裁判所・部 神戸地方裁判所
事件番号 (裁判員事件)
事件名 強盗強姦等
被告名
担当判事 細井正弘(裁判長)
日付 2013.2.28 内容 判決

−主文.要諦−

懲役23年・未決230日.控除

−理由の要旨−
第1:被告人らの陳述趣意
■(1)事実誤認ないし法令誤りの主張

イ)bさん事件
@.被告人「bさんを被害者とする事件では、真実、強姦はしていない。せいぜい、強盗に則して強制わいせつをしたに過ぎない。
A.弁護人「これを案じるに、bさん事件では、強盗強姦(刑法241条違反)とする起訴状訴因には、@事実誤認ないしA法令適用の過ちあり、ということになる」
ロ)aさん事件については、真実、強姦目的がなかったから、本件起訴状には、事実誤認と法令適用の過ちが存在する。
ハ)
@被告人「私の自供書面、上申書は、取調官に誘導されるままに、@強姦目的、A自首では無いことを、さりげなく認めさせられてしまった。自分自身、迂闊だった。」
A弁護人「これら書面は、刑事訴訟法322条の自供書面(自筆書面)の要件を満たさないから、証拠能力が無い」(にもかかわらず、これらを証拠採用された裁判員合議体には、訴訟法違反が有る)

ニ)「カッターナイフ以外の刃物は、神に誓って、一切使っていない。被害者の方々は興奮して勘違いをされているのだろう」

■(2)量刑不当の主張
「検事求刑の懲役30年は、あまりにも重過ぎる。せいぜい懲役18年程度に止めるべきだ」
第2.裁判員法廷としての判断

1完全有罪の部分
・bさんは被告人と真っ向対立した法廷証言を神戸一〇一号大法廷でしている(本件第2回公判・H25.2.21午前中)。
・bさんの証言は、@内容自体には不自然は無く、A家具の置き場所の位置関係など、後日行われた実況見分の結果とも合致し、Bいわゆる「人間工学」(←痴漢冤罪疑惑では常套的にチェックされる、身体運動物理学検査)の見地からも不条理が無い
・ところが被告人は、単に「我、記憶に無し。よって、我が記憶は真実ならむ」という事をこと細かにボソボソ喋るだけで、説得力に欠ける(とりわけ、「明らかに、その場にいた」乳幼児について「知らない」と、とぼけるなど、責任回避の事実誇張が何度か見られた)
・被告人の法廷発言は、現場見取り図(たとえば甲82の5番図面)とも矛盾が多々、見られる
 そのことを踏まえると、@自首の成立は否定され(←被告人の自首ニ関スル法廷発言ハ信用デキナイ)、A自供書面、自筆書面についての「 任意性 」それ自体は充分であり、B果物ナイフ様の刃物など「複数の」刃物を使用したことも明らかで、@、A、Bについては、一切、被告人の法廷発言は信用できない。

2一部無罪箇所
 ところで、aさん法廷証言を踏まえても、証拠上、aさんは上半身中心の猥褻被害を受けられており、下半身への攻撃はされていないところ、【aさん事件の】強姦目的については、犯罪の証明が無く、実質、一部無罪とするほかない。

3量刑事情
(0)認定された事実を最大前提にすると
(一)妻子を持つ身でありながら、金欲と性欲の赴くままに、乳幼児のいる前でも、「子供、どうなつてもいいのか」と押し殺した声で脅迫しながら連続的に敢行したものである。
(二)性犯罪についての、裁判員法廷での厳しい量刑傾向、かつ被害者らの厳しい処罰感情
(三)被告人は、「カッターナイフの件」も含めて、不合理な弁解を交えていて、真剣な反省には至っていない。
※ただし、一部無罪であることを踏まえると、やはり検事求刑をそのまま物理的に選択する訳にはいかない。(弁護人論旨は、この限度で理由が有る。)

事件概要 判示第1:神戸市Z1マンションに強引に侵入して当時28歳の人妻に、子どもの目の前で 強制わいせつを実行した上、軽傷を負わせ、現金を要求、強奪した
判示第2、4:窃盗目的で 2回にわたり、別々の日に、同区Z2マンションの25歳女性宅に侵入し、金品を窃取した 
判示第3:同区cさん宅に無施錠玄関から、侵入して、人妻(32)に、「子どもはどうなっても」と脅迫した上で強姦に着手(刑法43条)したが、隣人男性が駆けつけたため、そのまま逃走した。
判示第5:西区のbさん宅に侵入し、当時19歳の女性被害者にカッターナイフを突きつけ、金品を強奪し、かつ強姦をした。
判示第6:神戸市内某所dさん宅に侵入し金品を強奪したうえで 果物ナイフようの凶器を示して脅迫したが被害者が抵抗したので、性犯罪は失敗に終わった。(指に対する全治10日の切り傷など)。
判示第7:神戸市内某所bさん宅に侵入し、ガムテープで緊縛のうえ、bさんを強姦し、金品を強奪した。
判示第8:神戸市内某所eさん宅に無施錠玄関から侵入し、打撲傷を与えた上、金品を強奪し、そんなに暴れたら殺すぞと脅迫したが、性犯罪は失敗した。
報告者 AFUSAKAさん


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