裁判所・部 福岡高等裁判所・第二刑事部
事件番号 平成17年(う)第422号
事件名 殺人
被告名
担当判事 浜崎裕(裁判長)
その他 弁護人:古賀克重
日付 2005.11.16 内容 判決

 被告人は髪型をスポーツ刈りにした、眉毛の濃い背が高めの男性だった。服装は上下黒のジャージ姿。

 判決主文は本件控訴を棄却する。
 ただし当審における未決拘留日数中120日をその刑に算入する。

 まず裁判長は、犯行当時被告人が心神耗弱もしくは心神喪失の状態だったとする弁護人の事実誤認の主張を、結論として原審が認定・説示するところは是認できるとして退けた。
 母を殴打したときであるが、捜査段階では詳細な供述をしているのに、覚えていない旨の原審公判供述は信用できない。
 続いて量刑不当の主張だが、原審の無期懲役は重過ぎて不当であるというのである。
 だが記録を調査してみると、本件は自分の両親を、自分の心情や体調を理解しておらず「働かない」と言ってくることに怒りを募らせ、所携の鉄棒で2人を滅多打ちにして殺害したものであり、その態様や経緯を考えると残虐だ。
 被告人は度々両親に暴力を振るい、精神病院に通院するなどしていたが、接着剤(シンナーを指すと思われる)の吸入を繰り返していた。両親が「(自分に)電話しなかった」「仕事をしていないと言った」ことを理由に、自分が体調が悪くて、悩んでいることを理解していないと考えて、「これ以上いがみ合っても、しょうがない」として、7kgもの鉄棒で数回殴るという犯行に及んだものであり、身勝手かつ短絡的で酌量の余地はない。
 被害者は長年に渡って、被告人の行動の悩まされながらも立ち直ってくれるよう援助していたのに、その被告人に殺害されてしまったもので無念が察せられる。
 遺族つまり被告人の兄弟も、被告人に極刑を求めるなど処罰感情も極めて厳しい。
 他方被告人は事実を認め申し訳ないと反省していること、「シラフでは両親を殺さなかった」とも供述しており接着剤の影響が軽視できないこと、罰金以外の処罰歴がないこと、当審においてもより一層反省を深めていることなど被告人に有利な事情を斟酌しても、被告人を無期懲役に処した原判決はやむを得ないところである。論旨は理由がない。
 弁護費用は被告人に負担されないこととし、主文の通り判決する。判決を受けた被告人はがっかりした様子で、顔をしかめて退廷していった。

事件概要  A被告は、2002年10月25日、大分県大分市の自宅で両親を鉄棒で殴り、殺害したとされている。
報告者 insectさん


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