裁判所・部 大阪地方裁判所・第七刑事部
事件番号 平成17年(わ)第3497号
事件名 殺人未遂
被告名
担当判事 杉田宗久(裁判長)鈴嶋晋一(右陪席)菅野昌彦(左陪席)
日付 2005.8.10 内容 証人尋問、被告人質問(第二回公判)

 開始時に、検察官から冒頭陳述の続きがあった。内容は、灰皿の鑑定結果だった。内容は『被告の最初の殴打時に、灰皿は8つに割れ、被告がその後の殴打に使用したものは、222.6gである』というものだった。

 続いて、被告を逮捕した警察官に対する証人尋問。

−検察官の証人尋問−
検察官「事件を知った経緯は」
証人「布施警察署から連絡を受けた」
検察官「現場の場所を証人は知っていましたか」
証人「いいえ、連絡で、被告が交番に向かっていると聞き、巡回していたが交番に戻った」
検察官「aさんを発見したとき、被告は何処にいた」
証人「aさんの後方20mくらいの場所にいた」
検察官「被告人との最初の会話は」
証人「名前を確認した後、殴った相手が今何処にいるか聞いた」
 ここで、証人に(証人が勤務する)布施駅前交番、被害者の発見場所、現場をそれぞれ地図に記載させる。
検察官「被害者の様子は」
証人「ふらふらしていて、一人で歩くのが辛そうやった」
検察官「交番に向かう途中に被告と話をしたか」
証人「いいえ、していないが、被告が独り言で『あんな奴は死んだ方がええんや、もっと殴ってやったらよかった。』と言うのを聞いた」
検察官「被害者に対しての発言は」
証人「『もっとやってやればよかった』が印象的だった」
検察官「あなたは最初、被告を傷害罪で逮捕しましたね」
証人「はい」
検察官「その理由は」
証人「被害者が怪我をしていたから」
検察官「以上です」

−弁護人の証人尋問−
弁護人「現場に向かったのは何人か」
証人「私を入れて2人」
弁護人「現場で被告に質問したのは誰か」
証人「私です」
弁護人「呟いている被告と話をしなかったのは何故か」
証人「人の往来が多かったので、詳しい話をするのは避けた」
弁護人「交番で殴った回数を聞いたか」
証人「はい、『2、3回』と言っていた」
弁護人「交番で話をしたのは証人だけか」
証人「はい」
弁護人「交番で被告人は落ち着いていたか」
証人「交番に着いたとき、被告は興奮もせず、落ち着いていた。aさんと会っているときも落ち着いていた」
弁護人「aさんに応急処置をしたか」
証人「ガーゼ等を持っていなかったので、できなかった」
弁護人「以上です」

−裁判官の証人尋問−
裁判官「何処で被告を逮捕しましたか」
証人「被告と会った場所」
裁判官「交番で弁解録取書をとり、黙秘権を告げたか」
証人「・・・・・」
裁判官「交番では黙秘権を告げずに被告人に話させたのか」
証人「・・・・・・・はい・・・・・・・・」
裁判官「あなたに何の権限があってやったんですか」
証人「・・・・・・」
裁判官「警察官は一般的に緊急逮捕したらどうするのか」
証人が「・・・逮捕状を」と言った所で裁判官が遮り、
裁判官「逮捕状なんてあとでしょ」
証人「・・・」
裁判官「事情聴取は一人でやったのか」
証人「はい・・・」
裁判官「何の目的で」
証人「被害者を殴った理由と何でやったかを聞くため」
裁判官「黙秘権を告げるのは基本中の基本でしょ」
証人「・・・・」
 裁判官が被告に証人尋問内容について質問
裁判官「何度も、もっとやればよかったと言ったか?」
被告「全く覚えが無い」
裁判官「殴った理由を聞いたのに、何故、『もっとやればよかった』等の言葉が出てくるのか」
証人「・・・」
裁判官「交番で聴取されたか」
被告「されていない」
裁判官「交番に出頭した後どこかへ行ったか」
被告「行っていない、交番で直ぐに手錠をかけられて、警察署へ移された」
裁判官「被告に手錠をかけたのか」
証人「かけていない」
裁判官「何処で逮捕されたのか」
被告「交番でされた」
裁判官「『死んだほうが良い』といったか」
被告「言っていない。言うくらいなら、救急車を呼んだりしない」

 続いて被告人質問が行われた。

−弁護人の被告人質問−
弁護人「逮捕されたときの話はさっきので間違い無いか」
被告「はい」
弁護人「警察署では何人に取り調べられたか」 
被告「はっきりとは覚えていないが4人くらい」
弁護人「どんなことを聞かれたのか」
被告「ぼろくそに言われた」
弁護人「具体的には」
被告「『殺そうと思うたんちゃうんか』等と言われてカッとなり、『おお、そうじゃ』と言った」
弁護人「否定しなかったのか」
被告「否定したが、聞き入れてくれないので、カッとなり、認めた」
弁護人「aさんのところに行った理由は」
被告「賃金をもらうため」
弁護人「aさんを殴った状況は」
被告「1万5千円を渡された後、aが睨み付けてきたので、それに反抗して、灰皿を掴んだ。そのときに、灰が下にこぼれた」
弁護人「それでどうなったのか」
被告「aが『灰拾えや』言うたので、『何でや』と言った。そうすると、aが胸倉を掴んできたので灰皿で殴った」
弁護人「aさんを殴った理由は」
被告「前、2001年ごろにも胸倉を掴んでこられたことがあったので、負けて、殴られると思ったから」
弁護人「aさんとは関係が悪かったのか」
被告「いや、建設業ではよくあることだ」
弁護人「1回殴って灰皿はどうなったのか」
被告「割れた」
弁護人「その後どうなったか」
被告「aが再度攻撃してきたから、こちらも持っていた破片で殴った」
弁護人「いつ血が出たのか」
被告「2回目に殴ったときに赤いものが見えたが、aがまた攻撃してきたから、3回目の殴打をした。そしたら、血が吹き出てきた」
弁護人「3回目に殴った後、aさんはどうなったか」
被告「血が吹き出ていたので、それを押さえながら逃げた」
弁護人「それでどうしたか」
被告「110番通報した」
弁護人「灰皿はどうしたか」
被告「殴った後直ぐに手放した」
弁護人「aさんのあとをついていったのはどうしてか」
被告「怪我の状態が心配だったから」
弁護人「警察署でその日聴取された時間は」
被告「15分くらい」
弁護人「何故否定しなかったのか」
被告「否定したが聞いてくれなかったので、もうどうでも言いと思っていた。aが死ななかったので、いいと思った」
弁護人「以上です」

−検察官の被告人質問−
検察官「あなたがやったことは刑事さんに話した通りか」
被告「はい、そうです」
検察官「aさんの行動もか」
被告「はい」
検察官「では違うのは、あなたの気持ちのみか」
被告「はい」
検察官「あなたは傷害罪で逮捕されたことを告げられましたか」
被告「覚えていない」
検察官「殺人未遂に変わったのはいつか」
被告「3回目の取調べのとき」
検察官「検察庁に送られたとき、殺人未遂になっていたか」
被告「はい」
検察官「刑事に調書の訂正を求めたか」
被告「はい」
検察官「何故殺すつもりはなかったに訂正されていないのか」
被告「刑事は応じなかった」
検察官「検察庁では訂正を求めたか」
被告「細かい箇所は求めたが、一番重要なところはひっくり返らないと思い、言わなかった」
検察官「留置所にいるはじめ10日くらいは被害者に対する怒りがおさまらなかったと言っていたが」
被告「はい、自分のおかれている状況を情けなく感じ、多少怒っていた」
検察官「aさんが死ねばよいと思ったか」
被告「そんなことは思ってない」
検察官「aさんはあなたを帰そうとしたのではないか」
被告「そんなことはないと思う」
検察官「aさんが掴みかかってきたときに、帰ればよかったのではないか」
被告「いや、そうしたら、1万5千円で話が終わってしまう。こっちは生活がかかっていたので、帰れなかった」
検察官「aさんを殴った理由は」
被告「aが攻撃してきたから」
検察官「胸倉を掴んで押しただけで攻撃なのか」
被告「物凄い力で押された。そのあと、何をされるかわからなかった」
検察官「何故、殴るのをやめたのか」
被告「aが手を離したから」
検察官「aさんの顔や手の傷はいつつけたのか」
被告「もみ合っている最中についたと思う」
検察官「aさんはそのあと、何処へ行ったのか」
被告「aの後をつけて、交番のほうへ向かった。aは、交番の前の交差点で曲がって、私は交番へ行った。aは交番の斜め前のファミリーマートで保護された」
検察官「調書に、能勢の山に埋めたらいいとか、南港に沈めたらいいと書いてあるが」
被告「自分で作った嘘の話を刑事さんにした。そのあとで、嘘と否定した」
検察官「調書に書かれているaさんの行動で違うことはあるか」
被告「覚えていない、調書を見ないとわからない」
検察官「以上です」

−弁護人の被告人質問−
弁護人「今日言ったことと調書に書かれていることはどちらが正しいか」
被告「今日言ったこと」
弁護人「以上です」

−裁判官の被告人質問−
裁判官「a氏に腹を立てていたか」
被告「はい」
裁判官「『山に〜』とあるが、死んだほうがいいと思っていたのではないか」
被告「そんなことは無い」
裁判官「今でもa氏に腹を立てているか」
被告「はい。自分だけが罪を問われているのに、aは金も払わず、のうのうと煙草を吸っているのは許せない」
裁判官「a氏が胸倉を掴んだのは、あなたが灰皿を構えたからではないか」
被告「灰皿はかまえてない。手はぶらんとなっていた」
裁判官「a氏は殴られると思ったのではないか」
被告「わからない」

 これで、第2回公判は終了した。次回は、被告人質問の続きと、被告の妻への証人尋問、論告求刑で結審までということになった。

 2時間の予定だったが、45分ほどオーバーしていた。

事件概要  A被告は2005年6月1日、賃金の問題から雇い主である工務店経営者を殺害しようとしたとされている。
報告者 指宿さん


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