裁判所・部 神戸地方裁判所・第一刑事部
事件番号 平成18年(わ)第1184号
事件名 未成年者誘拐、保護責任者遺棄
被告名
担当判事 的場純男(裁判長)西野吾一(右陪席)松岡浩美(左陪席)
その他 書記官:黒瀬靖弘
検察官:緒方、他
日付 2006.12.27 内容 証拠調べ

 被告人は、神戸地裁の101号大法廷に、兵庫県警の制服警察官に護送され、静かに入廷してきた。そして、そのまま、神戸地裁の刑事法廷での慣習通り、2名の弁護人のすぐ前の椅子に着席した。
 被告人が入廷してすぐ、観音開きの扉から、3人の担当裁判官が入廷し、時間通り、的場判事が開廷を宣告した。

裁判長「では、前回に引き続いて審理しますが、弁護人は、前回に「留保」していた書証につき、意見を述べられますか?」
弁護人「はい。証拠意見書に記載した通りです」
裁判長「では、それをこの場で仰って頂けますでしょうか?」
弁護人「検甲2号、6号、7号については、同意します。ただ、8号と5号についても、立証趣旨を、『9月12日時点での、阪神西宮駅前エビスタ・ビルの状況』『被告人宅の状況』に限定なさるならば同意します」
裁判長「検察官は、いかがでしょうか?」
検察官「いずれも、弁護人が限定されるように、立証趣旨を変更致します」
弁護人「では、これらも、その限度で、同意します」
裁判長「では、とりわけ検証調書については、「被告人方の状況等」に立証趣旨を限定した上で、当裁判所も証拠採用ということにしますし、同意のあった分は、すべて採用しますので、要旨を告知して下さい」
検察官「甲2号は、被害者の身上を証明する書類、甲5は事件現場のエビスタ西宮ビルの所在地特定に係る,捜査報告書、甲6も同様です。甲7は、事件現場の和上公園の位置等に関する捜査報告書、甲8は、被告人自宅における検証調書です」
 ここで、左陪席の松岡判事補と右陪席の西野判事が、的場裁判長と打ち合わせをした。
裁判長「ちょっと待って下さい。検甲30号についてですが、弁護側、ご意見は、いかがですか?」
弁護人「30号については、一部同意となります。即ち、エビスタ一帯の椅子の中には、イスと机が一体化されたものが有るのですが、事件時のイスの状態が、実況見分の時点では変化している可能性がある、ということです。従って、その辺りを区別するべく、一部同意という形になります」
裁判長「ああ、そうですか。ところで検察官、甲30について、裁判所には請求書を出されているのでしょうか?」
検察官「今、この場で提出させていただきます」
裁判長「では、一部同意分については、証拠採用して取調べをしますので、これも要旨を告げてください」
検察官「エビスタ西宮でのテーブルとイスについて特定した捜査書類になります」
裁判長「では、証拠調べが終わった分については、裁判所に提出していただきましょうか」
 検事→書記官を通じて、3裁判官の前に、同意書面が提出された。
裁判長「留保されているその他の書証について、弁護側では、証拠開示を受けられた後で、意見を述べられるということになりましょうか?」
弁護人「はい、さようです」
裁判長「ところで、前回では、まだ追起訴の可能性があるということですが、その後、どうなっておりますでしょうか?」
検察官「現在も、鋭意、捜査継続中でありますので、未定です」
裁判長「わかりました。それでは、この事件については、公判前整理手続きに……」
 ここで、右陪席の西野判事と左陪席の松岡判事補が、裁判長に囁いた。
裁判長「失礼しました。期日間整理手続きに付すということに致したいですが、双方、ご異議ございませんか?」
検察官「ありません」
弁護人「ありません」
裁判長「それでは、本件は期日間整理手続きに付し、主として、証拠開示をどうするのか、ということを追起訴の有無を含めて検討してゆくことになります。裁判所としては、類型的証拠開示について、当事者双方で検討していただき、争いがあるようであれば裁定をする。このような段取りを考えているところです」
弁護人「ただ、弁護側としてはですね、検察官冒頭陳述と証拠等関係カードとのつながり、これについての説明を検察側に求めたいのです、その次に、類型的証拠開示の問題、とわれわれは考えております」
裁判長「そうですか。わかりました。では、本日は、この後、検察官と弁護人、われわれで打ち合わせをする機会を設けたいと思います」
 裁判長は、ここで、被告人に呼びかけた。
裁判長「被告人、そういうわけで、本日はここまでになります。これから、検察官・弁護人・裁判所で今後の裁判の進行について打ち合わせをした上で、追って、あなたにも次回期日を通知することにしますからね」

 午後1時15分の開廷から、正味20分あまりの公判だったが、事件関係者の方や司法記者クラブ加盟各社の人々の中には、釈然としない表情を浮かべる人もおられた。

事件概要  A被告は平成18年9月5日午後、兵庫県西宮市の阪神西宮駅付近で、当時5歳の女児を誘拐して、自宅に連れ帰る等したという嫌疑で逮捕・起訴されている。
報告者 AFUSAKAさん


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