裁判所・部 福岡地方裁判所・第一刑事部合議A係
事件番号 平成17年(わ)第468号等
事件名 強盗強姦未遂、強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、強盗強姦
被告名 鈴木泰徳
担当判事 谷敏行(裁判長)小松本卓(右陪席)井草健太(左陪席)
その他 弁護人:吉村拓
日付 2005.11.17 内容 被告人質問

 11月17日午後1時10分から、強盗強姦未遂・強盗殺人・銃砲刀剣類所持等取締法違反・強盗強姦の罪に問われた鈴木泰徳被告の公判(被告人質問)が福岡地裁(谷敏行裁判長)であった。
 公判が始まる前から、傍聴席でcさんの遺族らしき夫妻が目をハンカチで覆っていた。
 入廷してきた鈴木被告は丸刈りにした頭の髪が少し伸びた状態で、ガッチリして太っている。目が報道での廷内スケッチのそれより大きく、太った猫のようなイメージ。丸型の鼻で口は小さいのが印象的。終始伏目がちで険しい顔をしていた。服装は橙色のセーターに、白のストライプの入ったトレーナー。緑のポロシャツの襟がセーターから露出していた。
 検察官は学者みたいな眼鏡をかけた30代くらいの人で、弁護人は年寄りだった。

 冒頭、検察官と弁護人が短いやりとりをして、弁護人は不同意部分の多くを同意部分にすることに応じた。それを受けて、刑訴法に基づき検察官が被告人の供述調書を読み上げる。これは「要旨の告知」で、証拠書類等に対する取調べの方式は朗読と定められていますが(刑訴法305条1項)、そんなことをしていたら日が暮れるので、裁判長の判断で朗読に代えてその要旨を告知させることで足りるとされています(刑訴規則203条の2第1項)。順番は実際とは逆の博多事件→小倉事件→飯塚事件の順で、若干長くなると前置きした。

−博多事件−
 私は平成17年1月18日の午前5時30分ころ、大井北公園でcさんに刺身包丁を示したあと拳で殴り、猥褻行為をしました。その後cさんの顔面を何度も蹴りつけたりしました。
 私は家で妻から一銭も小遣いをもらえず、セックスもさせてもらえませんでした。子供の前でも罵倒されたりするので、家に居辛いから仕事を多く入れるようになりました。
 性欲のはけ口を求めましたが、風俗に行く金がなく、侘しい、情けない生活を送っていました。このことが原因で3人の女性を連続して殺害する事件を起こしました。
 博多事件でも、スケベな気持ちから保冷車にあった刺身包丁を持って、cさんに近づきました。
 次の配送まで時間があったので、車を停めて休もうとしまして他に特別な理由はありません。その時は疲れて集中力がなくなっていたので、ハザードランプを付けたまま保冷車を路上に停めました。
 漫画本を取り出そうとしたとき、小倉で女性を殺害した刺身包丁を偶然見つけました。これは証拠になるので処分しなければならなかったのですが、たまたまアクティから発見し、週刊マガジンを読もうとしたとき黒っぽいスカートを着た若い女性が通りかかるのを見つけました。それが被害者となったcさんでした。
 歩き方や雰囲気から年齢が若く、痩せてて足が細くて綺麗だなあと思いました。その瞬間、性欲が突き出て『この女を襲って、パンティを持ち帰ろう』とスケベ一色となり、ドアのロックもせず、追いかけていきました。
 『これを突きつければ、素直に言うことを聞くだろう』と刺身包丁を持っていくことにしました。次の配送があるので、実際は30分しか時間がなかったのですが、忘れていました。
 当時私は自分でセンズリなどをする侘しい生活を送っていました。自分の給料から、手元に11万円を残していたので、そのお金でファッションヘルスに行きましたが時間内に射精できませんでした。
 エンジンを切ると保冷車の温度調節ができないので、エンジンを切らないまま出ました。私はスケベな気持ち一色となり、その時会社名の入った作業着や運動靴、ジャンパーを着ていました。右手で逆手になった包丁を持ち、ジャンパーの袖に包丁を隠しながら腕ぐみをするようにして、cさんの跡を追いました。
 ガソリンスタンドの角を過ぎたあたりから、それ以上近づくと警戒されるので、一定の距離を保ちながら追いました。私は追いながら「OLではないな。アルバイトをしてる女性かな?この近くに家があるのではないか」と考えていました。
 cさんは私の存在に全く気づかず、後ろを振り向くこともありませんでした。このあたりから人目につかないところに引きずりこんだ上で、おっぱいを触ったり、パンティを脱がして持ち帰りたいと思いました。強姦することまでは考えていなかったと思います。そのためには被害者を脅しあげなければならず、抵抗したら殴ったり蹴ったり暴力を振るうことにしました。
 ところが追いかけるうちにこれ以上は暗く、被害者がこんな遠くまで歩くとは思わなかったです。犯行をやめて戻ろうかと思いましたが、性欲に負けて追いました。前回の小倉の事件は頭をよぎりませんでした。

 ここで当時の取調官と質疑応答が紹介される。
Q.過去に2人も殺しているのに、そのことを考えなかったのか。
A.考えませんでした。
Q.思い出せないのは不自然だし、そうなる危険性があるのではないのか。
A.思いません。
Q.会社名が入ったジャンパーは見えていたのか。
A.見えていたかもしれません。性欲を抑え切れませんでした。
Q.最初から口封じのために被害者の殺害を考えていたのではないのか。
A.考えていません。包丁や素手で脅してもダメなら逃げようと思いました。
Q.前の事件と同じくこのままでは殺害してしまうと思って、引き返そうと思ったのではないか。
A.いいえ。

 被害者はコツコツ大きな足音をしていたので、ハイヒールでも履いているのかなと思いました。
 被害者との距離は50mぐらい離れていましたが、信号を過ぎたあたりから距離を詰めました。距離を離し過ぎると、被害者を引きずり込むのに適当な場所を見つけても、引きずり込めないからです。
 また被害者はハイヒールではなくブーツを履いていることが分かりました。

 ここからまた以前の質疑応答の紹介。
Q.あなたは事件当時1円のお金でも欲しい状態だったのではないか。
A.まだ所持金は何万円か残っていました。
Q.被害者の所持金を奪うことも考えていたのではないか。
A.それは思っていませんでした。
Q.ではなぜ被害者のバッグを取ったのか。
A.自分の指紋が付いたためです。
Q.お金を取らなかった理由はあるのか。
A.まだ手元にお金があるということに尽きると思います。
Q.その残っていたお金は何の使ったのか。
A.パチスロなどに使いました。

 cさんを襲うときは性欲のみで、他にはありません。被害者のバッグを奪うことはそのときは考えませんでした。パンティだけを持ち帰りたかったのです。
 三叉路を曲がったときに公園があり、やるならここしかないと決意しました。
 40〜50m離れていたのですが、小走りで近づき、包丁を順手に持ち替え、左手で被害者の口を塞いで襲いかかり、包丁を突きつけて『頼むけん、騒がんといて』と脅しました。それは午前5時30分ごろではないかと思います。その場所は公園の入り口付近で、丸い石柱がありました。暗闇でしたが、ある程度の明るさはあり、新聞は読めませんが、2〜3m先の顔は判別できる程度でした。ごく普通の口調で、地声のまま脅しました。「騒ぐな、殺すぞ!」というキツイ言葉は被害者が驚いて大声を出すといけないので言うことはなく、優しい声で言いました。包丁を彼女の顔に、彼女からよく見えるように20cmぐらいに近づけました。口を塞いだ状況でも、彼女は状況を理解したのか悲鳴を上げたり、大声を出したりすることはありませんでした。
 公園の奥に連れ込もうとしましたが、彼女は身を捩って私から逃れようとしました。また両足で地面を踏ん張って抵抗していましたが、声を上げることはありませんでした。
 ところが彼女が身を捩りながら回転したとき、私の手が外れました。被害者は言葉にならないような声を上げて、持っていたバッグを振り回して殴ってきました。それは私の左肩あたりに当たり、硬かったので私は結構な痛みを覚えました。彼女は悲鳴を上げていましたが、助けを求める声ではありませんでした。
 私はカッと頭に血が上り、裏拳で彼女の左顔面を殴りつけました。するとガツンと直撃し、彼女はへなへなとその場に座り込んでしまいました。もう抵抗しないだろうと思って近づくと、彼女はブーツのカカト部分で私のスネを思い切り蹴飛ばしてきました。この傷はそのときは痛いぐらいにしか感じなかったのですが、犯行後も痛んで、逮捕されたときにも傷が残っていました。
 私はますます血が上り、仰向けの被害者に馬乗りになって、右手で首を挟んで力いっぱい絞めました。また左手で2回顔面を殴りました。
 口を手で塞がなかったのは、噛み付いてきたら困るからです。右手で首を絞めたのは「抵抗すると絞め殺されるから、言うことを聞く」と被害者に思わせる計算がありました。
 殴った左手は被害者の右頬にモロに当たり、ガツンという感触でした。
 そのときは無我夢中で彼女の顔を見ていないので、彼女が出血していたかや涙を流していたかは見ていません。バッグは地面に落ちていました。
 おっぱいを触りたい、パンティを持ち帰りたいというのはありましたが、強姦までは考えておらず、どこまで猥褻行為をするかというのはあったが、時間がないのでセックスまでは無理だと思いました。被害者の手袋やウォークマンのイヤホンのことは分かりません。
 完全にぐったりした被害者を見て、これで被害者を好きなように遊べると思いました。
 その場所は道路から2〜3mしか離れていなかったので、人目につかないようさらに引きずり込みました。具体的にどちらの方向に引きずっていくかは考えていなかったのですが、道路から見通しが利かなくて、樹木が多いところに決めました。もし意識を取り戻したら再び脅すつもりで包丁を、また見つけた誰かから変に思われるのもいけないのでバッグも、それぞれ持っていきました。

Q.それではバッグを取ろうと思ったのは、犯行の後のことなのか。
A.小倉の南区で女性を刺し殺していたので、疑われても仕方ないかもしれませんが最初からバッグを取ろうとしたのでありません。この事件を起こしたのはスケベ心だけです。

 被害者は意外なほど軽く引きずられていきました。ブーツのカカト部分だけが地面に接触するような格好で引きずられていきました。そしてそのまま仰向けに被害者を横たえることにし、バッグを被害者の足元方向に投げ捨てました。
 いよいよ猥褻行為に及ぼうと、仰向けにした被害者に馬乗りになり、地面に持っていた包丁を突き刺しました。そして被害者に対し猥褻行為を行いました。
 その後、バイクが公園前にやってきたのでマズイと思って、被害者に覆いかぶさるように低く身を屈めました。多分目撃されていることはないだろうが、早く逃げないとまずいと思い、地面に刺してあった包丁を取り出し、バッグに入れました。すると被害者が左手で私の足の裾を掴んできました。私は右足で払いのけ、さらに力いっぱい蹴飛ばしました。また仰向けになった被害者を右足で思いっきり蹴りつけ、それは顎にモロに当たりました。
 十分な暴力を振るったし、もう逃げようと思ったところ、信じがたいことに被害者が四つん這いになって私のところを見てきました。これははっきり見られたと分かりました。勤務先のジャンパーには会社名が入っていたり、服装や顔も見られたと思います。
 飯塚事件では強姦して精液を出しているので、これに加えてDNA鑑定でもされたら、犯人が私だとバレてしまい、小倉事件のほうもバレるのではないかと思いました。はっきり顔を見られた以上、殺すしかないと決意しました。それに今まで散々痛めつけたのに私に向かってくる執念が恐ろしく感じ、『こいつ、まだ立ち向かうのか』と鳥肌が立ち、刺身包丁で夢中で被害者を刺しました。
 四つん這いになっていた被害者の背中を、右手で包丁を逆手を持って刺しました。手加減はしていません。捜査員から胴体を貫通している傷もあったと聞きました。背中を刺して、とどめとして腹を突き刺したらしいのですが覚えていません。私に何度か刺された被害者は腹部から出血し、土手の方角に頭を下げていました。被害者はぐったりして、虫の息で出血している部分を押さえていましたが、まもなく死ぬのは明らかな状態でした。
 包丁の刃の部分に血がベッタリつき、手にもベッタリ血が付いていましたが、幸い着衣には付きませんでした。
 逃走して遊歩道を歩きながら、奪った被害者のバッグに包丁を入れたことは確かですが、口に押し込んだパンティの記憶はありません。
 その後私は居酒屋に行ったあと、急いで車に乗って次の配送先のYF福岡に行きました。そして再び公園に戻ることにしました。被害者の死体が発見されているかもしれないと思ったのですが、死体が見つかっていたらパトカーで現場がごった返しているはずだから、まだ見つかっていないと思いました。その近くまで行って、被害者を見ました。一度逃げたときと体の位置は同じで、まだおなかのあたりがピクピク動いていました。まだ生きているが、どうせ助からないだろうと思って、その場から逃げました。救急車を呼ぼうとは全く考えませんでした。
 バッグの中身は携帯電話やCDウォークマンなどが入っていましたが、それらを抜き取ると、バッグごと道路わきの山林に放り投げました。
 奪ったお金は生活費に充て、携帯は自分が使っていました。

Q.最初からお金を取る目的で、被害者を殺したのではないか。
A.違います。
Q.ではなぜバッグを奪ったのか。
A.疑われても仕方ないが、指紋を残していたからです。
Q.あなたは現金を抜き取って、他のものは捨てていますね。
A.はい。バッグのなかを調べたときに財布は戻しました。残高を照会しようと思いました。好奇心でやっただけで、それ以上は残高を調べることはできません。なぜなら口座から現金を取るのは防犯カメラがあって危険ですし、被害者が亡くなっている以上もう利用できないと思いました。
Q.なぜ携帯電話を使っていたのか。
A.自分のではないので、料金がかからなくておいしいと思いました。
Q.保険証を残したのも、これらを残していれば暗証番号が分かると考えたのではないか。
A.違います。
Q.出会い系サイトの接続に、cさんの携帯を利用していますね。
A.はい、利用しました。
Q.あなたは友人の保険証を使って、お金を騙した経験がありますね。
A.はい。
Q.鍵を残したのは盗みに入る目的があったのか。
A.いいえ。
Q.事件のとき、顔を見られたら、どうするつもりだったのか。
A.そこまでは考えていない。
Q.小倉南区の事件は思い出さなかったのか。
A.全く頭をよぎりませんでした。
Q.少しは前と同じく殺害してしまうのでないかという気持ちもあったのでは?
A.ありませんでした。
Q.あなたは捜査員に殺意はなかったので、訂正して欲しいと言っているがなぜか。
A.事件のとき殺意はなかったのではないかと思いました。
Q.それなのに、なぜ背中や腹を5回も突き刺したのか。
A.覚えていないとしか申し上げられません。

−小倉事件−
 当時、私は借金で妻と関係がギクシャクしていた上に、借金の取立てで家に帰れない状態だった。妻は私に「一生地獄を見せてやるけんね」とか「死ね」などと言ってきました。そのため私は車で寝たり、ボーッとしたりして時間を潰していました。深夜私が帰ってくることもあるのですが、妻と言葉を交わすこともなく、交わすことと言えば「洗濯物を入れとけ」「風呂の水を抜いとけ」ぐらいでした。
 もういつ死んでもいいと自殺することも頭をよぎりましたが、その勇気がありませんでした。
 取立てにヤクザが来るので家に帰りたくなく、私自身金に困っていることから、女性を襲ってあわよくばエッチしたいと考えるようになりました。相手となる女性を探すことが、飯塚事件や小倉事件に発展してしまったのです。「人恋しい」「襲ってあわよくばエッチしたい」との思いから、仕事の合間に早朝にかけて車でうろつくことにしました。よく飲み屋街に行って、ホステスならお金もあるし、体もいけるのではないかと狙いました。
 私は飯塚で専門学校生を襲って、首をマフラーで絞めて殺害した事件を起こしてしまい、仕事をしている最中は忘れることができました。ところがテレビなどで事件が報道されると、枕元に被害者の姿が出てきてうなされるようになりました。そのころ妻に「人を殺してる顔してる」と言われてドキッとした記憶があります。
 自宅に帰らず、飯塚の事件のことが頭をよぎりながらも会社のほうに向かいました。そのときに5人が焼け死ぬという交通事故があった記憶があります。その後業務に戻りました。
 なぜ小倉に行ったのかということですが、一人歩きの女性を連れ込んで金を奪い、あわよくばエッチしたかったからです。失神させて金を奪うつもりでしたが、かなりの時間探したもののダメで、私が疲れてしまいました。
 会社の休憩室で夜半過ぎから雪になるとの報道があったことを思い出しました。私は無免許運転だったので、事故でも起こしたらまずいと思い仮眠を取ることにしました。起きてみると、フロントガラスに雪が積もり、大きな綿雪が舞って、あたり一面は雪で覆われていました。
 車で移動した私は、方向感覚がなく、住宅街に入り込んでしまいました。320号線に入る道が分からなくなって困っているところに、積雪して薄暗いなか、人が歩いてくるのが見えました。人が歩いてくる方向に行けば、国道320号線に戻れるのではないかとその人を見たとき、女性で、黒っぽい手提げかばんを持っているのが分かりました。
 「この女性を襲って、手提げかばんを奪おう。明るくなったら機会がないから、暗いうちに襲おう」と決意し、毛糸の帽子を深く被りました。私は刺身包丁を見て、これを見たら素直に渡すだろうと思って、それを持って女性のあとをつけました。ジャンパーの裾に包丁を挟み、腕組みのような格好で近づきました。その歩き方とやや背中を前にした姿勢だったので、ほとんど私と並ぶような形になってしまいました。
 フードを被っていて、俯き加減の姿勢だったので顔は分かりませんでした。
 1回やり過ごすと、3〜4mあとをつけて、民家が立ち消えたので、襲おうと近づきました。間隔は3〜4mぐらいでしたが、これまで地面がアスファルトだったのが、襲おうとした位置は砂利だと歩いた感覚で分かりました。
 ジャンパーのファスナーを上げて、腕組状態で懐に隠していた包丁を順手に持ち替え、小走りで3〜4m前を歩く被害者に近づきました。手提げかばんがやけに低い位置になったので、私も腰を低くしました。被害者は左に捩るように振り返り、手提げかばんを奪われないように引っ張ってきたので、引っ張りっこになりました。
 このままではいけないと思い、私は包丁を顎付近に突きつけて「手を放せ」と言いました。すると被害者は「命だけは助けて」と言いながら、包丁を刃先の部分を掴んできたのです。私は手を放せと何回も言いましたが、被害者は「命だけは助けて」と言いながら掴んだままでした。これにはなんでこんなことをするのかびっくりしましたが、それでも被害者は手で刺身包丁を突き出してきたのです。私は被害者の腰付近を服の上から刺しました。そのとき「う〜っ」といううめき声を出し、包丁を引いてみると、刺した部分は抜けたのですが、それでも刃先から手を離しませんでした。やっと手を振りほどくと、「顔を見られたので殺すしかない」と決意しました。そのとき、被害者がバッグを握って逃げ始めたのです。私が刺したので、被害者は力尽きて横になりました。そばにはセイダカアワダチソウが生い茂っていた覚えがあります。
 被害者は息遣いこそ荒いものの、まだ生きていたので馬乗りになって背中を何回も刺しました。その場で被害者を仰向けにし、息遣いから虫の息であるのが分かりましたが、「とどめを刺す必要がある」と思い、その後も馬乗りになって背中を刺しました。被害者はうめき声をあげ、何回も刺しているからか刃先に血がベットリ付き、刃先が体内の骨に当たったのかゴリッという音も聞こえました。包丁は車内にあった刺身包丁です。
 いつまでもここにいたらまずいと思い、車を停めてあった駐車場に戻りました。自分の手の傷口がパックリ開いているのが分かりました。その後被害者から奪った手提げかばんを開けると、花形の紋様だったと思いますが、財布を取り、手提げかばんはその後途中の用水路に放り投げました。家に帰ったときは妻も子供も寝ていました。

−飯塚事件−
 平成16年の12月12日は午後8時ごろ勤務を終え、ホンダアクティで家のある直方に入るか入らないか迷っていましたが、こんなに早く家に帰ったら、借金の取立てのヤクザモンもいるし、妻も起きているだろうから、時間を潰すとともに強姦できる若い女性を探し回ることにしました。
 河川敷に車を止め、車内でビールを飲み、その後たこ焼きを購入し、夜景でも見に行こうかな〜と思いました。
 また飲み屋街で一人歩きの若い女性を物色しました。最初は眺めているだけで嬉しかったのですが、ナンパも失敗し、金品は二の次で、とにかく若い女性を強姦したいと考えました。
 手口はまず手で首を絞めて脅してから、無理やり強姦しようと思いました。性病のことや相手が妊娠してしまうためにコンドームを付けようなどということは全く考えたことがありません。
 DNA鑑定でバレないようにするには、膣の中に射精しなければいいだけのことで、イキそうになったらスカートの上に射精して、そのスカートを持ち帰ればいいと思いました。被害者にはっきり顔を見られなければ、似顔絵やモンタージュ写真を作成することもできず、証拠は残らないと考えました。
 その時点では強姦して金を奪うということだけで、殺すというのは考えていません。12月12日の夜も「よし、襲えそうな女を探そう」と思い、他にも2回に渡り、車で近づいて女性を追いましたが、いざやろうという踏ん切りがつきませんでした。
 エロビデオの強姦モノを見過ぎていたので、強姦という行為への抵抗感が薄れていたのかもしれません。わずか3000円の所持金しかなく、ファッションヘルスに行って性欲を満たしたり、美味しいものを食べようといったことを考えた記憶はありません。
 若くてそこそこ綺麗な女性がよく、ブスと太った女性は嫌でした。あと携帯を耳に当てながら歩いている女性もダメで、その携帯を手に持ったりしたら、通話中の相手に気づかれるからです。このように強姦しやすい女性像を想像しながら車を走らせていました。
 若い女性だけでなく、中高年の女性のバッグを奪うことも考えていました。1分ぐらい車を走らせていると私の方向に、人影が見えたので、スピードを20〜30kmまで減速しました。すれ違った人は、髪型から女性と分かり、生足が見えていました。色白で真面目な学生タイプで、なかなか可愛い子だなあ、高校は卒業しているのだろうと思いました。
 彼女はどんどん人気のないところに進んでいったので「よし、チャンスだ。あの女の子を強姦してやりたい」と考えて、駐車場の空いているところに車を止め、彼女が途中で路地や民家に入ってしまえば強姦できないので、毛糸の帽子を深く被り、全力で彼女のほうに走りました。ところがその姿を確認できず、また全力で走ったところで、前方50m先に彼女を見つけました。私は走るのをやめて、早足でない普通の速度で彼女の方向に歩きました。曲がった路地を出たところで、「国道沿いに出られたらまずい、脇道で襲うのが好都合だ」と考え、見失ってはいけないと急いで歩きました。
 こうしているうちに犯行現場に近づきました。「この子どこ行っちょるか。早く連れていけそうな公園はないか」と思ったところ、道路から奥行きのある、街灯もなく樹木が多い場所を見つけました。そこが公園ということは、後日テレビで知りました。
 被害者が履いているのはブーツだと分かりました。
 その出入り口に近づいたときに襲いかかろうとしました。声を上げられないよう口を塞いで、強姦しようと決意しました。
 動機としては、大部分は強姦目的で、他に金品を取るのは当たり前だと思っていました。その他に膣外射精によって精子をかけられたスカートも持ち帰らなければならないと思いました。結果として所持金は奪えませんでしたが、それはトラックが来て慌てて逃げたからであり、来なかったら間違いなく取っていました。
 私は小走りで被害者に近づき、口を塞ぎ、右手で背後から着衣を掴みました。上半身を抱きかかえて、公園の方向に力いっぱい引きずり込みました。すると被害者は真後ろに倒れて、ゴツンとアスファルトに頭を彼女はぶつけ、ガサッとコートが落ちる音もしました。
 被害者は「キャーッ」という悲鳴を上げ、公園の出入り口方向に顔を向けていました。被害者はうつぶせになって起き上がり四つん這いになりましたが、私は左手で挟んで重心を落としつつ被害者を抱えあげました。被害者は逃れようと若干抵抗しましたが、力がなく、頭を打ったことで弱っているのか簡単に引きずることができました。彼女は口をモゴモゴしており、気を失ってはいませんでした。
 引きずっていく途中で、私は前方によろけて被害者の体を落としてしまいました。本当はもっと奥まで引きずりこみたかったのですが、今でも十分引きずり込んだし、落とした以上引き上げる必要もないと感じ、その場で強姦することにして、被害者を仰向けにしました。
 被害者は激しく抵抗する様子はなく、首には彼女のマフラーが一重垂れていました。私はセックスを楽しみたい、途中で声を上げられたらたまらないと思ったので、脅しで首を絞めておくことにしました。私はマフラーの両端を持って引っ張りましたが、マフラーが伸び、両手の感覚が思った以上に広がりました。これでは絞まらないと思い、首の近くの部分のマフラーに持ち替えて、さらに首を絞めました。カーッとなった状態で被害者の首を絞めていたと思います。それだけでも被害者は死んでしまうかもしれないのですが、被害者が生きようと死のうと構いませんでした。被害者は私を突き放すような仕草をしながら、「ぐぅ〜」とうめいていました。私は「静かにしていれば、すぐ終わるけん」と考えていました。どれくらい首を絞め続けていたか分かりませんが、被害者の両手がパタンとなりました。気絶するくらいだから、結構な時間だったと思います。
 被害者がぐったりしているのを見て、私は猥褻行為をしましたが、外に射精するのを失敗してしまいました。
 被害者に私の顔を見られたし、まだ死んでおらず、その証言をもとに私の服装や似顔絵でモンタージュ写真を作成されて、その上精液のDNA鑑定が行われれば、私は逮捕されてしまうと焦りました。躊躇はしましたが、迷ったのは10秒ぐらいで、私は殺すしかないと決意しました。被害者はそのとき生きているか死んでいるか分からなかったのですが、一重に巻きついていたマフラーを力いっぱい、力いっぱい締め付けました。その間、被害者の様子に変化はなく、痙攣やうめき声もなかったです。
 すると公園がトラックのヘッドライトで照らされたのです。また被害者が形容は難しいが、「ヒューヒュー」という声を出したので、「この子まだ生きちょう」と思いました。そばにバッグも落ちていましたが、私は「公園に人が来ているので、すぐに逃げないと大変なことになる」と現場から一目散に逃げました。その後どこの立ち寄ることもなく家に帰り、戻る途中残りのたこ焼きを食べました。ここで捜査員とのやり取りの紹介。

Q.バッグを取るつもりがなかったというのか。
A.トラックが来たから、バッグを取れなかったのです。
Q.間違いなく、そのトラックは来ていたのか。
A.はい。今回は私の思い違いではありません。

−検察官に述べた今回の事件を総括しての心境−
 私が起こした飯塚・小倉・博多の3連続殺人事件の取調べの終結に当たって述べておきたいことは、この事件のきっかけは借金問題や妻との関係の悪さにあったと思います。
 私は妻に性交渉も許されず、家を担保として借金をしていた時、私の父親に頭を下げて返済してもらったことがあったのですが、妻は父親に頭を下げませんでした。それに他にも借金はまだあったのです。私の経済感覚のなさも一因ですが、妻が父の前で頭を下げてくれていたら、私にもっと優しくしていてくれたら、と思います。妻が頭を下げていてくれたら、父に借金を尻拭いしてもらえたかもしれませんし、妻は私の母とも仲が悪く、嫁姑問題もありました。
 私と妻の給料を合わせると月30万円の収入があったのに、妻は何に使っているのか分からず、家計簿も付けろと言っても付けませんでした。その不信感によるストレスを解消できるのはパチスロしかなく、それが借金の原因になりました。もちろん自分の甘さや意思の弱さのせいですが、妻がちゃんと父に頭を下げ、家計簿を付けていてくれればと思います。
 私は家庭内の問題で追い詰められていました。私は見栄っ張りなところがあり、友人の前では良い格好するころがありました。よくヘルスに行くようになり、友人にヘルスを奢ってあげたこともあります。
 いざとなったら自己破産すればいいと思っていました。借金の金額が膨れ上がっても、いずれは自己破産で焦げ付かせようと高を括りました。もう私や妻の住む家が無くなろうが、関係なくなっていました。
 飯塚事件のあと、テレビで被害者の顔写真を見て、犯行当夜のことを思い出し、私の身勝手な欲望のせいでわずか18歳の将来のある女性の命を奪ってしまい、取り返しの付かない大変申し訳ないことをしてしまいました。ところが結局罪の意識が長続きせず、第2第3の犯行に及んでしまいました。
 自分の子供と遊んでいると、飯塚のことは忘れました。
 クリスマスを過ぎたころから、また適当な女性を見つけに歩くようになりました。そこには18歳の将来ある女性の冥福を祈ろうという気持ちは全くありませんでした。最初は後悔しましたが、家族で温泉に行ったこと、自分の子供のことを考えると、罪の意識はなくなっていました。人を殺した手で、子供を抱き上げているということも全く考えませんでした。
 あまり事件のみを思い出すことはなかったのですが、博多事件で一度現場に戻ったとき被害者が血を流して苦しむ姿を、夢で見ました。
 テレビで元捜査一課長という人が「この事件は同一犯の可能性が高いが、別人がやっているのかもしれない」などと言っているのを見ました。
 被害者の携帯で、タダで出会い系サイトに繋いでいると、自分の携帯のように思えてきました。出会い系サイトのパスワードに被害者の誕生日を入力したり、cさんの友人に「啓子は死んだ」などのメールを送信することは、悪いこととは思わなかったです。
 奈良の女児誘拐殺人事件の報道を見ても、携帯の発信エリアは近辺という漠然とした言い方しかできないので、携帯を使うことに恐れはありませんでした。私もさすがにヤバいかなとは思いましたが、ズルズルと使ってしまい、携帯を捨てようとした矢先に捕まったのです。
 このように私が3件もの殺人事件を起こしたのは、反省や後悔が長続きしない私の性格や意志の弱さからでした。一時期自暴自棄になり、一家心中しようと思ったり、飯塚事件と小倉事件の間だったとも思いますが、自殺しようと一人で海岸や線路に立っていたこともありました。ところがまたしても事件を起こしてしまいました。
 妻に「人殺しのような目つきしてる」と言われました。
 裁判で自分のことをどう言うかまだ決めていません。どういう刑を受けるかということですが、私の欲望のため3人の女性の命を奪ったのですから、死刑しかないとは思います。ですが裁判官に、死刑にしてくださいと言う勇気はありません。弁護士と相談して自分を無期懲役にしてほしいことを話しました。嘘をついて生き残るのかと言われても、無期懲役になって親孝行したり、若い人が自分と同じ間違いをやらないよう指導していきたいです。
 「裁判で嘘を言ってはいけない」と言う一方で、「自首になりますか」「無期懲役とはどういう刑罰ですか」と尋ねたりして、「自分がどういう刑罰を受けるかばかり考えて、遺族のことを考えていないのでないか」と捜査員に言われました。

 ここで検察官の供述調書の読み上げは終了。遺族らしき白髪で太めの男性と、cさんに酷似した女性は嗚咽を漏らしていた。
 被告側弁護人が検察官のほうに歩み寄って、被害者の実名を読み上げているのを、被害者で統一してくれるよう要請するシーンもあった。
 鈴木被告は伏目がちで、小さく泣いているように思えた。
 休廷のとき、弁護人は報道陣と「被害者の尊厳にも関わることやしね」などと言っていた。
 また遺族の男性も報道陣と「僕が法廷で話すことは現段階では考えていない」などと会話していた。

 ここから弁護人による被告人質問。鈴木被告は自身のことを言うとき「自分」と言い、「〜という」を「〜ちゅう」と表現する。やや朴訥という印象を受けたが、九州地方の人一般に当てはまるかもしれない。高い声で、はっきり言うので聞き取りやすい。

弁護人「まず逮捕されたときの状況から聞いて、それから博多事件、小倉事件、飯塚事件、最後に情状についてあなたに質問していくからね」
弁護人「あなたが警察に身柄を確保された経緯について教えてください」
被告人「3月8日に路上で職務質問を受け、携帯をどうしたか聞かれて『パチンコ屋で拾った』と言ったら、『それは被害者のや』と言われて博多署に連れて行かれました」
弁護人「博多署に連れて行かれて、どうしたのですか」
被告人「午前2時ごろから取り調べがあり、携帯のことを聞かれて、『携帯は3月7日にパチンコ屋の駐車場で拾った』と言いました。捜査員に『やましいことがなかったら、DNA捜査に協力しろ』と言われ、口内(唾液)採取されました」
弁護人「それからどうしたのか、時間に注意して話してください」
被告人「鍵とか自分の持ち物を預けました。それからいろいろ携帯のこととか聞かれて、午前5時ごろ、取調べに当たった佐藤さんに占有離脱物横領で逮捕されました。朝7時ごろにご飯を食べるのも食べないのも自由だが、昼から取り調べを始めると言われました。私はご飯を取って、煙草を吸って取り調べに行きました。不安で寝れなかったです。午後1時30分から取り調べがあり、『携帯を拾ったというのは本当か』と聞かれ、素直に博多の事件を起こしましたと言いました」
弁護人「状況を説明してください」
被告人「(博多事件のことを)聞かれたからじゃなくて、自分から言ったと思います。博多の公園で女性を襲いました、携帯電話は被害者のですと言いました」
弁護人「そのとき、調書は取られましたか」
被告人「取られてないです」
弁護人「他に何か言ったのですか」
被告人「佐藤さんに他に何もしてないかと尋ねられて、去年の12月に飯塚で若い女性を強姦して殺したり、小倉で女性を殺したのも私ですと話しました」
弁護人「小倉事件のとき、お金を取ったことも話したのですか」
被告人「はい」
弁護人「それはいつごろですか」
被告人「3月8日の午後2時30分過ぎです」
弁護人「あなたは一連の事件の犯人が自分だと言ったのですか」
被告人「はい」
弁護人「それについては調書は取られましたか」
被告人「いいえ」
弁護人「飯塚事件や小倉事件について聞かれましたか」
被告人「いいえ、飯塚事件や小倉事件は後で詳しく聞くから、博多事件で被害者を見つけた状況や私の勤務状況、車や服装、仕事のルートなどを聞かれました」
弁護人「それでどうしましたか」
被告人「その日はそれで終わりました」
弁護人「そのあとはどうなりましたか」
被告人「3月9日に、3月8日に言った分についての調書を取られました」
弁護人「つまり調書では博多事件のことを話していたのですか」
被告人「はい」
弁護人「3月9日の取調べは何時から始まりましたか」
被告人「覚えていません」
弁護人「検察官の取調べの場合はどうだったのですか」
被告人「午前中は12時までで、午後は1時から5時まで、夜は6時から10時まででしたが、遅いときは夜11時30分までありました」
弁護人「博多事件で使った包丁は、どうやって手に入れたのですか」
被告人「以前父のところで勤務していたとき、倉庫で見つけました」
弁護人「2本包丁を見つけて、家で使っていましたね」
被告人「はい」
弁護人「どういうとき使っていたのですか」
被告人「自分が魚を捌くときです」
弁護人「だから家の台所で使っていたわけですか」
被告人「そうです」
弁護人「これを車に運び込んだのはいつですか」
被告人「飯塚事件のあとすぐです」
弁護人「目的は何ですか」
被告人「研ぎ屋に出すためです」
弁護人「包丁は車のどこに置いていたのですか」
被告人「後部座席の下にあった雑誌類とか入れていた青色のプラスチックケースのなかです」
弁護人「博多事件当日、犯行現場の近くに車を止めたのはなぜですか」
被告人「時間的な余裕があったので、休憩しました」
弁護人「休憩しているとき何をしていたのですか」
被告人「読みかけの本を読もうとしたとき、包丁を見つけました。前を何の気なしに見たとき、被害者が立っていました」
弁護人「それであなたはどうしたのですか」
被告人「ムラムラとして追いかけていきました」
弁護人「包丁はどうしていましたか」
被告人「ジャンパーのなかに隠していました」
弁護人「包丁を発見したのは、どういうときですか」
被告人「本を取ろうとしたとき、青色のプラスチックケースの下の方で見つけました」
弁護人「そこに包丁があるとは考えていましたか」
被告人「気づいていません。たまたま見つけました」
弁護人「何に使うために包丁を持っていったのですか」
被告人「脅して、胸などを触るためです」
弁護人「その脅すというのは検察官の説明で合っているのですか」
被告人「合っています」
弁護人「脅せばどうなると思ったのですか」
被告人「大人しくなると思いました」
弁護人「どういう目的で脅したのですか」
被告人「胸やお尻などを触ることです」
弁護人「そのとき強姦する目的はあったのですか」
被告人「ありません」
弁護人「モノを盗るという目的はどうですか」
被告人「全然ありません」
弁護人「犯行の態様は当たっているのですか」
被告人「はい」
弁護人「どこを何回ぐらい刺したかということは覚えていますか」
被告人「覚えていません」
弁護人「結果としては、覚えているような供述も調書に取られていますね」
被告人「はい」
弁護人「しかし強姦と強取の意思はなかったのですね」
被告人「はい」
弁護人「バッグをあなたが持ち帰った理由は何ですか」
被告人「被害者を公園の奥のほうに連れて行くとき、被害者が持っていたバッグにも自分の指紋が付いていることと、包丁をバッグの中に入れて隠すためです」
弁護人「被害者の携帯をいつから使っていたのですか」
被告人「よく覚えていません」
弁護人「事件の次の日から身柄を確保されるまでの間、使っていた理由は何ですか」
被告人「他人のものだから、自分のところに請求が来ないからです」
弁護人「携帯を持っていた他の理由はあるのですか」
被告人「ないです」
弁護人「携帯の使用状況は、当たっていますか」
被告人「はい」
弁護人「奪ったバッグから何か使ったものはありますか」
被告人「被害品のなかから千円使いました」
弁護人「エンジンをかけたまま保冷の効果がなくならないよう、いろんな心配をしなかったのですか」
被告人「少しはしました」
弁護人「早く帰らなあかんとあるが、どういうことですか」
被告人「車が危険な状態やからです」
弁護人「強姦する時間がないとは考えなかったのですか」
被告人「考えました」
弁護人「つまりセックスまでは至れないと考えていたのですか」
被告人「はい」
弁護人「あなたは殺すつもりはなかったと言っていますが、被害者が四つん這いになってズボンの裾を掴んできたとき、どう思いましたか」
被告人「分かりません」
弁護人「まだ向かってくると思って刺したのではないですか」
被告人「覚えていません」
弁護人「向かってくるのを逃れようと、被害者に包丁を向けたのではないですか」
被告人「よく覚えていません」
弁護人「博多事件で弁解しておきたいことはありますか」
被告人「とくにありません」
弁護人「次に小倉事件について伺いますが、犯行現場近くに車が止まったのは、どういう流れでですか」
被告人「来た道の方向が分からなくなってグルグル回って、雪も降りはじめたので車を止めました」
弁護人「被害者のbさんを見たとき、どうしたのですか」
被告人「1回車に戻り近づいて、その後よく見えるようになって、被害者がセカンドバッグを持っていることが分かり、それを奪ってやろうと思いました」
弁護人「たまたまそういうことになったというのですか」
被告人「はい」
弁護人「女性を物色とか言われているけど、たまたま見つけたのですか」
被告人「はい」
弁護人「どういう理由で手袋をつけたのですか」
被告人「寒かったからです」
弁護人「たまたま見つけるまで、包丁の存在は知らなかったということですね」
被告人「はい、たまたま見つけました」
弁護人「その後どうなったのですか」
被告人「さっき検事さんが言った通りの経過をたどりました」
弁護人「警察に捕まらないようにするためには殺すしかないと、そんな気持ちになったのですか」
被告人「なっていません」
弁護人「顔を見られたらまずいという気持ちがあったのではないですか」
被告人「ありません」
弁護人「警察に捕まってしまうとか思ったことはありますか」
被告人「ありません」
弁護人「被害者を殺そうと思って刺したのですか」
被告人「思っていません」
弁護人「思いきり刺したとの供述を取られていますが」
被告人「事件の状況を見せられて、流れで言ってしまいました」
弁護人「どこをどういう具合で刺したのか、覚えていますか」
被告人「腰を最初に刺したとき、自分の指を切りました。刺している最中は夢中でした」
弁護人「被害者はあなたがバッグを取ろうとしたとき、どんな対応をしたのですか」
被告人「バッグを取られまいと少し抵抗してきました。それで私が包丁を顔の前あたりに突きたてて、見せました」
弁護人「そして被害者はどうしたのですか」
被告人「包丁の刃を掴んできて、自分が振り払おうとしているときに刺さってしまいました」
弁護人「小倉に何かしにいく目的はあったのですか」
被告人「ありません」
弁護人「見つけたのはたまたまで、最初から被害者を物色していたことはありませんね」
被告人「ありません」
弁護人「刺さったのは雪で足を滑らせたからともありますね。お金を取ろうというのはあったのですが、強姦とか猥褻というのはないですね」
被告人「全くありません」
弁護人「一連の事件には強盗と強姦の2つの要因があると言われているが、小倉事件の場合はどうなるのですか」
被告人「お金が欲しかったというだけです」
弁護人「とどめを刺すという話は、どういう流れで出てきたのですか」
被告人「刑事から心臓を刺したらとどめになると言われて、そうなるかと」
弁護人「とどめを刺して殺すというのはあったのですか」
被告人「ありません」
弁護人「小倉の事件で取ったのは2つとあるが、何を取ったのですか」
被告人「マフラーと財布を取りました」
弁護人「いつの捜査で、それらの遺品が倉庫から見つかったのですか」
被告人「3月8日頃だと思います。聞いてないけど」
弁護人「鍵を見せられたのはいつですか」
被告人「だいぶ後です。小倉事件で起訴される前あたりです」
弁護人「今日はこれで終えます」

 すると鈴木被告は挙手して「博多の事件で補充したいことがあります。そのときジャンパーのチャックを下げていたとありますが、チャックは上まで上げていたと思います」と述べた。
 ここで裁判長が被告人質問の続行ということで、期日を12月1日に指定して閉廷した。

 鈴木被告は頭を軽く下げたが、遺族は反応しなかった。
 遺族の関係者は4〜5名年配の女性を中心にいて、検察関係者に誘導されて、裁判所から専用バスに乗って裁判所を出ていった。
被害者対策に国が本腰を入れ始めたことで、今後の審理についての打ち合わせをするのかもしれない。

事件概要  鈴木被告は、強盗強姦目的で以下の犯罪を犯したとされている。
1:2004年12月12日、福岡県飯塚市で専門学校生を殺害。
2:2004年12月31日、福岡県北九州市でパート従業員を殺害。
3:2005年1月18日、福岡県福岡市で会社員を殺害。
 鈴木被告は2005年3月8日に逮捕された。
報告者 insectさん


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