裁判所・部 福岡地方裁判所・第三刑事部
事件番号 平成16年(わ)第1464号
事件名 殺人
被告名
担当判事 川口宰護(裁判長)
日付 2007.7.19 内容 判決

 元中洲スナックママの共犯として、殺人罪に問われたB被告の判決日。
 裁判所一階ロビーには、傍聴券を確保する為に雇われた報道関係のアルバイトの若者たちも大勢並んでいた。
 抽選に当り、法廷入口前で携帯電話の預かりと金属探知器によるチェック等を受けた。
 私の後ろで「やっと、この日が来ましたねぇ」との会話に振り返ると、この事件を担当した警察官の姿があった。彼は、主犯の高橋裕子被告の公判で警察官による自白の誘導について審理があった際、証人として数回出廷している。

 午前十時、2分間のビデオ撮影後、B被告が刑務官に連れられ軽く一礼して入って
きた。
 坊主頭に黄緑色のTシャツ、カーキ色のズボン姿でやせ気味の体型をしている。

裁判長「それでは、前に出てください」
 証言台前に立った被告人に裁判長から主文が言い渡された。

―主文―
 被告人を3年6月の刑に処する。未決勾留日数のうち746日をその刑に算入する。

裁判長「今から判決内容を読み上げますから席に座って聞いてください」
 長椅子に腰かけた被告人の前にテーブルと刑務官から筆記用具が渡され、時々メモを取ながらノートに視線を落としたままじっと判決を聞いていた。

 高橋裕子被告の供述が捜査段階・公判途中においても変遷が見られる点に対し、被告人の供述は核心部分において一貫している。
 高橋裕子被告は、自分の罪を軽減しB被告の責任に転嫁しようとしており信用できない。
 a殺害については、高橋裕子被告の単独犯行と認定。
 被告人は、殺害に直接関与していないが血の付いた高橋被告の衣服を処分し証拠隠滅に加担しており、犯行を助長したとして殺人ほう助にあたる。
 くむべき事情として、被告人はこの事件で利益を得ていない。
 正直に供述している事、後悔・真摯な態度が見られる事、これまで前科も無く、勤めていた会社においても真面目であった事を上司が証言している点などが挙げられた。
 被告人は福岡市にある国立大学大学院を卒業後、九州を離れ大手重機メーカーに就職。その後結婚して妻や子ども達と幸せに暮らしていたらしい。大学院生だった23歳の時、アルバイトで高橋被告の子どもの家庭教師をしたことが事件に巻き込まれるきっかけになってしまった。

 この日、判決内容を伝えるテレビのニュースで、護送車の中から空を見つめるB被告の写真が映し出されていたが、その空虚な表情に失ったものの大きさを感じえずにはいられなかった。

※B被告には、二審で無罪判決が下された。

事件概要  B被告は共犯の依頼によって、1994年10月22日、福岡県志免町で共犯の夫を刺殺したとされた。
報告者 福太郎さん


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