裁判所・部 | 大阪地方裁判所・第五刑事部(合議四係) | ||
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事件番号 | 平成18年(わ)第3317号 | ||
事件名 | 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反 | ||
被告名 | B株式会社、A | ||
担当判事 | 中川博之(裁判長)入子光臣(右陪席)村木洋二(左陪席) | ||
日付 | 2007.3.12 | 内容 | 判決 |
三月一二日月曜日の午後、大阪の裁判所庁舎8階の一号法廷では、いわゆる屎尿談合事件の判決を前に、事件関係者や大阪司法記者クラブの関係者らが30人あまり、傍聴席に着席していた。午後1時半になると、中川裁判長以下、地裁刑事5部(合議4係)の裁判官が入廷した。 検察官の席には、地検特捜部の男女各1名づつ、弁護人席には4名の弁護士がそれぞれ、控えていた。 裁判長「それでは、検察官から、弁論再開請求がありますが、弁護人いかがですか?」 弁護人「再開じたいは、結構です」 裁判長「では、再開の上、証拠等関係カード通り、証拠請求ということですね?」 女性検察官「カード通り、捜査報告書を請求します」 弁護人「同意します」 裁判長「では、同意書面として、採用して取り調べます。要旨を告げてください」 女性検察官「Gの住所が移転したことを証明する書類になります」 裁判長「では、ふたたび終結するに当たり、双方、特に意見はございますか?」 検察官「従前通りです」 弁護人「従前通りです」 裁判長「では、被告人両名、前に出てください。今回、審理を再開しましたので、改めて最終陳述の機会を設けますが、前回の意見に付け加えて 何か述べておきたい点はありますか?」 会社代表者「ございません」 A被告「ございません」 裁判長「それでは、被告人B株式会社とA被告人に対する、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件につき、判決を言い渡すことにします」 −主文− 被告人、B株式会社を罰金1億6000万円に、被告人Aを懲役1年4月に、それぞれ処する。この裁判確定の日から3年間、被告人Aに対して、その刑の執行を猶予する。 −犯罪事実の概要− B株式会社は、分離前の相被告人であり、(株)C、(株)D、(株)E、(株)F、(株)Gら計11社らと共に、地方自治体からの屎尿処理プラント事業を請け負うに際して、平成16年12月、東京都千代田区のパレスサイドビル内の、当時のGの本部ビル内にて、各社担当者が密かに会合を持ち、談合によって、各社への受注割り当てを決定し(被告人Aもこれに関与し)、これを平成17年8月ころまで継続し、もって、自由競争を不当に制限する行為をした。 −量刑の理由− 本件は、被告人ら、11名の各社担当者が上記場所において入札談合の合意をした、独占禁止法違反の事案である。独禁法は、経済活動をする者すべてに対して、等しく、自由競争を不当に制限しないように義務付けをしており、とりわけ、大手上場企業においては、強く、法令順守が求められるところである。 しかしながら、各社はこれに反して、長年の慣行に従い、談合による受注調整を続けてきたわけでして、犯情には重いものがある、と言わなくてはなりません。 これら談合組織は、きわめて支配力が強固で、且つ排他的で、高値落札をするために平均落札金額に利益分を上乗せするなどして、受注金額を決定して、その結果を行政側に通告していたものであります。 本件は、計画性が高く、かつ巧妙な犯行であり、とりわけ東京高等裁判所において、道路公団談合事件が係属し、そのことが大々的に報道されていたにも関わらず、その最中にも本件犯行は繰り返されていたわけで、この点からも非難は免れない。 自由競争の阻害により、国民生活への影響も大きく、とりわけ、平均落札率は97%にも達しており、各自治体へ与えた財産的損害も甚大であり、つまる処、結果は重大であります。被告人A自身も、これらに深く関与していたというのも見逃せません。 しかしながら、 (1)担当役員らが、各社から、処分されたこと (2)各企業は、屎尿プラント事業から撤退したこと (3)各社がコンプライアンス体制を整備したこと (4)各社の代表者が当公判に出廷し、反省の弁を述べていること (5)各社ともに、公正取引委員会から多額の課徴金納付命令を受け、さらには、自治体からの指名停止処分を受けていること の各事情が認められる。 また、被告人Aにおいても、 (1)前任者から引き継がれた事業を、個人的に拒絶するのは困難だったこと (2)被告人が、本件犯行で個人的利得は得ていないこと (3)これまで前科前歴がないこと (4)現在は起訴休職処分中であること 等酌むべき事情が存在する。 そこで、これらを総合考慮し、主文の通り、量廷した次第である。 裁判長「それでは、両名は、もう一度、前に立って下さい。判決の内容は以上です。執行猶予について触れておくと、これから向こう3年間は、刑の言い渡しは効力がありません。ただし、この期間に再び何らかの犯罪に手を染めると、当然、今回の執行猶予は取り消しになります。少なくとも、向こう3年間は、充分に自重してください。判決は以上ですが、この判決は有罪判決ですから、不服があれば控訴できます。その場合には14日以内に、大阪高等裁判所あての書面を、差し出せばいいことになっています。以上で言い渡しを終わります」 | |||
事件概要 | 被告会社らは、いわゆる屎尿プラントに絡んだ受注調整をしていたとして、起訴され、各社の担当者も併せて起訴された。 | ||
報告者 | AFUSAKAさん |