裁判所・部 | 大阪高等裁判所・第五刑事部A係 | ||
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事件番号 | 平成20年(う)第172号 | ||
事件名 | 有印私文書偽造、同行使、詐欺、死体遺棄(変更後「追加」された訴因;死体損壊)、殺人、建造物侵入、強盗致傷、窃盗 | ||
被告名 | A | ||
担当判事 | 片岡博(裁判長)芦高源(右陪席)飯畑正一郎(左陪席) | ||
日付 | 2008.7.15 | 内容 | 初公判 |
近畿地方は、この日も暑い日々で、いわゆる芸能人・元プロボクサー裁判のせいか、朝から大阪裁判所庁舎には多くの人々が詰め掛けており、地裁刑事の強行犯新件には、一般傍聴者が多数入廷するなどしていたが、10階の高裁3号法廷には、事件関係者や司法記者の姿もなく、私も含めて、一般傍聴者は僅か4名であった。 公判開始前、女性検察官と国選弁護人(ベテランの男性)の間では、以下のような会話がされていた。 高検検事「先生、被告人の趣意書は、先生の控訴趣意書に添付されるんですか?」 弁護人「私としては、あくまで私の趣意書の一部分という取り扱いをしたいと思います。ところで検事さん、一審事件関係者のX1さん、亡くなられたんですか?」 高検検事「さあ、ちょっとわかりません。ただ原審では、その方へは臨床尋問が実施されたんですよね?」 弁護人「そのようですな」 時間直前になると、大阪拘置所の刑務官男性2名により、被告人が手錠・腰縄姿で入廷した。 時間丁度になると、片岡、芦高、飯畑の高裁3判事が入廷する。 裁判長「はい、それでは控訴審の審理を行いますが、その前に氏名などの確認をします。被告人、名前を言って下さい」 被告人「Aです」 裁判長「生年月日はいつですか?」 被告人「昭和一〇年五月三一日生です」 裁判長「本籍地はどちらですか?」 被告人「大阪府大阪市です」 裁判長「決まった住所は有りましたか?」 被告人「いえ、決まっていません」 裁判長「何か仕事はしていましたか?」 被告人「いえ、有りません」 裁判長「では、後ろへ掛けていてください。弁護人からは、平成20年4月25日付で控訴趣意書、4月30日付で・・コチラは、実質的には被告人自身の趣意書ですが・・追加控訴趣意書が出され、5月上旬付けで控訴趣意補充書が出されています。本日は、それぞれ、この通りに陳述をされますか?」 弁護人「はい、いずれも陳述を致します」{刑事訴訟法389条} 裁判長「確認ですが、追加控訴趣意書は被告人中心のものですが、これも陳述されるわけですね?」 弁護人「はい、左様です」 裁判長「そうすると、これは弁護人の意見として取り入れるということですかね?」 弁護人「はい、そうです」 裁判長「これらによりますと、事実誤認の主張{刑事訴訟法382条}ということですが、検察官のご意見は如何ですか?」 高検検事「控訴には、理由が有りません」 裁判長「さて当審では、特別な証拠調べ請求は無い、ということのようですので、これで終結……」 ここで、弁護人が、慌てて、発言を求めた。 弁護人「すみません。被告人と拘置所で直接顔を合わせての接見は、諸般の事情で15分間しかできていないんです。一体、どのような証人を請求すれば無罪立証が出来るのか?という方向性が、まだ決まっていませんので、新たな証拠請求は次回以降にさせていただきたいんです」 裁判長「もちろん、被告人が提出した上申書で、そういう事情は私どもの方でも把握はしております。しかし控訴裁判所としては、控訴趣意書に従って、証拠判断→手続き進行を進めてゆくほか無いわけですね」 弁護人「ならば、被告人質問を請求させてください」 裁判長「何ですか?」 弁護人「次回、被告人質問を実施したい。主に事実関係を、原審と重複しない範囲で質問したい、と考えております」 裁判長「それでは、ちょっと抽象的に過ぎるわけですよね」 弁護人「その点をさらに検討する為にも、被告人質問を実施してほしいわけです」 裁判長「では、検察官は証拠意見をどうぞ」 高検検事「不必要です」 裁判長は、ここで左右陪席裁判官の意見を聞いて、すぐ口を開いた。 裁判長「では、被告人質問の請求は却下することにします」 弁護人「裁判所、すいません。一審判決は、私の目から見ても証拠の補足説明が矛盾だらけなんですね。ですから、こういう形で証拠調べも一切なく、控訴審が終了するというのは、不本意ですし、本来の刑事裁判の在り方からすると、如何なものかと思いますね」 裁判長「と、弁護人は仰るわけですけれども、控訴審としては、むしろ、ごくごく当然の進行なんですね」 弁護人「私の意見に過ぎませんが、そういうやり方は、果たして公正な裁判と言えるのか疑問であります」 裁判長「そういうご意見は、承りました。しかし、訴訟手続きとしては、次回は判決宣告と致しますので、期日確保の方を宜しく御願いします。少し先になりますが、十月九日の午後一時十分は如何ですか?」 弁護人「お受けできます」 裁判長は、最後に被告人に呼びかけをした。 裁判長「では、被告人も聞いてくださいね。あなたへの控訴審判決は、一〇月九日木曜日の午後一時十分から、この法廷で言い渡すことになりますから、できたら出頭するようにしてくださいね」 閉廷後、廊下では一般傍聴者の女性達から「高等裁判所の刑事法廷は、大きな罪名の事件でも、呆気なく手続きが済んでしまうんだ」という声が聞かれた。 一般傍聴人の男性は、「一審は昨年秋に奈良地裁で言い渡され、有罪・無期懲役だった」等と語っていた。 | |||
事件概要 | 被告人は、2003年6月に島根県美保関町で起こした強盗致傷事件を通報されることを恐れ、2004年7月6日、無職男性を殺害し、8月8日までに遺体を切断した上、奈良県五条市に遺棄したとされる。 その他、2003年6月15日に島根県松江市内で窃盗、強盗致傷事件を起こしたとされる。 | ||
報告者 | AFUSAKAさん |