裁判所・部 大阪高等裁判所・第五刑事部
事件番号 平成18年(う)第309号
事件名 背任、収賄
被告名 旅田卓宗
担当判事 片岡博(裁判長)芦高源(右陪席)中田幹人(左陪席)
その他 弁護士:徳永、他
日付 2007.2.26 内容 初公判

 2月26日月曜日、この日は、大阪中之島の裁判所庁舎で旅田卓宗事件の傍聴券交付が行われたが、この日は気温が高めだったにもかかわらず、たくさんの人が抽選場所に並ぶことはなかった。定刻の時間になると、裁判所事務職員が、並んでいる人々に、無抽選で傍聴券を配布すると告げた。
 この日は通常の高裁開廷日ではなかったが、2階にある特別法廷(201号大法廷)前では、保釈中の旅田被告も待機していた。
 報道関係者専用には約20席が確保されていたが、専用席のほとんどを、中堅・ベテランクラスの司法記者が埋め尽くした。
 裁判所職員が、カメラ撮影を実施するので、映りたくない人は撮影時間中、法廷外で待機できる旨を告げたが、わざわざ、法廷の外へ出る人はいなかった。
 時間になると、観音開きの扉が開き、片岡裁判長、芦高判事、中田判事の3裁判官が入廷し、カメラ撮影が実施された。撮影が終了し、係員の合図があると、裁判長が開廷を宣告する。

裁判長「それでは、開廷します。まずは、人定質問から始めたいと思いますが、被告人は名前を言ってください」
被告人「旅田卓宗です」
 続いて行われた質問により、被告人は今春62歳を迎え、和歌山市内に居住していることが明らかになった。
裁判長「仕事は、何かしていますか」
被告人「無職です」
裁判長「元和歌山市長ということで宜しいですかね?」
被告人「はい」
裁判長「それでは、これから、被告人に対する収賄と背任の事件の控訴審の審理を開始します。それでは手続きを進めて参りますが、弁護人は、控訴趣意書と補充書を事前に提出されていますが、この通り、陳述されるということで宜しいですか?」
弁護人「はい、陳述します。ただ、若干、ポイント部分を法廷で朗読したいのですが」
裁判長「では、できるだけ簡潔にお願いします」

−控訴趣意−
 本件は、収賄事件も背任事件も、いずれも冤罪であり権力によってつくりあげられたものである。
 収賄事件は共犯者の嘘の自白を下に構成され、背任事件は愛人スキャンダルを法律技術の組み換えによって断罪されたものに過ぎない。収賄事件における最大の争点は、”問題の時間”に、真実、共犯者が秘書室に赴き、そこで現金の授受が行われたか否かである。昨今、「推定無罪」や「疑わしきは罰せず」の憲法格言の空虚がさけばれて久しい。
 石泉閣事業については、あくまで被告人独自の見識により、議会に諮って予算承認されたものである。
 たしかに被告人は和歌山市議会において愛人疑惑を否定し、この問題についてウソを述べた。が、そのことと石泉閣事業とは別物である。従って背任罪の成立を認める余地など無い。
 検察側立証として提出された不動産鑑定士による鑑定書面には、金融工学知識の欠落が明らかである。

裁判長「公判調書には、本来の趣意書、補充書を陳述したという扱いにしておきます」
弁護人「はい、結構です」
裁判長「次に検察官、答弁書を事前に出されていますが、この通り陳述されるということで宜しいでしょうか?」
検察官「はい、陳述いたします」
裁判長「それでは、これから、当審での証拠調べに入りたいと思いますが、弁護人からは、証拠説明書として、証拠調べ請求があります。まず、書証についてですが、本年二月五日付けの書面によれば、弁1から7まで、二月二十日付けの書面では弁8から12まで、本日付の書面では弁12から18まで請求されるということですね?」
弁護人「書面の通り、請求いたします」
裁判長「検察官のご意見は、いかがでしょうか?」
検察官「弁1から6は同意、7は不同意、8から11は同意。12は不同意で、13以下は留保します」
弁護人「申し訳ありません、立証趣旨の訂正がございます」
裁判長「何ですか?」
弁護人「16,17は背任事件の立証と記載してますが、実際は収賄事件での立証になりますので」
裁判長「今、弁護人が口頭で仰った通り、訂正をされるわけですね。では、同意書面を、まず取り調べます」
 裁判所書記官を通じて、3名の裁判官の手元に書類が回付され、訴訟記録に挟み込まれた。
裁判長「ニンショウについての立証趣旨は尋問時間は、この書面に記載の通りですね?」
弁護人「はい」
 ここで、裁判長は、右陪席の芦高判事と若干、打ち合わせをした。
裁判長「ところで、検察官は、ご意見はいかがでしょうか?」
検察官「証人は、すべて必要性なし。被告人質問については原判決後の情況というものに限定して、然るべく」
裁判長「ところで、被告人質問は、収賄の関係で請求されるわけですか?弁護人」
弁護人「はい」
 裁判長は、ここで再び、右陪席裁判官と若干、協議をした。
裁判長「それでは、同意書面の証拠調べはこれで終わりましたので、次回は被告人質問を行いたいと思います。従って、証人請求への判断は、その後に実施することにしますが、事前に出された請求では、かなり長い質問時間が予定されていますが、裁判所としては、40分から60分程度で収めていただくことにします」

 次回期日は、すでに事前に打ち合わせで内定していた三月一九日月曜日午後一時半よりと正式指定され、20分あまりで閉廷した。

 法廷の外では、マスコミ各社による、旅田被告へのブラ下がり取材が始まっていた。

事件概要  旅田被告は、(1)和歌山市長時代、市の秘書室における現金収受、および(2)愛人女性の経営する料亭への支援の為、意図的に市の予算から多額の現金を料亭へ供与したとされる。
報告者 AFUSAKAさん


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