裁判所・部 | 大阪高等裁判所・第四刑事部(C係) | ||
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事件番号 | 平成19年(う)180号 | ||
事件名 |
控訴審認定罪名:火炎瓶特別法ほう助、殺人ほう助、現住建造物等放火ほう助、殺人未遂ほう助 (原審認定罪名:火炎瓶特別法ほう助、傷害致死ほう助、現住建造物等放火ほう助、傷害ほう助) (検察官設定訴因;火炎瓶特別法違反、殺人、現住建造物等放火、殺人未遂) |
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被告名 | F | ||
担当判事 | 古川博(裁判長)今泉裕登(右陪席)出口博章(左陪席) | ||
その他 | 書記官:山下智子 | ||
日付 | 2007.10.18 | 内容 | 判決 |
−主文− 原判決を破棄する。被告人を懲役6年に処する。 −理由− ○序論 本件控訴の趣意は、検察官および弁護人によるそれぞれの控訴趣意書の通りであり、これに対する答弁は各答弁書の通りである。 第一:控訴趣意の要領 (1)検察官の控訴趣意 殺意を否定した一審判決には、事実誤認がある。 (2)弁護人の控訴趣意 ア)再審請求理由をもとにした事実誤認主張 1審の高木ハジメ弁護士に騙されて、被告人は放火の刑事責任を認めさせられてしまったが、真実は、被告人は放火についての認識がなかったから、放火については無罪だ。 イ)量刑不当の主張 仮に被告人が一審判決のとおりの有罪だとしても、懲役9年とした一審判決は重すぎる。 第二:事実誤認に係る控訴趣意についての判断 弁護人は、刑事訴訟法383条や、382条の2などを基礎として「被告人は一審時点では、原審弁護人の高木ハジメ弁護士に説得され、錯覚を生じていた」として「真実は、火災発生について、被告人は認識をしていなかったから、4つの原審認定罪名のうち、『放火ほう助』『傷害ほう助』『傷害致死ほう助』の3つについて、被告人は無罪である」と論旨を展開し、他方、検察官は「被告人が完全有罪であることが証拠上明らかなのに、一部無罪とした一審判決には事実誤認がある」という論旨を展開する。以下、記録を調査し、当審での事実調べの結果を併せて検討する。 ▽1.殺意についての被告人の認識 F被告人は、Bらとの「下見」ドライブの際、テレクラ各店の基本構造を知るチャンスもあり「ロイヤルホスト・下山手通店」での謀議に同席していた際には、実行犯らが火炎瓶を使うことを認識していた。 ▽2.原判決への批判 結局、(1)被告人自身の認識、(2)本件犯行の危険性から、原判決の説示は不適切であり、被告人は「相当火力の強い状態の火事が起こる」ことを認識していた、というべきである。 従って未必の殺意を否定して、傷害の限度で有罪とした一審判決は、破棄を免れない。 ▽3.弁護人の控訴審での新主張について 弁護人は、一審判決後に判明した新事情等に依拠して、4訴因中の、3つにつき無罪の主張を、控訴審において新たに展開しているのであるが、被告人の当審公判供述しか、新証拠はなく、その当審公判供述の信用性は低い(例:コールズ店内の大理石の件)。つまり弁護人の論旨には理由がない。 ▽4.共同正犯の成立の有無について 成る程、ロイヤルホスト下山手通店での謀議で、被告人が種々の発言をしたことは認められる。 しかしながら、これらはいずれもAの指示によるものであり、その他、上記下見ドライブや連絡調整なども、すべてAの指示による従属的なものであった。結局、被告人は、「ほう助犯」(刑法解釈学でいう「従属的共犯者」)に過ぎない。 第三:論旨についての結語 つまるところ、原判決の事実認定中、被告人および共犯者Aに対して殺意を否定した点には事実誤認があるが、被告人をほう助犯と認定した点には、事実誤認はない。 第四:破棄自判 よって、次の通り判決する。 ○犯罪事実の要旨 基本的には一審判決同様。ただし、未必の殺意の下、被告人はほう助行為{刑法62条参照}をした。 ○証拠の標目 法廷では、朗読省略 ○法令適用 法廷では、朗読省略 ○量刑事情 ・きわめて重大な結果、被害者には落ち度などない。 ・しかしながら、 @被告人の関与は形式的であり、 Aほう助犯に過ぎず、 BA公判やB公判にも証人出廷し、真実を積極的に解明し、 C控訴審においては「写経」をするなど、被害者の冥福を祈る姿勢が、一審判決後の情状事実として認められる。 よって、これらを総合検討し、原判決を破棄の上、主文の刑に処すのが相当と判断した。 ※原審判決全文 | |||
事件概要 | F被告はテレホンクラブを経営者から依頼された競合店妨害工作を暴力団関係者に仲介したところ、2000年3月2日、実行犯が店を放火した結果、4名の客が焼死したとされる。 | ||
報告者 | AFUSAKAさん |