裁判所・部 | さいたま地方裁判所・刑事第一部 | ||
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事件番号 | |||
事件名 | 現住建造物等放火、同未遂、窃盗、建造物損壊、建造物侵入 | ||
被告名 | A | ||
担当判事 | 福崎伸一郎(裁判長)今岡健(右陪席)山田礼子(左陪席) | ||
日付 | 2005.10.24 | 内容 | 証人尋問べ |
この日の傍聴券の枚数は三十六枚だったが、締め切り時間までに傍聴希望者が券の枚数以上に集まらなかったので、抽選は行われなかった。 入廷前に、荷物の預かりや金属探知機によるチェックがあり、ゲートも潜らされた。 遺族席は満席だったが、報道記者席は空白がやや目立った。 被告は、青い服のうえに紺のベストを着ている。髪型は前回と同じ。肌が浅黒い。被告は、うっすらと笑みを浮かべ、誰かに対して話しかけるように口を少し動かしていた。しかし、すぐに無表情になり、傍聴席に目を向けているとも取れる方向を見る。 裁判長は、眼鏡をかけた痩せた初老の男性。裁判官は眼鏡の中年男性と、髪の長い女性。 検察官は、高橋壮志、千葉美幸という男女だったが、二人とも若かった。 弁護人は四人居た。 十時から開廷する。 本日は証人尋問が行われた。三人の証人が出廷する。三人の名前はX1、X2、X3といった。 三人一緒に宣誓を行う。一人の証言が終わるまで、他は外の控え室で待つ。 先ずは、X1証人の尋問から始まった。 −X1証人に対する高橋検察官の証人尋問− 検事「証人の経歴。警察官になられたのは?」 検事「階級は警部補?」 証人「はい」 検事「捜査の経験は?」 証人「28年です」 検事「今回の一連の放火事件に、援軍として入った」 証人「はい」 検事「捜査に入ってから、どのような捜査に?」 証人「北浦サティの捜査に」 その取りまとめ的役割、と述べた。 検事「浦和消防署で、炭化したジャンパーを領知した」 証人「はい」 検事「証拠品として」 証人「はい」 ジャンパーは、消防士のY1が提出した。 ジャンパ−一部炭化したものとして、Y1さんから領知。 検察官は、ジャンパーを証人と弁護人に見せる。 検事「この袋(ビニール製のものだった)について、Y1さんから何か説明を?」 証人「Y2さんから」 検事「どういう?」 検事「この袋は消防士さんが証拠品を入れるのに使っている?」 証人「はい」 証人「ジャンパー自体の袖の部分と(聞き取れず)二つに分かれていました」 検事「領知の経緯は、十二月十三日の事件後、領知まで(証拠品は)浦和消防署に?」 証人「はい」 この後、検事はジャンパー持ち帰りの経緯について質問するが、弁護人はそれに不平を唱える。 検事「(消防署に)誰が持ち帰った?」 証人「Y2さんだと」 証人「サティに許可を得て」 検事「北浦サティの総務課長に許可を受けたと」 検事「持ち帰った後の(消防署での)保管状況は?」 証人「二回の書庫で、外部から出入りできないと」 この後の質問に、弁護人が再び不平を唱える。 検事「今聞いた事で、Y1さんから領知した」 証人「はい」 検事「赤というのは?」 証人「襟の裏のあたり」 検事「それを、何と比べて確認を?」 証人「現場の写真と」 甲39号証を示す。11番の写真から。 検事「11番からジャンパーの写真で、ここに赤いものが写っているが、これで?」 検事「この写真で領知した物と同じと判断した」 証人「はい」 検事「ジャンパーは、どのようなきっかけで消防車にあると知った?」 証人「写真と比べたところ、燃えカスだけで、トイレ内のジャンパーがあるのかと、北浦サティや消防車に確認して、それで」 検事「解ってから、領知までに間があった理由は?」 証人「当番制で、責任者がいないので、間が空いた」 ここで、弁護人の証人尋問に代わる。ゆっくりとした口調で話す弁護人だった。 −X1証人に対する弁護人の証人尋問− 弁護人「捜査に関わったのは、12月14日から」 証人「はい」 弁護人「現場に臨場していない」 証人「はい」 弁護人「今回のジャンパーについて関わったのは、1月6日から?」 証人「それは?」 弁護人「領知前からジャンパーを知っていた?」 証人「写真では」 弁護人「物に関わったのは、1月6日?」 証人「12月末です」 弁護人「すぐに領知しなかったのは?」 証人「年末年始だったり、了解が得られなかったりで、1月6日に」 弁護人「領知までの保管状態について、X1さんは関わった?」 証人「見ていません」 甲40号証示す。4,5,6の写真。 弁護人「これが12月末に見たジャンパー?」 証人「はい」 甲39号証の14を示す。 弁護人「甲39号証と甲40の4を見て、残留物では、甲40の4の方が少なくない?」 弁護人「今回の北浦サティで、現場の警察官が、現場から残渣物を領知しているのは」 証人「知っています」 弁護人「関わっている?」 証人「写真で見た」 弁護人「領知後、ラベリングなどは?」 証人「します」 弁護人「今回は?」 証人「解りません」 弁護人「X1さんはやってない」 証人「はい」 弁護人「証拠は、何処で保管を?」 承認「大宮で保管して、浦和署に持っていった」 弁護人「持って行ったのは、1月6日」 証人「はい」 弁護人「ビニール袋の封印は?」 証人「しません」 弁護人「X1さんは、店の人に物を見せて回った事は?」 証人「いいえ」 弁護人「触れた事は?」 証人「ありません」 −X1証人に対する別の弁護人の証人尋問− 弁護人「ジャンパーが消防署の方に行った理由は?」 証人「聞いていません」 −X1証人に対する高橋検察官の証人尋問− 検事「浦和警察署の警官が、証拠を領知しているのは、他の人も知っていた」 証人「はい」 検事「誰から、誰が領知したと?」 証人「浦和の総務課長から」 検事「今回のジャンパーを捜査した経緯は?」 証人「写真を見て、違う物が写っている。ジャンパーじゃない、と」 検事「Y3巡査が領知したのは?」 証人「布のようなもの」 −X1証人に対する女性裁判官の証人尋問− 裁判官「放火の残渣物の保管が消防でされるのは、良くある事?」 証人「私には解りません」 −X1証人に対する男性裁判官の証人尋問− 裁判官「放火の捜査に関わった事は?」 証人「いいえ」 裁判官「証拠を連絡せずに持ち帰ったら困るのでは?情報交換はしないの?」 証人「それについては解りません」 −X1証人に対する裁判長の証人尋問− 裁判長「貴方の他に消防との連絡を統括する人は?」 証人「通常はあると」 証人「刑事課長さんぐらいの人だと」 裁判長「今回、ジャンパーが別にあると気付いたのは?」 証人「現場の写真で」 裁判長「他に気付いた人は?」 証人「解りませんけど、私は写真を見て気付いて」 裁判長「指示した人は居ない」 証人「はい」 証人は退廷する。次の証人が入廷。 裁判長「被告人、前に来て」 被告人は、立ち上がらなかった。 裁判長は、再び言う。 被告は立ち、示された証拠品を見る。 裁判長「これが何かというのは?」 ジャンパーを見せる。 被告は、問いに答える。頼りない声でよく聞こえないが、否定したらしい。 裁判長「ジャンパーというのは解らない」 被告「はい」 被告は、席に戻る。 続いて、X2証人の尋問に移る。ぼそぼそとした喋り方をする人で、聞き取りにくかった。 −X2証人に対する千葉検察官の証人尋問− 証人の経歴は、帝京大学法医学部の講師を経て、科捜研に入る。専門はDNAの研究。証人として出廷した経験あり。 甲59号証を示す。 検事「今回、鑑定事項は嘱託書に記入されたとおり?」 証人「そうです」 甲55号の鑑定書を示す。 検事「これは先生が作成を?」 証人「はい」 検事「結果は、記載の通り」 証人「はい」 検事「一部炭化したジャンパーと被告の血液」 証人「はい」 検事「鑑定資料のジャンパーはこれ?」 証人「はい」 検事「どのような状況?」 証人「このようにビニールに入っていた」 検事「鑑定のこのページに在るように、DNA鑑定のためにジャンパーから垢を採取した」 証人「はい」 検事「熱が加わってDNAの型が変質する事は?」 証人「出来なくなることはあるが、型が変わると聞いた事は無い」 検事「出来るか出来ないか、と」 証人「はい」 検事「ミトコンドリアDNA型とあるが、これの鑑定を」 証人「はい」 検事「それはどんなもの?」 証人「人の細胞の中には、核DNAと、細胞中のミトコンドリアがあり、それのDNAがミトコンドリアDNA」 検事「核DNAは、細胞の中に一つ」 証人「はい」 検事「ミトコンドリアDNAは?」 証人「活動の激しい細胞では多い。数百と言う話はある」 検事「鑑定の経緯について、4ページにあるPCR法をとった」 証人「はい」 検事「説明して」 証人「目的とするDNAを、優先的に増やす化学反応を起こす」 検事「これで、分析不可能なDNAが可能なまでに増える?」 証人「簡単になります」 検事「PCRによる増幅方法は成功した?」 証人「何ら問題は無い」 検事「特別鑑定の結果ですが、鑑定書二枚目のカラーコピーの部分?」 証人「分析の結果」 検事「それを纏めたのが表に?」 証人「はい」 検事「75,325番目の塩基に差異が生じているのは?」 証人「75というのは、そこにおいて塩基Cを検出するが、Tを認めた。325も同じ」 検事「若干の異物を認めた」 証人「はい」 検事「同じ型のミトコンドリアDNAが検出される可能性は?」 証人「私自身がデータ提出したのを元に言うと、20人に1人ぐらい」 検事「733人に26人ぐらいと回答いただいたことがあるが」 証人「問い合わせはあったが、言った事について記憶は無い」 検事「今回の献体からは、ミトコンドリアDNA以外に他のDNAも検出された」 証人「はい」 検事「何故、ミトコンドリアDNAから?」 証人「核から出来るのに越した事はないが、警察が難しいと判断したと思ったので」 検事「科捜研では、ミトコンドリアDNAはあまりやっていない」 証人「そうだと思う」 検事「今回は、核の生成も成功したと言う事だが、PCRで増幅を行った」 証人「はい」 検事「資料2に被告の血液に含まれていない数値があるが」 検事「被告に一致する型以外のものも検出していると」 証人「はい」 検事「同じDNAを持つ確率はどのくらい?」 証人「計算をして見なければ」 検事「計算上ありえるか?」 証人「最も日本人で出やすい型ですらSTRで考えると、確か・・・・・1000何人に一人というレベルです」 検事「15型を判断すれば、この人しかいないと特定できる」 証人「そうです」 検事「鑑定書の結論部分を見ると、資料2と一致している型が検出されているとして矛盾は無い、とあるが、解りやすく」 証人「被告のDNA型が資料の中に存しているかが鑑定内容と認識している。被告の型が混在物の中に認められている場合、一致するとして矛盾は無い」 −X2証人に対する白髪で眼鏡の弁護人の証人尋問− 弁護人「X2先生に届いたジャンパーは?」 証人「ビニールに入っていた」 弁護人「ラベルや付箋は?」 証人「いいや・・・・そういうのはあったか記憶にない」 弁護人「今回は、ミトコンドリアと核のDNAの鑑定を」 証人「結果的に」 弁護人「ミトコンドリアDNAは、帝京大学が主体的に行っている?」 証人「いろいろな所がやっている」 弁護人「広く行われていると」 証人「はい」 弁護人「ミトコンドリアDNA鑑定は、何件経験を?」 弁護人「PCRの際に褐色を示したとあるが」 証人、それについて説明をする。 弁護人「褐色を示すと、PCR増幅が上手く出来ていない?それとも問題ない?」 証人「そういう状態だと阻害を起こすので、前に述べた方法で生成するんです」 弁護人「鑑定書の中で、若干の混合とあるが、資料に何人かの垢が混じっている推測が成り立つ?」 証人「そうですね」 弁護人「熱を加えると、各人の持っている垢が反応として出る?」 証人「4名の足し算のものが検出される」 弁護人「差は?」 証人「垢を付着させやすい人もさせにくい人も居る」 弁護人「ミトコンドリアDNAを検査する上で、血液は検査しやすい」 証人「はい」 弁護人「ミトコンドリアDNAを相手にする場合、置換はかなりの頻度で出てくる?」 証人「はい」 弁護人「ジャンパーに腕を通したり触れた人物が、日本人の場合、置換はかなり頻繁に起きる」 証人「はい」 証人は、ミトコンドリアDNAを部分で言うのは適当ではない、と言う。全てを見て全体像が見えてくる、と述べる。 弁護人「それは解ります。置換の出現率はどのくらい?」 鑑定について、他にも色々質問が行われる。 −X2証人に対する別の弁護人の証人尋問− 弁護人「垢は、存在していた人間が被告か否かの鑑定を依頼されたわけではない」 証人「はい」 −X2証人に対する近藤弁護人の証人尋問− 弁護人「鑑定期間についてはどのくらい?」 証人「2週間ぐらい。まあ、ケースバイケースで」 弁護人「ミトコンドリアDNAは?」 証人「2週間ぐらい」 弁護人「今回もそのぐらい?」 証人「だと思います」 −X2証人に対する千葉検察官の証人尋問− 鑑定書6ページ目を見せる。 検察官「資料1と資料2を見ると、同じ塩基が含まれていると見て矛盾は無いと」 証人「はい」 検察官「同じ型が出る可能性はありえない、被告人以外にありえないと」 証人「はい」 この後の高橋検察官の質問について、弁護人と衝突があった。 −X2証人に対する今岡裁判官の証人尋問− 裁判官「垢のつきにくい人とつきやすい人が居ると言うが、それは、垢があるからといって、普段から袖を通しているとは言えないと」 証人「はい」 裁判長も尋問を行った。 2人目の証人が退廷し、3人目が入廷する。 −X3証人に対する高橋検察官の証人尋問− 証人は、警官の巡査であり、大宮署に属する。 検察官「このちり紙状のものは、どのように発見を?」 検察官「この写真どおりに発見を?」 証人「はい」 検察官「これら領知した物件は、如何見つかった?」 検察官「燃えた衣料をどけたところ、発見された?」 証人「はい」 検察官「臭いは?」 証人「灯油のような」 検察官「ちり紙は?」 証人「びしょびしょに濡れている様な」 検察官「臭いは?」 証人「強いと」 検察官「灯油のような?」 証人「はい」 検察官「ビニール片は?」 証人「文字が何か書いてあった」 検察官「それは?」 証人「ドンキホーテ(王国?)と書いていました」 証拠を確認する 検察官「この二つについて見分調書を作成した」 証人「はい」 検察官「この二つ以前にも作成経験がある」 証人「はい」 検察官「この後、捜査に関わった?」 証人「いいえ」 検察官「見分調書を作成したまで」 証人「はい」 検察官「それ以降はわからない」 証人「はい」 −X3証人に対する弁護人の証人尋問− 弁護人「証人は、火が収まってから現場に?」 証人「私が入る頃には、火が収まっていた」 弁護人「消防の人も現場には参加を?」 証人「見ていました」 物件は、ビニール袋に入れて保管した。ビニールや缶には番号が振ってあった。 証人は、退廷する。 弁護人は、証拠請求を行った。 裁判長「被告、前に来て」 被告は、聞き返し、前に出る。 検察官、証拠を見せる。 裁判長「今示されたものについて、何か解る?」 被告「解りません」 裁判長「心当たりは」 被告「ありません」 か細く小さく頼りない声だった。 次回は、ビデオテープ解析の結果、北浦サティ事件の女子トイレへの出入りを撮影したビデオテープなどを調べる。 これからの公判予定について打ち合わせも行った。 裁判長「被告、前へ」 被告人、前に出る。 裁判長「今日はこれで終わる。次回は11月4日の午後1時10分。法廷が変わる」 公判は、12時20分ぐらいに終了した。 被告は、少し身を乗り出して証言を聞いている事があった。 異様にゆっくり歩いて退廷した。 | |||
事件概要 | A被告は2004年12月13日、埼玉県さいたま市のドン・キホーテを放火し、同社社員とアルバイトら3名を焼死させたとされる。また同じ時期に同市内のスーパー等5件の放火未遂を行ったとされる。 | ||
報告者 | 相馬さん |