裁判所・部 大阪地方裁判所・第七刑事部
事件番号 平成17年(わ)第3497号
事件名 殺人未遂
被告名
担当判事 杉田宗久(裁判長)鈴嶋晋一(右陪席)菅野昌彦(左陪席)
日付 2005.11.18 内容 判決(第四回公判)

 被告人は有罪である。
 この裁判における争点は過剰防衛が成立するかどうかと、被告に殺意があったかどうかである。
 過剰防衛については、被告は、自分より数cm背が高く、力も強い被害者に胸倉を掴まれ、壁に押し付けられるという暴行を受けており、そのときに灰皿でやむなく被害者の頭部を殴打したに過ぎない。被告は、本件犯行に及ぶときは、終始劣勢であった。よって被告には過剰防衛が成立する。
 殺意の有無についてだが、被害者の調書は一貫しておらず、また証人尋問も行われておらず、信用性に欠けるものであると判断される。被告の調書も公判と違うなど、信用性に欠ける。
 灰皿を凶器に選んだのは、たまたまテーブルにあったものを選んだだけであり、その灰皿についても、灰皿のふちは1〜2cmと持ちやすいものではなく、底も6mmと分厚くない。また尖った破片で殴ったのは、咄嗟のことであった。
 被告は被害者から賃金を一部しか支払われておらず、被害者を恨んでいたが、確定的な殺意があるとまでは言えない。被害者が蹲ると、殴るのをやめ、自ら110番通報している。以上の事から判断すると、被告の殺意をうかがわせるものが無いわけではないが、傷害罪が成立するにとどまる。しかしながら、被告の犯行態様は非常に危険であり、社会的にも非難されることである。
 被告に有利なこととしては、多額の慰謝が講じられており、妻及び子が監督を申し出ていること、交通違反以外の前科が無いこと、被害者にも相当の落ち度があることが上げられる。
 以上の事を総合的に判断した結果、被告人を実刑には処さず、社会内で更生させるべきである。
 そこで主文であるが、被告を懲役1年8月に処する。未決勾留日数中100日を刑に算入する。この裁判が確定した日から4年間刑の執行を猶予する。訴訟費用の半分は被告の負担とする。

事件概要  A被告は2005年6月1日、賃金の問題から雇い主である工務店経営者を殺害しようとしたとされている。
報告者 指宿さん


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