裁判所・部 大阪高等裁判所・第2刑事部(B係)
事件番号 平成21年(う)第622号
事件名 強盗殺人、強盗殺人未遂
被告名 加賀山領治
担当判事 湯川哲嗣(裁判長)武田義徳(右陪席)細谷泰暢(左陪席)
日付 2009.9.2 内容 初公判

 この日は午後の曇天が信じられないほど午前中は快晴で、気温も高く、残暑が厳しい折だったが、大阪市北区西天満2丁目1番10号の大阪裁判所合同庁舎10階の高裁1号法廷では、事件関係者らしき中年男女、男性数名の捜査関係者および司法記者の女性若干、一般傍聴者の合計13名が、静かに開廷を待っていた。(察するに、平均年齢は40歳前後だったろうか)
 開廷予定時刻が近づくと、被告人専用ドアが開き、報道写真の通りの風貌の被告人が、手錠を施され、腰縄を打たれた状態で、大阪拘置所の看守2名に伴われて入廷し、傍聴席に背を向けた状態で着席した。中年の男性書記官が被告人に近づき、検察官の提出した控訴答弁書を「直接、この場で交付します」と告げて、手渡していた。
 時刻ちょうどになると、湯川、武田、細谷の高裁判事3名が入廷し、開廷が宣言された。

裁判長:「はい、それでは審理を始めます。被告人は、前に立って下さい」
 加賀山被告人の声は体調不良のせいなのか、掠れていて聞き取りづらかったが、それでも氏名と昭和25年生まれ、ということは聞き取ることが出来た。
裁判長「仕事は何をしておりましたか?」
被告人「アルバイトです」
裁判長「まあ、そう聞いておきます」
 ここで裁判長は一呼吸を置いた。
裁判長「それでは被告人に対する、強盗殺人、強盗殺人未遂の事件について、これから控訴審の審理を開始するから、元の席へ座って聞いているように。まず、弁論{刑事訴訟法389条参照}の点ですが、弁護人は控訴趣意書{刑事訴訟法376条参照}の通りに陳述されますか?」
弁護人「はい、致します」
 ここで年配の男性弁護人は、いわゆる控訴趣意書についての誤字脱字の訂正を申し出て、その事務処理がされた。
裁判長「ここで高等裁判所{裁判所法16条参照}からも確認をしておきたいんですが、検察官調書についての任意性の主張{刑事訴訟法319条参照}について主張されている箇所、これは事実誤認{刑事訴訟法382条参照}を示す1つの事情に過ぎないんだ、というご趣旨ですか?」
弁護人「はい、その通りです」
裁判長「検察官は、答弁書の通り答弁をされるということで宜しいか?」
高検検事「はい、結構です」
裁判長「次いで事実調べ{刑事訴訟法393条参照}の点ですが、弁護人からは何か請求がございますか?」
弁護人「被告人質問を請求させていただきます」
裁判長「どういう趣旨での請求になりますか?」
弁護人「1審判決後の情況、ということになりますね」
裁判長「検察官の方では、特に何か事実調べの請求はございますか?」
高検検事「特に、考えておりません」
裁判長「今の被告人質問の請求についての意見は、如何ですか?」
高検検事「しかるべく、です」
 ここで裁判長は、左陪席裁判官と数十秒程度、法廷内で合議した。(因みに高裁左陪席の細谷判事は、いわゆる最高裁判所「事務総局」の局付判事補の経験を有している)
裁判長「ええ、それでは、被告人質問は実施して頂くことになりますが、控訴裁判所としても色々な検討をしたいので、被告人質問は次回に実施して頂いて、それで双方から事実調べの請求が無ければ、それで結審するということで宜しいですか?」
弁護人「結構です」
高検検事「結構です」
 そして、若干の時間を取って、次回期日を10月7日の午前11時からと定めると、湯川判事は被告人に声を掛けた。
裁判長「被告人、もう一度前に出て下さい。そういう次第で、本日は弁護人から書面で控訴についての意見が述べられ、それについての検察官からの意見が書面で述べられました。次回はあなたから被告人質問という形で原判決後の情況について話を聞き、結審するという予定にします」

 こうして、法廷前の開廷貼り出しでは午前11時0分までの時間帯が確保されてはいたが、午前10時37分には法廷は終了し、被告人はふたたび静かに法廷を去って行った。
 一般傍聴者の中からは、法廷の外に出た後で「ひょっとしたら、政権交代というものが慎重な審理手続きにも影響したのかもしれない」という声も出ていた。

事件概要  加賀山被告は金目的で、以下の犯罪を犯したとされる。
1:2000年7月29日、大阪府大阪市において、中国人女子留学生のバッグを奪い、胸や腹を刺して殺害、助けに入った会社役員の足を刺した。
2:2008年2月1日、大阪府大阪市のビルトイレ内において、会社員を脅した上、胸などを刺して殺害した。
報告者 AFUSAKAさん


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