裁判所・部 最高裁判所・第三小法廷
事件番号 平成12年(あ)第823号
事件名 殺人、窃盗
被告名 藤間靜波
担当判事 濱田邦夫(裁判長)金谷利広、上田豊三、藤田宙靖
日付 2004.3.23 内容 口頭弁論

 弁論は弁護人、検察官がそれぞれ上告趣意に関して補足のようなものをするという形で行われた。
 まず、弁護人は死刑制度は違憲であることを主張した。その根拠は、
第一に個人公共の福祉によって個人の生命を国家が奪うということは憲法13条の個人の尊重に違反する。
次に最高裁では大法廷の判決で絞首刑は残虐ではないとしているが絞首刑は被執行者に精神的・肉体的な苦痛を与えるもので実際は残虐な執行法であり憲法36条に反する。
さらに死刑について定めた法律は刑法・刑訴法・監獄法があるがこれらのいずれにも死刑の具体的な執行方法は定められていない。現行の死刑執行方法は、明治6年太政官布告65号に基づくものだがこの布告は旧監獄規則に吸収され、またその監獄規則も廃止されているのだから太政官布告65号はすでに失効しているものであり、係る布告に基づいて行われている死刑執行方法は憲法31条の罪刑法定主義に反する。
の3点だった。
 さらに、アムネスティーインターネショナルによると、死刑全廃国は現在76カ国にのぼり、世界的には死刑廃止の風潮が広がっている、死刑を合憲とした大法廷判決は50年も前のものであり、またその判決の中で、憲法36条にいう残虐は時代によって変化するとも述べられている。今こそ、もう1度死刑制度を見直すときであると述べた。
 さらに、藤間被告は脅迫罪という別件で逮捕されていて、捜査員に暴行を受けたと主張していることから、違法な別件逮捕で、しかも拷問をした上で作られた自白調書には証拠能力がなく、係る調書を証拠として下した原審の維持した死刑判決は即刻破棄されるべきで、この調書を除いて事実認定をするべきだと主張。
 そして、藤間被告は長期間の拘留のために精神的に問題をきたし、現在に至っては自分が死刑に処されるということの意味すら理解できないという状態である。このような精神状態では被告人を死刑に処する意味がないと、量刑不当を主張した。

 これに対し最高検察庁の麻生検事は、弁護人の主張は全て理由がないとし、真っ向から対立。死刑が違憲であるという主張は、死刑合憲の大法廷判決を持ち出しあっさりと切り捨て、太政官布告65号有効であるということは最高裁の判例から確立している。
 さらに別件逮捕については、警察は被害者と交流があり、行方不明であった藤間被告を、犯行をクチ止めした脅迫の罪で逮捕したのであって、取調べも脅迫事件を中心に行われ、その後に本件の殺人を自白したのだから別件逮捕によって得られた自白ではない。
 また第1審において、藤間被告は黙秘に徹し、拷問があったとは主張しておらず、2審においても拷問についての質問を受けても黙秘するか、「次にいってください」などと言い、その後全面自供をしたが、今度は被害者に責任転嫁するなど、藤間被告の主張は一貫していない。捜査員は法廷で拷問していないと証言しているし、藤間被告の顔や歯に異常があったことはなかったのだから、藤間被告の主張は信用できない。さらに、黙秘や否認を続けたのは裁判を引き延ばすためだと言っていたことからも、拷問はなかったとするのが自然であると主張した。
 そして、精神状態が悪いというのは証拠に基づくものでないないし、仮にそうだとしてもそれを理由に被告人を死刑に処する意味がないという主張は、弁護人独自の勝手な見解であって、理由がないと主張。
 最後に麻生検事は藤間被告について、「何の落ち度もない5人もの命を奪った、極悪非道の重大犯」とし、弁護側の上告を棄却し、死刑判決を維持するように求めた。

(注:最高裁の審理では被告人は出廷しないため、藤間被告も出廷していない)

報告者 Doneさん


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