裁判所・部 | さいたま地方裁判所・刑事第一部 | ||
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事件番号 | |||
事件名 | 現住建造物等放火、同未遂、窃盗等 | ||
被告名 | A | ||
担当判事 | 福崎伸一郎(裁判長) | ||
日付 | 2005.9.12 | 内容 | 証拠調べ |
被告は、小柄な女性だった。長い髪を一筋の三つ編みにしている。根元は白髪で、三つ編みの部分は茶髪だった。紺色の服を着ている。 被告人が見えやすい席は、全て遺族席か記者席として割り当てられており、被告の姿は見えにくかった。 この日は、検察が証拠の内容を朗読して終わった。以下に、その概要を述べる。 まずは、女性検事が証拠を読み上げる。 〇大宮大和田店の窃盗に関するものは、概ね以下の通り。 ・ドアのガラスが割られた事件 ・そのガラス代の報告書 ・被害届 ・大宮大和田店でボストンバッグが盗まれた事に関するもの ・十号証は、被害商品の確認 ・十三号証は商品の撮影 ・別の号証は、カナズチ、ペンチの写真撮影に関するもの 〇十二月十三日の北浦和事件に関するものは、概ね以下の通り。 ・告訴状 ・店長の「犯人をとても許すことは出来ない、厳重に処罰してもらいたい」という調書 ・建物のメンテナンスなどを委託された会社の従業員による建物の構造説明 ・建物の工事を請け負った業者の、トイレに火をつけられたらどうなるかという説明 ・消防が来たときのトイレの写真 ・トイレの設備取り付け状況 ・トイレの出入りを撮影したビデオテープ ・ビデオテープの領置の経過 ・被告人が所持していたカード類 ・被告から領置したガソリンスタンドのポイントカード ・パチンコ店の防犯ビデオの領置経過 ・二万四千円の損害が生じたという被害届 ・消防が撮影した写真を警察が摂取した状況 ・壁などが焦げているという実況見分 ・焦げた子供用椅子を任意提出した経過 〇同日の浦和花月店の証拠は、以下の通り。 ・三人の遺体発見報告書 ・甲144号証は、Oさんの遺体の状況 ・甲145号証は、Sさんの遺体の状況 ・甲146号証は、Kさんの遺体の状況 ・甲153号証は、血中の一酸化炭素の濃度。Sさんの80%は即死する量だった。 また、遺族の供述も読み上げられた。 −Oさんの妹の調書− 私は兄の突然の死により一人になった。一人でウイークリーマンションで生活しているが、そこでも母と兄のことを思い出してしまう。 兄は電電公社に就職した後、ドンキホーテに勤めるようになった。 ラーメン屋になるために、もうすぐドンキホーテを止める予定だった。 友人からのメールで事件を知った。当初はそれほど深刻に考えなかった。現場に行って、大きな火事だったので兄のことが心配になり、兄の車を探した。駐車場に車が無かったので、立ち去ったのかと思ったが、姿が見えないので、警察に、従業員が収容されている病院を教えてもらい、そこに行った。 病院に行って、兄のことを知らないか、店員の人達に聞いてみた。そうすると、みんな、いっせいに黙ってしまった。そして、五十代の女性店員が、O君、姿が見えないんだよね、と言われた。また、店長から、消火活動に当たっている途中に兄の姿が見えなくなったと聞いた。 兄の事が解らず、マンションに帰ってもいらいらしていた。 警察から兄の死を知らされ、警察に行った。 兄の遺品が置かれているのを見て、もう兄の物はこれしか残っていない、兄は燃えちゃったんだな、と思った。 兄の遺体を見なければ後悔すると思い、見た。それは備長炭のようだった。 犯人に言いたいのは、兄を返してください。それが出来ないのならば、同じ苦しみを味わって。棺桶に閉じ込めて燃やしてやりたい。死刑を望みます。 −Sさんの母の調書− 自分がどれだけの事をしたのか知ってほしい。 Sちゃんは看護師や婦人警官に成るのが夢だった。彼氏とも幸せだった。それなのに、あの放火事件に巻き込まれた。私もX君(彼)も何故かと思う。 私は墓に行ってもSちゃんが死んだと認めたくないので、墓に手を合わせない。遺体も見ていない。 X君や友人と一緒に、Sちゃんが旅行していた場所に行った。 犯人に対しては、Sちゃんを返して、それが出来ないのなら、死ね、と言いたい。 夫は犯人を刑務所から出さないで欲しいと述べているが、私は、タイムマシンがあるのならば、Sを助け出して、犯人をドンキホーテの中に放り出したい。犯人がSちゃんと同じ苦しみを味わわなければ報われない。犯人を死刑にして欲しい。 −Kさんの母の調書− Kの人生はまだまだこれからだった。可哀想でならない。命を奪った犯人が許せない。 元は私と共にサイゼリアで働いていたが、ドンキホーテで働くようになった。受かったときは嬉しそうだった。 成人式をKは楽しみにしていた。着物を着たいというので、親から着物を売ってもらい、美容院に行き、写真を写真屋で写そうと思っていた。だが、それもできない。 最後にKと話したのは長男のYだが、その時、二人は夢を話し合っていた。だが、もうそれも出来ない。 事件の日は、クリスマスパーティーを開こうと思っていた。その時、知人からの電話で火事の事を知った。 Kの姿を見ることは出来ないと思ったが、遺体を見なければ後悔すると思った。私が見たのは炭のような物体だった。私はあまりのことに声も出なかった。不思議なことに取り乱さなかった。棺の中に、一緒に着物を納めた。 被告には、Kを返してと言いたい。被告が何を言うか聞きたい。犯人が、どのようなことをしたか自覚していないのならば、一生刑務所に居て欲しい。犯人には心からの謝罪を望む。それが出来ないのならば一生刑務所に居て欲しい。 ・甲200号証は、店員が立ち会っての実況見分 ・甲206号証は、消防署員の調書であり、 「自分が臨場した現場から死者が出ることほど悔しいことは無い。罪の無い三人を死なせた犯人を厳重に処罰して欲しい。」という内容。 ・甲222号証は、パーカーとスウェットを身につけていたことを店員が証言した、というもの。 他には、「おばちゃんが平然と出て行くのが見えた。その時、万引き防止ベルが鳴った。」という証言があった。そして、それは被告人に違いないと言う。 〇大宮大和田店の証拠は、以下の通り。 ・甲264号証は、被害品の確定と届出の経緯 ・甲266号証は、告訴状 ・甲274号証は、店員が立ち会っての実況見分 ・甲277号証は、建物の工事に携わった業者による建材の説明 ・甲290号証は、客の対応をしているときに火事を知った、という店員の調書 ・甲291号証は、店員の調書であり、 「少しでも発見が遅れていたら客を巻き込んで被害が大きくなっていた可能性もあった。放火と言う悪質な犯罪を厳重に処罰して欲しい。」という内容。 ここから男性の検事に代わる。喋るのが早いのでやや聞き取りにくい。 ・甲330号証は被害届 「何物かに火をつけられた。店には燃え広がらないで済んだ。」という調書?も付いている。 ・甲331号証は、被告の厳重な処罰を求める内容 その他、被告の血液採取の経過、大宮大和田店の防犯ビデオ摂取の経過などがある。 ・甲434号証は、現場の遺留品とガソリンスタンドのタオルとの同一性 ・甲441,2号証は、付近の住民の証言 ・甲443号証は、買い物籠の盗難に関するもの ・甲444号証は、買い物籠の備え付け状況など ・甲449〜51号証は、ブルガリの腕時計に関する被害届 その次は、被告からのブルガリの腕時計の任意提出 ・甲468号証は、被告の逮捕された状況の所持品に関するもの 被告がブルガリの腕時計を隠そうとしたが、説得により出した、という記述がある。 ・甲471号証は、店長による被害届 ・甲472号証は、放火の被害額の特定 ・甲491号証は、警備員の調書 「警報が鳴り、トイレが現場と解ったので駆けつけたが、別のトイレに間違って入った。」等と書かれている。 ・甲506号証は、イトーヨーカドーの実況見分 ・甲513号証は、店員の、毛布の盗難に関する供述調書 ・甲514号証は、被告の駐車券の発券に関する調書 ・甲519号証は、駐車場警備員の調書 ・甲525号証は、店長からの被害届け その次は、被告のラブフォーからティッシュペーパーを差し押さえたというもの。 ・甲562,3号証は、被告からストラップを差し押さえたと言うもの。 ・甲56?号証は、駐車場の防犯ビデオ。 ・甲571号証は、被告がガソリンを購入した、というもの。 最後に、裁判官は被告人を前に立たせ、検察が提出した立証過程に従って立証を進める、公判期日は追って指定する、等と述べ、閉廷を宣言した。 退廷するとき、被告は弁護人と少し話をしていた。五時までの予定だったが、二時四十分で終わった。 | |||
報告者 | 相馬さん |