裁判所・部 千葉地方裁判所松戸支部・刑事合議係
事件番号
事件名 殺人、現住建造物放火等
被告名
担当判事 小池洋吉(裁判長)伊藤正高(右陪席)久禮博一(左陪席){木村烈(代読)}
日付 2004.9.27 内容 判決

 判決は無期懲役(未決拘留470日算入)だった。
 Aは3度の離婚歴があるが、ホステスの女性と肉体関係を結ぶなどして親交を深めていった。だが、ホステスが相客の男性と親しくしていると激昂し、ホステスの頭をセカンドバックの金具が外れるほど強く殴打すると同時に、その相客もグラス瓶で殴り、それが割れてもなお執拗に殴り続け、全治3週間の裂傷を負わせた。
 Aには日頃から粗暴な言動が目立ったものの、この傷害事件を機にAとホステスは交友関係を解消するに至る。
 だが、Aは未練と嫉妬がやがて憎悪に変わり、酒に酔ったAは事件当日の朝、ホステスの家に出向きホステスが不在と知るや、家にあったファンヒーターの灯油を1階の障子に撒いて紙を捻り、ライターでそれに着火し障子に火を付けた。2階にはホステスの家族3人が寝ていたが、火が燃え広がると母親は寝室から同じ階の違う場所に逃げ込むも息絶え、娘は『助けて!助けて!』と絶叫しながら孫とともに焼死した。
 さらに非道な行為は続き、ホステスが家に駆け付けると、その場にいたAは怒声を浴びせて殴りかかった。
 なお、この家族の他に相客らしき同居人が一緒に暮らしていたが、その朝は出かけていて難を逃れた。
 Aは初公判での認否において『家族がどうなろうと全部T(ホステスのこと)のせいだから知ったこっちゃない』と未必的な殺意を認めたが、第4回公判で『(火を付けた瞬間は)頭が真っ白になって覚えてない』と殺意を覆した。
 裁判長はAとホステスの家族は家族ぐるみの付き合いをしていたため、Aも当然行動パターンを熟知していたはずだと積極的な殺意はないものの、未必的な殺意があったことを認定した。
 また、家族とAは食事や旅行も一緒に行っていた仲であったので、その残虐さに酌むべきものはないとした。
 また、Aは少年時代から非行で更正施設に入所したり、成人してからも窃盗で度々刑務所に入り、強姦致傷で懲役1年6月、ついには勤務先の部下を暴行し死なせ傷害致死罪で懲役4年を言い渡された。強姦致傷と傷害致死は酒に酔って敢行されたらしく今回の事件と類似性が認められるとした。
 当然、ホステスや娘の婚約者の峻烈な処罰感情、慰謝の措置が講じられていないこと、前科が多々あるということなどを考慮すると極刑もあり得るとした。だが、殺意は積極的なものではなく未必的なものに留まること、被告は一時期建設会社で真面目に稼動し犯罪に奔ることなくリーダーシップを発揮し難関資格を取ったり部長職まで就いたことなどを挙げて、極刑ではなく無期懲役で終生償いの日々を送らせるのが相当と結論付けた。

報告者 insectさん


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