返答していた。

・第九、我孫子事件にかかる強盗殺人の共謀が成立した状況及び犯行当時の状況
 小田島は、大金を得るため、被告人からの誘いを受け、犯行対象を探したところ、昭和の時代に金券ショップのeコインに来店した際、その活況振りが印象に残っていた事等から、eコインには多額の現金があると考え、eコインを犯行対象に選定した。そこで小田島は、平成14年11月15日頃、レオパレスにおいて、守田に対し「神田にeコインという店があるから、其処を狙おう。金券や商品券とかあるし、客がたくさん来てたから大金があるはずだ」等と言い、eコインを犯行対象として一緒に強盗殺人等事件を実行することを提案し、被告人は小田島に対し、「その店でやろうよ」等と言って、その提案に応じ、強盗殺人等事件を実行に移す旨の共謀を遂げた。そして、小田島は、被告人に対し、犯行計画として、eが居る時にeコイン店舗内に入る事、eを脅して現金の所在等を聞き出すこと、脅し道具として刃物を使用すること、店舗内の現金を強取した後にeを絞殺すること、絞殺道具は現地調達することなどを伝え、被告人はこれに同意した。
 同月18日、被告人及び小田島は、被告人運転のパジェロで千葉まで至り、eコインを下見した。その際、小田島は、eコインが繁華街の交差点に位置していたこと等から、eコイン店舗内に直接押し入るということは実現が困難であると考えた。そこで、被告人及び小田島は、従来の犯行計画をもう一度検討して、最終的に、帰宅途中のeを襲い、eを店舗に連行するという事、マブチモーター事件同様e方に侵入し、先ず家人の抵抗を奪い、その後、eらの帰宅を待ち、eの抵抗も奪い、e方にある金品を奪い、eを店舗に連行するという方法を取ることを決めた。その後、被告人及び小田島は、eを尾行してe方の所在を確認するため、eコイン付近で、eがeコインから帰宅するのを待った。
 同日夜、eが帰宅するためにeコインから出てきたので、小田島は一旦被告人と別れて、eを尾行し、神田駅で電車に乗車して天王台駅まで赴き、我孫子市内のe方に辿り着いた。その後、小田島は、電話で被告人と連絡を取り、被告人は天王台駅まで赴き、その後、被告人及び小田島は、被告人運転のパジェロでe方付近に赴き、下見した。同月19日、被告人及び小田島は、東京都都内豊島区内のアダルトグッズショップで、手錠、催涙スプレー等を購入するなどした。その後、同月20日未明、小田島はレオパレスで被告人に対し、「モリさん、明日やろう。社長宅に入る時には、警察のふりをしよう。警官のふりをするためにスーツを着ていこう。包丁や催涙ガスは封筒に入れておく」等と言って、同月20日に犯行計画を実行する事、e方に侵入するときは警察官を装う事、警察官が書類を持っているかのように装うため封筒を持っていくなどを提案し、被告人はその提案に応じた。また、被告人及び小田島は手錠の使い方を練習したが、その際小田島は、鍵を使わずに手錠を外すための開錠レバーを見つけたところ、e等に手錠をかけた時に開錠レバーで外されないようにするため、開錠レバーを工具で削るなどして使えないようにした。
 被告人及び小田島は、警察官を装うためスーツネクタイ等を着用した上、同日午前10時ごろ、被告人運転のパジェロでレオパレスを出発して、e方へ向かった。被告人及び小田島は、e方周辺を下見するなどし、同日夜からは、帰宅途中のeを襲うため、天王台駅周辺で同駅から出てくるeを待ち伏せしたが、eは発見できなかった。そこで、小田島は被告人にたいし、「今日はもうやめよう。社長は見つけられないし、社長を拉致するのは難しそうだ。明日社長の家に押し入ろう」等と言い、e方に入ることを伝え、被告人はその提案に応じた。その後、被告人及び小田島は、高速道路川口パーキングエリアに駐車中のパジェロで撤収した。

・第十、我孫子事件にかかる強盗殺人等の犯行状況等
 同月21日、被告人らは被告人運転のパジェロでe方に向かったが、足がつかないようにするために、パジェロをe方から離れた場所に駐車して降車し、それからe方に行って計画を実行する事とした。
 被告人及び小田島は、e方付近に行き、その下見をして、再度被告人運転のパジェロで取手駅周辺に向かい、駐車場にパジェロを駐車し、被告人らは手錠及び催涙スプレー等を携帯して、取手駅に歩いて向かい、取手駅から電車に乗り、同日午後4時26分頃、天王寺駅で電車を降りた。それから、被告人及び小田島は徒歩でe方に行き、e方周辺を下見した。小田島は、家人をしてe方玄関ドアを開けさせるため、e方付近の公衆電話からe方に電話をかけ、電話に出たdに対し、警察官を装って、これから訪問する旨伝え、その後直ちに、被告人に対し、「今から入ろう」等と声をかけ、被告人及び小田島はe方のマンションに向かい、同月午後6時20分ごろ、同マンション二階のe方玄関前に到着した。
 強盗殺人事件等の犯行状況は、平成17年12月28日付公訴事実記載の通りです。
 小田島は、e方のインターホンを押し、dが玄関ドアを開けて対応するや、警察官を装って玄関内に入りこみ、被告人も小田島に続いて玄関内に入り、玄関ドアを施錠した。そして、小田島はdに対し、その顔面に所携の刃物を突きつけて脅しながら、「逆らうと殺すぞ」等と言い、さらにその腕をつかむなどしてdを台所の脇へ押し込んだ。dが文句を言ったり、小田島の手を振り払おうとして体を横向きにしたところ、小田島はdに対して「うるさい!」等と怒号しながら、その顔面を手拳で数回殴打した。さらに、小田島は、dに対し、その腕を背中の方へねじりあげ、背後から押して、dを台所から居間を通って寝室(食堂脇)まで連れ込み、dを寝室の敷布団にうつ伏せに押し倒した。そして、小田島は、dの両腕を背中に回して押さえつけ、被告人は、小田島から手錠をかけるよう指示を受け、小田島の押さえているdの両手首に後ろ手に手錠をかけた。更に、被告人は、dの頭部をタオルで塞ぎ、タオルを縛って、頭部に固定した。小田島は、dに対し、「金は何処にある」等と詰問したが、dは「ない」等と返答した。そこで、被告人及び小田島は、それぞれe方で金品を物色した。小田島は、千円札の束を見つけ、被告人は現金数万円在中の財布を見つけ、小田島にそれを手渡した。小田島は寝室の箪笥を物色するなどしていた際、dから、eコインには借金が多くて儲かっていない旨伝えられた。その後、小田島が居間に移動し、被告人が寝室に移動した際、被告人は、極度に畏怖しているdから現金の所在を聞きだせるかも知れないと考え、dに対し「金は何処だ」と詰問したところ、dは被告人に対し「eに内緒の金が100万円ある、押入れの中の引き出しに入っている」等と言った。そこで被告人がdの言葉に従って、押入れ内の整理箪笥の引き出しを引きぬいて、その中身をその場に出した。その中身に現金100万円を発見し、小田島にこれを手渡した。また、被告人は、寝室内を移動する際、椅子が邪魔だったので、右手で掴んで椅子を移動させた。小田島は、e方内で予想外の多額の現金を入手できた一方、dからeコインは借金が多くて儲かっていない旨言われた事や、実際にe方には想像していたよりもかなり狭く、その住民であるeが儲かっているとも思えなかったこと等から、今後更に危険を冒してeの抵抗を奪ってeをeコインの店舗に連行しても大した金品を奪えない可能性が高いと考え、此処で犯行計画を中止し、罪障隠滅の為にdを殺害して逃走する事に決めた。
 そこで小田島は、台所の電子レンジのアース用コードを所携の刃物で切断し、その両端を束ねると、被告人に対し、「絞めろ」といって、上記アース用コードを使用してdを殺害するよう指示した。被告人は、その指示を受け、小田島から上記アース用コードを受け取ると、寝室に座っていたdに対し、その背後から頚部に上記アース用コードを二重にして巻きつけて締め付けるなどし、dを殺害した。
 その後、被告人は上記アース用コードを絞め直して、固結びにして固定し、また、dの両手首にかかった手錠を鍵を使用して外した。
 小田島は、e方にあった多量の切手を持ち帰るために整理していたが、全ての切手を持ち帰ろうとすると、整理が煩雑であることや、予想外に多額の現金を入手できたこと等から、切手の一部はその場においておくことに決め、e方にあった紙袋に百万円在中の封筒や一部の切手類を入れた。その後、被告人は、小田島から手渡された上記紙袋を開け、玄関ドアから逃走し、小田島も被告人に続いて逃走した。

・第十一、我孫子事件の犯行直後の状況
 被告人及び小田島は、徒歩で天王台駅に向かい、同駅から電車で取手駅まで行き、同駅付近の前記駐車場から、被告人運転のパジェロでレオパレスに戻った。小田島は強取した金品を確認し、被告人に対し分け前として約50数万円を手渡した。

・第十二、我孫子事件において強取した現金の使用状況等
 被告人は、分け前の50数万円をパチンコ代、生活費等に費消した。また、被告人は、強取した多数の百円札の内、数万円を貰い、平成17年4月に別件窃盗で逮捕されるまで、それらをレオパレスで保管し、残りの百円札については、小田島が買い物などに使用した。小田島は、強取した切手については、その後、別件窃盗で盗んだ切手と一緒に東京都内の金券ショップで換金した。

・第十三、その他情状等
 以上の事実を立証するため、証拠等関係カードに記載の関係各証拠を請求いたします。

裁判長「はい、証拠請求に対する弁護人のご意見は如何ですか?」
弁護人「甲225号証、250号証を除けば全て同意します」
裁判長「検察官、要旨の告知をしますので、被告人は聞いていてください」

−要旨の告知−
・甲203号証、被害者の供述で、その経済状況、被害者の友人の供述、被告人らの供述から、盗まれた被害金について特定するなどした報告書で、被害金は現金100数万円と財布一個等という報告書。
・204号証、犯行後の犯行現場の状況及び被害者の状況を写真に撮影するなどした実況見分調書。
・205号証と206号証、死体検案書と死体解剖鑑定結果報告書。被害者の死因等について、絞頚による窒息死であるという事。
・207号証、鑑定医から話を聞いた警察官の報告書で、コードによる絞頚、首を絞めた事による窒息というのと矛盾しないという事、また、被害者の顔面の負傷状況は手拳で撲られたものと考えても矛盾しないという報告結果です。
・208号証は、被害者の戸籍で、被害者の身上
・209号証、犯行に使われたコードの形状などを写真に撮影するなどした実況見分調書。
・210号証、同じく犯行に使われた、猿轡に使用したタオルの形状等の実況見分調書。
・211号証は、被害者の着衣等を写真に撮影するなどした実況見分調書。
・212号証、犯行に使用した手錠を写真に撮影するなどした写真撮影報告書です。
・213号証と214号証、被害現場の椅子から採取された掌紋が、被告人の右手の掌紋と一致するという、指紋の採取です。
・215号証は、店主の供述で、小田島の使っていたY1名義で、売却されているという供述です。
・216号証と217号証は、被害者の夫、eの供述で、被害者を発見した状況、被害者の身上等、冒頭陳述で述べたとおりです。
・218号証、被害者の長男である、Y5さんの供述で、生前の被害者の生活状況等です。
・219号証、被害者の娘であるY6さんの供述で、被害者の生前の生活状況等に関する供述です。
・220号証は、被害者の友人のY7さんの供述で、被害者の生前の生活状況等、交際状況、人柄等について述べた調書です。
・221号証、被告人立会いの犯行再現状況に関する実況見分状況で、被告人立会いの下で犯行状況等を再現したものです。
・222号証と223号証、共犯者小田島の書いた告白書という書類で、本件犯行を被告人と共に行った事は間違いないというものです。
・224号証、共犯者小田島の警察官に対する供述で、本件の犯行自体は間違いないが、詳しい犯行状況の調書には応じない、という供述など。
・226号証、平成18年2月3日付公訴事実についての被害届です。
・227号証、同じく、強取金が判明したことによる、被害の追加届出です。
・228号証、戸籍で、被害者の身上等に関するもの。
・229号証、消防隊員が当初デジカメで撮影したものをプリントして印刷した、被害者の発見当時の遺体の状況です。
・230号証、231号証は、死体検案書と鑑定書で、被害者の死因等。死因については、公訴事実記載の通りです。
・232号証、鑑定書に添付された写真についての説明です。
・233号証、鑑定医の身上についての供述。
・234号証、実況見分調書で、犯行現場の状況を写真に撮影するなどした報告書。
・235号証は、救急隊員の供述で、救急隊が到着した当時の被害者の状況等についての供述です。
・236から242号証まで、実況見分調書、または写真撮影報告書で、被害者の着衣、靴、靴下、被害者の首に巻かれたタオル、被害者の手を縛るために使った電気コード等を写真に撮影するなどしたものです。
・243号証、犯行現場で電話帳の切抜き等が発見され、それを写真に撮影するなどした報告書です。
・244号証と245号証、犯行現場付近の路上で血のついた手袋が発見され、それを領知したというものです。
・246号証、犯行に遣われたと考えられるナイフを被告人に示して確認した状況です。
・247号証は、そのナイフが本件犯行に使用されたと考えて矛盾がないかどうかについて、警察官が鑑定医にたいして確認したところ、このようなナイフで被害者に疵が生じたとしても矛盾しないという報告です。
・248号証、被害者が生前指輪を嵌めていたところを撮影した、被害品のカレッジリングの状況等です。
・249号証、共犯者小田島がY1等と名乗って、プラチナ等を売却していたという古物商の供述です。
・250号証は同趣旨です。
・251号証、銀行口座解析結果報告書で、被告人及び共犯者小田島の銀行口座の状況等を撮影したもので、被告人の口座に本件犯行直後に入金があった事などが判明しています。
・252号証と253号証。犯行現場から採取された血液のDNA型が、共犯者小田島のものと一致したという、DNA型の検査の報告です。
・254号証は、被告人立会いの下で被告人が犯行状況等を再現して写真に撮影するなどしたものです。
・255号証、256号証は、被告人の引き当たり状況についての報告です。255号証は、本件犯行にいたるまでの下見状況と、犯行現場にいたるまでの引き当たり。256号証拠は、犯行後被告人が逃走して、凶器であるナイフを捨てた場所、さらに、犯行当時着用していた衣類をごみとして捨てた場所等についての引き当たりです。
・257号証は、被害者の娘の夫で、犯行当日、被害者と会う予定で、被害者を発見したY8さんの供述で、被害者の生前の状況等について供述しているものです。
・258号証は、被害者の長男Y9さんの供述で、被害者の生前の状況、処罰感情等について述べたもので、被告人に対して、極刑に、死刑にして欲しいと供述しています。
・259号証、同じくcさんの妻のY10さんの供述調書で、犯人は絶対に許せないので、厳罰にしてほしい、死刑にして欲しいという内容です。
・260号証、同じく、被害者の三女、Y11さんの調書。被害者の生前の状況、処罰感情等に関する供述です。
・261号証、262号証、同じく被害者の娘の供述です。
・263号証、共犯者小田島の告白書と題する書面で、本件の犯行状況等に関して、被告人と共にこの事件を犯したという事は間違いない、などという供述です。
・264号証から266号証まで、警察官に対する共犯者小田島の供述、検察官に対する供述。拘留質問等で、やったことは間違いない、等と供述しているものです。

検察官「写真を示した方が良いですか?」
裁判長「はい」
検察官「234号証を示します」
裁判長「被告人、立ってください」
 被告人は、証言台の前に立ち、検察官の差し出す写真を見る。検察官は証拠のページを捲り、被告人は身じろぎせず、それを見ている。ページを捲る音だけが、廷内に響く。そして、検察官は、自分の席に一度戻る。
検察官「254号証を示します」
 検察官は、再び被告人に証拠を見せる。
検察官「255号証を示します」
 検察官は、証拠のページを手早く捲り、被告人に見せる。
検察官「256号証を示します」
 ページを捲る音が響く。そして、検察官は、席に戻る。
裁判長「204号証ですか?」
検察官「はい。204号証を示します」
 検察官は、証言台に近付き、被告人に証拠を見せる。被告人は、身じろぎもせず証拠を見ていた。眼鏡をかけた弁護人も、証言台に近付き、証拠を見ていた。
検察官「221号証を示します」
 検察官は、被告人に証拠を見せる。
裁判長「ま、以上、現場の写真と、貴方自身が下見したり案内した写真に間違いありませんね?では、戻ってください」
 被告人は、被告席に座る。

・乙32号証、被告人が、マブチモーターの事件後に、小田島に対して新たな強盗殺人等の犯行を誘った状況等に関する供述で、冒頭陳述の記載の通りです。
・33号証、本件強盗殺人等の犯行を謀議した状況、準備状況、被害者方を下見した状況等に関する供述。
・34号証、犯行当日待ち伏せした状況等。
・35号証、同じく犯行当日、被害者宅に入るまでに下見した状況等。
・36号証、犯行に使用するための手錠を加工した状況等で、冒頭陳述で述べたとおりです。
・37号証、本件の被害者を絞殺した状況等についての、被告人の供述。
・38号証と39号証、本件犯行後逃走した状況、強取金を分配した状況等に関する被告人の供述です。
・40号証、被告人のマブチモーターの事件後の状況で、目黒事件に至るまで金銭に窮していった状況についての供述等。
・41号証、小田島に犯行に誘って、小田島と共に更に強盗殺人等事件を犯すことになった状況等についての供述です。
・42号証から43号証、本件犯行にいたる犯行当日の待ち伏せの状況等。さらに、犯行にいたる現場の犯行状況等。何れも公訴事実と冒頭陳述で述べたとおりです。
・44号証、犯行後、金銭の分配をした状況等に関する供述。
・44号証、現在の心境という被告人の供述で、「現在覚悟を決めて死刑判決を待つという気持ちです。被害者に対しては申し訳ない」等と供述しているものです。
 以上です。

裁判長「不同意部分の関係については、何か御座いますかね?」
検察官「不同意部分は撤回いたします」
裁判長「検察官の主張は以上ですか」
検察官「はい!」
裁判長「弁護人の立証のご予定は」
弁護人「はい。えー、先ずは、えー、なぜ本件のような、えー、重大犯罪が、えーと、起きたのか、その原因、並びに、背景理由等を科学的に明らかにし、もって被告人の情状に当てるため、所謂情状鑑定を請求します」
裁判長「検察官、ご意見は?」
検察官「検察官としては、不必要と考えます」
裁判長「えー、裁判所といたしましては、その、情状鑑定の請求は、留保いたします。被告人質問を先行させたいと思いますが」
弁護人「はい」
裁判長「被告人質問については」
弁護人「次回期日、被告人質問を実施したいと思っています」
裁判長「検察官は、どの程度」
検察官「一期日頂きたいと思います」
裁判長「ま、一日あれば検察官も被告人質問を行なえますね。では、次回と次々回に、被告人質問を行ないたいと思います。では、期日ですが、既に決めていますが、8月24日の午後1時15分、一応午後いっぱいと。それから、8月31日の1時15分から午後一杯で宜しいですね?」
検察官「はい」
弁護人「はい」
裁判長「では、これで閉廷します。それでは、今聞いていたと思いますけど、今日の審理はこれで終わりにします。次回、8月24日1時15分。次々回、8月31日1時15分。被告人質問を行ないます。では、閉廷します。次回8月24日、被告人質問を行います。被告人は退廷してください」

 4時30分まで予定されていたが、2時35分に公判は終わった。
 被告人は、傍聴席の方を見る事無く、無表情で退廷した。公判の間、被告人は、身じろぎすることは無かった。
 特別傍聴席の傍聴人は、被告人に険しい視線を向けていた。

 閉廷後、裁判所の外では、弁護人が記者の質問に答えていた。内容は以下の通りである。

 情状鑑定に関しては、刑事裁判だけでは凶悪犯罪の起きた理由が解らないので、医学的に鑑定して明らかにして欲しい。
 今後同種事案が起こらないようにするのがこの裁判の役割であり、量刑資料は多様であるべきである。
 犯行状況については特に争いは無く、被告人質問で明らかになる。
 事実関係を積極的には争わない。
 被告人との接見では、特に変わった点は無い。第二回後半の前に、特別な変化は無かった。
 小田島の公判がどうなっているかは知っているらしい。
 情状鑑定については、裁判所が決定すれば、しかるべき鑑定人を選定し、何故こうした事が起きたのか、鑑定してもらう。しかし、裁判所は採用するかわからない。

 この様に質疑応答を行なった後、記者達は散っていった。

事件概要  守田被告は小田島鉄男被告と共に強盗目的で以下の犯罪を犯したとされる。
1:2002年8月5日、千葉県松戸市で会社社長宅に侵入し、社長の妻と娘を殺害して家に放火した。
2:2002年9月24日、東京都目黒区で歯科医師を殺害した。
3:2002年11月21日、千葉県我孫子市で金券ショップ社長の妻を殺害した。
 また、主な前科として1989年に女性を殺害した事件がある。
報告者 相馬さん


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