裁判所・部 千葉地方裁判所
事件番号 平成17年(あ)第1644号等
事件名 C:傷害致死、殺人、死体遺棄、逮捕監禁致傷、逮捕監禁、監禁、監禁、詐欺、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反
伊藤:傷害致死、殺人、死体遺棄、逮捕監禁致傷、逮捕監禁、監禁
D:傷害致死、殺人、死体遺棄、逮捕監禁致傷、逮捕監禁、監禁
被告名 伊藤玲雄、D、C
担当判事 山口雅高(裁判長)
日付 2006.3.29 内容 初公判

 抽選が行なわれたが、時間までに希望者は4名しか集まらなかった。締め切り時間を過ぎてから、余った傍聴券を手に入れて傍聴しようとする人が幾人か来たため、最終的に、傍聴希望者は10数人となった。
 記者席は10席用意されており、かなりの人数が座った。
 特別傍聴席は13席用意されており、2人が座った。
 開廷前に、2分間の撮影が行なわれた。
 裁判長は、眼鏡をかけた丸顔の中年男性。裁判官は、痩せた20代ぐらいの男性と、眼鏡をかけた変わった髪型の中年男性。
 検察官は、眼鏡をかけた恰幅のある中年男性と、髪を真ん中で分けた20代ぐらいの男性。
 弁護人は、口髭を生やした中年男性と、30ぐらいの男性と、小柄な中年女性。白髪交じりの初老の男性と、眼鏡をかけた中年男性。
 Cは、丸坊主にスーツ姿の、やや色白ながっしりとした体格の男だった。やや眉が濃い。背筋をピンと伸ばして入廷し、生真面目そうな印象を与える。
 Dは、丸坊主にグレーの上下の服を着ており、やや凶暴そうな風貌だった。体格はガッチリしていて垂れ目。岩石のような印象。
 伊藤玲雄は、短い髪で、不健康そうな顔色、やや老けた印象を与える顔立ちであり、眼鏡をかけており、白い服を着ていた。神経質そうな感じで黒髪だった。
 被告人3名は、縄を外され、傍聴席に背を向ける形で被告席に座らされる。付き添いの戒護職員の数は少なかったが、いかにも柔剣道の有段者みたいなガタイのいい男達だった。

 先ずは、Cが証言台に立たされる。Cは、今までは徳島地裁で審理されていたらしい。この日、審理は更新された。

裁判長「名前は?」
C「C」
裁判長「生年月日は?」
C「昭和53年3月4日です」
 本籍、住居も質問される。ちなみにCの本籍地は岐阜県各務原市。
裁判長「会社役員ですね」
C「はい」
 裁判長は、組織犯罪処罰法の起訴事実について尋ねた。
裁判長「債務がある人間に嘘の郵便葉書を送り、『このままでは裁判になります。後で振り込んでください』などと言い、被害者26人から44万円を詐取したとありますが」
C「間違いございません」
 そして、Cは被告席に戻り、続いて、伊藤が証言台に立つ。
裁判長「名前は?」
伊藤「伊藤玲雄です」
裁判長「生年月日は?」
伊藤「昭和49年5月9日です」
裁判長「本籍は?」
伊藤「東京都・・・・」
裁判長「住んでいる所は?」
伊藤「東京都板橋区」
裁判長「職業は?」
伊藤「会社役員」
 伊藤は、被告席に戻り、続いてDが証言台に立つ。
裁判長「名前は?」
D「Dと言います」
裁判長「生年月日は?」
D「昭和55年10月2日」(注:昭和54年か?)
裁判長「住居は?」
住居、本籍共に東京都らしい。住居は東京都練馬区。
裁判長「仕事は?」
D「パチンコ店従業員です」
 Dも被告席に戻らされ、続いて、検察官が起訴状を朗読する。

−起訴状−
(清水と渡辺純一を含んでいます)
○平成17年7月21日付起訴状記載の公訴事実
1・清水、渡辺純一、被告人3名は、Eと共謀の上、千葉県船橋市のイトーヨーカドー近くの路上において、運転中のaを取り囲み、こもごも、aを襲い、車の窓ガラスをバットで殴打して割り、同人を車から引きずり出して自らの普通貨物自動車に押し込み、後ろ手錠をかけて、同車を疾走させて新宿区の事務所に連行、監禁し、手錠をかけ、前記aを脱出することを不可能ならしめて監禁し、ナイフで刺して右大腿部刺創の傷を負わせ、被告人Cは、清水ら11名と共謀の上、3時30分ごろ、aを、見張りを立てるなどして不法に監禁し
2・午前1時30分ごろ、bの背部をバットで殴ったり足蹴にしたりして、後ろ手錠をかけて拉致して事務所のある第7nkビルに不法に逮捕監禁した。また5名と共謀して見張りを立てるなどしてbを不法に監禁した。
第一の1、逮捕監禁致傷。刑法220条。第一の2、逮捕監禁。刑法220条。第二、監禁。上記第250条。

○平成17年8月12日付起訴状記載の公訴事実
1・清水、渡辺純一、D、伊藤、Cは、Eら五名と共謀の上、c当35年に対し、こもごもその顔面を手拳で殴打し、後ろ手錠を掛けて同人を不法に監禁し
2・Eら3名と共謀の上、d当22年に対し、数回手拳で殴打し、ビニール紐で手を後ろ手に緊縛して監禁した。
罪名、監禁。刑法220条。

○平成17年9月2日付起訴状記載の公訴事実
(1)被告人ら5名は、Eら5名と共謀の上、10月14日から10月16日の間、第7NKビルにおいて、b当35年に対し、その胸部や背部、顔面を手拳で殴打し、覚せい剤を注射したり、背部に熱湯をかけ、熱傷を負わせ、午前3時ごろに同人を前記傷害に基づく呼吸困難により死亡させ、(2)被告人5名は共謀の上、c当35年、a、d当22年を殺害しようと企てて共謀し、第7nkビルで被告人らの暴行により衰弱状態だったc、a、dを後ろ手錠で緊縛し、寝袋にくるみ、布製の粘着テープを頭部に巻きつけた。これにより呼吸不全に陥ったcを午前3時ごろ、呼吸不全で殺害し、鼻孔部を塞ぐことによってaを午前4時ごろ窒息死させて殺害し、午前4時ごろ、dの鼻孔部を両手で塞いで窒息死させて殺害し、(3)Eら3名と共謀の上、a、b、c、dの死体を普通貨物自動車に積載し、第7nkビルから茨城バイパス駐車場まで運搬し、4名の死体を、Jらに引渡し、死体を土中に埋没させて遺棄したものである。
罪名、傷害致死、殺人、死体遺棄。

 裁判長は、被告人達に黙秘権を告げる。
裁判長「言いたいことは自由に述べて結構ですが、発言はいずれの回でも証拠となります」被告人五名とは、この法廷で審理されている3名と、清水、渡辺純一、を指す。
 Cの園部弁護人が、起訴状について意見を述べる。
弁護人「只今の起訴状に求釈明事項があります」
裁判長「長くなるかな?」
弁護人「書面で纏めています」
 被告人3名は被告席に座らされる。
弁護人「1、平成17年7月21日付け起訴状記載の、b、aの監禁の意思は何時か。清水他11名と共謀の上、監禁したというが、その意思が生じたのはいつか。d監禁の意思が生じたのはいつか、三名殺害に対する共謀の意思が生じたのは何時か」
裁判長「監禁について、何時関与したか」
検察官「全て冒頭陳述で明らかにします」
裁判長「公訴事実にかかわるので、明らかに出来ませんか?弁護人、言いたい事は?」
 起訴状記載の時間では共謀とならない、と、Cの弁護人は主張する。検察官は、全体について責任を負う、と述べる。検察官は冒頭陳述で述べるという発言を繰り返した。
弁護人「10月14日の未明、と申し上げておきます」
裁判長「10月14日の未明で、時刻は特定できないが、途中から関与したと」
検察官、弁護人「はい」
裁判長「4番について、事前共謀ですか?」
弁護人「事前となります。関与の様態については、後に明らかにします」
 別の弁護人は、粘着テープを巻きつけたのが未必的な殺意となるのか確定的殺意となるのか、と疑問を述べる。
裁判長「テープを巻くことが実行行為か。不作為か、実行行為か?」
検察官「巻きつけた行為も実行行為と考えています」
 被告人3名は、促されて立つ。
裁判長「まず、伊藤玲雄、只今検察官が読み上げた起訴状に間違いはありませんか?」

 伊藤は、書面を取り出し、それを読み上げる。

−伊藤玲雄の書面−
 まず、bさん、cさん、aさん、dさんの4名のご冥福を心から深くお祈りします。
 人を殺す行為という極めて重大な行為は、社会にとっても、人間として、決してやってはいけない事であります。それも4人の命を奪うという度を越えて全く馬鹿げた痛ましい事件を起こしてしまいました。深くお詫びします。
 かつては仲間同士だった4人に対して、このような地獄の事態になってしまったことを、自分でも訝っています。心中は非常に戸惑っています。我が身を有利にする気持ちは一切ありませんが、裁判官の判断を謹んで受けたいと考えています。bさん、cさん、aさん、dさんのご遺族の方々に対して、心の底から哀悼の意を表します。
 私は、今回の一連の事件に極めて深く関わっています。刑事さんから、話をしない者もいると聞いています。私が話さないと、闇に埋もれてしまうコトがあります。亡くなった方はお話することができません。私がしっかりと洗いざらいお話することが、最低限の償いの一つと考えています。そうすることで4人にしっかり成仏してほしいです。事件から逃げる事無く向き合っていく固い決意です。

 ここで立ちっぱなしだった伊藤以外の被告人2名を座らせる。

−伊藤被告人の陳述− 
 起訴状について。平成17年7月21日付起訴状について。
 1−1の4行目の窓ガラスについて。私は、窓ガラスは殴打しましたが、他は殴打していません。
 5行目。私は、aさんをナイフで刺していませんし、ナイフの存在も知りません。私はaさんを引きずり出していませんし、運転もしていません。運転の指示もしていません。Cら5名と、私は共謀をしていません。私は、見張りの指示をしていません。
 (10行目についても異議を唱える)
 3行目。私は、足蹴にしていません。
 4行目から7行目について、私はその場から1人でbさんのマンションに向かったので、やっていません。
 平成17年8月12日付起訴状について。顔面を〜暴行を加えたについて。私は、手錠をかけていません。私は、dさんに暴力を振るわず、布で緊縛をしていません。確かに渡辺純一がdさんに暴力を振るったり緊縛を指示していましたが、私は容認していたのでなく怖くて止められませんでした。
 平成17年9月2日付起訴状について。熱湯をかけたり覚せい剤を注射する事は、他の者が勝手にやった事です。私は覚せい剤を見たことも使ったこともありません。
 7〜8行目、背部に熱湯をかけて熱傷は負わせていません。私はやっていないので、他に者がやったことになると思います。
 8行目、bさんが亡くなった時、私は別の場所に居ましたので亡くなったのを見ておりません。また、bさんの死体を直接には見ていません。5名ではなく、8名との共謀です。私は、殺害を企てたというより、清水、渡辺純一から圧力をかけられ命令されたというのが正しいと思います。(cについて)ガムテープを巻きつける行為は、全てはやっていません。私は外出しております。私は、呼吸困難は見ていません。私は、意図的に放置していません。私は医学の専門家でないから死因は解りません。私は殺害の意思は一切ありません。3名について、高速道路の出口までは運搬しましたが、その後は解りません。

 伊藤は、書面を読み上げる間、涙声になっている時もあった。

−伊藤玲雄の弁護人の書面−
 被害者、遺族について、弁護人からもご冥福を祈ります。ご遺族にも深く謝罪します。認否ですが、被告人の意見書のほうが正確です。
 平成17年7月21日付起訴状について、a氏への監禁致傷については認めます。伊藤は、ナイフの存在すら知りませんでした。b氏については、監禁致傷の範囲内で基本的に認めますが、金属バットで背部から殴打した事実はありません。
 平成17年8月12日付の、cさんとdさんに対する監禁致傷については認めます。ただ、熱湯をかけ、覚醒剤水溶液を注射したりはしていません。熱湯をかけるのは予測できませんでした。c氏殺害については、否認します。未必の故意、確定的殺意、何れも認めません。傷害致死の限度でなら認めます。a氏、d氏殺害については認めます。死体遺棄も認めます。伊藤は、清水、渡辺純一から、殺害を命じられました。殺害する事になった最大の責任は伊藤にある渡辺純一から責められ、家族、妻子の殺害も仄めかされました。伊藤が5人目の被害者になるかもしれませんでした。緊急避難的な類する行為の面があり、責任が阻却されて然るべきです。伊藤の当時の心理的状況ですが責任能力が低下しており、心神耗弱の認定は難しいが、今後の情状という点で取り上げていただきたい。

裁判長「7月21日付起訴状の、aさんに対する監禁致傷と監禁について、Cらと共謀の上、という所について争いますか?」
弁護人「争いません」
裁判長「傷害致死の点について、共謀について争いますか?」
弁護人「明確に認識してはいない、という事です」
裁判長「殺人について、8名なら解るが、5名は解らない、と言っていましたね。8名は、誰ですか?本人に聞いても?」
伊藤「京王プラザで集まった8名について、という事です。E、G、Fが含まれた共謀なら認めます」
裁判長「解りました。では、元に戻って。次、D」

 伊藤は深く礼をして被告人席に戻り、Dが証言台に立つ。
裁判長「検察官の起訴状について、何か述べる事はありますか?」
D「cさんを殺すつもりで粘着テープを巻いたというのは、自分としては認められません」
裁判長「cさんに対してガムテープを巻き付けたのは、殺そうと思ってやったわけではない」
D「はい」
弁護人「傷害致死はともかく殺人ではありません」

 Dは早々に被告席に戻り、Cが証言台に出る。
裁判長「今の、検察官が朗読した起訴事実については?」
弁護人「陳述書を用意しているので本人に朗読させてください」
C「書面を読み上げます」

−Cの陳述−
 罪状認否させていただきます。
 平成17年7月21日付の起訴状について。bさんの監禁について、共謀していません。第二について、私は、清水に呼び出されてNKビルに行ったのは、平成16年10月14日1時30分を過ぎてからで、それ以降係った事になると思います。aさんの監禁にかかわったのは、平成16年10月14日1時30分を過ぎてからです。事前の共謀はなく、呼ばれて行って、初めて知りました。
 平成17年9月2日付起訴事実について。bさん監禁の時期、死に至らしめた事実については間違いありません。cさん、aさん、dさんについては、殺意を持ってガムテープを巻きつけた事はありません。死因が何であるかは分かりません。3人を死に至らしめた事実には間違いありません。清水から、他に殺害を依頼出来ないのなら自分たちで殺害するように指示されていましたが、依頼する予定の人間が実行できなくなりました。伊藤とDが被害者の口を塞いで殺害したのを、私は見ていません。死体遺棄についても誰に遺体を渡せばいいのか、どう処理するのか分かりませんでした。
 最後に、aさん、bさん、cさん、dさんを死に至らしめた事に対し、私は非常に申し訳なく思っており、悔やんでも悔やみきれません。正直、私は、事件直後は、自分も殺害されるかも知れないと思っており、恐ろしくて誰にも話せませんでした。事件後は罪悪感より恐怖感のほうが勝っていました。その後、徳島県警に逮捕され、Y4刑事の優しさに触れ、昔の自分を取り戻せました。渡辺純一からの恐怖の呪縛が解かれたとき、私は身を切るような罪悪感に襲われました。4人を最悪の形ですが、ご遺族のもとに返さなければと思い、自供しました。勇気を与えてくださったY4刑事に感謝します。aさん、bさん、cさん、dさんのご遺族の方々や詐欺の事件の被害者の人々にも心から申し訳ないと思っています。私にできることは事実を正直に述べていくことです。

 Cは、はきはきした声で喋る男だった。続いて、Cの中年女性の弁護人が、書面を読み上げる。

−弁護人の陳述−
 平成17年8月12日付の起訴状について。11名と共謀の上、監禁の実行に及んだのは、平成16年10月15日です。3名にガムテープを巻きつけたことについて、殺意はありませんでした。3名の殺害を依頼していた者に三名を引き渡す事ができませんでした。Cの犯意は、c氏に対しては傷害致死です。伊藤、D、Cは、清水、渡辺純一から、3人の殺害を依頼出来なければ自らの手で殺害するよう命令され、三名を殺害した。死体遺棄については、何れも認めます。bに対する傷害致死、監禁、死体遺棄、殺人について、徳島の検察官、警察官に、自発的に話をしており自首に該当します。被害者、遺族に対しては、深く謝罪しています。弁護人としても4名に対して心からご冥福を祈りするとともにご遺族にも深く謝罪し、今後の慰謝の措置も可能な限り取らせていただきます。
 続いて、検察による冒頭陳述が行なわれる。

−冒頭陳述−
○第一、被告人三名の身上経歴
1、被告人伊藤について。伊藤は、兵庫県尼崎市で出生し、宝塚市内の高校を卒業後、三浪した後、進学を断念し、ハンバーガーチェーン、マージャン店、居酒屋などで働いたあと、ヤミ金融として独立した。ヤミ金をやっているうちに、同店に手伝いに来ていた清水と知り合った。清水は、リース会社代表取締役となり、伊藤は、その年の五月に、詐欺会社の役員に就任した。清水を頂点とする架空請求グループに加わり、dらを部下として持ち、そこで莫大な収益を上げた。そこで、渡辺、C、被害者4名と知り合った。前妻との間に、それぞれ男児を儲けたが離婚している。伊藤に前科はないものの、1ヶ月前のガードマンに対する暴行、過去交際していた女性に対する傷害の前歴が二回ある。
2、被告人Dについて。Dは、中学卒業後、工業高校を1週間ほどで中退した。その後居酒屋で1年アルバイトしたり、運送会社に勤めるなどアルバイトを転々としていたが、平成12年に、中学時代の同級生である清水と再会し、共同経営する「オレンジ」で伊藤のグループに入り、同人の下で詐欺を繰り返す事となった。本件各犯行後の3月22日に、妻のY5と婚姻し、事件当時はパチンコ店でアルバイトをしていた。同女との間に儲けた女児がいる。前科はない。
3、被告人Cについて。Cは、岐阜市内で出生し、私大を卒業した後、プロの音楽家を目指して上京したが、ロックバンドに行き詰まりを感じて挫折した。清水、渡辺純一らと、架空請求詐欺を行なうようになる。Cは、芸能プロデュースを設立し、PRC事業部長に就任した事もあった。Cは主要幹部として莫大な収益を上げていた。婚姻歴は無いが、Y6という女性と交際していた。前科はない。

○第二、被害者4名の経歴について
1、aは、同級生と婚姻し、中古車販売店でもアルバイトをし、成15年に飲食店で稼動し、平成16年に架空請求グループに入って清水と共に詐欺に関与する。aの家族はaが連れ去られたことを知り、その無事を信じたが、遺体で土中から発見された。事件当時は25歳だった。
2、cは、愛媛県で出生し、千葉(船橋)の中学に転校して、サッカー部で活躍し、パソコンの情報処理専門学校を卒業した。平成8年、Y7と婚姻し、二子を設ける。派遣会社で稼動したあと、グループの一員となる。借金を負って、平成14年に離婚する事となったが、離婚後も会っており、借金を返済し一緒に復縁する事を楽しみにしていた。そのとき子煩悩なcは円形脱毛症になってしまった。母は、教会で祈って、cの無事を祈っていたが遺体で発見された。事件当時34歳だった。
3、bは、小、中、高において、ずっと野球に打ち込んでいた。靭帯を切断しても野球をやめなかった。東京都内の私立大学を卒業し、不動産会社やパチンコ店で勤務したあと、清水の架空請求グループで活動した。bのバックが漫画喫茶に残され、同人と連絡が取れないため、失踪届けを出した。bの家族はbの顔写真を使って、ラーメン店などを訪ね歩いた。父親は、酒を飲んで胃を壊し、妹は、心配のあまり、円形脱毛症になった。土中から遺体で発見され、事件当時31歳だった。
4、dは、少年野球やサッカーをするなど幼少から活発だった。平成13年1月から、トラック会社で働く。父親は自動車工場を経営していた。平成16年から、架空請求詐欺に加わる。10月13日を最後に連絡が途絶えたため、母は行方を捜し、捜索願を出した。家族はdの安否を憂慮し、仏壇で祈ったが、遺体が確認された。事件当時22歳だった。

○第三、各犯行に至る経緯
1、清水は、インターネットを見て、多重債務者から金利の10%を詐取する手口を知り、数人と融資保証金詐欺を繰り返し、同じサッカー部で活躍した、かつての中学時代の同級生に詐欺を行なわせていた。IやNらをグループ内に引き入れ、これらの長になった。Cを信頼し、清水を「マネージャー」、Cを「部長」と呼ばせていた。清水を頂点とする20名ほどのグループが形成された。その後、融資保証金架空請求詐欺の手口を知り、友人のY8から資金を得て、多重債務者の家に無差別に「このままでは強制執行になります」などと書かれた葉書を送りつけ、架空請求詐欺の事務所にお金を振り込ませる詐欺を、かつてヤミ金経営を手伝っていた伊藤、Cらと行なうようになった。清水は、伊藤に資金を提供させる一方、詐欺のノウハウ、人員を提供していた。渡辺純一はオレンジの店長となった。bもオレンジで架空請求詐欺に参加した。清水、伊藤の共同経営として、オレンジの利益は折半された。清水は、Cを、ライズの店長にした上、ライズの事務所でも架空請求詐欺を行うなどした。
3、渡辺純一の独立。渡辺純一は、伊藤の取り分が多いのが気に入らないなどとして、オレンジを飛び出し、ネオンとして独立して、清水の許可を得て、H、Fらを部下として架空請求詐欺を行なっていた。その後、オレンジの店長はDとなり、Dは伊藤の右腕として指示を行なっていた。
4、清水は、グループを集合させ、ミーティング、食事会などを行なっていた。グループ内の行事としてボーナス、「清水からの一言」、誕生会、食事会などがあった。清水の下に、伊藤、C、渡辺純一らがつき、其の下に他のメンバーがいた。詐欺のノウハウの伝授や資金調達などを行い、上下関係を明確にしていた。
5、渡辺純一の役割。渡辺純一は、舎弟のIに対して、言葉遣いがなっていない、などとして、皆の前で殴る蹴るなどの暴行を加えた。Cに対して反抗的だった。事務所に警察の捜索が行なわれた事があり、その時、Cはパソコンを置いて逃げた。その事で、渡辺純一は、清水に対し、「部長がパソコンをそのまま置いていったんですよね。警察が来たらどうするつもりだったんでしょうか」と言っていた。また渡辺純一は「警察に逮捕されても、共犯者の名前を言わないで服役する」と言っていた。Cは、一応NO2だったが、逮捕経験がないCは警察への対処が不慣れであり、渡辺純一は荒っぽい仕事を得意としていた。清水は、渡辺純一を頼りにするようになった。

○第四、監禁の共謀について
1、9月の下旬、Dは、dが連絡を絶ったのを不思議に思い、捕まえて理由を聞いた。dは、「中国人マフィアが清水の金を狙っているという話を聞いて逃げ出した」と述べた。そのとき伊藤は傷害罪で逮捕されていた。清水は、dから、連絡を絶っていた理由を聞いた。dは、「aから、中国人マフィアを使って清水を襲って金を奪うから、清水と関わっていると危ないから離れていろ、と言われた」と述べた。清水達は、aに、dから電話をかけさせ、計画の実在を確認した。電話の中で、aの、「お前言ったのかよ」という言葉を聞いて、計画の実在を確信した。
 清水はただちにaの襲撃を決意し、dは、清水らの指示に従って、aに連絡を取り、迷惑料を払う口実でおびき出して襲う計画を立てた。清水らは、ナイフ、バット4本、軍手を用意した。また手拳で3回dを殴って「お前も仲間じゃないのか!」と言って、dを軟禁状態に置いた。清水はIにaを拉致するためのワンボックスカーを借りさせた。
3、犯行状況。aに対する監禁致傷。清水、伊藤、D、渡辺純一、G、Hら7名は、路上において、普通乗用車に乗って駐車しているaを発見した。被告人らはaの髪を引っ張るなどし、伊藤はチェロキーの窓ガラスを割り、渡辺純一はナイフでaの大腿部を刺した。抵抗が弱まったaを15〜20分暴行したあと後ろ手錠をかけた。aは、「実は自分だけじゃない。先生、スーさんもそうなんだ」と認めた。伊藤らは、aが骨折していたため、肩を貸して事務所に運んだ。aを横臥させて以後監禁状態に置いた。渡辺純一は、aの足の骨が折れている事を指して、「ポッキー」と呼んだ。その後、cとbも監禁することにして、cを捕まえ、事務所内で、渡辺純一は渾身の力でcの顔面を手拳で殴打し、清水も金属バットで殴った。Dたちも群がるようにして襲い、こもごもcを袋叩きにして以後監禁状態に置いた。
4、bに対する逮捕監禁。清水達はaにbを呼び出させた。bを連行しに向かったメンバー7名は、bを発見するや、所携の金属バットなどで殴打した。Hらは、手錠をかけ、bを監禁した。H、Gは、bを清水の居る事務所に連行した。そこで、bをバットで殴打し、殴るなどした。伊藤は、bの家の鍵を手に入れたことから、bの家に入り、金目の物や現金強奪計画書を持ち出そうとした。証拠を隠滅するために、Hらに指示して、車を運転させようとした。しかし、aのチェロキーは、既に警察によって回収されていた。清水はbが入ってくるなり飛び蹴りを食らわせた。渡辺純一は渾身の力でbの顔面を殴打した。また他の被告人も群がるようにして襲い、悲鳴を上げるbを袋叩きにした。また伊藤は現金強奪計画の証拠となりそうなカバンを持ち出した。
 清水らは、a、c、bを監禁し、三名に対し殴る、蹴るの拷問を加え、現金強奪計画を聞きだした。これにより被告人ら13名は共謀のうえ3名を監禁した。
5、暴行状況。伊藤は、妻の結婚写真をマフィアに渡されていた事に激怒した。
伊藤はbの顔面をボクシングのストレートパンチのように殴り、サッカーボールのように足蹴にするなどした。答え方が気に食わないなどという理由だった。
 Cは、殴ったときに血がつくのを嫌がったため、ボクシンググラブをつけて、三人を殴打した。「ほれほれ」と嬉しそうに言いながら、熱湯をかけた。被害者が「グェー」などと悲鳴を上げるのを見て喜んだ。また被害者が小便を漏らすと足蹴にした。
 清水は、aが嘘を言ったことを知り、殴り倒した。靴の裏でaを踏みつけた。その音が下に聞こえるとして部下に制止されたほどだった。包丁で頭をトントンとして、被害者の頭から血が流れた。
 渡辺純一は、bがMDMAを持っているのを発見し、リンチの一環として大量に飲ませる事にした。清水はbの顎を掴んで、数錠押し込んで飲ませた。Iは、ポットで3リットルの湯を沸かし、bに2リットルの熱湯をかけた。渡辺純一はそれを見て、Iからポットを奪い取り、残っていた1リットルの湯を苦しんでいたbにかけた。bの「ギャー」という耳をつんざくような悲鳴、うめき声は、5秒間続いた。それは、他の部屋にまで響くほどだったため、清水は、渡辺純一と共に、「うるせえ黙れ」と言った。また声が漏れないようnkビルに見張りを立てた。
6、aらは、激しい拷問を受けたため、清水ら8名を狙って中国人マフィアを使い金を強奪する計画を立てていた事、Y3という暴力団員がかかわっていた事を言わされた。
7、清水は、aのチェルキーが回収できなかったため、aに、車中から無事を装わせる電話をかけさせた。Gらは、このままではbが死亡すると考え、軟膏を買って、貼ってやった。
8、清水らは、Y1から、平成16年10月15日に、現金強奪計画について聞いた。Y1は、「Y3は、私の後輩で、『邪魔しないでください』と言われましたが、『山口組を敵に回すことになるよ』と言ったら、あっさりと引き下がりました」と話した。そして、Y1は、「苦痛と快楽を相互に与えれば記憶が飛びます。殺すなら、死体の処理はプロの我々に任せてください」と言った。清水らは、事務所に帰り、「中国人の話はまとまったから」と言って現金強奪計画が潰えたことを話した。
9、d監禁について。dは、犯行当初においては一応拘束を受けていなかった。監禁中、aは、強奪が成功すればdにも現金を分ける予定だった事、動静をdに報告させていた事を話した。dは必死に謝ったが、清水らは同罪として監禁し、裏切り者としてdに暴行を加えた。渡辺純一は顔面を踏みつけ、Dも蹴った。Cは当初は居なかったが、京王プラザでの共謀までには戻っていた。渡辺純一は、dを金属バットでスイングして殴打した。その後dはトイレに行く際、自力で立ち上がることができなくなった。
 11時30分ぐらいに、5分の休憩が入る。被告人3名はそのまま廷内に残っていた。
○第五、殺害の謀議状況
1、京王プラザでの謀議状況について。清水は、今後の措置について相談するため、現金強奪のターゲットとされた渡辺純一、C、伊藤玲雄、D、E、F、Gを、「ここではできない話をするから」と言って京王プラザホテルに集めた。清水は、「これからどうするか。笑い抜きの真剣な話になるよ」と言って、話し出した。覚醒剤を打って記憶を飛ばす話が出たが、覚醒剤を使用した事のある渡辺純一が「覚醒剤を打って記憶が飛ぶなんて聞いたことがない」と言ったため排斥された。Cは、「生かしておいたら、他の詐欺などでも刑務所に服役することになる」「もう消すしかないでしょう」と言って4人を殺す事を提案した。伊藤や渡辺純一も多数回の架空請求詐欺をしていたため、全員殺害して口を封じるしかないと考えるようになった。渡辺純一は、「消す消すと言ってるが、死体はどうするんだ」とCに聞いた。Cは、死体を燃やす事を提案した。清水は、「釜で燃やせば消えるらしいよ」とY1に確認させた。Cは、Y1に、「消してもらいたい人がいる。前に話していた死体遺棄の話は本当にあるんですか」と電話で聞いた。そしてCは「大丈夫です。何とかなりそうです」と言った。渡辺純一は「それはカタギの仕事じゃない。ヤクザの仕事だ」と言った。清水は、「じゃ、殺すという事でいいね」と渡辺純一ら7名に確認し、賛成するなら挙手を求めた。7名は、目を合わせ、頷きあうなどして、清水の目を見て頷き賛成した。暴力団員に依頼して被害者を殺害し、その遺体を処分することにした。清水は、「俺はグレーラインを走る。お前等ももう表に出られない。言ったやつは殺すからな」と言って、釘を刺した。Y1は、死体遺棄の依頼に対し、5000万円を要求した。また、殺害の依頼も行われた。ところが伊藤、C、清水の3名はaら4名の殺害について、Y1からの連絡を待っていたが、Y1からの連絡はなかった。
2.aら4名に対する覚醒剤の投与について。Fたちはaら4名に対し、恐怖心を煽るため高濃度の覚醒剤を注射した。
 ホテル・ヒルトンで、伊藤は休憩し、Cも後に来て、休憩していた。Y1に対し、後に殺害をせかしたが、Y1は前言を翻し、「死体遺棄して欲しければ、歯を抜いて、耳をそいで、指を詰めて、顔を潰して持って来い。そうじゃないと殺害は引き受けない」と言った。清水たちは善後策を協議するようになった。
 bは、10月16日午前5時ごろには、渡辺純一から大量に掛けられた熱湯、肋骨骨折、MDMAによる覚せい剤中毒により、糞尿が垂れ流しの状況だった。渡辺純一は家族の写真を見せられていたことに怒り暴行を加えていた。女性の名前を大声で叫んだため、見張りをしていたFとEは、bの頭部に何十回も蹴りを入れた。また木製のハンガーで殴ったりした。bは死亡した。Fは、Eに、死亡した事を伝えたところ、Eはそれを電話で清水に伝えた。糞尿の臭いに耐え切れず、遺体を護美袋に入れた。
 bが死亡してから、ホテルヒルトンに、清水、渡辺純一は訪れた。ホテルヒルトンの部屋で、伊藤とCがバスローブ姿でいるのを見て、寛いでいると考えた渡辺純一は、そもそも伊藤グループの問題だった事から、伊藤、Cに対し、「皆寝ずに見張りをやってんのに、何をやっているんだ!」と怒号し、急いでスーツに着替えるCに対し、Y1との交渉状況を聞いた。渡辺純一は、伊藤に、「お前のやり方が悪いからこうなった。元とはいえば伊藤グループの問題だ!そっちでやれ。全責任を負え」と、清水の意思を忖度しながら怒号した。Y1への依頼方法も、「社長、先に金を渡すから舐められるんですよ」と言って後で5000万渡せば良かったと非難した。伊藤とDはやむなく殺害を承諾した。
 Cは、そもそも自分のグループの問題だった事から、依頼が失敗したら殺害を引き受けることを認めた。渡辺純一は、ソファーに座りながら、「じゃあ頼むよ」と言った。清水は、何も言わずに殺害を認めた。
 Cは、伊藤に電話をかけ、依頼状況を聞いた。だがY1との交渉は難航した。
 Gの関与について。Gは、aの車を移動させている最中に職務質問を受け、事情聴取を受け、警察に捕まった。ボルボも府中警察署に押収された。
 渡辺純一、清水の殺害の指導について。渡辺純一は、G逮捕の一報を受け、それを清水に知らせ、危機感を持った。渡辺純一は早急に殺害することを指示した。渡辺純一は、事務所で、伊藤たちに「もうお前等がやれよ」と言った。そして、清水に、「社長、もう行きましょう」と語気鋭く言って、外に出て行った。伊藤は、外に出た清水らに続いて外に出て、「社長、見捨てないですよね」と声をかけた。渡辺純一は、清水の意思を忖度しながら、「ふざけんな。普段社長社長と立てておいて。お前等の責任だ。社長、行きましょう」と言って、清水と共に去って行った。Gは自供せず、覚醒剤取締法違反で起訴された。
 Y1から殺害を拒否された伊藤、C、Dの3名は、被害者3人をガムテープでグルグル巻きにして梱包した。そして、鼻の部分だけを空けて3人の口をガムテープで巻いた。
 cは、死亡する30分前から苦しそうな息をしていたが、被告人3名は、殺害するつもりなので、これを無視した。cは最後にもがいたが、胸をガムテープで締め付けられた窒息、肋骨骨折による呼吸困難が複合的に重なった呼吸不全により死亡させた。
 伊藤が電話した所、Y1は、「もう信頼関係はもてない」と言って、電話を切って、交渉を決裂させた。伊藤は、「社長、断られました」と言って清水に交渉決裂を伝え、清水は、「解りました。残りはそっちでやってください。後はこっちでやりますから」と言って、殺害を指示した。
 伊藤は、此方でやるしかない、と、二人に言った。被告人3名は、d、aを殺害した。
 伊藤が被害者の鼻孔部、Dが顔、Cが足を押さえて窒息死させた。伊藤はしばらく茫然自失の状態だったが、「全部やりましたよ」と清水に伝えた。
 清水は、伊藤から、殺害を伝えられ、「解りました」と冷静な口調で答えた。
 伊藤は、死体を寝袋に梱包し、Cも途中からそれを手伝った。伊藤、C、Dら4名は、死体を梱包し、運搬した。茨城のセブンイレブンに運び、Mに死体の遺棄を依頼した。Jは、4名の死体を埋没した。
 伊藤、C、Dら4名は、死体遺棄について、渡辺純一に伝えた。渡辺純一は、「お前等が喋らなければ絶対に死体は出ない。捕まっても関係者の名前は喋るな」と言った。被告人らは口裏を合わせ、無事死体遺棄されたことを祝って焼肉店に行った。

午前の公判は12時に終わり、午後の分は1時15分からとなる。被告人3名は、身じろぎもせず、冒頭陳述を聞いていた。

検察官「午前中のCに対する主張について、間違えていた部分があったかもしれません。監禁の時間について、冒頭陳述では、関与した時期について・・・・・」
裁判長「わけの解らない事言われてもね。Cの責任を言っているわけで、Cについて何時からかが問題で、14日からと伺っているが、そうではないと?」
検察官「ええ。a氏について言えば、13日午後10時30分からとなり、午後6時ごろ、としてますが・・・・・・」
裁判長「つまり、Cは途中から関与したが、最初から責任を負うと」
検察官「ええ」
裁判長「つまり、起訴状確認の時期から責任があると」
検察官「ええ」
女性弁護人「13日午後11時30分から、という事ですか?」
検察官「ええ」
女性弁護人「4名について?」
裁判長「いえ、Cについて。4名についてというのはやめて下さい」
女性弁護人「はい」
 dの監禁についても、若い検察官は何か言うが、裁判長は、勘弁してくれ、起訴状の時間に遡って責任を負うという事でしょ、と述べる。
 続いて、検察官による証拠の開示が行なわれる。

−証拠の開示−
・甲1,2号証は、検証調書。4人の死体発見に関して。
・甲3号証は、被害者の身元特定。
・甲6,7号証は、死体の状況。
・甲8,9号証は、被害者の死因。8号証は検死を行なった教授の聞き取り調査で、死因は口と鼻を手で塞がれた事による窒息死。
・甲10,11号証は、dの死体の肝臓に覚醒剤が認められるか、という鑑定で、結果としては、認められた。
・甲13号証は、戸籍謄本。dの死亡による除籍について。
・甲14,15号証は、dの遺族の調書。
・甲14号証の内容「最後にdの姿を見、声を聞いたのは、平成16年です。電話で、友達の家に泊まると言っていました。よく遊びに来ていたaさんの行方もわからなくなっていると、後から聞きました。元気で帰ってくると信じていました。平成17年6月に、dらしき死体が発見されたと、警察から電話がありました。こんなところに埋められていたのか。犯人たちを決して許せません」
・甲15号証の内容「私達は、dが事件に巻き込まれたかもしれない、と警察から聞いていましたが、生きていると信じていました。殺されているとは考えていませんでした。別人かもしれないと思っていましたが、そうではないと知らされ、力が抜けました。dが味わった苦しみを、この事件の被告たちにも味わって欲しい。この無念、苦しみ、怒りを世間の人にも分かってほしい」
・甲17,18号証は、実況見分調書。
・甲19号証は、bの死因について。被告の供述を前提とすると、熱傷性ショック死などが考えられるらしい。
・甲20,21号証は、bの肝臓に覚醒剤の含有が認められる、という内容。
・甲22号証は、司法解剖記録。
・甲24号証は、bの実母の調書。「bの行方がわからなくなった事は、bのバッグが東京のゲーム喫茶に置き去りにされている事で知りました。bは、元気な顔を見せると信じていましたが、死体となって発見され、信じられない気持ちでした」という内容。
・甲25号証は、bの妹の調書「死体は、鼻が曲がり、前歯が折れていて、とても生前のあんちゃんとは解りませんでした。母は、人前では涙をこらえていますが、陰では涙を流しています」という内容。
・甲26号証も、bの遺族の調書。「今回の事件に関わった全ての犯人に言います。すぐに殺すのはもったいない。ぼこぼこに少しずつ殴って殺してやりたいです。でも、無理ですよね。ですから、日本の法律で一番重い死刑を望みます」という内容。
・甲30,31号証は、MDMEの含有は認められなかった、という内容。
・甲38号証は、a氏の実父の調書。「aが殺されるとは想像していませんでした。殺されたという報告に耳を疑いました。変り果てた姿でした。死体を見て暴行の酷さが想像されました。何で息子にこんなことをするのか。許されるなら、犯人たちを殺してやりたいです」という内容。
・甲40号証は、aの妻の調書。「私と夫の父は、夫と対面しました。信じられませんでした。夫はあまりにも変わり果てた姿で、寂しそうでした。頭の中は真っ白でした。涙がとめどなく湧き出てきました。何でこんな残虐なことをするのだろう、私や娘はこれからどうしたらいいんだろう」という内容。
・甲42号証以降は、cに関するもの。
・甲44号証は、不同意撤回となった。
・甲45号証は、cの死体に覚醒剤の含有が認められるか否かで、認められなかった。
・甲49号証は、検証調書。
・甲50号証は、戸籍謄本。
・甲51号証は、cの実父の調書。「長男cが死体となって発見されたと私が知ったのは、テレビで、茨城で変死体が発見されたと報道されたからです。私の心配が間違っていればと思いましたが、現実の物となりました。死体を見た時、輪郭は面影がありましたが、あまりの姿に言葉もありませんでした。犯人たちは許せず、自分たちがやってことに見合う責任を取ってもらいたい」という内容。
・甲52号証は、cの実母の調書。「cが事件に巻き込まれたのでは、と不安になっていましたが、cの死体が発見されたとの連絡を受けて、衝撃を受けました。私と夫は、拭いても拭いても涙が出てきました」という内容。
・甲54号証は、ロープの報告書。
・甲55〜60号証は、Gの調書。
・甲55号証は、架空請求詐欺の実態について。
・甲57号証は、aの電話の状況。
・甲59号証は、dの左足を金属バットで殴るのを目撃した状況について。
・甲60号証は、コンビニでの買い物について。
・甲64号証は、買い物したコンビニから判明した契約者。契約者は、渡辺純一の内妻のK。
・甲67〜72号証は、監禁などの共犯、Fの調書。
・甲67号証は、架空請求詐欺の実態。
・甲68号証は、監禁に関する調書。
・甲69号証は、殺害謀議に関する調書。
・甲70号証は、b死亡の状況。
・甲71号証は、4名の死体をトラックに運んだ状況。
・甲72号証は、渡辺純一らと、行動を共にした状況。
・甲73号証〜は、Eの調書。
・甲75号証は、監禁の共謀について。
・甲76号証は、dの監禁を始める前に、同人を大久保の事務所に預けた状況。
・甲80号証は、渡辺純一が3名の殺害を指示していた状況など。
・甲81号証は、被害者の胸にガムテープを貼った状況。
・甲83〜88号証は、Iの調書。
・甲84号証は、被害者への監禁の共謀について。
・甲85号証も同様。
・甲87号証は、死体運搬の状況、逃亡生活の状況。
・甲88号証は、bに自分が熱湯をかけた状況。
・甲89〜94号証は、共犯者の調書。
・甲90号証は、被害者等への監禁の共謀に関して。
・甲91号証は、dを監禁前に、大久保の事務所に預けた状況。
・甲93号証は、NKビルの掃除をして証拠隠滅を図った件に関する調書。
・甲95〜97号証は、Y2の調書。
・甲95号証は、被害者等への監禁の共謀状況。
・甲97号証は、各犯行後に血のついた靴を処分、純一から口止め料を貰っていた事に関して。
・甲98,99号証
・甲98号証は、監禁の共謀について。
・甲99号証は、清水、Y1の仲介に関して。
・甲100、101号証は、Y1の調書。
・甲100号証は、清水から4名の死体の処理について依頼を受けた状況について。
・甲101号証も同様。
・甲102号証は、cの友人の検察官に対する調書。cが監禁されているのを伊藤に呼ばれて行って確認した、という内容。
・甲104号証は、Gの供述内容。dの車について、知り合いに頼まれて預かる事になった、と話し、監禁については話さなかった、という内容。
・甲105号証は、ビルの検証調書。
・甲106号証は、京王プラザホテルスイートルームの見分調書。
・甲107号証は、京王プラザホテル社員の調書。清水が、平成16年10月14日に、同ホテルにチェックインした事の裏づけ。清水は、サカモト・ケンジという名前でチェックインした男に似ている。
・甲109号証は、伊藤らが平成16年10月15日〜16日に、ヒルトンのスイートルームを利用した事の裏づけ。伊藤が、ヤマモト・ヒロシという名前を使ってチェックインした。
・甲110号証は、渡辺純一の内妻だったKが、4名の死体の処理を、自分の知り合いだったMに依頼して運搬した、という内容。
・甲111号証は、Kが、渡辺純一からブルガリやネックレスを買ってもらった、という内容。
・甲113号証は、店員の調書。Kの調書を裏付ける内容。97万円の商品を、ブルガリで買った。
・甲114号証は、(誰かは聞き落としたが)平成16年10月14日に、G、3名と会議をした、という内容。
・甲115号証は、清水の知り合いの調書。平成16年10月15日に、清水に5000万円を貸した、という内容。
・甲116号証は、平成16年にIにビクサーという車を貸した、という内容。
・117号証は、レンタカー会社社員の調書。平成16年10月16日に、Eにレンタカーを貸した、という内容。
・甲118号証も、レンタカー会社社員の調書。平成16年10月16日にキャンプカーを貸し出した、という内容。
・甲119号証は、死体遺棄の共犯、Mの調書。Kから電話を貰い、一億で死体の処理を頼まれ、Jと共に死体を受け取った、という内容。
・甲120,121号証は、Jの調書。
・甲120号証は、平成16年10月16日の夕方に、Mから、仕事がある、と電話で呼び出された。死体を埋めることを頼まれ、報酬に釣られ、引き受けた、という内容。
・甲121号証は、10月20日に死体を埋めた、という内容。
・甲122号証は、Lの調書。被害者等の死体を埋没させた、という内容。「夫が帰ってきた時、Mからの仕事の報酬だ、といって、札束を置かれた。昼ごろに、トラックの後ろに死体が置かれている、と聞かされた。遺棄現場についた時、重機で既に穴は掘られていた。夫たちが死体を捨てている間、私は見張りをしていた」という内容。
・甲123号証も、死体遺棄の共犯の調書。「穴を掘って死体を埋没させた。知り合いから重機を借りたので、平成16年10月20日に間違いは無い。数日前に、Jから頼まれ、穴を掘った」という内容。
・甲124号証は、新宿から茨城までの、4人の死体の運搬の見分。
・甲126〜131号証は、引き当たり捜査報告書。aを監禁した事務所、死体遺棄の場所、Mに死体を引き渡した茨城県のコンビニの報告書。
・甲132号証は、捜査報告書。
・甲133号証も、捜査報告書。手錠の鍵穴とdの車内で発見された鍵が合う、という内容。
・甲134号証は、犯行後の12月17日に、赤坂の焼肉店で、10名で、12万円を使って食事をした、という内容。
・甲135号証は、dの友人の調書。dの被害直前の行動。平成16年から、aからマフィアを使う計画を聞かされたらしい。
・甲136号証は、ガムテープを顔面に3,4周巻かれたら、呼吸が苦しい事の実験調書。
・甲137号証は、伊藤の元妻の調書。平成14年8月に結婚し、その後離婚した、等という内容。
・甲141号証は、伊藤の友人の調書。伊藤の仕事の状況。
・甲142号証は、Dの母の調書。
・甲143号証は、Dの妻の調書。
・甲144号証は、Cの母親の調書。
・甲145号証は、Cの交際相手の調書。
・甲146〜148号証は、裏付け報告書。通話明細記録に基く。共犯者等の携帯を使って電話をかけていた事が記載。
・甲149号証は、Hの調書。拉致監禁についての調書。
・甲150号証は、車体発見の調書。aの車に関して書かれている。
・甲151号証は、それを了知した、という調書。
・甲152号証は、それを検分した、という調書。
・甲153号証は、高杉の調書。渡辺純一は、被害者に熱湯をかけたりMDMAを飲ませた事を自慢していた、という内容。
・甲154〜169号証は、清水に関して。
・甲155号証は、経歴。
・甲158号証は、監禁の状況。
・甲159号証は、c監禁に関しての訂正供述。
・甲160号証は、Y1と会って、襲撃の事を聞いた話。
・甲163号証は、被害者4名の殺害、死体遺棄の依頼状況。
・甲164号証は、渡辺純一が伊藤に殺害を指示した状況。
・甲166号証は、清水の戸籍。
・甲167号証は、清水の前歴。
・甲168号証は、清水の前科。
・甲170〜179号証は、渡辺純一の関係。
・甲170号証は、渡辺純一の経歴。
・甲171号証は、詐欺に関して。
・甲172、173号証は、bの上半身に熱湯をかけ、エクスタシーを飲ませた事について。
・甲176号証は、4名志望に対する純一の見解。4人が死んだ事には責任が無い、と書かれている。
・甲177号証は、死体遺棄について。
・甲179号証は、渡辺純一の前科調書。
・甲180号証は、Cに関して。徳島で先に起訴されていた、詐欺の被害状況。

裁判長「乙号証については、これから合議しますので、2時10分まで休廷とします」

 2時3分に休廷となった。裁判長たちは、奥の部屋に引っ込む。被告人3名は、退廷させられる。
 時間になり、3人は再び入廷する。入廷した時、Dは、頭を下げていた。

裁判長「本件の争点からすると、乙号証は調べても問題は無いと判断しました。要旨の告知をして下さい。Dについて、全て同意しますから」

・乙1〜14号証は、伊藤の、警察官、検察官への調書。
・乙1号証は、身上経歴。
・乙2号証は、架空請求詐欺の実態。平成12年に清水から持ちかけられて、資金を出した。平成16年に、資金を折半して事務所を立ち上げた。
・乙4号証は、犯行状況。
・乙5,6号証は、監禁について。
・乙7号証は、Y1と会って、同人から自分等に対する襲撃の話を聞いた事。
・乙8号証は、殺害の謀議状況。4名をどうするか、京王プラザホテルで話し合った。Cが「もう殺すしかないでしょ」と言い、誰も反対しなかった。
・乙9号証は、Y1に、殺害、死体遺棄の依頼をしたことについて。
・乙10号証は、3人を殺害するよう、渡辺純一から指示を受けた事について。
・乙11号証は、cの殺害状況。
・乙12号証は、a、dの殺害状況。
・乙13号証は、4人の死体の運搬状況。
・乙14号証は、cの死体を梱包した状況。
・乙15号証は、渡辺純一から口止めをされて、一緒に逃亡生活をした状況。
・乙16号証は、渡辺純一が主犯を自認していた状況。「俺は今回の事件の主犯だから、捕まったら死刑か無期だ」と言っていた。
・乙17号証は反省など。「今回のような事件を起こしてしまったのは、私の性格や生活に問題があったからです。今回の事件については、一生かけて償って生きたいです」という内容。
・乙20〜36号証は、Dの調書。
・乙20号証は、身上経歴。
・乙21号証は、詐欺グループの実態。Dは、清水とは中学の同級生で、平成12年に再会して、詐欺をやるようになった、という内容。
・乙22号証は、監禁の状況。
・乙24号証は、京王プラザホテルに8人が集まって、4人をどうするか話した状況。皆で4人を殺す事になり、死体遺棄はヤクザに頼む事になった。
・乙26号証は、渡辺純一、清水からの殺害の指示状況。
・乙27号証は、c氏、a氏、d氏の殺害状況。
・乙28号証は、4名の死体運搬状況。渡辺純一が犯行後、被害者に「ポッキー」等と、それぞれ名前をつけて呼んでいた事も書かれている。
・乙29号証は、死体の梱包。
・乙30号証は、証拠隠滅のためCと一緒に事務所のごみを纏めた、という内容。
・乙31号証も同様。
・乙32号証は、渡辺純一から焼肉店で口止めされた事。10月17日の夜、主要メンバーが集まった。渡辺純一は、「もし捕まっても何も喋るな」と言った。
・乙33号証は、同じく、渡辺純一が、自分は死刑か無期になる、と言ったという内容。
・乙34号証は、死体の梱包後、渡辺純一から一緒に行動させられ、携帯で連絡を取らされた、という内容。
・乙35号証は、謝罪と心境。「裁判でも、事実をありのままに認めます。それが、私のaへの供養になると思っています。御免なさい」という内容。
・乙36号証も開示された。
・乙37〜47号証は、Cの関係。
・乙37号証は、身上経歴について。
・乙38号証は、架空請求詐欺の実態、渡辺純一の立場の拡大について。
・乙39号証は、監禁に加わった状況。
・乙40号証は、京王プラザホテルにおいての、8名での殺害謀議について。「色々な案が出たけれど、渡辺純一が尋ねてきたので、殺すという意味で『消すしかないでしょ』と自分が言いました」という内容。
・乙43号証は、被害者cの殺害について。
・乙44号証は、d、aの殺害状況。
・乙45号証は、4名の死体運搬。
・乙46号証は、事務所での証拠隠滅、渡辺純一による口止め、渡辺純一が自分が主犯であると言っていた、という状況について。
・乙47号証は、戸籍関係について。

 次回に何をするかは、打ち合わせの時に決める事になる。そうなった理由は、渡辺純一達との兼ね合いもあるらしい。次回は、6月7日1時15分、7月3日1時15分が指定される。
 裁判長は、被告人3名を前に立たせる。
裁判長「4月19日の打ち合わせには、3人は出廷するに及びません。次回に何をするかは、打ち合わせの時に決めます。次回は、6月7日1時15分と、7月3日1時15分です」

 3時まで予定されていたが、2時35分に終了した。

 外では、被告人たちの弁護人が、マスコミの質問に答えていた。
 男性弁護士によれば、cさんについては死因は傷害致死であるとして争っているらしい。
 女性弁護人によれば、今回の事件は清水と渡辺純一が首謀者だが、現場にはいなかったので否認している。Cは殺人の実行行為を行なったが、その時Cとしてはどうして良いか解らなかったので足を押さえてしまった。aについては共謀共同正犯だが、細かいところは違う。殺人については認めている。監禁については、逮捕を知らないまま呼び出され、戻るに戻れずそうなった。監禁の共謀はビルに呼び出されてからである。関与した時期については争う。一部否認する、という事らしい。
 マスコミの一人は「犯行を認めると言っていたが、大分違ったね」と言っていた。

事件概要  3被告は架空請求詐欺グループの仲間割れから、2004年10月14日、他の被告と共に対立するメンバーを拉致し、東京都新宿区内のビル事務所で1名を暴行の末死亡させ、3名を殺害したとされる。
報告者 相馬さん、insectさん


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