裁判所・部 大阪高等裁判所・第二刑事部
事件番号 平成19年(う)第1544号
事件名 監禁、傷害、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、傷害致死 {原審認定罪名は、事件名と同じ(控訴審認定罪名:傷害致死、暴力行為等暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、監禁)
被告名
担当判事 島敏男(裁判長)榎本巧(右陪席)細谷泰暢(左陪席)
その他 弁護人:藤田正隆、他
検察官:西浦広明
日付 2008.7.23 内容 判決

 この日は「先着順」で傍聴券が交付され、報道機関によるTV撮影されたが、実際に公判を傍聴した人によれば、以下のような宣告内容だった、とされる。

裁判長「ええと、被告人は、Aと言いましたですね。それでは、被告人に対する、監禁、傷害、常習暴行(暴力行為等処罰ニ関スル法律違反)、常習傷害(暴力行為等処罰ニ関スル法律違反)の各事件についての控訴審判決であります」

−主文−
 一審判決を破棄する。被告人を改めて懲役20年に処する。一審での未決のうち、280日を、この刑に算入する。

裁判長「そういうわけでして、一審判決を一応、破棄した上で、改めて一審の時と同じ刑を言い渡したわけです。これから、理由の要点を告げますから、後ろの席で聞いておって下さい」

−理由の要点−
 えー、弁護人からの控訴のポイントは、大きく分けて2つ有りまして、1つは再審請求理由{刑事訴訟法383条}をもとにした、事実誤認の主張でありまして「一審の小田幸児弁護士に騙されて、罪状を認めてしまったけど、真実は傷害致死事件では無罪なんだ。被告人は被害者の死亡とは無関係だ」というもの。2つ目が、予備の主張ですけれど、そのうちの一つ目は、法令適用の誤りの主張でして、「仮に有罪だとしても一審判決の法令適用は間違っていて、もっと軽い罪状なんだ」というもの。予備の二つ目は、量刑不当でありまして、「仮に完全有罪で、そのうえ一審の法令判断が正確だったとしても、懲役20年という結論は重過ぎる。もっと軽くしてほしい」というものでしたね。
 そこで以下、高等裁判所としての判断でありますけれどもですね、端的に言いましたらですね、控訴審としての職権判断によれば、本件公訴事実に照らせば、起訴状記載の「罪名」は軽すぎるわけでして、起訴状記載罪名は本来もっと重い筈なのであります。そうすると、控訴理由に対する判断をするまでもなく一審判決は破棄されなくちゃいかんということになりますが、控訴趣意書も踏まえながら、ちょっと詳しく見てゆくことにします。
 まず弁護人の控訴理由として、被告人が一審判決直後に高等裁判所に提出した上申書には、確かに「一審弁護人の小田幸児弁護士に騙されて、ありもしない罪を認めさせられた」という意味の記載が有りますし「被害弁償をしたのは間違いでした。わたしは無罪なんだからこの弁償金を取り戻したい」という記載も上申書には有る。これらは間違いありません。
 しかしながら、(1)上申書の内容と、(2)その後被告人が証拠提出しました陳述書は、いずれも被害者の死因判断についての鑑定書と矛盾していますし、当裁判所の被告人質問で、左陪席裁判官から「被害者の頭部の傷は、なぜ形成されたのか?」という問いがされましたが、被告人はこの質問に対して合理的な説明をすることは出来ませんでした。そうしますと、この「新主張」は採用することが出来ず、被告人を完全有罪とした一審判決は正しいというべきであります。
 そして一審判決の法令適用ですが、これは起訴状の通り、常習暴行・常習傷害という判断をしているんですが、本件の公訴事実を証拠によって検討しますと、これらは包括一罪として「常習傷害」に当たるというべきでありまして、一審判決よりも重たい罪状を認定しなくてはならんわけです。もちろん、本件では検察官は控訴せず、高等裁判所の審理において、検察官は予備的訴因を追加したに止まっていますけれども、被告人控訴のみに係る事件についても、一審判決よりも重たい罪状認定がされることは、裁判実務ではまま見受けられることですから、特に問題はないというわけでして、後は刑事訴訟法402条に従って判決主文を一審判決よりも重い内容にしなければ済むだけの話なのであります。
参照判例
 そこで量刑不当についての直接の判断はもう省略して、改めて高等裁判所として、さらに判決{刑事訴訟法400条但し書き}をします。
 犯罪事実、これは一審判決の通りであります。これを、一審と同じ証拠によって認定して、法令適用については先に述べたような訂正をしたうえで以下のような量刑判断をするわけですが、本件は交際していた女性への連続的な暴力行為(常習傷害、監禁)と、女性1名への傷害致死の事案ですが、本件各犯行についての罪質、結果、態様、動機はいずれも悪質極まるもので、被害者1名の生命が奪われ、犯情は極めて重大です。さらに、被告人は控訴審から突如「一審の弁護士にだまされた」として、傷害致死の罪状を否認し「被害弁償金として払ったお金も取り戻したい」などと理不尽な主張をしております。そうすると、本件が被告人のみの控訴であることを考慮しても、一審判決と同じ量刑は免れない、ということになります。

 被告人は、大阪拘置所の刑務官に伴われて、手錠・腰縄を施されて退廷したが、閉廷後は、司法記者の人たちが、弁護人へのブラ下がり取材を熱心にしていた、とされる。

事件概要  被告人は、2004年1月−06年7月、大阪府茨木市の自宅マンションや兵庫県神戸市のホテルなどで、同居中の美容師ら女性3人に暴行を加えたり、食事を与えずに衰弱させたりし、そのうち当時29歳の美容師を被告の自宅風呂場で凍死させたとされる。
報告者 AFUSAKAさん[伝聞]


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