裁判所・部 神戸地方裁判所・第二刑事部
事件番号 平成18年(わ)第455号等
事件名 あっせん収賄
被告名 村岡功
担当判事 佐野哲生(裁判長)岩崎邦生(右陪席)市原志都(左陪席)
その他 書記官:岡村隆吾
検察官:宮本健志、小野寺、他
弁護人:ナガサワ
日付 2007.2.20 内容 最終弁論

 この日も、近畿地方は寒い一日だったが、神戸101大法廷には、司法記者は一般傍聴者も含めて、約50名の人が在廷していた。
 佐野裁判長の一声で、ナガサワ弁護人が、最終弁論を始めた。

−弁護人による最終弁論−
 本件各公訴事実”そのもの”については、弁護人は争いません。しかしながら、犯罪事実そのものに関わる情状(犯情)部分については、事実関係を「正して」おくべき箇所がございます。どうか、この点は、「疑わしきは、被告人の利益に」の原則に従い、弁護人の、本意見を踏まえた上で、裁判所におかれては、慎重な事実認定と法令適用を、それぞれ、お願い致したく、以下、詳細に、時間の許す範囲で、最終弁論をさせていただきます。
 第一としては、共犯者大本による請託行為を巡る,犯情部分についてであります。これについて、検察官は、論告や冒頭陳述において、ダイエー環境(株)には、神戸市から設置許可が出る筈であったところ、被告人の横槍で……等と指摘されます。しかしながら、そもそも、当時の、神戸市環境局の定めた産廃設置許可基準によれば、隣接企業のダイハツによる同意は不要、ということになる筈なのであります。しかも、ダイエー環境(株)側が申請した書類によれば、代表権がなき者による記載も有ったということであり、これには、北尾夏樹による供述調書による裏づけ(そもそも私自身も、市環境局から、住民同意については、うるさく言われていた、旨の内容。)もあり、大本もこれと同趣旨の公判供述をするのであります。
 第二として、主に、検察官による冒頭陳述への反論であります。まず、括弧1として、自民党市議、平野章三による依頼があったか、否か、の点についてです。
 被告人の捜査供述と、平野の参考人調書の内容は、相互に一致していますが、これは、(1)被告人自身の体調不良によるところと、(2)平野逮捕を避けたいあまり、捜査検事に迎合したことによるものであります。さらに、平野は、当公判に、正当な理由なく、出廷拒否しているのでありまして、かような者の参考人調書(これは、検事調書です)を、たやすく信用するべきではない、と弁護人は考えます。
 括弧2としては、神戸市環境局長らの捜査供述(参考人調べの,検事調書)についてです。弁護人としては、これら調書の採否じたいには同意しました。
 しかしながら、これらの調書内容の信用性については、
(1)被告人の公判供述との対比
(2)被告人逮捕後の、市議会における市当局の説明
(3)矢田市長の市議会答弁との矛盾などが明らかでして、これら調書の信用性は低い、というべきであります。
 第三に、法律技術上の問題として、賄賂の追徴金額についてであります。成る程、わが国の刑法(明治40年制定、法律45号)によれば、賄賂を受け取った「収賄」犯人には、必ず、追徴をしなくてはならない(刑法197条の5、参照)ワケであります。
 今回の検事論告書面では、いわゆる有形利益のみならず、無形利益も含めて追徴すべき、との見解に立ち、法的考察がされております。
ただ、いわゆる無形利益につきましては、判例上、刑法19条に定める「任意的追徴」の対象に過ぎない、としています。
 本件の場合、@被告人の公判供述、Aこれを裏付ける状況証拠を下に検討をすれば、弁護士費用の名目で大本から集められた弐千万円は、有形利益ではなく、あくまでも、無形利益と解するべきであります。従って、本件における弐千万円は、あくまでも、刑法19条にいうところの、任意的追徴の対象として取り扱うべきものでありまして、刑法197条の5にいうところの、「必要的追徴」の対象からは外すべき、であります。
 第四として、分離された村岡龍男との関係についてであります。
 いわゆる弐千万という金額を知っていたのは龍男であり、本件被告人ではありませんし、龍男が、この弐千万の収受につき、積極的に関与していたことは、関係証拠から明白であります。つまり、被告人は、弐千万の収受には消極的でありました。
 第五として、いわゆる環境リサイクルセンター案件についてですが、状況証拠から、被告人による働きかけが消極的であったことは明らかでありましょう。
 第六は、一般情状になりますが
(1)被告人が事件について、当公判で反省の弁を述べていること
(2)すでに神戸市議を辞職していること
(3)社会的制裁を受けていること
(4)再犯可能性がないこと
(5)高齢であり、もうすぐ70歳に達しようとしていること
(6)四千八十九名もの減刑嘆願書が、証拠採用済であること
(7)これまで、自民党神戸市議団長として、さまざまな政治活動に邁進し、地域社会のために貢献してきたこと
(8)被告人の健康状態
(9)親族が証人出廷し、被告人の監督を約していること、これらの事情をも併せて検討して頂きたい。
 第七として結論ですが、是非、執行猶予の付された寛大な刑を切望する次第です。

裁判長「では、前に立ってください。これで審理を終わりますが、その前に、何か言いたいことがあれば、言って下さい」

−被告人による、最終意見陳述−
 わたしは今回の事件で、神戸市民の皆様にご迷惑をお掛けしました。そのことをまず、深くお詫び申し上げます。さらに、議会人として、他の先生方へも、わたしの軽率な行為によって市民からの議会の信頼が失われたとすれば、そのことを深く、この場でお詫びしなくてはなりません。そして、市当局の、多くのマジメな職員の皆様に、悪影響を与えてしまったことを、最後に深くお詫び致します。申し訳ございませんでした。

 裁判長は、来る三月二十七日火曜日を判決期日として指定し、閉廷を告げた。

事件概要  村岡被告は、知人の廃棄物処理会社の社長から請託を受けて、同社長らに便宜を与えるために、神戸市に働きかけをし、その見返りとして、その社長らから、現金2800万円を受け取った、等とされる。
報告者 AFUSAKAさん


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