裁判所・部 大阪高等裁判所・第五刑事部C係
事件番号 平成19年(う)第1092号
事件名 強盗致傷
被告名
担当判事 片岡博(裁判長)飯畑正一郎(右陪席)中田幹人(左陪席)
日付 2007.10.4 内容 初公判

 この日の午後、大阪の裁判所合同庁舎10階の高裁3号法廷には、若い社会人男女なども含めて、約10名程の一般傍聴者が在廷していた。

裁判長「ハイ、それでは、時間が参りましたので開廷することにします。被告人は、前に立ってください」
 A被告への人定質問が終わり、席へ戻ると、裁判長が、審理開始を告げた。
裁判長「それでは、被告人に対する,強盗致傷被告事件についての,控訴審の,審理を開始します。弁護人は、控訴趣意書の通り、陳述されますか?」
弁護人「はい、陳述します」
裁判長「事実誤認(注:刑事訴訟法382条に規定された,控訴理由)の主張ですが、検察官の答弁は、如何でしょうか?」
検察官「控訴には、理由がないものと思料します」
裁判長「続いては、事実調べ請求書についてですが、弁護人は、この通り、証拠調べを請求されるワケですね?」
弁護人「はい」
裁判長「これについての、検察官の御意見は、如何でしょうか?」
検察官「書証は、不同意。被告人質問は、不必要」
弁護人「では、弁1号の報告書は、証拠物として、請求します」
裁判長「検察官は、如何でしょうか?」
検察官「証拠調べは不必要と思料します」
(ここで、裁判長と、飯畑・中田裁判官は、簡単に、その場で協議した)
裁判長「それでは、弁1号証の報告書,これは、弁護人作成の現場図面ですが、取調べの必要性なし、として却下することに致します」
弁護人「ただいまの証拠決定について、刑事訴訟法309条1項により、異議の申し立てを致します。本件については、被告人は無実を主張していますので、弁護人作成の本書証を取り調べないというのは、まさに、被告人の無罪立証を制限するもので、刑事訴訟法1条などを無視した,法令違反が有ります」
裁判長「検察官の御意見は、如何でしょうか?」
検察官「異議には、理由無し、と思料します」
(再び、裁判長と、飯畑・中田裁判官は、簡単に、その場で協議した)
裁判長「では、異議は、理由が無い、と裁定(さいてい)をしておきます。そして、被告人質問については、事実誤認を理由として15分ばかり、請求ということですが、この請求では、被告人質問は却下しまして、『被告人が、控訴審で、どうしても言いたいことを5分程度』という限度で、実施してほしいワケですね」
弁護人「分かりました」
裁判長「では、その趣旨でお願いします。では、被告人は、前へ来て、そこのイスに座って下さい」
-被告人質問-
弁護人「この事件は、泉大津市のスーパーで起こった事件ですが、あなたがこの裁判で一番言いたいことは、何ですか?」
被告人「一番強く言いたいことは、aさんの1審の法廷証言はオカシイということですね」
弁護人「短いコトバでまとめれば、それは、どういうことでしょうか?」
被告人「やはり、話の辻褄が合わないということです。ボクを万引きの容疑で現行犯逮捕したというのに、ボクの身体からも、荷物からも、一切、店の品物は出てこなかったワケです。証人X1さんも、ボクが盗品を所持しているところは目撃していませんしね」
弁護人「あなたは、この事件に関与したんですか?」
被告人「まったくの濡れ衣であり、私は、無実です」
弁護人「以上です」
検察官「ございません」
飯畑裁判官「ありません」
中田裁判官「ありません」
裁判長「終わりましたから、元の席へ戻って下さい」

 こうして、2週間後の午後に控訴審判決が言い渡されることになったが、閉廷後の廊下では、前述の一般傍聴者の中からは、「これだけ、話に食い違いが出ているのに、2審では、全然、証拠を調べてくれないのか」などという素朴な感想が出されていた。

事件概要  被告人は、大阪府泉大津市内のスーパー兼ドラッグストアで、店の品物を万引きしたうえ、追跡してきた警備員をケガさせた、という容疑で逮捕・起訴された。
報告者 AFUSAKAさん


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