裁判所・部 札幌地方裁判所・刑事第一部(単独二係)
事件番号 平成19年(わ)第308号
事件名 詐欺
被告名 大屋ことB
担当判事 坂田威一郎(裁判官)
その他 書記官:小山敬右
検察官:ホンダ他1名
日付 2007.6.8 内容 証人尋問

 14時10分くらいに入廷すると、男性書記官が机の上にノートパソコン、脇に資料をバインドした数冊のファイルと鞄を載せたワゴンを置いて、ノートパソコンを操作していた。やがて傍聴人用入り口から入ってきた白い服を着た50代くらいの女性が、傍聴席と被告席などを区切っている柵(両端は押すと開くようになっている)を越えて書記官席に座った。
 22分になると男性書記官は、ワゴン上の数冊のファイルを確認しつつ、背後にある裁判官席に置き始めた。それから数分後には被告人達が法廷に現れ始めた。
 被告人は30代、イガグリ頭の、やや痩せた男性でメガネをかけており、灰色のパジャマみたいな服を着ていた。黒い手錠に腰紐状態で、男性刑務官2名に付き添われて専用の入り口から入廷。
 弁護人は30代細身の男性。検察官は30代中肉中背の男性(ホンダ)と、20代メガネをかけ、栗色の髪をした女性。いずれも傍聴人用入り口から入ってきて、柵を越えて各自席に着く。
 その後、さらに被告人や証人用の入り口から、被告人と同じく手錠腰紐をされた、30代くらいの小太りイガグリ頭の男性が、刑務官に付き添われて現れた。灰色の作業着を着ている。
 やがて専用の入り口から裁判長が現れた。裁判長は40代、クセっ毛で赤ら顔でメガネをかけており、ちょっと横に広い感じがする男性である。歩く感じやしゃべる感じに、勢いを感じる。

裁判長「本日は検察側から証人尋問の申請があったので、証人尋問を行います。証人は氏名を名乗って下さい」
証人「Cです」
 その後、証人の宣誓が行われた。

−検察官(ホンダ)による証人尋問−
検察官「本件保険金詐欺の主犯はAと考えて良いか」
証人「はい」
検察官「本件保険金詐欺が行われたのは平成16年2月9日?」
証人「と思います」
検察官「本件についてAから話があったのはいつか」
証人「平成15年の12月か、16年1月くらい」
検察官「どこでAから詐欺について聞かされた」
証人「札幌市北区の(暴力団)事務所」
検察官「Aからその話を聞いたとき、誰が居た」
証人「D、E」
検察官「大屋がいたか」
証人「はっきり覚えていません」
検察官「Aはどのような話をした」
証人「Y1さんを呼んで、事故を起こすと」
検察官「何のために」
証人「保険金をとるため」
検察官「どのようなことを指示された」
証人「Y1さんの道案内」
検察官「聞いたのはどの時」
証人「事務所で聞かされた」
検察官「Aから何を聞かされた」
証人「Y1さんが運転した車に追突する」
検察官「Y1以外に誰が居た」
証人「Y1の女のY2」
検察官「Y1とY2が北海道に来たのは」
証人「事故の日の前日」
検察官「Y1達を新千歳空港に迎えに行ったのは」
証人「E、D、自分、Y3・・多分大屋」
検察官「その後どうした」
証人「ホテルに送った」
検察官「その後どうした」
証人「迎えにいったメンバーで食事した」
検察官「当日はどうした」
証人「Y1さん達をホテルに迎えに行った」
検察官「現場へは」
証人「自分が先導した」
検察官「Y1達は現場へ何で行った」
証人「レンタカー(トヨタのイグザム)」
検察官「先導したと言ったが、君は何で現場へ行ったのか」
証人「自分の車(アストロ)で」
検察官「事故現場へは、誰が行った」
証人「A、D、E、Y2、Y4、自分」
検察官「大屋は」
証人「最初はいなかった」
検察官「大屋がいることを、どうして知った」
証人「Aから(被告が)駐車場にいることを聞かされた」
 これは、現場で聞かされたのではなく、後述するように現場へ行く前に携帯電話で聞かされたようだ。
検察官「その後どうした」
証人「大屋を迎えにいった」
検察官「なぜ」
証人「なぜって・・別に理由はないです」
検察官「君の車には、誰が乗りましたか」
証人「運転席に自分、助手席に大屋、途中でY2を後部座席に乗せた」
検察官「事故については、どうやって知った」
証人「Aからの電話で知った」
検察官「君はどう思った」
証人「結構ぶつかっているなって」
検察官「大屋は何か言っていたか」
証人「結構ぶつかっているって言ってました」
検察官「現場でAから何か言われた?」
証人「目立つから、現場からさっさと離れろと」
検察官「(事故後)君はY1に何か渡しているね。何を渡したのか」
証人「多分現金。Aから渡された封筒を渡した」
検察官「Y1やY2が栃木に帰ったのはいつ」
証人「事故の翌日」
検察官「10日だね。誰が送った」
証人「E、D、A、自分、大屋」
検察官「本件の首謀者は誰だと思う」
証人「A」
検察官「君やE、D、大屋はAの指示でしか動かないということか?」
弁護人「異議あり!その質問では本件に被告が関わっているようになります」
裁判長「質問の仕方を変えて下さい。せめて最後のは、ね」
検察官「質問を変えます。君やE、DはAの指示でしか動かないということか?」
証人「はい」

−弁護人による証人尋問−
弁護人「Y1を知っていた」
証人「はい」
弁護人「Y2は」
証人「知らない」
弁護人「栃木から誰かが来るといつ聞いた」
証人「(平成)15年の暮れか16年の始め」
弁護人「事件に関わったのは、D、Eは間違いない。でも大屋は分からない」
証人「そうです」
弁護人「事務所で話されたのは、どういう状況」
証人「車座にはなっていない。ただ事務所で話しただけで、全員で相談したことはない」
弁護人「大屋が事務所に来る頻度は」
証人「結構多い」
弁護人「Aからは、最初から詳しい話があった」
証人「いいえ」
弁護人「具体的な話はいつ」
証人「事故の直前」
弁護人「大屋がAから具体的な指示を受けたか、君は分かるか」
証人「分かりません」
弁護人「さっきの検察官の質問で、『自分の考えで大屋を迎えにいった』と言っていたけど、なぜ」
証人「自分も一人だし・・大屋も退屈だろうから」
弁護人「大屋は車に乗ってから、一度でも車の外に出ましたか」
証人「いいえ」
弁護人「大屋がY2と一言でも話したことはありますか」
証人「いいえ」
弁護人「君が大屋と電話していた?」
女性検察官「大屋ではなく、Aです」
弁護人「失礼しました、君がAと電話していた?」
証人「はい」
弁護人「大屋は本件事故に何か関係していたと思う」
証人「自分的には、いてもいなくても関係ないと思う」
弁護人「Y1を(新千歳空港に)送った時、本当に大屋はいた?」
証人「いたと思うけど、100%の記憶ではないです」
弁護人「警察の前で調書作ったとき、誘導を受けなかったか?」
証人「質問形ではあったと思います」
弁護人「君も大屋も暴力団ですが、二人の間に上下関係はありますか」
証人「いいえ」
弁護人「今、目の前に大屋がいますが、そのために正直に証言できないということはありますか」
証人「ありません」

−検察官(ホンダ)による証人尋問−
検察官「さっき、3〜4人で集まった記憶がないと言っていたね」
証人「はい」
検察官「A、D、Eはどういう状況で話したの?一つのテーブルについて話したとか」
証人「一つのテーブルについていたわけではなく、同じ部屋にいただけです」
検察官「君とAとの関係は」
証人「兄弟分です」
検察官「大屋とAとの関係は」
証人「兄弟分です」
検察官「Aが兄で、君や大屋が弟ということだね」
証人「はい」
検察官「君や大屋はAの言うことを断れる?」
証人「大体は断れないです」

−裁判長による証人尋問−
裁判長「君自身について聞くけど、一審判決は出た」
証人「はい」
裁判長「結果は」
証人「有罪(懲役1年の実刑)です」
裁判長「確定しましたか」
証人「いいえ。控訴中(まだ開始されていない)です」
裁判長「大屋の起訴について誰からいつ聞かされた」
証人「今年の3月。警察官から」
裁判長「Aと君と大屋の関係は」
証人「Aと自分は同じ組織。大屋は組織は違うけど、自分と同じようにAに使われていました」
裁判長「本件に関して、君はAから何か貰った?」
証人「何もありません」
裁判長「大屋は?」
証人「自分の知る限りでは、何も貰っていません」

−検察官(ホンダ)による証人尋問−
検察官「君は兄貴分の命令は、何の代価なしに聞かなければならない立場なのか」
証人「はい」
検察官「大屋も?」
証人「そう思います」

−弁護人による証人尋問−
弁護人「君は、本件犯罪を、自分がやった犯罪という感じがするか」
証人「いいえ」
 以上で、証人は退廷する。

 この後、今後の審理の進め方について、三者で協議が行われる。

裁判長「今後の審理について、何か申請などありますか」
ホンダ検察官「Eについて証人を申請します。共謀、犯罪状況について尋問したいと思います」
裁判長「Dについても請求がありますか」
ホンダ検察官「できれば。ただし、先行してEをお願いしたい」
裁判長「弁護人は?」
弁護人「然るべく」
裁判長「Eの証人尋問は採用します。Dの方は、とりあえず保留としておきます。できれば、被告人質問も行いたいと考えております」

 裁判長は、6月26日13時半から16時半を指定し、閉廷を告げた。

事件概要  木本被告は主犯の指示で、2004年2月9日、札幌市の路上において、わざと交通事故を起こし、保険金を騙し取ろうとした詐欺に関わったとされる。
報告者 笑月


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