裁判所・部 水戸地方裁判所・刑事第1部(合議B係)
事件番号 平成30年(わ)第102号等(裁判員事件)
事件名 殺人、非現住建造物等放火、有印公文書偽造・同行使、有印私文書偽造・同行使、詐欺未遂、詐欺
被告名 小松博文
担当判事 結城剛行(裁判長)、高原大輔(右陪席)、金子恵理(左陪席)
その他
日付 2021.6.15 内容 被告人質問等

 被告人小松博文は平成29年10月6日未明、自宅で、妻のaさん(当時33)と長女(aさんと前夫との子)のbさん(当時11)、長男のcくん(当時7)、次男のdくん(当時5)、双子で三男のeくん(当時3)と四男のfくん(当時3)の6人を包丁で刺して殺害したうえ、部屋に火をつけたとして殺人と非現住建造物等放火などの罪で起訴されている。

 この日はまず区分審理(有印公文書偽造・同行使、有印私文書偽造・同行使、詐欺未遂、詐欺)の更新が行われ、裁判長から有罪の部分判決の内容が読み上げられた。
 第一 被告人は自己の運転免許証を偽造(氏名等の一部をマイナスドライバーで削り、別の氏名に改竄)した上、
 1.平成28年11月8日、前記偽造免許証を利用し、郵便局で不正に預金口座を開設した。
 2.同日、前記偽造免許証を利用し、家電店で携帯電話機1台を購入しようとしたが、店員に偽造を見破られ未遂に終わった。
 第二 同様に運転免許証を偽造し、
 1.平成29年5月11日、前記偽造免許証を利用し、銀行で預金口座を開設した。
 2.同日、前記偽造免許証を利用し、携帯電話販売店で携帯電話1台を購入した。
 続いて被告人の前科が明かされた。
・平成16年11月17日 業務上過失傷害 罰金20万円
・平成19年5月1日 道路交通法違反(無免許運転)、業務上過失傷害 懲役1年・3年間執行猶予
 (平成18年8月16日、千葉県内の道路で無免許運転をした上、交通整理のない交差点を時速40kmで走行中、自転車に衝突して被害者に加療87日間を要する要害を負わせた)
・平成22年5月28日 道路交通法違反(無免許運転、速度違反) 懲役10月(平成23年7月12日仮釈放)
 (平成21年8月29日、茨城県内の高速道路で、時速155km毎時で走行した)

 続いて被告人質問が開始された。
小沼典彦弁護人(主任・国選)「あなたは心肺停止になり、記憶喪失ですよね?」
被告人「はい」
弁「どこまで覚えていて、どこから記憶がないのですか?
被「わかりません」
弁「記憶に残っていることと、後から(資料等を見て)得た知識を混同していますか?」
被「はい」
弁「殺人と放火で起訴されていますが、自分が殺しましたか?」
被「わかりません」
弁「aさんと子ども5人が殺害されたことは?」
被「わかりません」
弁「そのことで裁判されていることはわかりますか?」
被「はい」
弁「殺害したことは記憶にありませんか?」
被「はい」
弁「子どもは何人いましたか?」
被「5名です。b、c、d、e、f」
弁「子どもの年は?」
被「上から7歳、4歳、3歳…」
弁「bさんは?」
被「記憶にあるのは11歳」
弁「cくん7歳、dくん…」
被「…5歳、e3歳、f3歳」
弁「殺害した記憶はありますか?」
被「全くありません」
弁「私と接見した時、aさんを3回くらい刺したと言ったことを覚えていますか?」
被「覚えていません」
弁「子どもについては全く覚えていませんか?」
被「はい」
弁「aさんにどれくらいの刺し傷があったか知っていますか?」
被「警察から40何か所と聞きました」
弁「bさんは?」
被「10数か所…」
弁「aさん44回、bさん20回…その他の子どもたちは?」
被「覚えていません」
弁「1回も刺した記憶はないのですか?」
被「ないです」
弁「いわゆるメッタ刺しですが、恨みでもあった記憶はありませんか?」
被「特にありません」
弁「なんでこのように刺したか考えたことはありますか?」
被「あります。妻が離婚を切り出した後、同時にAさん(筆者注:公判でもこの仮名で呼ばれていた)との関係がわかったのですが、『離婚とAさんとは別問題でしょ』と言われました」
弁「恨み、怒り、どちらですか?」
被「怒りですね」
弁「悲しみは?」
被「子どもたちに会えなくなる悲しみ」
弁「aさんに会えなくなる悲しみは?」
被「それもあったと思います」
弁「どっちが強いですか?」
被「わかりません」
弁「当時、奥さんに恨みはなかったとのことですが、今はどうですか?」
被「今も当時もありません」
弁「なんで恨みもないのに刺したのですか?」
被「わかりません」
弁「『なんで子どもたちも刺したのかな』と考えたことはありますか?」
被「答えは出ません」
弁「警察や弁護士から教わりましたか?」
被「覚えてません」
弁「『aさんを殺した。子どもたちはそういう父の子として育たなきゃいけない。子どもが悲しまないためには殺さなきゃいけない』と話した記憶はありますか?」
被「ありません」
弁「どう今は思っていますか?」
被「なんで子どもたちまで、という気持ちが大きいです」
弁「弁護人の私から何回も聞いた。マスコミも何回も聞いた。どう回答しましたか?」
被「覚えていません」
弁「今も?」
被「わかりません」
弁「子どもたちとは仲が良かったんですか?」
被「良かったです。公園に連れて行ったりしました」
弁「子どもたちの性格はわかりますか?」
被「わかります」
弁「長女のbさんは?」
被「いつも弟のことを一番に考える子でした。お手伝い…弟の保育園の用意とか、一緒にご飯作ったり…」
弁「bさんは実の子ですか?」
被「違います。でも仲は良かったです」
弁「可愛がって育てましたか?」
被「はい」
弁「あなたに抱っこ求めたりしました?」
被「小さい頃は」
弁「勉強はどうでしたか?」
被「そんなに得意じゃなくて、塾に通ってました」
弁「運動は?」
被「本人は中学になったらバスケ部に入りたいと言っていました」
弁「cくんはどうでしたか?」
被「ちょっと引っ込み思案で、人見知りしますが、心を開けばいろいろ話してくれました。勉強は普通です」
弁「dくんは?」
被「絵に描いた次男坊でした。自由気ままで」
弁「三男と四男は?」
被「双子で、どっちかが風邪ひいたり保育園を休むと元気がありませんでした」
弁「子ども一人一人を理解していますね。手を出した記憶はありますか?」
被「全くありません」
弁「何が自分をそう(殺害)させたかわかりますか?」
被「わかりません」
弁「aさんに恨みは全くないですか?」
被「ないです」
弁「『子どもを置いて男に走った』と言えるかもしれませんが、あなたはそうは言っていない。どうしてですか?」
被「普段の様子が…一番子どもたちも懐いていました。ちゃんとお母さんの仕事していたから」
弁「全く恨みはない。今もですか?」
被「はい」
弁「怒りも?」
被「ありません」
弁「じゃあ、どうしてaさんを殺害したのですか?」
被「わかりません」
弁「『他の男の所に行ってほしくない』と言ったのを覚えていますか?」
被「はい」
弁「『恨みはない』と言ったのも覚えていますか?」
被「はい」
弁「なんで恨みもないのに殺したのですか?」
被「その男性に取られたくなかったからだと思います」
弁「男性のことは恨んでいますか?」
被「恨んでいません」
弁「どうして奥さんは、その男性のところへ行ったのですか?」
被「恐らく、自分(被告人)が家庭を支えるべきなのに、ちゃらんぽらんでaに負担を掛けていました。仕事は長続きしない、嫌なことがあればすぐやめる、『次こそ最後だよ』と言われて、最後の仕事に就いていましたが…aに限界が来て、Aさんと親しくなった…」
弁「原因は自分にあると思いますか?」
被「はい」
弁「原因はaさんやAさんにあるとは?」
被「思っていません」
弁「どういう風にすれば良かったと思いますか?」
被「自分が家を出て、aとAさんがどうなるかわかりませんが、子どもとは会わせてくれると言っていたので、別々の道を歩めばよかったです。離婚とAさんのことは別と言われても、どうしても取られてしまうという気持ちが大きく働いていました」
弁「子どもがいなくなると思ったのですか?」
被「最初は会わせてくれると言っていましたが、Aさんからすれば会わせるなと言うと思いました」
弁「子ども、奥さん…会えないのはどちらが寂しいですか?」
被「考えていません」
弁「Aさんとは直接何を話しましたか?」
被「『aとはどこまで行ってる?』と聞きました。『指一本触れてねえよ』と言われました」
弁「あなたはそれを信じましたか?」
被「そんなことないだろうと思いました」
弁「奥さんには聞きましたか?」
被「『何もしてない』と言ってました」
弁「2人で嘘をついていると感じたのですか?」
被「はい」
弁「怒り…悲しみ…」
被「怒り半分、悲しみ半分です」
弁「嘘つかれた原因は何だと思いますか?」
被「考えませんでした」
弁「『奥さんに恨みはない』と言ってたのを覚えてますか?」
被「覚えてません。恨みはありません。はっきりした証拠がないので、はっきりした恨みはありません」
弁「怪しいな、とか感じましたか?」
被「感じてました」
弁「そうしたら恨みが生じますか?」
被「そうですね。でもその時は生じませんでした」
弁「完全に恨みがないということはないと聞こえるんですか?」
被「今のほうが本心です」
弁「恨みがあったことで、奥さんを殺す動機になりますか?」
被「それはありません」
弁「何が原因でした?」
被「Aさんに取られたくないことです」
弁「恨みがないとまでは言えないけど、それ以上にAさんに取られたくなかったのですか?」
被「はい」
弁「aさんや子どもを殺害する前、ナイフ、柳刃包丁、ロープ、ガソリンを買った記憶はありますか?」
被「ありません」
弁「なんのために購入したか、記憶喪失になる前になんと言っていたか覚えていますか?」
被「わかりません」
弁「『あくまで自分が自殺するため』と言っていたのを覚えていますか?」
 ここで検察官から異議があり、
裁判長「どの場面で、誰に行ったか、明確にしてください」
弁「私に『あくまで自殺』と言ってたのを覚えていますか?」
被「覚えてません」
弁「自分がナイフとかをなんのために購入したか、考えましたか?」
被「考えたけどわかりません」
弁「何に使ったか教わりましたか?」
被「はい」
弁「本当に自分が使いましたか?」
被「最初は信じられませんでしたが、自分の足が包丁で切れてたみたいで血だらけでした。手の指も切ってたので血がダラダラ出てました」
弁「日立署に自首した記憶はありますか?」
被「ありません」

 ここで状況を整理するため、結城裁判長から質問が入る。
長「警察から調べを受けた記憶はありますか?」
被「ないです」
長「警察から聞いたというのはいつですか?」
被「覚えてないです」
長「手に血が付いていたり、足に火傷をした記憶は?」
被「あります」
長「いつの話ですか?」
被「恐らく出頭した時です」
長「自首した記憶はないが、自分が警察にいた時、手に血が付いていたり、足に火傷を負ったり、警察官と話をした記憶はあるんですか?」
被「多少あります」
長「なぜ自分がそんな状況で話したかの記憶は?」
被「ないです」
長「警察官からご家族を殺害したと聞かれた記憶は?」
被「ないです」
長「どこからどこまで記憶がないかは、裁判体が把握していません。あなたの記憶の中では、手に血、足に火傷、警察官と話をしている記憶はあるんですか?」
被「はっきりとはないです」
長「おぼろげにはある?」
被「はい」
長「ご家族が殺害された話が出ている記憶はありますか?
被「ないです」
長「後から、おぼろげにあるという場面は、自首した場面…なるほど、自分の記憶があるから、それがその場面と納得できるんですか?」
被「はい」
長「弁護人は注意して聞いてください」

 ここで質問者が弁護人に戻る。
弁「あなたの記憶は…」
被「うっすらですけど、何時何分に警察に行ったとかは一切ありませんが、手に傷があったり、足の火傷の跡を見れば思い出します」

 再び裁判長から。
長「手に傷跡、足の火傷の跡を見て思い出すのですか?
被「はい。ほんとおぼろげ…」
長「警察官と話したのがどの場面かは?」
被「わかりません」
長「警察官と話している場面がおぼろげになっているのですか?
被「はい」

 弁護人に戻る。
弁「何を取り調べたかわかりますか?」
被「わかりません」
弁「ぼんやりして、取り調べがわかるとは?」
被「頭の片隅で、取り調べられてた気がしなくもない…」

 ここで休廷を挟み、再開後は裁判長から。
長「前提として、記憶があるかないか、今あなたが考えていることか、昔の時点か、なるべくわかるように話してください。あなたは、自分の手から血が垂れている記憶はありますか?」
被「映像は頭にあります」
長「なぜそうなったの?」
被「それはわからないです」
長「足が燃えている、火傷をしている記憶は?」
被「うっすら」
長「今回の事件と言われれば腑に落ちるんですか?」
被「はい」

 ここから質問者が弁護人に。
弁「腑に落ちるということと、認識したことは同じですか?」
被「そう思います」
 事件以外の質問に移る。
弁「当時の経済状況について聞きます。当時勤めていたZ8自動車ガラスでの収入はいくらでしたか?」
被「17~8万です」
弁「奥さんはどうでしたか?」
被「昼間は病院の事務で、夜はたまにスナックに勤めていました。『自分が仕事決まったから、スナックはやめてくれないか?』と言ったら、『一日家にいると息が詰まるから気晴らし』と言ってました。十分ではなかったけど、それなりの生活はできていました」
弁「児童福祉手当はどれくらいもらっていましたか?」
被「すべてaが管理していて、いくらかはわかりません」
弁「足らなかったとか…」
被「わかりません」
弁「給付金はどのように使ってましたか?」
被「たぶん、生活費、電気代…次から次に払っていました」
弁「パチンコにはどのくらい使いましたか?」
被「1回で5千円〜1万円くらいです」
弁「一人でですか?」
被「妻もです」
弁「なんのために2人でパチンコをしていたんですか?」
被「生活費を稼ぐためでしたが、稼げませんでした。やめようという話も出ましたが、やめれずズルズルやってしまいました」
弁「生活にはそれほど困っていなかったのでは?」
被「私の実家から5〜10万円借りてました。母が亡くなって、aは自分の実家に行ってお金を工面していました」
弁「いつ頃ですか?」
被「ちょっとわからないです」
弁「平成29年6月頃の収入や生活について聞きます。当時は働いていましたか?」
被「はい」
弁「aさんも?」
被「はい。病院とZ9というお店(スナック)です」
弁「2人でどのくらいの収入でしたか?」
被「30〜40万です」
弁「生活に苦労して、大変ということはありましたか?」
被「そんなになかったです」
弁「どうして奥さんは、他の男性と関係を持っていたのですか?」
被「好きだったからじゃないですか?」
 検察官から異議。
検「お客さんと『関係を持つ』という表現は肉体関係と思われるのですが」
長「『関係を持つ』というと肉体関係と取られます。交際ということですか?」
弁「平成29年6月の…」
長「その時にはAさんと会っていないですよね?確か8月頃から…」
弁「Aさんは8月と言っています」
長「Aさんとの交際開始は8月ということですよね。誤導になるので注意してください」
 被告人質問に戻る。
弁「収入のことで奥さんとケンカしませんでしたか?」
被「自分が仕事をしている時にはありません。」
弁「平成29年の6月頃、収入の点で問題はありませんでしたか?」
被「収入自体は自分も働いていたのでありません」
 弁護人からの質問は終了。

 検察官の質問に移る。
検察官(マツオ)「注意事項を言っておきます。覚えていないことと、言いたくないことは分けてください。覚えていることと、後から今になって思うことを分けてください。振り返ってどうか、と答えてほしかったらそう聞きます。まずは覚えていることを答えてください。あなたはどこで生まれましたか?」
被「東京都江戸川区です」
検「どこの中学を出ましたか?」
被「八街市立Z10中学校です」
検「八街市は合併で変わっていますよね?」
被「いえ、今も八街市です」
検「東京から千葉に引っ越したのはいつですか?」
被「幼稚園に上がったときです。父が畑を買いました」
検「お父さんはどういうお父さんでしたか?」
被「厳しいというか、全般的に甘い父親でした」
検「厳しいんですか?甘いんですか?」
被「甘いほうが正しいです。好きなものを買ってもらえたし、勉強しろとも言われませんでした」
検「お父さんの親戚は?」
被「おじに当たる人がいました。甘かったです」
検「おじさんというのは?」
被「父方のお兄さんと弟です」
検「差し入れをしてくれていますよね?」
被「父方の兄です。熊本県の人です」
検「お母さんはどうでしたか?」
被「とても厳しく、口うるさかったです」
検「お父さんに甘やかされていることを、お母さんはどう思っていましたか?」
被「『そんなに買ってあげてどうするの?』となんやかんや文句を言っていました」
検「甘い物に例えていたそうですね?」
被「母は『お父さんは蜂蜜に砂糖』と言っていました」
検「どんな親子関係だったと思いますか?今振り返って思うと」
被「母は厳しく、うるさかったです。父は言えば何でも買ってくれて甘かった」
検「あなたとの仲の良さはどうですか?」
被「良かったと思います。両方」
検「お父さんはいつ亡くなりましたか?」
被「覚えていません。大人になってから。」
検「お母さんは?」
被「それより後です」
検「Z11高校はいつ中退しましたか?」
被「2年に上がるタイミングです」
検「どうしてですか?」
被「覚えていません」
検「それからは何をしていましたか?」
被「バイク屋でバイトをしていました」
検「パチンコ関係でも何かしていませんでしたか?」
被「打ち子をやってました」
検「打ち子とは?」
被「元締めがいて、どこどこの何番台を朝から打つ」
検「収入はどうでしたか?」
被「それなりに…」
検「月、週でいうと?」
被「1日1万5千円です」
検「ご両親の名前を教えてください」
被「(両親の名前を答える)」
検「漢字ではどう書きますか?」
被「(漢字表記を答える)」
検「八街はどういう町でしたか?」
被「治安があまり良くない所です」
検「八街に施設がありますよね?」
被「学園みたいなとこです。親が育児放棄したりしている子が集まる…家庭の事情で…親が反社会勢力だったり、シャブ中だったり…」
検「犯罪者がいたんですか?」
被「それはなかったです」
検「そういう学園を見て、どう考えてましたか?」
被「入っている子たちも皆素行不良。『あそこ行くと不良になっちゃう』と言われてました」
検「あなたはどうですか?」
被「自分は入りたくても入れないです」
検「一部報道で、養護施設出身と言われていましたが?」
被「それは違います」
検「茨城に出てきたのはいつ頃ですか?」
被「2010年頃だと思います」
検「根拠は?」
被「翌年に震災がありました」
検「7歳のcくんが平成22年、2010年生まれ。それと同じ年に引っ越してきたのですか?」
被「それよりは前から住んでいました」
検「引っ越したきっかけはなんですか?」
被「八街にいてもろくな知り合いがいないし、心を入れ替えるために遠くへ来ました」
検「お父さんが亡くなったことがきっかけでは?」
被「はい。亡くなったのがきっかけで…」
検「職歴について尋ねます」
被「水戸市のほうに住んでて、風俗店に勤めてました」
検「そこはどれくらい続きましたか?」
被「3〜4か月です」
検「次はどこですか?」
被「ちょっと覚えてません」
検「次に覚えているのはどこですか?」
被「知人の紹介で、Z12設備という所です」
検「どういう仕事ですか?」
被「水道の配管工事です。半年くらい続きました」
検「その後はどうですか?」
被「働いていない時間が結構ありました」
検「弁護人の質問にも『仕事が長続きしない』と答えていましたが、あなたとしてもそう思いますか?」
被「はい」
検「最後がZ2ガラス、覚えてますか?」
被「覚えてます。ハローワークで面接をしました。日立市Z13町です」
検「当時の家からどれくらいですか?」
被「車で15〜20分くらいです」
検「ハローワークに出した志望動機はなんでしたか?」
被「車が好きで仕事に生かせるということです」
検「車のどういう所が好きなのですか?ドライブが好きとか、いじるのが好きとか、いろいろありますが…」
被「いじる方が好きです。整備とかは自分でやってました。カスタマイズとかが好きです」
検「趣味は他には何がありますか?」
被「釣りです」
検「どういう所の釣りが好きですか?」
被「主にブラックバスです。あとは海でルアーをやってヒラメとか…」
検「茨城の海ですか?」
被「はい。近くの砂浜とか…」
検「パチンコとパチスロ、両方やってましたね。よく言っていたお店はありますか?」
被「Z14です。日立市Z15町、家の近くです」
 ここで昼休廷。

 午後から再開。
検「前科について聞きます。スピード違反、無免許運転で裁判になったのを覚えていますか?」
被「覚えてます」
検「どこの裁判所ですか?」
被「水戸地裁です」
検「支部ではないですか?」
被「日立支部です」
検「懲役10月ですが覚えてますか?」
被「はい」
検「どうして無免許運転をしたのですか?」
被「ちょっと覚えてないです」
検「どこの刑務所に入りましたか?」
被「黒羽刑務所です」
検「栃木の那須塩原の?」
被「そうです」(筆者注:黒羽刑務所は大田原市)
検「その時aさんは日立のお家にいましたか?」
被「はい」
検「bさんはいた。cくんはどうですか?」
被「生まれてました」
検「aさんは面会に来ましたか?」
被「はい。2人を連れてきたこともありました」
検「手紙のやり取りもしてましたか?」
被「はい。通数はかなりの量です」
検「どんな内容ですか?」
被「『真面目に務めて早く帰ってきて』とかです」
検「cくんの生年月日のすぐ後ですよね?」
被「はい」
検「当時どう感じましたか?」
被「覚えてません」
検「この裁判ではいろんな証人が出てきましたよね。6月4日のX2さんはどんな人ですか?」
被「公私ともにお世話になりました。かなりいい人です」
検「いい加減なことをしたら怖いですか?」
被「はい」
検「証人尋問で対面した時のことを覚えてますか?」
被「はい。『何か言うことはねえのか?』と言われて、『すいません』と言おうとしたのですが、『しゃべるな』と言われました。迷惑かけてるし、怒っているのが見てわかりました」
検「X2さんの証言に出てきた、『お母さんが亡くなった』と言ってお金を受け取ったのは本当ですか?」
被「嘘ではありません」
検「真面目に働いてましたか?」
被「はい」
検「仕事を辞めた理由はなんですか?」
被「福島第一原発に従事していたのですが、防護服は二重で熱中症になってしまい、きつかったので…」
検「すぐ他の仕事に就きましたか?」
被「就かなかったです」
検「空白期間もZ14(パチンコ屋)に行きましたか?」
被「はい」
検「X2さんに会ったのもZ14ですか?」
被「はい」
検「次に働いたのはどこですか?」
被「運送会社です」
検「どれくらい続きましたか?」
被「半年くらいです」
検「なぜ辞めたのですか?」
被「大型免許を取って来いと言われたのですが、大型取る期間に達していなくて…」
検「無免許で、免許を取り直したからですか?」
被「はい」
検「どうして会社に言えなかったのですか?」
被「覚えてません」
検「お家のことについて聞きます。県営住宅ですよね?」
被「○○住宅、○号棟、○○号室。和室2部屋、板の間1間でした」
検「寝室はどこですか?」
被「和室の1つです」
検「あなたはどこで寝ていましたか?」
被「双子が生まれてから自分はリビングで寝ていました」
検「その部屋にテレビはありましたか?」
被「ありました」
検「自転車を子どもに買ってあげましたか?」
被「bの時、誰かからもらいました。後は買ってあげたかったです」
検「(自転車の写真を示し)」
被「元はbのもので、cも乗ります。三輪車は双子のeとfのです」
検「キャラものですか?」
被「ディズニーのカーズです」
検「玄関にカーペットが敷いてありましたか?」
被「覚えてません」
検「例えば動物柄…」
被「覚えてません」
検「下駄箱に飾っているものがありましたか?」
被「子どもたちの写真です。長男cの七五三、5歳の時。写真館みたいなとこへ行って撮りました」
検「真ん中に子どもが写ってる写真がありますね?」
被「七五三のついでに全員一緒に撮りました」
検「どこの写真館ですか?」
被「覚えてません」
検「趣味の釣りに関するものも置いてなかったですか?」
被「生活費のため、釣り道具は全部売ってしまいました」
検「買ってはあった記憶はありますか?」
被「はい」
検「(写真を示し)クーラーボックスがありますね」
被「記憶にないです」
検「ウレタンコートを使いますか?」
被「砂浜とかで色が落ちないように使ってました」
検「釣りに行くたびですか?」
被「はい」
検「最後に行ったのはいつですか?」
被「覚えてません」
検「免許証を偽造するときにウレタンコートを塗ったのは覚えてますか?」
被「覚えてます」
検「あ、覚えてるの?…6月4日の午後、証人出廷したX2さんはどんな方ですか?」
被「aの一番の友達です。東京まで家族で遊びに行ったことがあります」
検「八景島シーパラダイスに行きましたか?」
被「家族で行きました」
検「1回ですか?」
被「はい」
検「証人Aさんの顔を覚えてますか?」
被「覚えてません」
検「Aさんの所に行った記憶はありますか?」
被「はい」
検「Aさんとされる人を見て、Aさんについて覚えてますか?」
被「覚えてません」
検「aさんのお母さん、覚えてますか?」
被「はい」
検「aさんのお父さん、覚えてますか?」
被「はい」
検「aさんの実家は覚えてますか?」
被「そんなに好かれていませんでした」
検「どういう点でですか?」
被「何でもかんでもaには連絡してきますが、私にはないし、a達だけで実家に行くし…」
検「お母さんからなかなか仕事が続かないことを言われたことは?」
被「覚えてないです」
検「aさんの浮気をどういう経緯で疑いましたか?」
被「平成29年9月30日、娘と息子の運動会で、aの携帯を見たら『Aくん』と書いてあって、Aさんって誰だと問い詰めたと思います」
検「LINEを見たことのきっかけの記憶はありますか?」
被「映像としては残っていません。差し入れられた資料を見て…」
検「見て思い出したことはありますか?」
被「特にないです」
検「LINEを見た記憶は?」
被「ないです」
検「Aさんのとこに行った記憶は?」
被「ないです」
検「Aさんからaさんとの関係についてどんなことを言われましたか?」
被「(聞き取れず)」
検「aさんの浮気を疑った記憶は?」
被「うっすらあります」
検「aさんと男性について話した記憶は?」
被「あります」
検「その男性の素性について話した記憶は?」
被「ないです」
検「スナックZ9に行ったことはありますか?」
被「ないです」
検「物理的に、場所としてはどうですか?」
被「あります。迎えに行きました」
検「Z9勤めてることでケンカしましたか?」
被「自分の収入ないから働かせてしまったので、ケンカしたことはないです」
検「aさんが働き始めた時期は覚えてますか?」
被「わからないです」
検「Z9で働く理由は何ですか?」
被「自分の収入がなくなり、働かざるを得なかったです」
検「昼間の仕事もしていましたか?」
被「はい。Z18クリニックの事務です」
検「自分の仕事がないから、aさんが夜も働いてた記憶はありますか?」
被「あります」
検「後付けの理由じゃなくて?」
被「はい」
検「負い目を感じていたんですか?」
被「はい」
検「Aさんという人がいたのは覚えてますか?」
被「なんとなく分かります」
検「生の記憶として、どういうことまでは覚えてますか?」
被「aと交際するとかしないとかとの認識です」
検「AさんがZ9(スナック)のお客さんとの記憶はありますか?」
被「あります」
検「Aさんにaさんがこんなことしてもらったとかエピソードはありますか?」
被「ガスコンロを買ってもらいました」
検「それがAさんかどうかは覚えてますか?」
被「はい。aから聞いた記憶があります」
検「離婚を言い出された記憶はありますか?」
被「ありません」
検「aさんとAさんがいい仲との記憶は?」
被「あります」
検「aさんに何らかの理由で離婚を切り出された記憶はどうですか?」
被「あります」
検「時期はいつですか?」
被「平成29年10月1日とか、9月30日くらいです」
検「どうしてピンポイントで覚えてるんですか?根拠は?」
被「その付近で私がAさんと会って話しています」
検「『Aさんに会った記憶はない』とさっき…」
被「いや、あります」
検「離婚を切り出された記憶は?」
被「ちょっと分からないです」
検「ボイスレコーダーは覚えてますか?」
被「はい」
検「記憶していることはありますか?」
被「X2さんに相談した時、『相手の男と会うべき。レコーダーに録るように』と言われたからです」
検「X2さんに相談した記憶はあるんですね?」
被「はい」
検「アドバイスをX2さんに受けた記憶は?」
被「あります」
検「レコーダーはどこで買いましたか?」
被「Z15(量販店)日立店。4〜5千円で」
検「10月2日、Aさんの所に行ったことは覚えてますか?」
被「覚えてます」
検「どこで話をしましたか?」
被「Aさんの自宅です」
検「どういう風に行くことになった…、撤回します。Aさんの自宅はどうやってわかりましたか?」
被「だいたいのことはaから聞いていたので、探していたところ、…そこから覚えてません」
検「何か目印にしたものはありますか?」
被「Z16ってディーラーの近くだと」
検「誰からの情報ですか?」
被「aからです」
検「一回か、何回か偵察したのか」
被「たしか、一回でわかった」
検「すぐ会えたんですか?別機会に会ったのですか?」
被「Aさんろ会う数日前に、妻の車がAさんの所に停まってました」
検「限界ドアを叩いたりとかしたんですか?」
被「私がAさんの所に行った時、妻も来ていて、『何やってんだ!?』と聞いたら、『別にしゃべってるだけ』と言われて、Aさんが出てきました」
検「(メモ帳を示して)覚えてますか?」
被「覚えてません。当時ガラス店勤めてて、トラックのフロントガラスとサイドのガラスの寸法を書いたり…」
検「『10月2日』と書いてるページ、この記載は誰が書きましたか?」
被「ちょっとわからないです」
検「自分で書いた字はありますか?」
被「わかりません」
検「寸法はあなたが書いたのですか?」
被「はい」
検「なんのためですか?」
被「注文されて、サイズを測るためです」
検「仕事のメモですか?」
被「はい」
検「他の人に貸しましたか?」
被「してません」
検「あなたの文字の可能性高いけど、覚えてませんか?」
被「はい」
検「『朝方、相手宅にいるので…』と書いた記憶は?」
被「ないです」
検「6月8日の期日で、離婚届に「小松博文」(筆者注:被告人名)と自分で書いたのは覚えてますか?
被「覚えてません」
検「『書いて』と頼まれたこととかは?」
被「覚えてません」
検「離婚切り出された後、aさんのお母さんと話した記憶は?」
被「ないです」
検「X3さんと直接話したり、携帯でやり取りした記憶は?」
被「LINEで少しやり取りした記憶はあります」
検「内容を覚えてますか?」
被「内容まではわかりません」
検「子どもたち全員にプレゼントを買った記憶はありますか?」
被「あります」
検「どんなものでしたか?」
被「bは好きなブランドの服。長男はゲームソフト。次男、三男、四男は消防車か何かのおもちゃです」
検「ゲームのタイトルは覚えてますか?」
被「ポケットモンスターです」
検「なんのゲーム機のソフトですか?」
被「DSです」
検「Switchじゃなくて?」
被「はい」
検「DSって今あまりないですよね?まだありました?」
被「はい」
検「なんであげることになったのですか?」
被「覚えてません」
検「平成29年10月5日…離婚を切り出される前ですか?後ですか?」
被「覚えてません」
検「あなたは普段料理をしてましたか?」
被「はい」
検「包丁は使ってましたか?」
被「はい」
検「(ケース入り柳刃包丁を示し)これを使ったことはありますか?」
被「ないです」
検「焼け焦げているのがなぜかわかりますか?」
被「わかりません」
検「新品だったら切れるものですか?」
被「はい」
検「aさん、bさん、cくん、dくん、eくん、fくんを刺したのは覚えてますか?」
被「覚えてません」
検「あなたの車の車種はなんですか?」
被「タントか何かです」
検「軽ですか?」
被「はい」
検「aさんのは?」
被「エルグランドです」
検「タントの給油はどうしてました?」
被「セルフで入れてました」
検「ガソリンを単体で買ったことはありますか?」
被「バイクが入ったので、単体で買いました」
検「どこで買ってましたか?」
被「近くにある…名前は出てきません」
検「何に入れてましたか?」
被「携行缶です」
検「(携行缶を示し)これは記憶にありますか?Z16石油と書かれていますが」
被「ないです」
検「これがバイクに使う時の缶という記憶は?」
被「ないです。形は似ていると思います」
検「包丁をZ17(ホームセンター)に買いに行った記憶はありますか?」
被「ないです」
検「買った事実自体の記憶はありませんか?」
被「ないです」
検「平成29年10月4日、Z17(ホームセンター)Z18町店に行ったことはありますか?」
被「行ったことはあります」
検「プレゼントを10月5日に買ったことは覚えているが、10月4日は覚えていないのですか?」
被「はい」
検「10月4日にガソリンを給油したのは覚えてますか?」
被「覚えてません」
検「ガソリンを自宅に撒いて火をつけたのは覚えてますか?」
被「覚えてません」
検「自殺を図ろうとしたことは?」
被「覚えてません」
検「育ちとか考えを聞いているけど、自分自身の性格をどう分析していますか?」
被「嫌なことがあると、立ち向かわずに逃げると思います」
検「性格分析してみて、自殺って考えられますか?」
被「(考えたことは)ありません」
検「改めて、自分が理解している性格では、自殺しようと思うタイプではないということですか?」
被「自殺は考えられません」
検「ビビっちゃうんですか?」
被「はい」
 ここで一旦休廷。

 検察の質問者が交代。
検察官ハタノ「5人の子どもへのプレゼントはどこで買いましたか?」
被「覚えてません」
検「全部でいくらでしたか?」
被「覚えてません」
検「結構なお金になると思うんですけど、あまりお金がなかったのでは?」
被「たぶん…」
検「どこから出しましたか?」
被「自分の小遣いです。aからはもらってません。現金で持っていました。下ろしたりはしていません」
検「なんのお金ですか?」
被「覚えてません」
検「調書によると、『給料を下ろした』となっていますが?」
被「覚えてません」
検「この日、他のことにお金を使いましたか?」
被「覚えてません」
検「高萩の漫画喫茶を契約していませんか?」
被「覚えてます。4万くらいかかりました」
検「調書では『4万3千円』となってますが?」
被「はい」
検「漫喫の店長と初めて会ったんですよね?」
被「はい」
検「いきなり行って4万円を払ったんですか?」
被「はい」
検「どういう事情で漫喫を1か月借りたんですか?」
被「X2さんの先輩が漫喫の店長でした」
検「会うのは初めてでしたか?」
被「はい」
検「漫喫の店長と話しましたか?」
被「『何でなの?』って理由を…」
検「1か月借りる理由ですか?」
被「覚えてません」
検「漫喫とプレゼント、どっちが先でしたか?」
被「覚えてません」
検「この日、パチンコやスロットに行った記憶はありますか?」
被「高萩の店長と会うまで時間があったので、高萩市内のパチンコに寄った記憶があります」
検「なんていう台でたたきましたか?」
被「覚えてません」
検「いくらくらい使いましたか?」
被「3〜4千円と思います」
検「儲けはありましたか?」
被「時間になって途中でやめ、少し換金しました」
検「なんでプレゼントを買ったのですか?」
被「理由は覚えてません」

 裁判長から質問が入る。
長「プレゼントと漫喫、同じ日という記憶ですか?」
被「わかりません」
長「プレゼントはあなたの記憶でいつ頃ですか?」
被「10月4か5日頃です」
長「記憶としてあるんですか?後から調書を見て思い出したとかでなく…」
被「はい」
長「漫喫の契約はいつですか?記憶では…」
被「10月1か2日頃です」
長「あなたの記憶では漫喫のほうが先ということですか?
被「はい」
長「プレゼントをあげたのは買った日ですか?」
被「はい。自宅であげました」

 再び検察官から。
検「bさんにあげた服のブランドは覚えてますか?」
被「覚えてません」
検「なんと言って渡したのですか?」
被「覚えてません」
検「bさんの反応はどうでしたか?」
被「覚えてません」
検「cさんへのゲームはなんと言って渡しましたか?」
被「覚えてません」
検「cさんの反応はどうでしたか?」
被「覚えてません」
検「同じタイミングで順に渡したのですか?」
被「はい」
検「だいたい何時頃ですか?」
被「覚えてません」
検「その日、自宅で晩御飯を食べましたか?」
被「覚えてません」
検「自宅以外で食べることはありましたか?」
被「ありました」
検「食べたことは覚えていますか?」
被「覚えてません」
検「免許証をドライバーで削ったことは?」
被「覚えてません」
検「ドライバーで削ったことは覚えてないのに、ウレタンコートを塗ったのは覚えてるんですか?」
被「はい」
検「なんでウレタンコートを塗ったのかは覚えてますか?」
被「覚えてません」

 質問する検察官が交代。
検(マツオ)「何か思い出すきっかけはありましたか?」
被「『免許証』と『ウレタンコート』と聞いたので…」
検「不法侵入の時に出てきてないですよね?」
被「はい」
検「cくんにポケットモンスターをあげた。ゲーム機はあったんですか?」
被「はい」
検「cくんがゲームをやってた時間はいつですか?」
被「保育園から帰ってきたらやってました」
検「cくん、7歳だから小学生ですよね?」
被「帰ってきたらゲームばかりでした。夜もやってました。朝も早く起きてやってました」
検「bさんとcくんの学校はどこですか?」
被「Z17小学校です」
検「運動会を見に行ってますよね?Z17小の…」
被「はい」
検「子どものうちの誰ですか?」
被「bとcです」
検「種目や様子は覚えてますか?」
被「覚えてません」
検「玉入れとかかけっことか…」
被「覚えてません」
検「ゲーム機やビデオカメラを売った記憶はありますか?」
被「あります。生活費のために…」
検「aさんに断ってですか?」
被「いえ」
検「(裁判員法)50条鑑定の6月10日の証人が、あなたの記憶が戻らない、『他人事感』があると言っていたのを覚えてますか?」
被「覚えてます。どこかで『自分事ではない』、信じられないことばかり…」
検「事件に向き合いたい気持ちはありますか?」
被「もちろんあります」
検「私が6月10日に読み上げた犯行の調書を聞いていて、あなたはどう思いました?」
被「ピンと来ません」
検「aさんやお子さんは大切だと記憶していますか?」
被「はい」
検「調書の内容は、aさんや子どもたちを殺したとなっている。それを聞いて何も思わないんですか?」
被「はい」
検「神奈川に身柄を移されたのは覚えてますか?」
被「はい」
検「50条鑑定の面接で、どういう刑を予測しているか話したのは覚えてますか?」
被「覚えてます」
検「死刑云々という話…」
被「はい。自分は死刑になると思うと話しました」
検「控訴するかについてはどうですか?」
被「本当に控訴審までやるのか、取り下げて受け入れた方がいいか悩んでます」
検「なんで悩んでるんですか?」
被「なんでですかね…」
検「うまく思い出せないですか?」
被「はい」
検「『死刑になっても、控訴して憎むべき存在がいたほうが、遺族にとっていい』と話した記憶はありますか?」
被「はい。死刑囚とか死刑の本を見て、受け入れてサッと逝っちゃうより、争ってご遺族に憎むべき存在がいたほうがいい(と鑑定人に話した)」
検「遺族の調書は見ましたか?」
被「見てません」
検「ご遺族が『生き続けてほしい』と思っていると思いますか?」
被「『死刑になってほしい』と思ってると思います」
検「ご遺族の処罰感情とか…その考えは今でも変わらないですか?」
被「考えてる最中です」
検「取り調べ警察官を覚えていますか?」
被「はい。Y1さんです」
検「6月9日、Y1さんの証人尋問は覚えていますか?」
被「はい」
検「Y1さんから手紙が来たのは覚えてますか?」
被「覚えてます」
検「どんな気持ちでY1さんに手紙を書いたのですか?」
被「よく覚えてないです」
 検察官からの質問は終了。

 再度弁護人から。
志村和俊弁護人(副主任・国選)「50条鑑定人に、事件のこととかの記憶について、今覚えていることか、資料を見て話しているのか…。自分の中で覚えているのを話すのと、読んだもので得た知識で話すのは、記憶の引き出し方が違うと思うのですが…
被「区別がつきません」
弁「小さい頃の記憶は、画像としてありますか?」
被「はい」
弁「他に資料とかを読んで、ということではない?」
被「はい」
弁「時期的にどの辺りから、自分の映像や感情で話ができますか?」
被「はっきり言えるのは、病室で意識を取り戻してからです」
弁「肺高血圧になって、意識回復後ですか?」
被「以後なら全部わかります」
弁「その前はどうですか?」
被「一番最後まで覚えているのは、Aさんと話をしたことです」
弁「平成26年6月に就職したのは覚えてますか?」
被「何となく…資料で見たから…」
弁「幼少の頃や、小学生・中学生の記憶はありますか?」
被「はっきり覚えてます」
弁「免許証にウレタンコートを塗ったのは、言葉を聞いて頭の中に映像がよみがえったからですか?」
被「はい」
弁「それまでは映像は浮かんでなかった?」
被「はい」
弁「公判で事件の証言や画像を見聞きして、思い出せたのは…」
被「(聞き取れず)」
 休廷を挟み、再度検察官からの質問。

検(ハタノ)「漫喫の契約がいつだったかとの質問について、『10月1か2日頃』と発言しましたよね。調書では9月30日か10月1日にオーナーと話して漫喫の部屋を使わせてもらうことになったとなっている。お金を払ったのは、この日か別の日かわかりませんか?」
被「はい」
検「Y1刑事にはきちんと話できましたか?」
被「はい」
検「今の時点で、包丁やロープを買った記憶はないのですか?」
被「はい」
検「Y1さんの取り調べて、このことについて話した記憶はありますか?」
被「ないです」
検「調書では『みんな殺して自分も死ぬか、とお店に行った』と話してたのを覚えていますか?」
被「覚えてません」
検「『ホームセンターがあるのを思い出して、人を殺せる道具を買った』と話したのは?」
被「覚えてません」
 検察の質問終わり。

 裁判員、裁判官からの質問に移る。
 (筆者中:裁判員は公判中A〜Fとの呼称で呼ばれていたが、仮名処理の都合上1〜5と置き換えることにする)
員6(女性)「雇い主のX2さんから前借りをしていた記憶はありますか?」
被「記憶はあります」
員6「何回くらいですか?」
被「10回くらいです」
員6「一番大きな額は?」
被「10万円くらいです」
員6「なんのためですか?」
被「家賃が溜まっちゃったので借りました」
員6「被告人がX2さんにお願いしたのですか?」
被「はい」
員6「aさんからのお願いはありましたか?」
被「X2さんは本人じゃないと受け付けませんでした。aからX2さんに連絡したら、『それは筋が違う』と言われて、私から頼みました」
員6「児童手当はaさんが一括管理していましたよね。いくら入っているかわからなかったんですか?」
被「はい」
員6「被告人が下したことはありましたか?」
被「ありません」
員6「物を売ったことは被告人もありましたか?」
被「はい」
員6「何を売りましたか?」
被「子どものゲーム機、ビデオカメラ、自分の釣り道具など趣味の道具です」
員6「aさんが売ったものは?」
被「ビデオカメラなど、こまごまと持っていきました」
員6「被告人が売ったものにもビデオカメラがありましたが?」
被「ビデオカメラは買い直しました」
員6「被告人がaさんに暴力を振るったことはありましたか?」
被「暴力と言われれば暴力ですね。噛みつかれて痛くて、頭を押さえました。顔面を引っぱたいたりはありません」
員6「駐車場で引きずり回した記憶は?」
被「ないです」
員6「お子さんを突き飛ばしたりは?」
被「一切手を挙げたことはないです」
員6「お母さんが亡くなり、X2さんが香典を渡して…」
被「嘘じゃない。というのは、実際母は亡くなっています」
員6「aさんが言ってたお母さんの連絡というのはなんですか?」
被「わかりません」
員6「最後に家族とご飯を食べたのはいつですか?」
被「10月の最初のほうです」
員6「何を食べましたか?」
被「覚えてません」
員3(男性)「公判中、いろいろな証人の話を聞いて、思い出したことはありますか?」
被「特にないです」
員3「今日、弁護人や検察官からウレタンコートの件とか質問がありましたが、資料や証言で思い出したのですか?」
被「資料を見て、『あ、そうだったのか』と…」
員5(男性)「aさんがAさんと親しいんじゃないかと当時知った時、どういう感情でしたか?」
被「記憶にないです」
員5「(aさんが)Aさんと親しくなったことは?」
被「何となく覚えてます」
員5「aさんにはどういう感情を持ちましたか?」
被「覚えてません」
員4(女性)「被告人は事件について、どう思っていますか?」
被「記憶がないので…自分がしたことなら極刑も覚悟しています」
員4「aさんや子どもへの謝罪が言えるならなんと言いますか?」
被「『a、ごめんね』としか言えません」
員4「どんな判決が出ると思いますか?」
被「もちろん死刑です」
左陪席(金子裁判官)「cさんが朝早くからゲームをしていた記憶はあるんですか?」
被「うっすら…」
左「何時くらいからですか?」
被「早い時で3時頃からです」
左「浮気を疑い出した頃から逮捕後まででいくつかある記憶。病室で意識を取り戻したときからある記憶は?」
被「ないです」
右陪席(高原裁判官)「足の火傷、手から血の記憶はある…。その状態でいた場所の情景は記憶にありますか?」
被「警察署です」
右「なぜ分かるのですか?」
被「周りにお巡りさんがいっぱいいました」
右「怪我の状態の記憶、警察署以外ではありますか?」
被「ないです」
右「ご自宅が燃えている記憶は?」
被「ないです」
右「ご家族が怪我されている記憶は?」
被「ないです」
右「平成29年9月30日頃、aさんから離婚を切り出された時の記憶はどうですか?」
被「(聞き取れず)」
右「その時、Aさんとaさんが仲良さそうと分かったのですか?」
被「はい」
右「その感情は覚えていますか?」
被「思い出せません。今から考えたら『ああ、そうだったのか』と…。(怒りとかは)出てきません」
右「平成30年11月、心不全が回復、拘束、裁判…。毎日どういうことを考えていますか?」
被「部屋に置いてある家族の写真に朝晩手を合わせています。あとは本を読んだり。どこかでまだ亡くなっていることが信じられないです。どこで何をしてるのかな、という感じ」
結城裁判長「事件絡みで、目覚めて以降、覚えている最後の記憶はAさんと話したことですね?」
被「はい」
長「Aさんと話したことは何回ありましたか?」
被「1回だけです」
長「Aさんの所に行ったらaさんがいた記憶はありますか?」
被「あります」
長「Aさんと話した内容は?」
被「反社的なことを言われ、『どっかの組織の人なんですか?』と言われました」
長「Aさんと話したのは10月のいつ頃と認識していますか?」
被「初め頃です」
長「9月30日にaさんから離婚話が出た。それと別にaさんとAさんの交際を疑った。あなたの記憶では最後に皆で食事をしたのは、9月30日の後と記憶しているんですか?」
被「はい」
長「自分が家を出ることになった記憶はありますか?」
被「なんとなく…」
長「漫喫の契約をしていますが、なんで借りることになったかは覚えてますか?」
被「記憶にないです」
長「家を出ることになったからでは?」
被「それは覚えています」
長「aさんの言葉で、仕事に就いて『次最後だからね』と言われた記憶は?」
被「なんとなく…」
長「aさんに『今後も子どもと会ってやってね』と言われた記憶は?」
被「あります」
長「いつ頃ですか?」
被「覚えてません」
長「どういう話の流れでしたか?」
被「覚えてません」
長「aさんと離婚して家を出ることが決まった中でですか?」
被「そうかもしれません」
長「そこは繋がっていないのですか?」
被「はい」
長「当時(10月上旬)の気持ちとして、Aさんにaさんや子どもたちを取られると思った記憶は?」
被「ないです」
長「事件について、aさんや子どもたちをAさんに取られると思ったのも動機の1つですか?」
被「(聞き取れず)」
長「言われればそうかも知れないけど、記憶にない?」
被「はい」
長「自首した記憶はないですか?」
被「ないです」
長「取り調べの記憶は?」
被「あります」
長「相手がY1さんだった?」
被「はい」
長「家族の写真に手を合わせているが、まだ信じきれない。なぜ手を合わせるんですか?」
被「何となくと言ったら変ですが、手を合わせたくなる気持ちです」
 被害者参加人からの質問はなく、被告人質問は終了した。

 続いて、検察官から証拠調べ請求があった取り調べ時の録画DVDの採否を決定するため、一旦休廷に。
 再開後、裁判長は必要性なしとして却下した。
 検察官は「被告人が記憶を失う前の理路整然とした供述で、調べる必要性ありとの意義が出されたが、却下され、証拠調べは終了した。

 DVDの証拠調べのために指定されていた翌日(6月16日)の期日は取消。次回は6月17日、論告、弁論、被害者参加人の意見陳述、被告人の最終陳述を行うことを告げて閉廷した。

報告者 けいさん


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