裁判所・部 大阪高等裁判所・第二刑事部
事件番号 平成17年(う)第1060号
事件名 強盗強姦致傷、強盗、強姦、窃盗、強姦未遂、強盗致傷、強盗強姦未遂
被告名
担当判事 島敏男(裁判長)江藤正也(右陪席)伊藤寿(左陪席)
日付 2005.12.16 内容 弁論

 A被告は、青白い顔をした背が高く目の細いガッチリした男性だった。ルックスはどちらかというとイケメンで、強姦事件を敢行するとは思えなかった。

裁判長「Aですね」
被告人「はい」

 被告人が控訴趣意書で聞いてほしいことを弁護人宛てに手紙で送り、その手紙を弁号証として取調べ請求するといい、検察官も同意して、証拠採用された。そのうえで弁護人による被告人質問が行われた。

−A事件−
弁護人「まずA事件のことで伺いますが、被害者から心臓が悪いと言われ、5分間さすってあげたあと、姦淫行為自体をやめようと思ったのですか」
被告人「被害者から心臓が悪いと言われたことに対して、これ以上はできないと思い自主的にやめてしまいました」
弁護人「どういう気持ちで可哀相やなと思ったのですか」
被告人「死ぬとは思わなかったのですが、さすっているうちに『マシになった』と言われ、私も正常に戻りました。もうする気がなかったので何もしなかったです」
弁護人「被害者の調書では、弟が来たから、あなたが逃げたと言っているのですが」
被告人「それは被害者の言い分がおかしい。公園の地理的に不自然で、道路は一方通行になっていて、被害者の弟が来たという入り口と私が向かわなければいけない出口は一つしかなく、誰もいなかったです」
弁護人「こういう記憶に間違いありませんか」
被告人「はい」
弁護人「あなたは別れ際に何と言ったのですか」
被告人「被害者の携帯が鳴っていたので、『鳴ってる』と言いました。相手は『出てもいいんですか?もしもし』と話し始めたので、自分は『じゃあね』と言って原付で帰りました」
弁護人「他にどんな会話をしましたか」
被告人「『ゴメンね』とか普通の会話だったと思います」

−B事件−
弁護人「次にB事件のことですが、この人の犯行現場は広い田んぼの真ん中だったのですが、バイクに乗せて引っ張っていったのですか」
被告人「スタンガンを接触させて、原付に乗せました」
弁護人「引っ張っていくとき被害者のどこを持つのですか」
被告人「脇の辺です。そして『静かに。お金ちょうだい』と言いながら原付のほうに押していきました。被害者は『今少ししかないけど、家に帰ればある』と言いました」
弁護人「どういう形で被害者を原付に乗せたのですか」
被告人「私の前に跨がせて乗せました」
弁護人「あなたが後ろに乗ってエンジンを発動されるということですか」
被告人「はい」
弁護人「どのくらいの距離を走ったのですか」
被告人「200〜300メートルぐらい」
弁護人「被害者は暴れたりしましたか」
被告人「しなかったです」
弁護人「現場の田んぼで降りて、『ごめん、ブラ取ってやらせて』と言うわけですか」
被告人「はい。ですが被害者はうずくまっていて、手をクロスしているので触るに触れないでした。下から手を入れても無理でした。そこでもう一回スタンガンを打ちました。彼女に『落ち着いて』と言われて『落ち着いてる』と答えました」
弁護人「他にどんな会話をしましたか」
被告人「『何で私を狙ったん?』と聞かれて『可愛いから』と答えました。彼女は『取り合えずやめて』『絶対やめて』と言い、手でしてくれましたが、『もういい』と言ってやめました」
弁護人「『もういい』とはどういうことですか」
被告人「『お前みたいなのはもうええわ〜』ということで、彼女に『送ってってやるわ〜』と言いましたが、彼女は『いいわ〜』と言いました」
弁護人「どういう気持ちで姦淫行為をやめたのですか」
被告人「身を固く守っている状態だったので、できませんでした」
弁護人「殴り倒してスタンガンを用いてやってしまおうという気持ちはありましたか」
被告人「それはなかったです」
弁護人「つまり被害者がクロスして抵抗しているのを、無理に姦淫したことは一回もないということですか」
被告人「はい」
弁護人「強引な形では嫌だったというのですか」
被告人「はい。人もいないので、しようと思えばできましたが、できませんでした」

−C事件−
弁護人「続いてC事件だけど、『私は被害者が月経中だから姦淫をやめた』という下りは正しいのですか」
被告人「誤りです。『絶対にせえへんから』と被害者と約束してズボンを脱がしたときに、被害者が『絶対にせえへんって言ったやん』と言い返してきたのでやめました。そして被害者が『私生理やねん』と言ったので、『生理でもできるで』と言いました」
弁護人「生理を確認するために手を入れたなどということはありますか」
被告人「絶対にやっていません」
弁護人「あなたは生理中にも女性と関係を持ったことがあるのですか」
被告人「何度もあります」
弁護人「あなたは消極的になって『またでいいよ』と言ったのですか」
被告人「言いました」
弁護人「何で消極的になったのですか」
被告人「被害者と絶対にせえへんって約束していたからです」
弁護人「その被害者とはやったのですか」
被告人「一応やりましたが、痛かったのですぐにやめました。その後マスターベーションに切り替えました」
弁護人「被害者はそれを見ていたのですか」
被告人「はい、見ていたと思います」
弁護人「その後あなたが帰るとき、被害者から呼び止められて『携帯返して』と言われたのですか」
被告人「被害者の携帯をポケットの入れていたことを忘れていました。私が『お金と携帯どっちがいい?』と聞いたところ、被害者から3000円しかないと言われてそれを差し出されました。私は『冗談やで』と言いました」
弁護人「何で『お金と携帯どっちがいい?』と言ったのですか」
被告人「『原付で送ってやる』と言ったのですが、無視されて腹が立ちました」

−D事件−
弁護人「今度はD事件だけど、この事件で起訴されているのは強姦罪のみで、財物奪取については関係ないということなんだけども、この時もお金のことは話していたのですか」
被告人「はい。そのときは犯行を始めたばかりだったので『今いくら持っていますか』と敬語で聞いていました。『先輩の都合で、3万円持ってない?』と聞いたところ、『持ってない』と言われました。金銭が目的ではないので『話変わるけどやらせて』と言いました」
弁護人「『3万円持ってない?』というのはどういう意図で言ったのですか」
被告人「やらせてくれというものの照れ隠しで、直接は言えませんでした」
弁護人「彼女は何と言いましたか」
被告人「『それが目的やったん?』と言いました。私は一回彼女の横腹を殴って、後ろからの状態でするわけなのですが、『大丈夫?』と聞いたら『ちょっと痛い』『外に(精液を)出して』と言ってきたので外に出しました。その後身なりを整えて『ゴメンな。お金を取るつもりなかってん』と言い、相手が見ている方向を逆に向けて『30秒待ってて。その間に帰るから』と言いました」
弁護人「その『外に出して』と被害者が言ったのは間違いありませんか」
被告人「はい、言いました」
弁護人「(陰茎のことを)大きいとか小さいとかは言っていましたか」
被告人「大きいと言われました。ちょっと痛かったのですがペースを合わせてやりました」
弁護人「被害者に年齢を聞きましたか」
被告人「はい、19歳と言いました」
弁護人「この事件で初めて強姦に成功したということですか」
被告人「はい」
弁護人「割りと簡単にできたので、味を占めたのですか」
被告人「はい」

−E事件−
弁護人「次はE事件ですが、この人の件ではどういう形で金銭を要求したのですか」
被告人「被害者に『何か落ちましたよ』と声をかけて、その場所に2人で戻り、『ゴメンやけど、5万円ちょうだい』と言いました」
弁護人「その被害者はウォークマンでこけた人ですね」
被告人「はい」
弁護人「様子を具体的に教えてください」
被告人「通ってきた通路に戻って、『この辺でチャリンという音がした。自転車の鍵やないですか』と言って被害者が覗き込んだときに、スタンガンをちらつかせて、『ゴメンやけど、5万円ちょうだい』と言ったところ、彼女は『持ってない』と言いました。そして彼女を自分の原付のほうまで押していって、原付に乗せて移動しました。原付が止まったときに走って逃げられました」
弁護人「なぜあなたは5万円を要求したのですか」
被告人「持っていないだろうという思う金額を言いました。1万円とか3000円とか言うと、実際に持っている可能性がある」
弁護人「この行為も強姦する照れ隠しが半分ぐらいあったからですか」
被告人「はい」
弁護人「彼女はあなたの原付の鍵を持って逃げたのですか」
被告人「はい、鍵を取られました。私は走って追いかけましたが、被害者が変なこけ方をしたので『ウォークマンでこけたな』とすぐに分かりました。被害者は起き上がらなかったので、すぐに追いついて鍵を取って、『何もせえへんから』と原付のほうに押していきました。被害者が動かなくなったので私は『5万円は嘘やで。この場でやらせて』と言いました。また私が『ブラ取って』って言うと彼女は『ブラ取ってってなんなん。変態やん』と言ってきました。それを受けて私が『違うやん、はよ取って』と言ったところ、彼女は『ブラあげるから、帰って』と言ったので、『うーん、分かった』と言いました」
弁護人「他に何人ぐらいとやったかとか年いくつかとかも聞いていますね」
被告人「はい」
弁護人「他に彼女は何と言ったのですか」
被告人「『お金払うからやめて』と言って私に1万円を渡して、『これでやめて』と言いました。ガサガサお金を取る時は見てなかったのですが」
弁護人「どういう気持ちでお金を受け取っていたのですか」
被告人「相手の顔を見たら泣いていたので、どないしようかな〜とグズグズしているうちに、原付のチャリンチャリンという音が聞こえたのでとっさに逃げました」
弁護人「ブラジャーと1万円を手にして逃げたのは間違いないですか」
被告人「間違いないです」
弁護人「携帯電話をも取ったと起訴状にはありますが」
被告人「覚えてないです。携帯に関しては分からないです」
弁護人「事件に関するメモもあなたが正確に書いたというので間違いないですか」
被告人「間違いないです」
弁護人「故意に有利にしようと書いたことはないですね」
被告人「はい、記憶のまま思い出しながら、拘置所のなかで長い時間をかけて書きました」
弁護人「どうして調書と食い違いが生まれたんだろう」
被告人「調書が読み上げられたときに押し問答にもなりました。刑事が『この場所消してくれる?』とか言ってきて、チェックしたはずの項目がそのままの状態で書かれていました。検事も『ここでそんなこと言われても困る』と言ってきて、それに合わせて調書作りを進めていったのです」
弁護人「自ら警察に言ったことで余罪も明らかになったんですね」
被告人「はい。刑事も『よう言うた。実はメモ用紙が入っている金庫自体を持ってきてるんや。あなたの彼女のものとかも含めて全部』と言っていました」
弁護人「今回の事件を振り返って、どう思っていますか」
被告人「被害者の方々の現在の暮らしぶりを想像すると本当に申し訳なく、許されるものなら土下座して謝りたいです。捕まってしばらくして、自分の犯した罪の重大さに気付きました。被害者を自分の家族にあてはめてみたとき、自分のやったことが許せないです。大筋で事実関係は間違いないので一審の刑で服するつもりだったのですが、何点か大きく違う点があったので、2審の裁判を受ける機会を設けていただきました。言い訳がましいことを言っているようですが、言い訳じゃなくて、あった事実を分かってほしいです、そのうえで刑に服して、今まで以上に反省していきたいです。自分の話を2回に分けて聞いてもらってありがとうございました」
 典型的な棒読みだった。

 他に弁護人は示談の関係で被害者に数百万円送金することを明らかにして、裁判長は1月27日に判決の言い渡しを定めた。
 検事控訴はなされていない。

事件概要  A被告は2002〜03年に大阪府内において、当時15〜27歳の女性18人に対して猥褻行為などを行ったとされる。
報告者 insectさん


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