裁判所・部 さいたま地方裁判所・刑事第一部
事件番号 平成17年(わ)第231号等
事件名 現住建造物等放火、同未遂、窃盗、建造物損壊、建造物侵入
被告名
担当判事 福崎伸一郎(裁判長)今岡健(右陪席)山田礼子(左陪席)
その他 書記官:遠藤徹
日付 2006.3.10 内容 被告人質問

 この日は、傍聴券の交付は行なわれなかった。荷物預かりや金属探知機によるチェックも無かった。
 弁護人は、杖を突いた初老の男性、眼鏡をかけた30代ぐらいの青年、眼鏡をかけた中年男性の三名。
 記者席は18席用意されていたが、座ったのは4人だった。
 遺族席は13席用意されており、5人が座る。
 検察官は、眼鏡をかけた30代ぐらいの男性と、かけていない30代ぐらいの男性。
 初老の弁護人と、眼鏡をかけていない検察官が、開廷前、書類を見ながら何か話していた。
 傍聴人は、私を除いて10名程度いた。
 被告人は、裁判長たちが入廷したあとに入廷する。数ヶ月ぶりに見る被告は、白髪をおかっぱに切り落としていた。浅黒く、小柄でずんぐりした体格。ピンクの服に、おなじみの紺色のベスト。入廷する時に、遺族席の方を少し見た。

 A被告の公判は、301号法廷で、1時10分から開始された。
 検察官は、弁護人の証拠請求について、KGによる精神鑑定以外同意する。
 弁護人は、熊谷検察官作成の取調べ報告書を証拠請求し、検察官は態度を留保する。
 検察官から同意のあった証拠は、採用され取り調べられる事となった。
 このやりとりの間、被告人は、幾度か傍聴席の方を見る。
 被告人質問が前回に続き行なわれる。被告人は、促され、証言台に座る。先ずは、初老の村木弁護人からの被告人質問。

−村木弁護人の被告人質問−
弁護人「先週の裁判で、HN検事さんの取調べの状況について答えていただきましたね」
被告人「はい」
弁護人「検事さんに、怒鳴ったり叩いたりされた」
被告人「はい」
弁護人「ずっとそういう場面が展開された」
被告人「そうです」
弁護人「他のやりとりは?」
被告人「ないです」
弁護人「ドンキホーテに行って何をしたか質問された?」
 被告人は何か言うが、聞き取れなかった。
弁護人「怒鳴られ、叩かれた記憶ばかりですか」
被告人「そうです」
弁護人「怒鳴ったり、机を叩くのをやめて欲しいとは言いませんでしたか?」
被告人「お願いしました」
弁護人「どのように?」
被告人「普通に、やめて下さい、と」
弁護人「例えば、具体的に」
被告人「むちゃくちゃに私を罵るのはやめて、と」
弁護人「具体的にどのような言葉でお願いをしたか、という質問です」
被告人「解りません」
弁護人「HNさんに、怒鳴ったり叩いたりするのはやめて、という趣旨の事は言ったのですね」
被告人「はい」
弁護人「どのように言いましたか?」
被告人「土下座でも何でもするからやめて、と」
弁護人「実際に土下座した?」
被告人「はい」
弁護人「HNさんはどうしましたか?」
被告人「黙ってました」
 弁護人は、取り調べ報告書を被告人に示す。
弁護人「平成17年3月24日付、検察事務官U・S作成の取調べ報告書を示します。HN検事の取調べの時間などを書いた書類です。12時から10時6分まで調べた。夜遅くまで取り調べられた記憶はある?」
被告人「あります」
弁護人「やり取りの記憶は?」
被告人は何か答えたが聞き取れなかった。
弁護人「3月23日付の物を示します。19時から夜の10時47分まで取り調べている。22日付を示します。夜10時47分まで取調べがあり、スタートは19時。つまり、三時間ぐらい調べられている。その間、HNさんは怒鳴ったり机を叩いたりしていた」
被告人「そうです」
弁護人「火をつけたんじゃないか、という質問もあった?」
被告人「はい」
弁護人「何と答えた?」
被告人「やってません、と」
弁護人「前回では、つけたんだろう、つけてません、というやり取りが続いたと教えてもらいましたね」
被告人「はい」
弁護人「取調べ時の精神状態は?」
被告人「錯乱状態でした」
弁護人「HNさんに、川越の警察に戻して欲しいと言った事はありますか?」
被告人「無いです」
弁護人「川越の警察に戻りたい、という気持ちは?」
被告人「ありました」
弁護人「Aさんがどのような刑になる、という話は?」
被告人「出ました」
弁護人「どんな話ですか?」
被告人「刑務所に入れられる」
弁護人「刑罰の名前が出たことは?」
被告人「解りません。忘れました」
弁護人「死刑という言葉が出たことは?」
被告人「無いです」
弁護人「HNさんの後、TMさんによる取調べがあった」
被告人「はい」
弁護人「死刑という言葉は出ましたか?」
被告人「そんなに出ませんねえ」
弁護人「少しは出た」
被告人「はい」
弁護人「死刑の意味は解りますね?」
被告人「はい」
弁護人「どんな気持ちでしたか?」
被告人「いやな感じです」
 また、取調べの時、薬をもらっていたか、ぐっすり寝ることが出来たか、という質問がされた。
弁護人「次の朝起きた時はどうでしたか?」
被告人「不安定でした」
弁護人「寝て疲れが取れる状態でしたか?」
 被告人は何か言ったが、聞き取れなかった。
弁護人「もう少し口を開いてはっきり喋って欲しいんです」
弁護人「呼吸が乱れる事は?」
被告人「過呼吸がありました」
弁護人「どういう事がありましたか?」
被告人「顔つきが変わって・・・・・」
弁護人「誰に怒鳴られたのですか?」
被告人「・・・・・HNです」
弁護人「そのせいで過呼吸になったのですか?」
被告人「はい」
弁護人「過呼吸になった場所は?」
被告人「検察庁の中です」
弁護人「浦和の?」
被告人「はい」
弁護人「警察に連れて行かれてからは?」
被告人「ないです」
弁護人「過呼吸はどうなった?」
被告人「苦しくて、はあはあはあはあ、苦しかったです」
弁護人「HNさんは何か言った?」
被告人「言いません」
弁護人「薬はもらいましたか?」
被告人「もらいません」
弁護人「Aさんは、書類を書いたり、書類に名前を書いたことはありますか?」
被告人「はい」
弁護人「その事について聞きます。乙42号証、43号証、被告人の上申書を示します(被告人に見せる)。乙42は、平成17年3月25日付で、Aさんの名前があり、手書きですが、貴方が書いたのですね」
被告人「はい」
弁護人「乙43も、同じ日付ですが、これもAさんが書いた」
被告人「はい」
弁護人「乙44、これも同じ日付です。これもAさんが書いたのですか?」
被告人「はい」
弁護人「乙42号の中身の中で、『TMさん、優しい暖かい気持ちが解ったので、これからは事件の話を全部したいと思います』と書いてあります。自分の気持ちで書きましたか?」
被告人「いいえ」
弁護人「どういう状況で書いたのですか?」
被告人「読んで・・・・文章に直して・・・・・」
弁護人「今読んでいる3月25日の『私の気持ち』という上申書は、誰の前で書いたのですか?」
被告人「TMさんの前です」
弁護人「何かをTMさんが読んで、それを貴方が書いたのですか?」
被告人「読んでいません」
弁護人「どうやって書いたのですか?」
被告人「TMさんの話を聞いて・・・・・間違った事を書きました」
弁護人「TMさんが文章の中身を言って、それをAさんが書いた」
被告人「はい」
弁護人「乙42、43も、同じ日付ですね」
被告人「はい」
弁護人「これも、作り方は同じですか?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「TMさんが口で言って、それをAさんが書いた」
被告人「はい」
弁護人「TMさんは空で言うのですか?」
被告人「はい。何も見ないで」
弁護人「乙40、41,42を示します」
弁護人は、被告人に証拠を見せる。
弁護人「乙40は、平成17年3月?日付けの調書です。乙41、平成17年3月25日付の調書を示します。TMさんが作って、Aさんの署名がありますね」
被告人「はい」
弁護人「調書を作った順番は?」
被告人「忘れました。あの・・・・・」
弁護人「上申書が先か、調書が先かわかりますか?」
被告人「解りません」
弁護人「上申書についてに戻ります。TMさんは、貴方が上申書を書いたらどうしましたか?」
被告人「よくやったと」
弁護人「よくやったなあ、と褒めてくれた」
被告人「はい」
弁護人「乙40について。『事件の話が出来ませんでした。でも、TMさんの暖かい気持ちが解ったので、これからは事件の事について話す事にします』と書いてありますね」
被告人「はい」
弁護人「乙43。『花月の事を考えると、反省の気持ちを裁判官に伝えたくて、調書にサインしました。死刑になるかもしれませんが、勇気を持ってサインしました』と書いてある」
被告人「はい」
弁護人「乙44は、『被害者の皆様、御免なさい。私は、反省して、更正して、謝って、だめと言われても謝って』と書いてある」
被告人「はい」
弁護人「なぜ書いたのですか?」
被告人「TMさんの顔を見ていたら、かわいそうになって」
弁護人「TMさんはどんな話し方をしましたか?」
被告人「話し方も、泣きそうな話方をしていました」
弁護人「TMさんがかわいそうになった」
被告人「はい」
弁護人「何故、火をつけたことを認めたのですか?」
 被告人は何か言うが、聞き取れなかった。
弁護人「3月24日の取調べ状況を見せてもらいました。上申書を書いた時、どんな精神状態でしたか?」
被告人「不安定でした」
弁護人「書いている事は解りましたか?」
被告人「書かされたんです」
弁護人「乙40号証、平成17年3月?日付けの調書には、『私はこれまでずっと嘘を言ってきました。私は、昨年の12月12日に、浦和花月店などで起きた放火は、私のやってしまった事です』と書かれている。こういう事を言いましたか?」
被告人「言ってないです」
弁護人「『以上のように録取し、読み聞かせたところ、誤り無いと認め、署名した』と書いてありますが、中身は解っていましたか?」
被告人「いえ・・・・・」
弁護人「どういう事が書いてあるか解りましたか?」
被告人「解りません」
弁護人「名前を書くと、放火を認めたことになると解っていましたか?」
被告人「・・・・・」
弁護人「質問の意味は解りましたか?」
被告人「解りません」
弁護人「言い方を変えます。放火犯になるとは思いませんでしたか?」
 被告人は何か言うが、聞き取れなかった。
弁護人「調書に名前を書いたら、TMさんは褒めてくれた」
被告人「はい」
弁護人「TMさんは、怒鳴ったり机を叩いたりはしない」
被告人「はい」
弁護人「調書を作っているときに死刑という言葉は出ましたか?」
被告人「TMさんの・・・・・(聞き取れず)」
弁護人「今の質問の趣旨は解っていますね。それに対して、HNさんとTMさん、という言い方をした」
被告人「はい」
弁護人「HNさんも、死刑と言った」
被告人「はい」
弁護人「HN検事からは、死刑という言葉は出なかった、と、前に答えていますね。HNさんも死刑と言ったのですか?」
被告人「はい」
弁護人「TMさんも?」
被告人「言葉では言いませんが、態度が」
弁護人「どういう感じでしたか?」
被告人「こういう感じでした」
 被告人は、何かしぐさをする。
弁護人「Aさんが死んじゃう、という事ですか?」
被告人「はい」
弁護人「上申書を書いている時も、オバケのようなしぐさがあった」
被告人「はい」
弁護人「どういう気持ちでしたか?」
被告人「不愉快でした」
弁護人「HNさんは、どのように死刑と言いましたか?火をつけていないと言ったら死刑になると、そういう流れですか?」
被告人「そういう流れもありました」
弁護人「死刑と聞いて、やっていないけどやったことにしよう、という気になったのですか」
被告人「はい」
弁護人「上申書を書いた時の気持ちは言えますか?」
被告人「言えません」
弁護人「川越署にいた時、同じ部屋に入っている女性がいましたね」
被告人「はい」
弁護人「N・Hさんを覚えていますか」
被告人「はい」
弁護人「O・Mさんも」
被告人「はい」
弁護人「同じ部屋にいた時、ちょっと話をする事もありましたか?」
被告人「ありました」
弁護人「放火について、二人と話したことはありますか?」
被告人「部屋で・・・・・」
弁護人「部屋で?」
被告人「話したりしてましたよ」
弁護人「二人にどういうことを話しましたか?」
被告人「自分の事を」
弁護人「N・Hさんがこの法廷に来たのを覚えていますか?」
被告人「はい」
弁護人「証言の内容は覚えていますか?」
被告人「忘れました」
弁護人「N・Hさんは、Aさんは『人が死ぬとは思いませんでした』と話したと言っています。その記憶はありますか?」
被告人「はい」
弁護人「そういう事をN・Hさんに言ったのですか?」
被告人「覚えていません」
弁護人「言ったかどうかは覚えていますか?」
 被告人は何か言ったが、聞き取れなかった。
弁護人「(被告人は)自分の首に手で切るようなしぐさをした、とN・Hさんは言った。それはありますか?」
被告人「こう?」
 被告人は、何かしぐさをする。
弁護人「自分の首を切るしぐさは?」
 被告人は何か言うが、聞き取れなかった。
弁護人「上申書、調書を作った後も、取調べは続きましたね」
被告人「はい」
弁護人「その後も、火をつけたとずっと言っていた」
被告人「はい」
弁護人「火をつけていないとは?」
被告人「言いました」
弁護人「相反する二つの答えですが、もう一度聞きます。犯行を認める上申書や調書を書いた後、取調べで、火をつけたことについて如何答えたか、覚えていますか?」
被告人「覚えていません」
 上申書である、乙49,50号証を示す。
弁護人「乙49号、4月6日付の上申書ですが、これを書きましたか?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「同じ日付の乙50号を示します。Aさんが書いたのですか?」
被告人「はい」
 訂正が入る。乙50は、4月9日付だった。
弁護人「乙50もAさんが書いたのですか」
被告人「はい」
弁護人「乙50、4月10日付の物も書いたのですか」
被告人「はい」
弁護人「同じ日付の乙51も書いたのですか」
被告人「はい」
弁護人「同じ日付の乙53も書いた」
被告人「はい」
弁護人「4月6日、4月10日というところで見てもらいましたが、4月6日付の一枚だけ、中身は、『私が火をつけた動機は、KJの事で苛々したからです』とあります」
被告人「はい」
弁護人「火をつけたのを認めていると解りますか?」
被告人「解りません」
弁護人「もう一度聞きます。4月6日付の上申書の中身は、『私が火をつけた動機は、KJの事で苛々していたからです。精神病のふりをすれば釈放され、何でも許されると思いました』とあります。今までの物は、全部Aさんが考えて書いたのですか?」
被告人「全部ではないです」
弁護人「どうやって書いたのですか?」
被告人「TMさんの助けが無かったらかけなかった」
弁護人「上申書は、誰の前で書きましたか?」
被告人「TMさんです」
弁護人「TMさんがいなくなった事は?」
被告人「無いです」
弁護人「SKさんだけが取調べを担当した事は?」
被告人「あります」
弁護人「其の時、紙に何か書いたことは?」
被告人「あります」
 弁護人は、平成17年4月6日取調べ報告書を、被告人に示す。
弁護人「4月6日の取調べは、SKさん一人。一人だけの時もあった」
被告人「はい」
弁護人「SKさんの口で言ったことを書いた事もあった」
被告人「はい」
弁護人「何故ですか?」
被告人「はずみで・・・・・・」
弁護人「責めるわけじゃないけど、火をつける事を弾みで書いたのですか?」
 検察官は、今の質問は弁護人の誤導である、と述べる。
弁護人「SKさんの前で、どんな紙を書いた?」
被告人「解りません」
弁護人「火をつける中身とは?」
被告人「解りません」
弁護人「記憶に無いのですか?」
被告人「はい」
弁護人「TMさんが居ない理由を、SKさんが言った事は無い」
被告人「ありません」
弁護人「今度は、10日付。9日付の50、9日付の51、10日付の53.覚えている事は?」
被告人「殆ど忘れています」
弁護人「去年の4月の頭の事は覚えていませんか?」
被告人「覚えていません」
弁護人「精神状態は?」
被告人「すぐ忘れてしまうので」
弁護人「お薬はずっと飲んでいた」
被告人「はい」
弁護人「TMさんは、何回、死刑と言った?」
被告人「3,4回だと」
弁護人「HN検事を引き継いだYD検事は、死刑だと言った?」
被告人「はい」
 弁護人は、被告人に、乙54号証の陳述書を示す。
弁護人「16枚あって、最後にAさんの名前があります。書きましたか?」
被告人「この日は書きました」
弁護人「平成17年4月20日とあるが、これも?」
被告人「そうです」
弁護人「陳述書を見たことは?」
被告人「解りません」
弁護人「7ページ目を見てください。上から三行目に、『蝋燭を並べたのは、八つ墓村を真似てみました』と書いてある。こういう事は言いましたか?」
 被告人は何か言ったが、聞き取れなかった。
弁護人「八つ墓村をまねた、と誰かに話しましたか?」
被告人「これは自分で作ってやっただけで、誰にも話していません」
弁護人「お巡りさん、検察官に、八つ墓村をまねたと話しましたか?」
被告人「していません」
弁護人「HNさんは貴方を怒鳴る」
被告人「はい」
弁護人「YDさんはどうでしたか?」
被告人「優しい人でした」
 ここで、被告人の声は、やや大きくなっていた。
弁護人「YDさんになって、気分はどうなりましたか?」
被告人「楽になりました」
弁護人「落ち着いて色々考える事ができた」
被告人「はい」
弁護人「考えられた?」
被告人「はい。(聞き取れず)」
弁護人「YDさんの時も、調書を作っていますね」
被告人「はい」
弁護人「火をつけたという調書は作られましたか?」
被告人「書いてません」
弁護人「火をつけたという調書は記憶に無い」
被告人「はい」
弁護人「YD検事の前で、調書に名前を書いた記憶はありますか?」
被告人「あります」
弁護人「調書を読んでくれた」
被告人「はい」
弁護人「どんな気持ちで名前を書いたのですか?」
被告人「安心できる人でした」
弁護人「聞こえなかったのですが」
被告人「安心できる人でした」
弁護人「取調べの時、部屋に写真が置いてありましたね」
被告人「はい。3人の」
弁護人「写真の人は、どんな人ですか?」
被告人「亡くなった人です」
弁護人「取調室は、川越でしたか?大宮でしたか?」
被告人「大宮です」
弁護人「誰の写真ですか?」
被告人「aさんと・・・・・・えっと・・・・・・bじゃない・・・・亡くなった方です」
弁護人「ドンキホーテの火事で亡くなった方?」
被告人「そうです」
弁護人「取調室の何処に写真は置いてありましたか?」
被告人「目線の上に置いてありました」
弁護人「Aさんの目の高さ」
被告人「そうです」
弁護人「何処に在ったのですか?」
被告人は何か言ったが、聞き取れなかった。
弁護人「聞こえなかったんで・・・・もう一回聞きます。写真はどこにおいてありましたか?」
被告人「壁に貼ってありました」
弁護人「三枚?」
被告人「はい」
弁護人「ドンキホーテで亡くなった人と、誰が説明してくれましたか?」
被告人「TMさんです」
弁護人「生前の元気な写真ですか?」
被告人「はい」
弁護人「四つ前の質問で、aちゃんと言いましたが、亡くなった人の名前と、何故解ったのですか?」
被告人「TMさんが」
弁護人「その頃のAさんの精神状態はどうでしたか?」
被告人「はらはらどきどきしていました」
弁護人「どういう状態ですか?」
被告人「具体的な話になると(聞き取れず)」
弁護人「具体的の後、何と言ったんですか?」
被告人「ちょっと解りませんが」
弁護人「YDさんの後、誰が取調べをしましたか?」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「写真を見せられていた頃の取調べの受け応えはどうでしたか?」
被告人「解りません」
弁護人「YDさんのときに調書を書いたことは覚えている」
被告人「はい」
弁護人「調書の中で、『違うんですよ』というやり取りがあったと覚えている?」
被告人「ないです」
弁護人「僕達にあった時、アドバイスを受けた記憶はありますか?」
被告人「はい」
弁護人「どのような?」
被告人「ちょっと記憶に・・・・・・」
弁護人「YDさんの前で名前を書いた時、どんな気持ちでしたか?」
被告人「はらはらどきどきで・・・・・、いずれ使われる」
弁護人「使われる、とは?」
被告人「使われるって(聞き取れず)」
弁護人「YDさんの時、火をつけたかについては、どういう話をしていましたか?」
被告人「解りません」
弁護人「やり取りを覚えていないということですか?」
被告人「はい」
弁護人「調書に名前を書いたときの気持ちの記憶は?」
被告人「記憶していません」
弁護人「はらはらどきどきと言っていたが」
被告人「使われました」
弁護人「取調べに?」
被告人「はい」

−別の弁護人の被告人質問−
弁護人「幾つか、神経科、精神科に行っていましたね」
被告人「はい」
弁護人「どういう病気と診断されていましたか?」
被告人「鬱病ないし精神不安定病・・・・・」
弁護人「正式かは兎も角、そういう種類と理解していた」
被告人「はい」
弁護人「自覚症状としては、鬱になった?」
被告人「落ち込むとずーっと落ち込んで、薬を飲んで(聞き取れず)」
弁護人「落ち込む他には?体の状態に影響はありましたか?」
被告人「ありません」
弁護人「頭が痛いとかは」
被告人「倒れちゃう。平衡感覚が無い」
弁護人「意識を失って倒れる?」
被告人「はい」
弁護人「倒れて気付く」
被告人「はい」
弁護人「眠れない事もあった」
被告人「はい」
弁護人「鬱病と思っていた症状に、変化はありましたか?」
被告人「はい」
弁護人「頻繁に変化していましたか?それとも、長い間、良かったり悪かったりしましたか?」
 被告人は何か言うが、聞き取れなかった。
弁護人「病院に勤めていた時は、そういうことは無かったのですね」
被告人「はい」
弁護人「病院をやめてから、気分が落ち込んだ」
被告人「はい」
弁護人「一昨年の12月16日に逮捕された時の状況を、思い出せますか?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「よくは思い出せない」
被告人「はい」
弁護人「一昨年に捕まった時に、落ち込みの程度は如何でしたか?」
被告人「・・・・・・解りません」
弁護人「酷くなったとか」
被告人「中ぐらいの感じ」
弁護人「酷くはない」
被告人「はい」
弁護人「大宮、川越、と回され、3月に大宮に戻りましたね」
被告人「はい」
弁護人「その間の精神の状態はどうでしたか?」
被告人「(聞き取れず)やる気が多少あったから、中ぐらいで・・・・・・」
弁護人「どういうやる気ですか?」
被告人「仕事の」
弁護人「捕まった後、当初は少しはやる気があった」
被告人「はい」
弁護人「さっき、村木弁護人の質問で、調書には弁護人に相談してから署名しましょうと聞いていた、という話が出ましたね」
被告人「はい」
弁護人「そうしようと思っていた」
被告人「はい」
弁護人「そうできましたか?」
 被告人は何か言ったが聞き取れなかった。
弁護人「聞き方が悪かったです。署名を断った事はありますか?」
被告人「ありました」
弁護人「まだがんばれた」
被告人「はい」
弁護人「その後で、気分が良くなったり悪くなったりはありましたか?」
被告人「はい」
弁護人「どっちですか?」
被告人「両方です」
弁護人「良くもなった?」
被告人「はい」
弁護人「逮捕された後の事を聞いています。何時ごろ悪くなったかは?」
被告人は何か言ったが、聞き取れなかった。
弁護人「KJと会った頃に悪くなったというのは、逮捕前の話だね」
被告人「はい」
弁護人「私が聞いているのは、逮捕されて、警察に捕まってからの事を聞いているのね」
被告人「はい」
弁護人「逮捕された時は、鬱は中ぐらい」
被告人「はい」
弁護人「悪くなった事は、何時ですか?」
被告人「春ごろです」
弁護人「大宮の頃ですか」
被告人「はい」
弁護人「如何悪くなったんですか?」
被告人「人と話をしても鈍くなっちゃった」
弁護人「話す人は、取調官と弁護人だね。それと、留置人」
被告人「はい」
弁護人「如何鈍くなった?」
被告人「裁判の話とか、人の話す事・・・・・・」
弁護人「裁判とは、弁護人とか?」
被告人「はい」
弁護人「人と話とは?」
被告人「全員で・・・・・・」
弁護人「刑事さんも?」
被告人「消防士さんも・・・・・・」
弁護人「去年の春以降、法廷の話も含めて鈍くなっていたと」
被告人「はい」
弁護人「逮捕されてから、精神科に行ったことは?」
被告人「あります」
弁護人「警察に連れて行ってもらった」
被告人「はい」
弁護人「治療のために連れて行ってもらったのは?」
被告人「日にちはわかりません」
弁護人「大体何時ごろかは?」
被告人「覚えてないですね」
弁護人「記録によると、大宮の戻ってきて少ししてからですが、解りませんか」
被告人「はい・・・・・」
弁護人「どういう取調べを受けたか、覚えている時期と、覚えていない時期がある?」
被告人「はい」
弁護人「何時ごろから記憶に?」
被告人「最初の頃」
弁護人「最初に大宮警察に居た頃」
被告人「はい」
弁護人「その後と比べては?」
被告人「ちょっと解りません」
弁護人「質問の意味が解らない?」
 被告人は何か言ったが、聞き取れなかった。

 これで、今日の予定は終わり、次回は3月22日11時から被告人質問となる。
 被告人は、裁判長に促され、証言台から立つ。裁判長は、次回の予定を告げる。
 公判は、5時まで予定されていたが、2時37分に終了する。
 被告人は、ゆっくり歩いて退廷する。被告人の声は小さく、こもっていて、発音が不確かだったので、聞こえにくかった。弁護人とのやり取りが理解できていないのか、とも思える場面があったが、後の公判を踏まえれば、実際は如何だったのか、今から思えば疑問を感じる。

事件概要  A被告は2004年12月13日、埼玉県さいたま市のドン・キホーテを放火し、同社社員とアルバイトら3名を焼死させたとされる。また同じ時期に同市内のスーパー等5件の放火未遂を行ったとされる。
報告者 相馬さん


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