裁判所・部 大阪高等裁判所・第四刑事部B係
事件番号 平成19年(う)第844号
事件名 強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反
被告名
担当判事 古川博(裁判長)植野聡(右陪席)出口博章(左陪席)
日付 2007.12.10 内容 判決

 被告人に対する、強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件につき、平成19年5月15日、神戸地方裁判所第1刑事部・旧合議体(的場純男、西野吾一、三重野真人)が言い渡した判決に、被告人から適法な控訴申し立てがあったから、当裁判所は次の通り判決する。

−主文−
 本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数のうち、150日を原判決の刑に算入する。

−理由の要旨−
○序論
 本件控訴の趣意は弁護人作成の趣意書の通りであるが、要するに「事件に被告人は関与したけれど、法律技術上は無罪である」などと言う。
(なお原審で被告人は「身に覚えがないから無実だ」と主張していた)

○第1:主たる控訴理由への判断
 そこで記録調査と当審での事実調べの結果を踏まえて検討する。弁護人は当審段階において「自白調書を原審弁護人が同意したのは間違いだった。真実は取調官の誘導、脅迫による自白であり、刑事訴訟法322条により証拠排除されるべきだ」という。
 しかしながら当審での被告人質問実施を踏まえても、被告人の発言は曖昧であり、なおかつ自己矛盾に満ちており信用できない。
 従って、当審としても自白調書の証拠能力を認めることができる。
 次に無罪主張への検討であるが、被告人と実行犯の清水久美子(注:一審判決後は、戸籍変更により「芦高」に氏を変更)の電子メールにおけるやり取り、とりわけ
「放火で他人を巻き添えにすると、死刑になるかもしれん」
「それと、本気で実行できるのか?」
「キミが警察に自首した後のことは、俺と杉原正康(注:現在は神戸地裁において結審し、判決待ちの状態)が面倒を見るから」
の文言は、被告人が清水久美子と共謀していたことを、ハッキリと裏付けている。(被告人は、当審において『清水の戯言に、冗談半分に付き合っただけだ』と主張するが、これらの文言に照らし、被告人の法廷発言は信用できない。)
 また、”自白調書”や、共犯者清水久美子の原審証言に照らせば、被告人に「強盗殺人罪の故意」が有ったことも認められる。

○第2:予備の控訴趣意への判断
(1)法令適用の誤りについて
 さらに弁護人は、控訴審最終弁論で「仮に有罪としても、せいぜい殺人ほう助だ」というが、被告人は完全有罪(強盗殺人と刃物使用の共謀共同正犯)である。
(2)量刑不当の主張への判断
 最後に、量刑事情(あくまで、予備の控訴趣意)について検討するが、本件犯行の@罪質,A結果,B態様,C動機について見るに、とりわけ被害者死亡という重大な結果をもたらしているのに、共犯者に責任転嫁し、一切謝罪がなく、犯情はきわめて重大であり、さらに被告人は、神戸地裁で平成16年に有印私文書偽造、同行使、詐欺で懲役2年6月、執行猶予5年の判決を受けながら、その猶予期間中に本件を引き起こしているのであり、規範意識の低下も著しい。
 そうすると、一応本件犯行を反省していることなど、被告人の為に酌むべき事情を踏まえても、被告人を無期懲役に処し、未決540日控除とした一審判決の量刑は、やむを得ないというべきである。
 論旨は、すべて、理由がない。

原審判決全文

事件概要  被告人は共犯と共に、2005年3月7日、兵庫県神戸市において金融業者を殺害し、300万円等を奪ったとされる。
報告者 AFUSAKAさん


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