裁判所・部 大阪高等裁判所・第四刑事部
事件番号 平成19年(う)第556号
事件名 殺人、殺人未遂
被告名
担当判事
日付 2008.2.26 内容 初公判

 A被告の控訴審初公判は、10時30分より、1002号法廷で開始された。
 傍聴人は、私を含め、5,6人程度だった。
 関係者席は20席指定されており、全て埋まる。
 弁護人は、髪の短い中年男性と眼鏡でスキンヘッドの中年男性。
 検察官は、眼鏡をかけた短い髪の中年男性。
 裁判長は、眼鏡をかけた初老の男性。裁判官は、眼鏡をかけた中年男性と、髪の短い中年男性。
 被告人は、なかなか入廷しなかったので、仙台アーケード暴走事件と同様、出廷しないのかと思ってしまった。しかし、被告人は刑務官二人に挟まれ、開廷時間直前ぐらいに入廷した。被告人は、彫りの深い顔立ちであり、異様なまでに鼻が高く尖っていた。坊主頭で、眉が太く、髭の剃り跡の濃い。浅黒ければアラブ人にも見えるであろうが、長期間の拘留のためか、色は白かった。痩せがたの体格である。顔立ちは大人しそうで、どこか茫洋とした印象を受ける。しかし、眼差しは異様な印象を与えた。黒い長袖のジャージを着ている。傍聴席に深々と一礼して入廷した。人定質問には、微妙に掠れた、気の抜けた声で答えた。

裁判長「では、これから、審理を始めます。被告人、たって、前に来てください」
被告人「はい」
裁判長「そこに立ってください」
被告人「はい」
被告人は証言台の前に立つ。
裁判長「それではね、これから控訴審の審理を始めますので、先ず被告人のお名前とか、生年月日を確認させてもらいますからね」
被告人「はい」
裁判長「名前を言ってください」
被告人「Aです」
裁判長「はい、生年月日は」
被告人「昭和56年3月4日です」
裁判長「本籍を言ってください」
被告人「あっ、解りません」
裁判長「はい、えー、住所はどこですか?住んでいるところ」
被告人「あっ、今現在、あのー、いる所は」
裁判長「うん」
被告人「えー、大阪府茨木市」
裁判長「仕事は何かしている?」
被告人「産経新聞でバイトをしてました」
裁判長「で、もう其処をやめたという形になるんですね」
被告人「はい」
裁判長「じゃ、今の所に座って良く聞いてください」
被告人「はい」
被告人は、被告席に座る。
裁判長「それでは、検察官の方から控訴趣意書を提出していただいていますが、この通りでよろしいですか」
検察官「はい、その通りでございます」
裁判長「次に、弁護人の方から答弁書を提出していただいていますが、この通りという事でよろしいですか?」
弁護人「はい」
裁判長「は、そうしますと、検察官のご立証という事で」
検察官「はい」
裁判長「えー、証拠等関係カードに基づいて」
検察官「はい」
裁判長「えー、X1さんの」
検察官「はい」
裁判長「検察官調書請求されておりますけれども」
検察官「はい」
裁判長「あと、何かありますか?」
検察官「え、あのー、ま、この検面調書について。尋問時間については考えています。この、X1証人を証人請求したい。ま、今日のところは、ですけど」
裁判長「じゃあ、あのー、X1さんの調書とX1証人を請求するという趣旨でよろしいですね」
検察官「はい」
裁判長「で、X1証人の一点の立証趣旨はここに」
検察官「はい」
裁判長「ここに書いてある検察官調書と同様という事ですか」
検察官「同様で」
裁判長「宜しいですか」
検察官「はい」
裁判長「それでは、弁護人のご意見、お願いいたします」
弁護人「証人尋問についてですが、裁判所のほうで、あのー、職権で、鑑定人を」
裁判長「する必要が無いと」
弁護人「あのー、証人尋問については、あのー、しかるべく」
裁判長「しかるべく。検察官調書、1号証は同意されますか」
弁護人「同意します」
裁判長「同意でよろしいですか」
弁護人「はい」
裁判長「では、同意という事になりますので、X1証人については、主尋問については省略できると」
検察官「簡略化します」
裁判長「X1証人の要旨の告知お願いいたしましょうか」
検察官「このX1先生ですが、大阪大学医学部を卒業して精神科医をしています。で、これまで色々な精神鑑定をしまして、今回につきましても、X2先生の被告人の鑑定書、それから証人尋問結果、それから、X3先生の鑑定書と証人尋問結果をはじめとして、一件記録、本件の一件記録を精査していただきまして、で、ま、新たな専門家としての立場からの意見を伺わせていただいた、その内容の、ま、ごくあらましではありますが、それを纏めたのが、この供述調書です。まず最初に先生が言われてますのは、被告人の供述に非常に変遷が、多いと。特に、その一番最たるものが動機の点ですね。自殺の道連れにするというのを言っている、それがその後、X2鑑定以降は、もう、えー、元に戻りまして、えー、要はそのいわゆる幻聴。こういう風に変わっています。その幻聴の内容についても、殺せという、こう、命令と公判では言っているのですが、鑑定の段階では、殺してみたら如何、と非常に、あの、変遷が大きく、それ自体からして、いわゆるその、えー、ま、心神喪失じゃなくて、者が考えれたという点が示されていまして、で、ま、仮に悪魔の命令としても、してもですね、必ずしも命令では無くて、「殺してみたら」という誘い掛けになると、まだ自由に判断できる余地があったと。被告人のパーソナリティとの乖離も、さほどではないと。えー、特にこの、小中学校の先生の話でですね、えー、ま、何をしでかすか解らない、という風に先生たちは感じているわけですね。そういうところからすると、元々パーソナリティにそういうものがあったのではないかと。それが出たのが本件ではないかと。それからですね、極めつけとしては、この点はX2先生も言われていますが、お母さんや妹を殺害するのは思いとどまっています。それから、殺害の態様につきましても、ボンネットにはねあがった被害者を確認して、急ブレーキを踏んで、落として、ひき殺すと。これは、X3先生の言うとおり反射的行為とは認めがたい。被告人の意思が働いているとしか思えない。最後に、陰性症状の点についても、X3先生が陰性症状は犯行時あったというけども、そうではないだろうと。この段階では無視していい程度のものだと考えておられる。そういう事から、未だ心神喪失には至っていないと、そういう事です」
裁判長「では、提出してください。取調べ済みという事にします」
検察官「はい」
裁判長「そうしますと、それを踏まえまして、X1証人ですけども、証人尋問という事ですけども、検察官は」
検察官「40分」
裁判長「弁護人は」
弁護人「はい、あの50分」
検察官「あの、それでですね」
裁判長「はい」
検察官「立証というわけではないですけども、遺族の意見陳述を考えています。事案が事案ですから、時間をとろうとは思っていません。時間も一人5分。出来れば採用していただきたい」
裁判長「裁判所の方ではですね、X1証人を踏まえて今後の進行を考えたいと考えていますので、今は留保と」
検察官「はい」
裁判長「弁護人、打ち合わせも考えまして、2時間枠でX1証人の尋問を行いたいと思います。ですから、検察官、3月27日10時から、2時間15分とっておきます」
検察官「はい」
裁判長「検察官、時間配分は短めに」
検察官「はい」
裁判長「次回は3月27日10時、X1証人の証人尋問を行います」

 10時41分に終わる。11時15分まで予定されていた。
 被告人は、手を組み、それに額をつけ、下を向いてやり取りを聞いていることが多かった。異様な眼差しで傍聴席をちらりと一瞥し、退廷した。

事件概要  A被告は、2004年11月18日、大阪府茨木市で通行人5人を車ではね、2人を殺害、3人を負傷させたとされる。
報告者 相馬さん


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