裁判所・部 最高裁判所・第一小法廷
事件番号 平成14年(あ)第126号
事件名 殺人
被告名 宮前一明(旧姓岡崎)
担当判事 島田仁郎(裁判長)泉徳治、才口千晴
その他 立会書記官:菅原輝史、吉田貴司
立会検察官:中村雄次
弁護人:五十嵐利之久、塚田裕二、内野眞紀
日付 2005.4.7 内容 判決

 締め切り20分前に最高裁の南門に着いたとき、集まっていたのはほんの5〜6人。そして報道カメラがスタンバっていたぐらいでした。職員の方も抽選の必要はないと判断らしく、締め切り10分前には整理券を配り始めました。結局48枚の傍聴券に対して、9時50分までに集まった希望者は25人。しかも立ち話を聞くと、恐らく私を除いたほとんど全員が坂本弁護士の同僚の弁護士か新聞・雑誌の記者でした(後の報道によると遺族は傍聴に来なかったという)。
 「共同通信の〜です」「あ、どうもどうも」などと名刺交換をして、取材を始めたりする一方、坂本弁護士の同僚の弁護士の方々が、以下のような会話をしていました。
「早川紀代秀被告に接見行ったときに、同被告が『遺族の冥福を祈りたい』といったことに対して、『遺族はお前らに冥福を祈られたくないんだよ!』といったが、流石に落ち込んでいた。言いすぎだったかな?」
「(岡崎が仏教に帰依していることについて)、結局宗教にすがるしかないんですかね〜?」
「(一連の事件で)死刑を受けた被告が13人か。宗教的になんか言い始めるだろうな。キリスト教でも13人っていうのは特別な意味があるし、それに明日は釈迦の誕生日だしな。坂本の誕生日でもある。生きてれば・・・、49歳か・・」
「10年以上かかかったら裁判じゃないっていうけど、10年以内にここまできたのは岡崎だけか。他の廣瀬とか中川は早く死刑になりたいって言ってるぐらいだけど、いつまでかかるか・・・」
「死刑廃止とかじゃなくてさ、裁判官が死刑執行に立ち会えってんだよ、執行だけ刑務官に押し付けてといて。昔は死刑執行に立ち会って一人前なんていわれたけども。それに最高裁で被告人が出ないっていうのもおかしい。せめて死刑のときだけは出すべきだろう」

―法廷内―
 職員が傍聴人と報道関係者についての注意を読み上げ、「まもなく開廷します」と言った数分後、職員の操作で裁判官席の後ろのドアが開き、裁判官が入廷する。
 そして2分間の報道カメラの撮影が行われた。カメラのシャッターを切る音が法廷の中でひびく。
 「撮影を終了してください」と職員がいうと、報道陣は退廷した。

 島田裁判長が「それでは開廷いたします」と宣言する。
 「宮前一明被告に対する殺人被告事件」と廷吏が事件名を読み上げると、島田裁判長は、主文を後回しにして、厳しい口調で判決を言い渡した。

 ただいま廷吏が読み上げた事件につき判決を言い渡します。
 本件は教団の幹部であった被告人が、共犯者とともに!脱会しようとしていた元信者を殺害し、教団に対抗する弁護活動をしていた弁護士を!その妻子二人とともに殺害したという事案である。いずれも、教団の組織防衛のみを目的とした犯行で、その態様も冷酷、残忍なものである。被告人は二回にわたって直接殺害に関与しており、このような事情に鑑みると、自首したこと、反省していることを考慮しても被告人の刑事責任は極めて重大なものである。よって次のように判決する。

 本件上告を棄却する

 以上です、閉廷いたします。

 下級裁判所ならば、判決理由を読み上げる前には「理由」と言い、主文を後回しにするときはその旨を被告人に伝えるなどしますが、島田裁判長は、「ただいま廷吏が読み上げた事件につき判決を言い渡します」と宣言するやいなや、理由の要旨を読み上げました。また、判決を言い渡し終わった後の判決訂正の申立ての説明もしませんでした(下級裁判所では上訴についての説明をする)
 開廷を宣言してから閉廷まで、わずか1分20秒だった(開廷前の2分間の撮影よりも短い)
 閉廷後、最高裁を出たところで傍聴したジャーナリストや、坂本弁護士の同僚の弁護士がテレビの取材を受けていた。

(注:新聞報道によると、甲斐中辰夫裁判官は検察官出身で、オウムの捜査にかかわっていたため、横尾和子裁判官は夫がオウムの捜査当時神奈川県警本部長だったため、岡崎被告の上告審を回避した)

報告者 Doneさん


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