裁判所・部 大阪地方裁判所・第二刑事部
事件番号 平成17年(わ)第671号等
事件名 窃盗、強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、覚せい剤取締法違反、強盗
被告名
担当判事 和田真(裁判長)水野将徳(右陪席)藤原瞳(左陪席)
日付 2005.10.25 内容 被告人質問

 10月25日午後3時から窃盗・強盗殺人・銃砲刀剣類所持等取締法違反等の罪に問われた、A被告の公判(被告人質問)が大阪地裁(和田真裁判長)であった。
 A被告は申し訳なさそうな表情をした、目が細く髭の濃い中年男だった。まず弁護人からの被告人質問。

−弁護人の被告人質問−
弁護人「あなたはこういった重大な事件を起こしてこういう場にいるわけですが、まず被害者となられたaさんに対して、どういった言葉をかけたいですか」
被告人「すみませんとしか言えません。悪いと思っています」
弁護人「その悪いと思っているとは、どういうことですか」
被告人「取り返しがつかないことをしました。言葉では言い表せません」
弁護人「私があなたに拘置所で被害者への謝罪文を書くよう提案しましたが、まだ書いていないのはなぜですか」
被告人「今は裁判中ですから、終わったら出そうと思っています」
弁護人「文章を書くのは苦手なのですか」
被告人「苦手です。学校にいたころから」
弁護人「1月14日の事件で、結果として被害者の方が亡くなられてしまったけれど、殺してお金を奪おうとしたわけではありませんね」
被告人「ありません」
弁護人「あなたは事件前に何件か強盗をやっているんだけど、何のために包丁を持っていたのですか」
被告人「脅すためで、傷つけるためではありません」
弁護人「結果として殺すということになったのですが、刺したのは間違いないのですね」
被告人「はい」
弁護人「なぜ被害者を刺したのですか」
被告人「最初はバッグを取ろうとしましたが、そのバッグが包丁を持っている手に当たって、指先が切れて痛かった。それでカーッとなりました」
弁護人「そしてaさんは倒れたわけですが、亡くなったとは思いませんでした?」
被告人「亡くなっているとは思いませんでした」
弁護人「いつaさんがお亡くなりになったことを知ったのですか」
被告人「3,4日経って、知り合いのbの家のテレビで知りました」
弁護人「それを見てどう思いましたか」
被告人「びっくりしました」
弁護人「話は変わるけど、Aさんは生まれはどちらですか」
被告人「大阪市の西区です」
弁護人「兄弟はいるのですか」
被告人「弟だけです」
弁護人「父親はどんな仕事をしていたのですか」
被告人「会社に勤めていたが、7年前に亡くなった。母親は75歳で健在です」
弁護人「留置所とか拘置所とかいろいろ移られてきましたが、母は面会に来てくれましたか」
被告人「来ていません」
弁護人「母親に会いたいと思いますか」
被告人「私は取り返しのつかないことをしてしまいましたし、向こうも望んでいないと思います」
弁護人「もし母親に会えたら、どういうことを言いたいですか」
被告人「迷惑かけて・・・謝罪だけです」
弁護人「母親にどういうお世話になっていたのですか」
被告人「お金とか工面してもらった。親孝行はしていません」
弁護人「ところでAさんはどこの中学校の出身ですか」
被告人「八尾市の一色中学校です」
弁護人「勉強はどうでしたか」
被告人「勉強は好きじゃなかった。遊ぶことが好きでした。勉強が出来ないので行っても辛かった」
弁護人「クラブはやっていたのですか」
被告人「卓球をやっていました。面白かったが途中で辞めました」
弁護人「中学校を出て、どんなことをしましたか」
被告人「明川電機に4年間勤めた。電機関係の仕事をした」
弁護人「その次に勤めたのは」
被告人「家具屋とかバーテンをしました」
弁護人「喫茶店を自分で経営したことがありますよね」
被告人「20〜21歳のときぐらいに経営した」
弁護人「出資は誰がしたのですか」
被告人「父親がやりました」
弁護人「喫茶店は長続きしなかったのですか」
被告人「接客がうまくいかなくて難しかったです」
弁護人「喫茶店はそのあと誰が継いだのですか」
被告人「弟がやったが独立し、そのあとはcさんと一緒に私が店を継いだ」
弁護人「そのcさんとはどうやって知り合ったのですか」
被告人「友達の紹介。私が店をやっているということで。1年くらい一緒にやりました」
弁護人「なぜ喫茶店を辞めたのですか」
被告人「私が覚せい剤で捕まってしまいました」
弁護人「その後cさんとは交流はあったのですか」
被告人「20年ぐらいなかったです。他の男性と結婚したと聞きました。ところがcさんが離婚して帰ってきたときに偶然居酒屋で会いました。一緒に暮らした時期もあります」
弁護人「この事件を聞いて、cさんは何と言っていましたか」
被告人「取り返しのつかないことをしてしまったけど、私は待ってるから、と言いました。面会にも来てくれています」
弁護人「それを見てどう思いましたか」
被告人「こんなことをしても、待ってんねんな〜悪いな〜と思いました」
弁護人「あなたは連続して強盗をしていたのだけど、その時どこで寝泊りしていたのですか」
被告人「車や知り合いの家で、寝泊りしていた。家はなかった」
弁護人「家がないということだけども、それはなぜですか」
被告人「家賃を滞納してしまい、出ました」
弁護人「どうして母親や弟のところへ行かなかったのですか」
被告人「15年ぐらい前、友達のトラブルで窃盗の疑いで(警察の)切符が回されたり、母親の家の名義を変えて売却して、訴えられたことがあるので行きませんでした」
弁護人「これは5月13日分の起訴状記載の有文書偽造ですね。お子さんはいるのですか」
被告人「4人います。名前はd、e、f、gです。女の子3人、男の子1人です」
弁護人「それぞれ何歳になるのですか」
被告人「dが22歳、eが20歳、fが高3、gが中3です」
弁護人「最近子供たちと会ったのはいつですか」
被告人「eさんとは2年、その他とは5年くらい会っていません」
弁護人「eさんはあなたに懐いてたのですか」
被告人「はい、カラオケに行ったり、ご飯を食べに行ったり、寂しい時は娘のところに行きました」
弁護人「私はあなたの子供たちに事件のことは連絡していません」
被告人「刑事が言ったとか聞いています」
弁護人「子供たちに会いたいですか」
被告人「子供たちは結婚もしているし、会いたいけど悪いなあと思う」
弁護人「12月18日のショップ99の強盗はBという男とやっているという。なぜBと強盗をやるようになったのですか」
被告人「お金もなく、たまたまBと会って『強盗やろかー?』ということになった」
弁護人「どうして強盗には、一人でやるときとBと一緒にやるときがあるのですか」
被告人「Bと会うときと会わないときがあるからです」
弁護人「Bと一緒にやったのが3件で、それがショップ99、ファミマ山科店、ファミマ河内長野店ということだけど、なぜBとやっているのが発覚したのですか」
被告人「警察の実況見分で、携帯電話を調べられ、私の名前が入っていた」
弁護人「警察に話していないのもありますが、どうしてですか」
被告人「言ってもしょうがないと思いました」
弁護人「何で僕に話そうと思ったのですか」
被告人「胸に引っかかっていた。他の事件の調べが終わってから、共犯のことは分かった。ほっとこうかと思ったけど、自分で嘘つくのは嫌やしね」
弁護人「連続して強盗したり、刑務所に行って罪を償うしかないというのは分かっていますか」
被告人「分かっています」
弁護人「社会に戻るのは大分先のことだから、あなたもかなりの歳になっているだろうけど、出所したあとはどうしますか」
被告人「迷惑をかけないようにしたいと、ただそれだけです」

−検察官の被告人質問−
検察官「事件のいきさつについてだけど、親からお金を出してもらって、喫茶店を経営していたのですが、何で潰したのですか」
被告人「それは覚せい剤ですね」
検察官「その覚せい剤の件で執行猶予の判決を平成8年ごろ受けましたが、もうやめようとは思わなかったのですか」
被告人「ずっとやめていました。ところが平成12年以来、仕事をやれば赤字になり、最終的にお金がなくなってきました。そうこうフラフラしている時に、またやり始めました」
検察官「連続して強盗をしているときも、覚せい剤を使用していたのですか」
被告人「使っていました」
検察官「まともな方向に行かないというのは分かっていたのですか」
被告人「分かっていました」
検察官「真面目に生活をする意欲が感じられないのですが」
被告人「(覚せい剤を)やめてて、また手を出して強盗とか殺人まで持っていってしまいました」
検察官「有文書偽造の件で伺いますが、実家を担保にして借り入れたお金はどう使ったのですか」
被告人「競馬とか飲み食い、埋め立てする土地を買いました」
検察官「その埋め立てする土地はどうなったのですか」
被告人「そこの社長が癌で死んだので、なくなった」
検察官「社長が死んだのですぐあきらめたのですか」
被告人「どないしようかな〜と思った」
検察官「産業廃棄物の事業を始めようと真面目に取り組んだこともあるのでないですか」
被告人「捨てる場所は見つかったが、産業廃棄物を入れるものが見つからなかった」
検察官「土地を売って手に入れた不正なお金を、事業をやって返そうとは思わなかったのですか」
被告人「不正じゃない。そのときは1ヶ月経ったらお金が動くので、分からないうちに買い戻そうとしていた」
検察官「でも結局遊びに使ったんでしょう?」
被告人「そうなっていますが・・事実のところも確かにあるが、そうでないところもある」
検察官「Bと一緒に強盗をやったのは、ショップ99、山科のファミリーマート、河内長野のファミリーマートの3件ですね」
被告人「はい」
検察官「でも結局店員を脅すのはあなただったのですか」
被告人「はい、Bは私を助ける役でした」
検察官「山科の事件のとき、Bは何をしていたのですか」
被告人「Bは店の外に止めた車に乗っていました。『何かあったら助けたるわー』と言っていた」
検察官「河内長野の事件でもBと一緒にやっていましたね。何で他の事件を刑事に話さなかったのですか」
被告人「取り調べの順番がショップ99の事件で終わったので、もし喋ったら調書が1からやり直さなければならないので、悪いことをしたくないと思った」
検察官「河内長野の事件ではBに分け前を渡したのですか」
被告人「はい」
検察官「ショップ99の事件では渡してなくて、山科の事件は未遂に終わったということですか」
被告人「はい」
検察官「強盗はテレビを見て思いついたとありますが、時に人を傷つけてしまうとは思わなかったのですか」
被告人「まさか傷つけるとは思わなかった」
検察官「なぜそう思ったのですか」
被告人「悪いことだと思っていたが、怪我をさせるつもりはなかった」
検察官「強盗に準備した包丁は刃の長さが大きいのですが」
被告人「ごはんを食べるとき、(ごはんを)作りますやん、事実のことですけどね、日常生活で使っている分を包丁に用いたと」
検察官「そうなってしまったのでしょう?自分で選んだことは認めざるを得ないでしょう?」
被告人「ごはんを食べるのに使って・・・うまいこと言えませんけどね」
検察官「強盗を始める前に、仕事が見つかったのですか」
被告人「年明けから仕事をね」
検察官「そういう形跡は見えないのですが」
被告人「行っても仕事がないです」
検察官「結果として、仕事を探す努力はしていないんじゃないですか」
被告人「してないことはなかった。年末に、平成17年の1月15日以降ペンキ屋で働くという話があった」
検察官「そんな話が決まっていたのなら、強盗なんて起こさないのではないですか。それに強盗を起こす前に、名古屋のビル爆破事件を参考に、火をつける実験までしていますね」
被告人「実験をやったが、(火は)ちょこっとしかつきませんでした」
検察官「いずれにせよ火をつけて脅すことを考えていたのではないですか。なぜ強盗の事件はいずれも夜か早朝なのですか」
被告人「車で寝ていたら、(夜や早朝は)寒いから目が開く」
検察官「ショップ99に入る前は、相当下見をしていますね」
被告人「怖いから何遍も確かめてやった。捕まるのが怖かった」
検察官「警察に捕まらないようにするため、あなたは何をしましたか」
被告人「何回もショップ99の場所の角度を考えた」
検察官「あなたがした覆面もそうですか」
被告人「そうですね」
検察官「警察に捕まるのが怖いなら、やめようとは思わなかったのですか」
被告人「やめられませんでした」
検察官「年明けから仕事をするつもりだったと?」
被告人「はい」
検察官「それなら全く強盗する必要がなかった、そもそも仕事の約束はなかったのではないですか」
被告人「刑事が聞き込みをやっているホームレスに聞けば分かる」
検察官「警察に捕まるのが怖いと言いながら、大胆に強盗をやっている。本当に警察が怖かったのですか」
被告人「はい」
検察官「もう捕まんねえよと思ったんじゃないですか」
被告人「自分がおかしかった」
検察官「連続強盗をしている最中、どのくらいの割合で覚せい剤を使用していたのですか」
被告人「一日一回です、強盗に行くのは、覚せい剤が切れる直前のときだった」
検察官「なぜ事件を起こす直前に覚せい剤をしようしていたのですか、さらに事件を起こしてしまうとは考えなかったのですか」
被告人「なんとも言えない」
 このあたりから眼鏡をかけた30代くらいの鷲鼻の男性検事の声が一段と強まる。
検察官「覚せい剤を打つような人が刃物を持ってうろついていたら、世の中の人は安心して暮らせないと思わなかったのですか」
被告人「そんなことも考えたと思います」
検察官「ではどういうふうに思っていましたか」
被告人「俺、何してんかな〜、嫌やな〜と。おかしく思ったこともありました」
検察官「そのようななかで一番大きな事件が1月14日に起きるわけですが、人を傷つけるとは予想つかなかったと言っていますが、その前に起こしたコンビニ強盗では男性店員に逆に追いかけられていますね。そのように抵抗する店員がいるというのは認識していたのですか」
被告人「はい」
検察官「本当に傷つけることを予想していなかったのですか」
被告人「前から(店員が)ワーッと来ているのに、(包丁を)振りかざしたら怪我をするというのは分かっていた」
検察官「河内長野の事件では(店員を)傷つけることなく逃げていますね」
被告人「ワーッと来たら、包丁が切れると分かっていた」
検察官「事件が起きたローソン長吉長原店の下見はしていたのですか」
被告人「そのローソンのところは、寝るとかしてたとこなんです」
検察官「なぜその近くで寝てたのですか」
被告人「トイレとか借りやすかった」
検察官「亡くなったaさんの行動を見ていたのですか」
被告人「見てないねんけどね」
検察官「aさんが出勤するのを見張っていたのではないですか」
被告人「見張ってたと言われればそうかもしれない」
検察官「なぜレジのお金じゃなく、手提げかばんを奪おうとしたのですか」
被告人「うまく言えない」
検察官「手提げかばんにお店のお金が入っていると思ったのですか」
被告人「釣銭とかあるんちゃうかなあとね。多い、少ないはあまり認識していない」
検察官「レジよりも多くのお金があると期待していたのでは」
被告人「期待していたのかもしれないけどね」
検察官「aさんと揉みあう前に、彼女が『助けてーっ!』と大声を出したのは知っていますか」
被告人「よく覚えていない」
検察官「ここであなたはかばんを奪われまいと抵抗していると認識した。今まで傷つけないよう配慮していたとあるが、それならその時点であきらめるべきではなかったのか」
被告人「言われればそうかもしれません」
検察官「何であなたはそこまで手提げかばんにこだわったのですか」
被告人「お金が入っていると思った」
検察官「aさんが抵抗した時点で、何であきらめて逃げなかったのですか」
被告人「揉みあって、右手にある包丁で自分の指を切ってしまった」
検察官「あなたの指が切れようが切れまいが、あなたが悪いことは思っていますね」
被告人「はい」
検察官「被害者を店の脇まで引っ張っていく必要はなかったのではないですか」
被告人「はい」
検察官「いくらでもこんな結果にならないようにすることはできましたね」
被告人「はい」
検察官「服用していた覚せい剤の影響もあったのではないですか」
被告人「はい」
検察官「aさんを何度も刺して、手提げかばんを取って逃げたのは間違いありませんね」
被告人「はい」
検察官「殺そうとは思っていなかったというのは本心ですか」
被告人「逃げているんじゃなく、真実を言っているだけです」
検察官「どういうことですか」
被告人「はっきり言うと、殺す殺さないとかいう前に、手が切れて頭が真っ白になってしまった。手元から包丁が落ちて、ガーッとなって分からんうちにああいう傷をね、あんな怪我をさせたとは自分では分かってない。殺す殺さんじゃなく自分がやったことは間違いない。検事さんの調べでも『死刑にしてくれ』から始まった。僕がやってはいけないことをしてしまったのは、自分の指が飛んでしまったからで、飛んでなかったらね。逃げも隠れもしない」
検察官「かばんを奪って目標を達成したということではないのですか」
被告人「包丁から手は離れるけど、かばんを持ったら離れない、そういうころありますやん」
検察官「かばんを取るつもりで、相手を殺す、殺してしまったと言われても仕方ないのではないですか」
被告人「仕方ないと思います」
検察官「あなたは救急措置を取ろうとは一切考えていない。相手の命に対する配慮を持った行動をすべきだったのでは」
被告人「はい」
検察官「亡くなった被害者に対して、今どういう言葉をかけたいですか」
被告人「どのようにしても取り返しがつかないですが、ごめんなさいとしか言えません」
検察官「遺族に対しては」
被告人「ごめんなさいとしか言えません」
検察官「そんな言葉で被害者や遺族が納得すると思っているのですか!表現するのがあまりうまくないみたいだけど、他に言葉は思いつかないのですか」
被告人「すみません、どうも」
検察官「それだけではご遺族の気持ちは救われないんじゃないですか!」
被告人「悪いと思っています」
検察官「本当に悪いと思っているのですか」
被告人「口では上手に言えませんが、悪いと思っています」
検察官「あなた自身どのような罪になると思っているのですか。さっき弁護人との話で出所したらと言っていましたが、刑務所から出られると思っているのですか」
被告人「最初の山口さん(検事)の調書を読んでください!そこに書いてあります(=死刑にしてほしい)。・・・すみません」
検察官「ではそれ以上は聞きません」

−裁判官の被告人質問−
左陪席裁判官「強盗殺人の件であなたは間違いないと認めているわけですが、それと今日話されたこととは、あなたのなかでは同じなのですか」
被告人「今日のことが今の気持ちを表している」
左陪席裁判官「あなたと思っていることとやっていることが違いますよね。何回も刺しているのに、殺すつもりはなかったとか」
被告人「確かにそう思います。色んなことを聞かれて、そのなかで浮かび上がってきたこともあると思います。自分も事実はこうやってんな〜とか、説明がうまくないけど、いろいろと聞かれて良かったと思います」
右陪席裁判官「強盗殺人の事件のとき、頭が真っ白になってしまったと言っていますが、もう少し説明してもらえませんか」
被告人「手が切れて、刺したりやりましたですやん、刺して車に乗り込むまでの行動を振り返ったとき、自分がそんなことしたのかなあと頭が真っ白になりました」
右陪席裁判官「自分の取っている行動が分からないという意味ですか」
被告人「上手に言えないけど、頭の中が真っ白になった」
裁判長「あなたは強盗の件も、全部覚えてると言っていますね。いずれも間違いないと。強盗殺人で使った包丁であることも間違いない、Bの車で来て、強盗をやったのも間違いないと言っていますが、Bに対する報酬の件はどうなっているのですか」
被告人「貸してたお金とかあったからね」
裁判長「何でBは一緒についてきたのか」
被告人「怖いというのがあるからね」
裁判長「Bが来て手伝ってもらうのは、安心だと、心強いと思ったのですか」
被告人「はい」
裁判長「被害者の方を死亡させてしまった原因は、かばんを引張りっこになって、包丁で指が切れてしまった、それで腹が立って刺してしまったと」
被告人「カーッとなった」
裁判長「前後の見境がつかないようになってしまったようだけど、それはあなたの勝手ですよね」
被告人「はい」
裁判長「社会復帰のことを弁護人と話していましたが、遺族の方があなたを許さないというのは分かりますよね」
被告人「はい」
裁判長「遺族の人生を変えてしまったわけだけど、あなたはどう思っていますか」
被告人「先ほどと同じことしかよう言いません。子供さんに迷惑をかけたと思います」
裁判長「この法廷には遺族の方も来ていると思うんだけど」
 見渡した限りでは傍聴席の真ん中あたりに座っていた中年の男女か。
被告人「謝ることしかできません。どうもすみませんでした。だから手紙でも、ごめんなさい、許してください、ごめんなさい、許してくださいとしか書いていません。お詫びは口で言っても、思ったことも書いたりしていますんでね、言葉では上手には言えませんが、ごめんなさい、許してくださいとしか言えません」
裁判長「今までの人生を振り返ってどう思いますか」
被告人「間違った、失敗した人生というふうに思っています」
裁判長「調書についてはどうですか」
被告人「それまでの調書は殴られて無理やり作らされたが、そのときの刑事さんや検事さんはしっかり信用しているから、やったことを認めされてもらった。もちろん遺族のことに関しては厳しいことを言われたが、素直にさせていただきました。みんなできっちりと支えてもらいました」
裁判長「なぜBのことを話さなかったのですか」
被告人「自分ひとりで刑を終えようと思いました」

 ここで裁判官からの質問が終わり、文化包丁と記載されている部分を全て牛刀に直すことに、いずれもが同意した。
 次回は弁護側が申請していた情状証人の尋問で11月8日、次々回は遺族の意見陳述で11月24日、そして12月15日に論告・弁論を行い結審する予定。

報告者 insectさん


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